北海道パラダイスウィークレポートNo.8 総括

 備忘録的に今回の北海道パラダイスウィークのポイントをまとめておく。

1.天候は期間中はかなり雨が降り、気温も道東方面では最高気温が20℃に届かないことが殆どで予想以上に寒かったものの、雨天&低温に比較的強い私としては持ち込んだ装備だけで結果的に対応できた。

2.コースは今まで走った中ではベスト。とにかく走り易い。信号がなくストップ&ゴーが殆ど発生しないので加速での体力の消耗が抑えられ、一定のペースでずっと走り続けることができ心拍を上げ過ぎることなくLSDレンジで行程の大半を走れたのは非常に有難かった。下ハンドルを持つ時間も長く、空気抵抗を軽減することができたのも体力温存につながった。

3.今回1500kmをここまで楽に走破できたポイントは400kmにあると思う。初山別12時スタートで、ちょうど250km地点が紋別、日付が変わる前に紋別に入りホテルに宿泊して5時間ほどの睡眠がしっかり取れたことが大きい。6日間の長丁場で生活(睡眠)のサイクルをキープできたことは非常に重要だと思う。最初はいつもの400kmと同じく仮眠なしで一気に走り切って斜里に朝到着してそこから仮眠・休息というのも考えたのだか、結果的にそうしなくて大正解だったと思う。

4.今回北海道パラダイスウィークを走ってみて、ブルべの走り方について色々考えを巡らせ新しい認識を持つことができた。普段の近場の単発ブルべではよそ見もあまりせずにできるだけ早い時間でがーっと走ってしまうことが殆どだ。何故そうするのかを突き詰めて考えてみれば、走り終えた後に普段通りの生活の次のスケジュールを支障なく入れようとするからである。まあ当たり前と言えば当たり前なのだが、今回のパラダイスウィークの様な長期間のイベントだと、ブルべを走り終えた後の次のスケジュールはまたブルべなわけで、速く走って早く宿に着いても、自宅と違って御飯を食べて寝る以外殆どやることがない(勿論その分長く休めるというメリットはあるが)。それならば過度の負荷をかけずに抑え目のペースで走りつつ、周りの景色を楽しみながら寄り道&買い食いをしつつ走った方がサイクリングとしては圧倒的に楽しい。実際にその様な走り方を今回のパラダイスウィークの中でちょっとやってみて、改めてサイクリングの楽しみ方を再発見したような気がする。去年のPBPでは走り終えた後は疲労困憊で翌日に計画をしていたパリ市街の観光は結局できずじまいで終わったことを考えれば、今回は翌日に札幌市街のサイクリングとすすきのの夜をしっかり堪能したので旅情を楽しむという面でもサイクリングペースは有効だと思う。

5.夜間&雨天走行で難儀したのは視界の確保。度入りサングラスを使用したが、雨天走行、特に夜間ではレンズの水滴が道路灯や対向車のヘッドライトで乱反射して使い物にならず外して走らざるを得なかった。そうするともともと視力が悪く見えづらいので必要以上にスピードを抑えて走らなければならず、余分に時間を使ってしまった。雨天走行に威力を発揮するアイウェア(撥水加工レンズ)の導入の必要性を改めて強く感じた。

6.膝痛対策で今回初めてキネシオテープを持参した。実際に左膝が痛くなり使用したが効果はそれなりにあったものと思う。

7.尻痛対策で尻の表皮保護にボルダースポーツを今回初めて使用。オロナインH軟膏との併用でそこそこ効果はあった。今まではアソスのシャーミークリームを使っていたが効果は同じ様なものか。容器の大きさでボルダースポーツがちょっとだけ優位。

8.今回タブレットPCを導入。併せて有線LAN->無線LAN変換ユニットも持参。今回宿泊したすべてのホテルにLAN環境があり(一部のホテルでは使えなかったが)、インターネットに接続できるのはかなり便利。スマホが駄目な私としてはかなり強力なツールになった。

9.今回初めて走行中にシフトワイヤーが切れ、スペアを持参していたので事なきを得たが、かさばるものではないのでこれからも常に携行しようと思う。

10.今回はドロップバックがないということで、事前に携行品をかなり吟味した。今回は宿泊全てがホテルということで、ホテルで調達できるものはすべて省いて考えた。結果的にキャラダイスのサドルバッグ「Super C/Audax(容積9L)」に全て入れることができた。携行品一覧は下記の通り。

1)サイクルウェア(常時着て走る半袖ジャージ、レーパン、インナータンクトップ、指切りグローブ、ソックス以外)
・コンパクトタイプのレインジャケット
・アームカバー
・レッグカバー(ショートタイプ)

2)着替え
・Tシャツ
・パンツ(インナー)
・スポーツショートパンツ(アウター)

3)医療品
・キネシオテープ
・トクホンチールメタシン
オロナインH軟膏(チューブ)
バンテリン湿布
・胃薬
・下痢止め
・絆創膏
・ボルダースポーツ

4)スペアパーツ
・チューブ3本
・簡易パンク修理キット
・タイヤブート2枚
・シフトインナーワイヤー1本
・チェーンオイル

5)電装品
タブレットPC(7インチディスプレイ)
タブレットPC用充電器
・延長LANケーブル
・有線LAN->無線LAN変換ユニット
・携帯電話充電器+有線LAN->無線LAN変換ユニット用USB電源コネクタ
・予備バッテリー(エネループ単三6本、単四2本)
エネループ急速充電器
・ナビサブ機(Oregon400)

6)その他
・ワイヤー錠
・地図やQシートを入れるA4折り畳みクリアホルダー

11.費用は総額ざっくり12万円くらい。

12.北海道パラダイスウィーク、本当に素晴らしい企画だったと思う。個人的には天気があんな感じだったがやはり”パラダイス”だったと思う。来年はこの企画はないとのことだか、数年後にまた同様の企画が設定されれば必ず参加しようと思う。また、超ロング(1000km、1200km)があればぜひ参加してみたいと思う。

 AJ北海道のスタッフの皆様、今回のパラダイスウィークでは大変御疲れ様でした&御世話になりました!またいずれ必ず北海道を走りに訪れたいと思いますので、その節は宜しく御願いします。
 北海道パラダイスウィークに参加されたブルべライダーの皆様、大変御疲れ様でした!またいずれ北海道で御会いしましょう。

北海道パラダイスウィークレポートNo.7 翌日〜最終日

8月11日
 朝6時に目が覚めた。さすがにちょっと身体がだるいが1500km走ったことを考えれば大したことはない。PBP1200kmを走り終えた翌日はアキレス腱が腫れ上がり、両膝は立ち上がって自分の体重を支えることができず腰もがたがたに痛くてベッドから起き上がれない程のとてつもない疲労感に比べれば今は全くないに等しい。今日もどこかに走りに行きたいというモチベーションもある。
 とりあえず御腹が空いたので朝食。

 走行中は野菜の摂取量が絶対的に不足していたのでサラダをたくさん食べる。今日の昼はジンギスカンなのでちょっと控え目にする。

 どこを走ろうかとネット検索しながらうだうだしていたら時間が経ってしまいもうすぐ昼、サッポロビール園で行われる打ち上げ懇親会の時間が迫ってきた。ジンギスカンにビールだが、やっぱり午後はちょっと走りたかったのでノンアルコールを決め込んでバイクで行くことにする。PBPオフィシャルジャージの”正装”で出発する。
 ホテルからサッポロビール園までは3kmちょっと、のんびり走って12時半前に現地着。
 会場が良くわからずきょろきょろしていたらAJ北海道のスタッフさんに声をかけて頂いて無事会場入り。

 会場には既に多くの参加者で賑わっている。

 肉!

 AJ北海道のスタッフの発声で懇親会スタート。周りの人達が美味しそうにビールを飲んでいるのがちょっと羨ましいが、ウーロン茶片手にひたすら肉を食いに走る。ジンギスカン好きの小生としてはどんどん食べられてきりがない。
 会場内は声が響き過ぎて近くの人の声も聞き取り難かったので会話するに苦労したが、色んな人と会話ができて楽しかった。2時間があっという間に過ぎて楽しい懇親会も御開き、AJ北海道のスタッフさんに挨拶して会場を後にする。

 サッポロビール園の建物。

 市街地の直ぐ傍を流れる豊平川の河川敷に作られたサイクリングロードを軽く流すことにした。

 札幌周辺にはサイクリングロードが何本かあって支笏湖にも通じているらしい。

 10kmちょっとをのんびり流す。

 河川敷には広場や運動施設がたくさんあって人もたくさん集っている。

 ホテルに戻りちょっと昼寝の後バイクをパッキングする。
 18時を過ぎ、一人打ち上げ本番に出かける。場所は予め旧友に紹介してもらった店に狙いを定めてある。ホテルから直ぐの飲み屋ばかりの雑居ビルの一角にある小さな店だ。
 店に入って座っていいかと尋ねたら、女将さんが「構わないけど今日はちょっと普段の対応はできない」と言う。聞けば今日は店の常連さんがそれぞれつまみを持ち寄って楽しむ納涼パーティーの日だという。他に行くあてもないしこういうハプニングも旅の醍醐味なのでそのまま座らせてもらう。
 ビールを飲んでいたら三々五々常連さんが店に集まって来て徐々に盛り上がっていく。穏やかで人情味ある女将さんと常連さんはそれぞれキャラが立っていてまるで映画の設定のように面白い。突然のよそ者にも良くしてくれて会話も弾み滅茶苦茶楽しい!ビールもどんどん進む。

 常連さんがそれぞれ用意してきたつまみも御相伴にあずかる。特にスープカレーは絶品だった。

 楽しい数時間はあっという間に過ぎ去り、結構酒も回って来たので女将さんに別れを告げて店を出た。今は地元に馴染の店を持たない身としては、こんな居心地のいい小さな飲み屋が身近にあったらなあと何とも後ろ髪を引かれる思いで店を後にした。

 もうちょっと場所を変えて飲みたかったので、予め調べをつけておいたJazzバーへ向かう。残念ながらそこは先客で席が埋まっていたのですごすごと退散。一旦ホテルに戻って別の店を探そうとネット検索しているうちに寝落ちしてしまい、すすきのの最後の夜は終了した。

8月12日
 7時起床。典型的な二日酔いの症状でふらふらする。
 とりあえず朝食。

 控え目で終了。
 10時にホテルをチェックアウト。バイクパックを近くのクロネコヤマトまでハンドキャリー、1km足らずの移動だが今回の北海道ツアーで一番ハードな作業だった。最初に送った時は中身のダメージは殆どなかったので、送り返しは保険の金額を30万円に下げ保険料を安くして送った。
 フライトは13時、ちょっと時間に余裕があったので、札幌市内を散策。

 昨日は行けなかった狸小路

 街角でロードバイクをよく見かける。綺麗に区画整理された札幌の今風の街並みにバイクは良く似合う。

 北海道議会の赤煉瓦の建物。

 札幌駅。

 11:10発のエアポートライナーに乗る。

 それぞれの列車の乗車口を示す案内板が懐かしい。

 12時前に新千歳空港着。時間があるのでパラダイスウィーク中に食べられずにいた豚丼を食べる。

 ボリューム満点で旨い!

 定刻通り13時過ぎ、機上の人となる。

 15時前に羽田着。東京はいい天気、暑い!!モノレールから東京の街並みを眺めていると北海道での日々がまるで夢の中の出来事のように思える。

 羽田から直接バンド練習というより飲み会に合流するため三鷹に直行、いつもの様にバンドのメンバーと盛り上がる。

 何時に帰宅したか定かではないがとりあえず北海道パラダイスウィークはこれにて無事終了した。

北海道パラダイスウィークレポートNo.6 第6ステージ(BRM810北海道300)

8月10日
 5時過ぎに目が覚める。睡眠は十分、疲労感もさほど感じず体調は問題なし。左膝も尻の皮もとりあえず痛みは治まっている。

 6時半に朝食、食欲は今一つだったので御代わり無しで済ませる。

 帯広の朝は予報通り雨。もう完全に慣れてしまったので悲壮感は全くない。
 今日はパラダイスウィーク最終日、ここまで1200kmを走破し今日300km走って札幌にゴールしてしまえばおしまいである。事前の想定では最終日などは凄い疲労と身体のあちこちの痛みと精神的な苦痛でかなり辛い状況に追い込まれているのではと予想していたが、全くそんなことはない。今日も単発のブルべの様に走り出せそうである。それも北海道の素晴らしいコース設定と余裕のある走行日程と抑え気味の走りで体力を温存した結果であろう。
 気温はそれ程低くないので今日はアーム&レッグカバーは無しにする。

 7時過ぎにホテルを発ち、12km程西のスタート地点の芽室町まで移動する。雨は小降りだが、路面はしっかり濡れていてシューズが直ぐに水浸しになる。これも毎日のことなのでもう今更不快にも思わない。

 8時過ぎに芽室公園に着、まだ人数もまばらだが時間が経つにつれぼちぼち人が集まって来た。エキップアサダのジャージを着たライダーさんとしばし談笑、そのジャージを着ていたのでてっきり関東あたりからの参加と思っていたら地元北海道在住とのこと、シクロパビリオンの存在もよく知らないとのことでちょっと意外だった。

 ブリジストンのロードマン発見!中学生の頃に欲しくてたまらなかったこれが現役でブルべを走っているなんてちょっと感動。
 ホテルからの移動中、左膝に違和感があったので公園のトイレで左膝にキネシオテープを貼る。
 ブリーフィング、車検を終え定刻9時前にスタート、いよいよ最後の300kmが始まった。

 今日のコースは、前半の山岳ルートを経て富良野を通過し美瑛町旭川を経由して初日の200kmのコースを一部逆走する形で札幌に戻ってくるというルートである。

 今日も心拍はLSDレンジ前半で抑え気味に走る、というよりこのペースで走ることに慣れてしまい勝手にこのペースに落ち着いてしまう。

 雨も上がり路面も乾いてきた、富良野まで80km、徐々に登り勾配がはっきりしてきた。

 最初の峠越え狩勝峠アタック開始。距離は9km、平均勾配4.3%でいい感じのヒルクライムだ。登っている最中に「x合目」という道路標識が立っているのでペース配分がやり易かった。登っていて楽しい坂だった。

 難なくクリア、そのまま長いダウンヒルに入る。

 富良野市に入る。

 ちょっとしたアップダウンを繰り返しながら周りは田園風景に変わっていく。私的に富良野は北海道で是非行ってみたかった場所の一つ。夏の爽やかな青空の田園風景の中をのんびり走るのを楽しみにしていたのだが、残念ながらそれは叶えられなかった。

 広大な富良野の田園風景は携帯カメラではとても写し切れない。

 富良野のひまわり畑、青空だったら最高だろうなー。

 青々とした広大な畑。

 刈取りの終わった牧草地。やっぱり携帯カメラだと表現できない。
 ここで昨日逆走していた外人さんブルべライダーと遭遇、聞けば今日はDNS、全身が痛くてもう300kmは走れないと言う。さっきまで私の随分先を走っていて狩勝峠などガシガシ走っていく姿を見ていたので冗談を言っているのかと思ったがそうではないらしい。ここまでのパラダイスウィーク全区間をガンガン走って来て後300kmなど余裕で走り切りそうだったが、外人さんは見切りが早い。


 田園風景をのんびり流しているうちに94km地点のPC1に到着、チェックタイムは12:52。朝食が少なめだったのでここではしっかり補給を摂る。

 パラダイスウィーク期間中に何度か食べた豆パン、かなり旨いし補給食には最適だと思われる。是非関東でも手に入らないものか。

 ここでも茹でとうもろこしにかぶりつく。旨い旨い。

 30分程休憩してスタート。

 田園の中をゆるやかに長々と登っていく。

 中富良野に向かって走る。

 整然とした木立の間を走る。とにかくサイクリングには最高の道が延々続く。

 写真では分かり難いが、ずっと先の山まで真っ直ぐに道が繋がっている。
 富良野の道をLSDペースでゆるゆる走りながら雨も上がった夏の午後のそよ風を感じながら走っていると、やっぱり北海道に来てよかったとしみじみ思う。


 富良野を抜け美瑛町に向かう。この辺りから再び雨が降り始める。

 美瑛町の花畑、徐々に雨脚が強くなってきて景観を楽しむ状況でなくなってきた。
 美瑛町の田園風景を見るのも今回の北海道遠征の楽しみの一つだったが、美瑛町に入る頃には夕立の様な土砂降り、遠く雷鳴も聞こえる。寄り道して美瑛町
景観の名所を見ようと思っていたのだがこの状況では楽しめそうにない。でもせっかくここまで来て次にいつ来れるかわからないのでとりあえず見に行ってみようとコースを外れる。

 ケンとメリーの木、この天気だとただの道端の木だ。
 雨脚は強くなる一方、仕方なくコースに戻り先を急ぐ。ここからが大変だった。集中豪雨といった感じの土砂降りが延々と続き、まるで水中サイクリングの様だ。進む先の空も真黒な雨雲で覆われ自分から土砂降りを追いかけて走っている様なものだ。雨粒が剝き出しの腕や脚にあたって痛い。私的には雨天走行には慣れているつもりだが、ここまでの土砂降りをこれだけ長時間走ったことはちょっと経験にない。こんな雨の中でもここでは車が御構い無しですっ飛んで抜いて行くので、抜かれる度にバケツで水をぶっかけられるような水飛沫を浴びせられる。追い越しも当たり前に行われ、一車線道路で前方から完全な逆走で車が正面から来た時には心底肝を冷やし、思わず罵声を発していた。
 雨に濡れたキネシオテープが膝の下で剥がれかけたら左膝の痛みが出てきた。やはりキネシオテープは効果がそれなりにあるようだ。
 旭川市街地に入って若干雨脚が弱まったが、市街地を抜けると再び雨脚が強まった。2時間以上延々と水中サイクリングを続ける羽目になった。

 最後の峠越え、湯内トンネルに到達。トンネルを抜けてもやっぱり土砂降りだった。
 峠を下ってしばらく走ると189km地点のPC2に到着、チェックタイムは17:32。

 北海道限定缶コーヒーで人心地つく。残りはあと110km、6時間弱でこの長かった度も終わる。ここまでの土砂降りでは緊張の連続でちょっと精神的に疲れたが、体力的には結果的にスピードが上げられなかった分体力が温存され疲労感は殆どない。ゴールまでは十分余裕を持って行けそうだ。
 ここまで来れば完走は余程のトラブルがない限り大丈夫だろう。リスクを取らずに抑え目で走る。

 日も落ちかかった道を淡々と走る。
 遠くの空が夕焼けで赤く染まっているのが見え、思わず止まって見入ってしまい、写真を撮った。

 そう言えばこのパラダイスウィークに来てから夕焼けを見た記憶がない。広大な大地の向こうの山の更に先が何とも言えない綺麗な色に染まり、眺めているとさっきまでの土砂降りの苦行をすっかり忘れて途方に暮れてしまう。
 この1500kmは大半は雨に祟られたシビアな北海道ばかりを見せられた旅になったが、北海道の大地に宿る豊穣の女神は最後に少しだけ振り返って微笑みを見せてくれた、そんな感じの夕焼けだった。

 夕焼けは数分で消えてなくなった。再びバイクにまたがり先へ進む。ゴールまで後100km足らずだ。

 夜間走行に突入、雨は相変わらずしとしと降り続けており慎重に進む。

 ちょっとした街中に入って信号待ちで止まる。ふと右を見ると見覚えのあるコンビニが目に入る。ここは初日の200kmのPC1だ。新十津川町まで戻ってきた。それにしてもここを最初に通過したのが随分昔のことに思える。ゴールまで後70kmちょっと。

 再び雨が強くなり、我慢の走行が強いられる。北海道の女神はゴールまでそう楽はさせてくれない様だ。
 ここからの道は路肩が悪い。アスファルトを重ねて敷いて修復しているので、段差が道路に平行にできている。おまけにその段差と路肩の白線とが重なっているので雨天走行では見え難く神経を使う。車通りがそこそこあるので車をよける度に段差をうまくやり過ごさなければならない。注意しているつもりだが、それでも何度かタイヤを取られ転びそうになった。
 更に路肩には小さなカエルたちがたくさん飛び跳ねている。轢かない様に走るのも大変だ。


 261km地点のPC3に到着、チェックタイムは20:35。ここが最後のPC、あとはゴールだけである。軽く補給をしてスタート。
 後40km、2時間でこの長かった旅も終わる。

 札幌が見えてきた。「うわあ、1500kmがホントに終わっちゃうよー」っていうのが正直な感想。名残惜しいというかあっけないというか、とにかくもうすぐ終わってしまうのである。勿論早くバイクを降りウェアを脱いでビールを飲みたいって言う気持ちもあるけれど、でもまだまだ旅を続けたいっていう気持ちも強い。
 どんどんゴールが近付いてくる。道も広く綺麗になり、札幌の市街地が近いことが良くわかる。
 遠くにコンビニの看板が見えた。あーあ、帰って来ちゃったよー。この辺りの路面は全く濡れておらず雨が降った形跡がない。つい数km前まではびしょ濡れだったのに今までは一体何だったんだという感じだ。
 ゴール、ゴールタイムは22:29。
 ぶっちゃけ1500kmを走ったという感覚はない。単発ブルべが普通に終わった感じだ。いやそれ以上に疲労感はない。
 AJ北海道のスタッフさんにブルべカードとレシートを渡し、無事認定確認完了。完走タイムは13時間29分、最終区間も無事完走した。

 AJ北海道のスタッフの皆さん、どうもありがとうございました!(後から写真を見て気付いたが、右端の男性は確かPBPの時同宿だったYさんではなかったか。最終日にビエネッタを御馳走になったし、挨拶し損ねてちょっと残念)
 スタッフの皆さんに挨拶してその場を後にする。

 モエレ沼公園近くの交差点にもキタキツネがいた。(ちょっと見難いかな)

 札幌市内のホテルまでの凱旋ランを楽しむ。徐々に1500kmを走り終えた実感が湧いてきた。達成感と充実感はひとしおだ。

 6日振りに戻って来た札幌の街。今までの広大閑散な風景とは真逆だが、よそ者の私にとってはどちらも違う世界の風景に見えて新鮮不思議な感覚だ。

 23時過ぎに無事にホテルに帰還。荷物を受け取り、バイクを洗車して部屋に入る。ウェアを脱ぎ捨て風呂に入りすっきり人心地つく。打ち上げは明日にする予定だったが、予想より早く帰ってこれたし疲労もさほどでもないので、軽く一杯やろうとホテルを出る。なんか無性にラーメンが食べたくなってホテル近くのラーメン屋に入る。

 ラーメンと餃子とビールで一人打ち上げ。このサッポロ瓶ビールが死ぬ程旨かった!こんなに旨いビールを飲んだのは46年間の人生でちょっと記憶にない。
 ほろ酔い気分で部屋に戻り、ベッドに横になってそのまま夢の中へ退場した。

北海道パラダイスウィークレポートNo.5 第5ステージ(BRM808北海道600後半)

8月9日
 5時過ぎに目が覚める。目覚ましが鳴る6時まではまだ時間があるのでベッドの中でうだうだするが二度寝はできそうにない。とりあえずベッドから起き上がって支度を始める。睡眠時間は正味4時間半位、鏡を見ると目が充血気味でちょっと眠い気がする。そろそろ疲労が蓄積し始めているのかも知れない。
 外は小雨、今回の北海道のこの雨雲からはどうやっても逃れられそうにないのでもう諦めるしかなさそうだ。寒いのでアーム&レッグカバーを付ける。尻にボルダースポーツとオロナインH軟膏をたっぷりと塗る。

 予定通り6時半にホテルを発つ。小雨の中、ルートに復帰。右膝の具合はまあまあ、疲労感も殆どなくウォーミングアップがてらのんびり走る。

 今日は山岳ステージ。距離は250km弱だが大きい峠越えが2つで獲得標高差は2400m、まあ埼玉や宇都宮の山岳ブルべに比べれば大したことはないがここまで1000km近く走って来てのこれはそれなりに走り応えのあるものになるだろう。

 ルートは、中標津を出て川湯温泉で折り返し、摩周湖を通過し峠を越えて阿寒湖をかすめて足寄、士幌を通過し帯広にゴールするというもの。

 草むらの中に巨大な鮭の頭のモニュメント、何でこんな所にこんな物が。

 写真では判り難いが、わずかな登り勾配が延々と続いている。

 霧に包まれ地平線がひたすら白い。

 2時間程走ると、今まで霧と小雨でモノトーンだった風景が徐々に色彩を帯びてきた。影も濃くなってきて空には雲が切れて青空が見え隠れするようになってきた。

 川湯温泉駅へのアプローチ開始。緩やかな登りの直線道路を淡々と走る。

 421km地点のJR川湯温泉駅着、チェックタイムは9:15。

 通過チェックのクイズの答えは”さわやかトイレ”。

 駅から見える近傍の山。この頃にはすっかり晴れ渡り清々しい夏の北海道の雰囲気が全開。気温も上がってきたのでアーム&レッグカバーを脱ぎ夏の装いに変身する。
 駅前の水汲み場でボトルを満たし次のシークレットポイントである摩周湖第一展望台を目指す。

 川湯温泉駅を出てちょっと走った所から摩周湖への登りが始まる。距離は10kmで平均勾配は5%、序盤は一定勾配の真っ直ぐな登りが延々続く。ここは関東の山岳ブルべを走っている身としては手抜きは許されない。心してしっかり登っていく。直線が終わると、関東でも見慣れたつづら折りの登りが展開する。こっちの方が坂の様子が掴み易く力の強弱が付け易いので走り易い。
 勾配を上げて行くに従い森の中の道から徐々に空が開けてきて頂上が近いことがはっきりとわかる。
 程無くして山頂に到達、摩周湖はまだ見えない。その後ちょっと下って摩周湖第一展望台に到着、駐車場にAJ北海道のスタッフの姿が見えた。

 ここでスタッフさんから有人チェックを受ける。事前に聞いていたクイズの、ポストの集配時刻を調べる必要はなかった。

 摩周湖に到達。観光地らしくかなりの数の観光客で賑わっている。

 ”霧の摩周湖”のイメージとは真逆の、清々しく晴れ渡った夏の摩周湖

 恐らくこの摩周湖あたりがパラダイスウィーク全行程の中で最も気持ち良く晴れていた区間だと思われる。

 レストハウスで補給、目に留まって超美味そうだった鹿豚フランクと帆立焼きを購入。ここで埼玉は志木から参加のライダーさんとしばし談笑。そのライダーさんが食べていた焼きとうもろこしが美味しそうだったが食べ過ぎかと思い買わずにその場を後にする。
 摩周湖から弟子屈まで一気に下る。そこそこの勾配の長い長い直線道路をノーブレーキでどんどん下る。まるで自由落下である。

 下りを終えて弟子屈を抜け、今度は進路を西に取り阿寒湖を目指す。
 直ぐに登り基調が始まる。勾配は大したことはないが距離は20km以上登りっ放しである。真っ直ぐで一定勾配の登りは関東でも殆ど経験がなく北海道独特な感じがする。ずーっと走っていると平坦なのか登りなのか視覚的に分からなくなるのだが、とにかくスピードが出ないということで登りだと判断できる。
 標高を上げて行くにつれ霧が出てきて再び雨が降り始めた。さっきまでの好天が嘘の様に掻き消えてしまった。
 この様な登りは精神的に堪える。まるで坂の無間地獄に嵌まり込んでしまったようだ。つづら折りの方がメリハリがついて登り易い。
 だんだん登りにも飽きて来たので、私のバイクのコックピットを本邦初公開。

 操縦パネルは至ってシンプルが売り。

 次に駆動部、両ピストンともちょっと痛々しい感じ。

 まだまだピークは遠い。でもゴールの帯広まで140kmちょっとというのは精神的にかなり余裕が出る。

 2時間程かけてようやく頂上に到達、この辺りは双岳台というらしい。
 ピークを越えて阿寒湖近傍まで一気に下る。
 下り終えると483km地点のPC6に到達、チェックタイムは13:15。

 チェックポイント付近で食堂に入って豚丼を食べようと密かに目論んでいたのだがコンビニしかなく、仕方なくコンビニの豚丼で我慢する。ここで京都から参加のライダーさんと談笑、彼はこのコンビニで初めてのコンビニ補給だと言う。それまでは御当地グルメに徹してきたとのことで、やはり下調べは重要だということを痛感した。
 長めの休憩の後スタート。そのPCにやって来たAJ北海道のスタッフさんの話しではもう大きな峠越えはないとのこと、気分的に楽に走り出す。残り距離も120km弱、6時間走ればゴールである。体力的にも余力は十分、膝も尻も殆ど痛みは感じず完走は全く問題ないだろう。
 草木に囲まれたアップダウンを心拍LSDレンジでのんびりと流す。阿寒湖を過ぎでちょっとした峠を一つ越えたら後は下り基調、楽ちんである。

 道脇の牧場の牛達、のんびりと草を食んでいかにも北海道という風情。
 途中の売店で茹でとうもろこしの幟を見つけすかさずバイクを止める。

 茹でとうもろこしとソフトクリームをゲット。売店自家製の木の実系のソースが滅茶苦茶旨かった。勿論トウモロコシも旨い旨い。

 北海道の田園風景を眺めながらのんびり休憩。考えてみたらブルべの途中でPC以外で計画のない寄り道をして買い食いするのはこれが初めてかも知れない。普段はがーっと走って終わりなブルべとは違った、のんびりと流しながら走るブルべの楽しさが何となく分かった気がした。でもこれは気持ちに余裕を持って走れる北海道のコースならではかも知れない。

 次のPCの上士幌まで30km、ゴールの帯広まで60kmちょっと、ちょっとあっさり終わり過ぎな感すらある。

 道脇の池というか沼というか、実際には写真よりもっともっと大きい。長い間忘れていた釣り人魂が呼び起されるような場所だ。
 569km地点のPC7に到着、チェックタイムは17:35。

 母娘と思しき店員さんにどこまで行くのかと尋ねられ、帯広と答えたら2人ともたいそう驚いていた。店員さんその程度で驚いちゃいけませんぜ、こっちはここまで570km走って来たんだから。

 残り30kmちょっとなので飲み物だけ補給、ペプシ塩スイカが予想外に旨い。

 PC7を出てちょっと走ったら反対車線を外人さんブルべライダーがこっちに向かって走ってきた、何事かと面喰いつつ挨拶を交わす。彼もここまでの全てのブルべを走って来ていて半端なく速い。多分PC7でレシートをもらい損ねたかなくしたかしたのではないかと予測した。
 このペースだと何となく36時間切りが見えて来たのでちょっとだけ踏みを入れてみる。しかし帯広に近付いていくにしたがって今までの田園風景から車通りの多い街並みへと風景が変わっていき信号も多くなってきた。音更町の市街地に入ると信号だらけと渋滞でペースががっくり落ちる。信号待ちとストップ&ゴーの多さが急に増えて一気にストレスが増した感じだ。
 でもここまで来て事故やトラブルを起こしては元も子もないのでリスクは取らずに慎重に走る。

 薄暮の中、十勝大橋を渡り帯広市街に入る。ゴールは目前だ。

 18:54ゴール。どうやら36時間はぎりぎり切れた様だ。過度の疲労感もなく想定以上に楽に走れてしまった。やっぱり北海道の道は凄い。ブルべには打って付けである。
 ジュースを一本飲んで休憩していたら、さっきの外人さんがゴールしてきた。レシートを無くしたのかと尋ねたら、単純にPC7を通り過ぎてしまい戻ったとのこと。御互い健闘を讃え合い、ゴール受付地点に移動する。

 帯広は大都会だ。札幌と同じ様に碁盤の目のような街で、ゴール受付地点は街中の公園にあった。
 スタッフさんにブルべカードとレシートを渡し、無事に認定確認完了。完走タイムは35時間56分だった。スタッフに挨拶をしてホテルに向かう。
 帯広グランドホテルに到着しチェックイン、他に数名のブルべライダーが先着していた。
 部屋に入りウェアを脱ぎ捨てほっと一息。シャワーを浴びてすっきりした後は洗濯をしにホテル内のコインランドリーに行くが洗濯機が空いてなかったので一旦撤退、先に夕食を摂る。

 食事は家庭的な味で、イカ大根とホッケらしき焼き魚が旨い。当然御飯はしっかり御代わりをする。
 食事を終え、再度コインランドリーに行き洗濯開始、その間に夜食でも買いに行こうと思ったが外を見ると雨が降り出していたので断念。部屋に戻ってネットチェックして過ごす。帯広の明日の天気予報は雨、富良野旭川も雨、札幌も雨、要するに明日も一日中雨ということだ。もう諦念するしかない。洗濯物を干し終えて特にすることもなくなったので寝ることに。目覚ましを6:00にセットして23時就寝。

北海道パラダイスウィークレポートNo.4 第4ステージ(BRM808北海道600前半)

8月8日
 5時起床。昨夜は20時過ぎに寝たから9時間近く寝たことになる。外はどんより曇り、雨は降っていない。疲れもすっかり取れて尻の痛みもかなり治まっている。ただ左膝は微妙に痛い。今日は初めてキネシオテープを使ってみる。

 ネットで貼り方を調べて見様見真似で貼ってみる。果たしてどのくらい効果があるのか。
 気温は低く今日もアーム&レッグカバーを着ける。

 5時半過ぎにホテルを発つ。ペダルを漕ぎ始めると、昨日ほどではないがやはり微妙に痛い。今日も我慢の走りを余儀なくされそうだ。

 途中、釧路本線を横切る。単線のレールが田舎の情緒を醸し出す。


 6時過ぎに昨日のゴール受付地点と同じ道の駅しゃりに到着、ここが今日のスタート地点となる。ぼちぼちライダー達が集まって来つつある。初日の200kmで落車し一旦離脱したIさんも無事に復帰を果たされ出走されるとのことだ。

 ブリーフィングでは、シークレットポイント(事前に告知したからシークレットではなくなったが)とPC5の通過チェックの説明があった。まずSC1は納沙布岬、駐車場の脇にある電話ボックスの上に載っているものを確認すること、次にPC5のJR川湯温泉駅では併設のトイレの名前を確認すること、そしてSC2は摩周湖第一展望台で郵便ポストの集配時刻を確認すること、という3つの課題が付加された。
 車検が終了し定刻7時前にスタートした。

 AJ北海道のスタッフさん撮影の写真。

 今日はパラダイスウィーク最長のステージで360kmを走破する予定、斜里を出て知床半島の真ん中を知床峠を越えて横断し海沿いを南下し野付半島ネイチャーセンターに寄り道して再び南下、根室に入って納沙布岬を回り再び内陸部に戻って中標津のホテルで仮眠というプランを立てている。

 何とか中標津には日付が変わる前に入りたいのだが360kmを17時間で走るのは第2ステージ以上にハードルが高い。まして左膝がこんな調子なのでかなり難しい。とりあえずはやれるところまでやってみるつもりだ。


 まずは最初の難関、知床峠を目指す。

 序盤は右膝の様子を見つつそろりそろりと走る。後続のライダー達にガンガン抜かれるが気にせずマイペースで走る。

 海沿いに出ると、海からの向かい風でペースは全く上がらない。今日中の中標津着がどんどん難しくなって行くがここで無理をすると左膝を完全に壊すので我慢して走る。

 途中でトイレに行きたくなって、トイレ休憩。

 オシンコシンの滝。特に寄ろうと思っていたわけではないがついでなんで記念撮影。

 更に進むと、知床峠への登り口が見えてきた。

 いよいよ知床峠へのアタック開始である。知床峠ヒルクライムは距離15km、平均勾配5%のしっかりとした峠である。オーバーペースにならない様に気を付けながらも気合を入れて登り始めた。
 ペースで登っていると徐々に左膝の痛みを感じなくなってきた。前回の埼玉600kmの時と同じ様に走っている最中に痛みが薄らいでいく。何でそうなるのかはわからないが、いずれにしても痛くなくなるのはありがたい。調子に乗って上げ過ぎないように気を付けて走る。

 途中キタキツネ発見!近付いても逃げないのは人間に餌付けされているのか?

 1時間程かけて知床峠をクリア。

 頂上付近はかなりの濃霧で視界が悪い。

 AJ北海道のスタッフさん撮影の写真。
 下りは視界が悪いそうでスタッフさんから全ライト点灯するよう指示があった。更に下りは寒いのでレインウェアを着る。
 長い長い下りを一気に下って行く。

 雄大な知床峠の坂道は携帯カメラのフレームには全く収まらなかった。

 ダウンヒルを一気に終えたところで70km地点のPC1に到着、チェックタイムは10:18。朝食を食べていなかったのでここではしっかりと補給を摂る。
 長めの休憩を終えスタート、ここから再び海沿いを南下するが風向きが追い風基調に変わって俄然やる気が出てきた。右膝の痛みも丁寧なペダリングを心掛ければほぼ気にならない、ここから追撃開始である。
 下ハンドルを持ちっ放しでタイムトライアルの様にガンガン走る。巡航速度は30km/hを大きく超えて一気にペースアップ、時折強い雨が降るが御構い無しで走り続ける。膝さえ痛くなければ身体の調子はすこぶる良いので走っていて滅茶苦茶楽しい。北海道の道は自分がやたら強くなったと錯覚させる道である。
 あっという間に野付半島への分岐に到達、ここを左折して野付半島へ向かう。
 ここから風向きが変わり今度は強い向かい風で一気にペースが落ちる。
 分岐を曲がって直ぐの所で先頭と思しきKさんとすれ違う。ここから折り返し地点の野付半島ネイチャーセンターまではおよそ15km、ここですれ違ったということは30kmも差がついていることになる。さすがKさん、速い速い。
 風を遮るものは何一つない細い半島の真っ直ぐな道をただひたすら漕ぎ続ける。

 たくましい馬が風にも負けずに走り回っている。

 小雨交じりの風を何とか押しのけて135km地点のPC2野付半島ネイチャーセンターに到着。

 AJ北海道のスタッフさんの有人チェックを受ける。チェックタイムは12:49。

 補給食は1個300円のシュークリームを奮発。中身はクリームかと思ったらアイスクリームで、かちかちに凍っていて固くて食べるのに時間がかかってしまった。休憩中に福島から参加のライダーさんと談笑。彼は5月の埼玉ヘルウィークも完走したという強者で、この北海道パラダイスウィークを走り切ればトリプルSR達成とのこと、凄過ぎる。その彼が言うには埼玉ヘルウィークよりこっちの方が過酷とのこと。

 野付湾の景観は荒涼としていた。
 30分程の休憩の後、再び来た道を戻る。ここから次のSP1の納沙布岬までは区間距離125km、かなり長いのでどこかで補給を入れなければならないかも知れないが、とりあえず調子に任せて行ける所まで行くことにする。
 相変わらず海からの横風がきつくスピードが上がらない。これからネイチャーセンターへと向かうライダー達とすれ違い、手を挙げて挨拶を交わす。

 再び244号線に戻り南下開始、追い風基調に乗ってペースを上げて走る。

 厚床の駅前で44号線を左折し根室へのアプローチに入る。ここから根室市街までは30kmちょっと、納沙布岬まではそこから更に20kmでかなりの距離がある。納沙布岬で折り返して再びここに戻ってくる頃は、完全に夜間走行に突入しているはずだ。
 小雨に加えて向かい風になりペースが落ちる。細かいアップダウンが続くので結構脚が削られる。

 この辺りで17時近く、暗くなる前に納沙布岬に辿り着けるかどうか微妙になってきた。
 根室市街地に入った所でハンガーノックの兆候、バイクを止めて補給食を食べる。どこかのコンビニに寄ろうかと思ったが、暗くなる前に納沙布岬に着いてそこで何か食べようと思い先を急ぐ。
 市街地を抜けると道脇に住宅が点在する寂しい道になった。そこそこ住宅の数があるのだが人の気配が感じられない。途中で110年以上の歴史がありながら廃校となる小学校が2つもあった。何とも寂しさ漂う北の街並みである。

 霧の中から忽然と姿を現した風力発電の巨大な姿にハッとする。

 かろうじて薄暮の残る18時半に納沙布岬に到達。

 岬の灯台

 岬の周辺には幾つも記念碑らしき物があって、記念撮影をしようとした石碑には「北方領土奪還」なんて威勢のいい文字が刻んであるので近寄ってよく見たら右翼団体が建てたものだった。
 岬の周辺の店は全部閉まっていて人の気配は感じられない。補給の目論見は外れてしまった。とりあえずSPのクイズの答えである電話ボックスを探したがなかなか見つからない。岬の周りを何度もうろうろするうちにどんどん暗くなってきて焦る。見つからないので諦めてとりあえず撮影した道標の写真を答えの代用にしようと岬を離れた所でふと道端の駐車場の脇に目をやったらまるで公衆トイレと見紛う電話ボックスを見つけた。

 電話ボックスの上にはあざらしがいた。ようやく答えが見つかって一安心。電話ボックスの横の駐車場には右翼団体街宣車が何台も停まっている。車の中ではきっと酒盛り集会でもやっているに違いない。
 猛烈な空腹感に苛まれつつ次のPC3を目指す。距離は20km、何とかハンガーノックにならずに済みそうだ。
 完全に夜間走行に突入、小雨が降り続いてアイウェアを外しての走行となる。途中でナビの電池が切れ、止まって交換。民家も殆どなく明りのない道を淡々と走る。小一時間走ってようやく先の空に街の明かりが見えてきてほっとした。

 281km地点のPC3に到着、チェックタイムは19:34。パスタを食べてしっかり補給する。
 気温がかなり下がり寒い。レインウェアを着て出発する。中標津まで80km、後4時間で辿り着けるかかなり微妙になってきた。

 根室市内を抜け数時間前に通った道を戻って行く。これから納沙布岬を目指すライダー達とすれ違い、手を挙げて挨拶を交わす。
 明るいうちに通った道も夜になると道路灯もまばらでかなり暗い。

 ようやく厚床の駅前の分岐に到達、ここを右折すれば後45kmで中標津だ。
 243号線を左折すれば後はひたすら道なりに40km走れば中標津である。ここからの内陸の道は殆ど道路灯もなく真っ暗である。両側の森の中で時々ガサガサっと動物の動く音がして肝を冷やす。雨は相変わらず降り続いてアイウェアが使えず視界不良のためにスピードが上げられない。夜間&雨天走行ではアイウェアが使えるかどうかで巡航速度が大きく違ってくる。いずれ撥水加工した度付レンズを導入するのを強く決意する。高性能のアイウェアを手に入れる方が下手にバイクに投資するより遥かに効果が高い。

 アップダウンが結構あって脚は削られるが、右膝の痛みは大したことはなく余力は十分、スピードが上げられないのでLSDレンジで走ることとなり結果体力が温存できている。ただ尻の表皮の痛みが出てきて、適度にダンシングを入れないと持たない感じだ。

 別海の街並みを抜け中標津まで20kmちょっと、1時間で行けるはずだ。どうやら今日中の到着は確実になったので一安心、最後のアプローチを気を抜かずに安全第一で走る。

 ちょっとした坂道を登った所で中標津の街の明かりが見え、ようやくゴールが近付いてきた。PC4は中標津の町外れにあるので、街の中心に通ずる道を一旦左折する。

 361km地点のPC4に到着、チェックタイムは23:21。明日朝の食料と何故か急にスナック菓子が食べたくなって乳酸菌飲料と一緒に購入。再び中標津の街中に戻ってホテルを目指す。

 ホテルBiZ Innに23時半に無事到着、フロントで気立ての良さそうな若い従業員が遅くまで待っていてくれた。バイクを掃除すると告げると雑巾代わりのタオルをたくさん用意してくれ、更にホテル玄関前の水道も使えるようにしてくれた。手早く洗車し、バイクをホテルの中に運び込む。予約当初はバイクはホテルの中には持ち込めないと言われていたが、ブルべライダーが他に何人も泊まることになって急きょ食堂をバイク置き場に仕立ててくれた。

 部屋に入り服を着替えてほっと一息。明日は6時半過ぎにホテルを発てば421km地点のPC5のクローズ時間11:08には余裕で着ける計算なので、目覚ましを6:00にセットする。スナック菓子を食べつつネットチェックを行い、24時過ぎに就寝。
 

北海道パラダイスウィークレポートNo.3 第3ステージ(BRM806北海道400後半)

8月7日
 朝5時前、アラームが鳴る前に目が覚めた。眠気はなくすんなりベッドから起き上がる。

 紋別の朝はどんより曇り。雨は降ってなさそうだが路面はしっかり濡れている。生乾きのウェアを身に着け、朝食用のパンを食べる。気温は20℃に届かない感じ、肌寒いのでアーム&レッグカバーを着ける。
 5時半にホテルをチェックアウトし、倉庫に保管してあったバイクを受け取る。倉庫には他に2台程のバイクが止めてあった。同宿のライダーもいたようだ。
 早速リアディレーラーのワイヤー交換作業開始。

 見事に断裂。切れてほつれたワイヤーを抜き取るのにちょっと手間取った。

 交換作業終了。ワイヤーカッターを持っていないので余った部分を巻いて走る。
 出発前にそろそろワイヤーが切れそうな予感がして、普段は持ち歩かないスペアのワイヤーを荷物に加えたのだが、本来ならこういう大イベントの前には消耗品は新品に交換して臨むのが正しい判断だが、私の場合どうしても貧乏性が出てしまいぎりぎりまで使い倒してしまう。今回はこれが裏目に出た。

 6時にホテルを出発。ペダルを漕ぎ始めたが左膝が痛い。どうやら本格的に痛めた様だ。今日は150kmだが、全行程ではまだ1000km以上残っている。ちょっと厄介なことになった。とりあえず今日は無理せずスローペースで斜里に確実にゴールすることだけを考えて走る。

 紋別の街並みと海。
 今日のコースは紋別を出て網走を抜け斜里にゴールする150km、1日の走行距離が一番短いステージだ。

 コースに復帰し海沿いを淡々と走る。相変わらず小雨が降ったり止んだり、路面からの水飛沫でシューズが直ぐにびしょ濡れになった。
 尻の表層の痛みも昨日からあまり回復しておらずダンシングを織り交ぜながら走る。微妙なアップダウンが左膝に響くので登りは極力踏まずにインナーローでやり過ごす。
 左膝と尻の痛みを除けば、身体は絶好調で眠気もない。気持ち的にも悲壮感はなくまあまあ楽しんで走れている。やはり規則正しい睡眠は気力を保つには不可欠、ホテルに泊まったのは大正解だ。
 サロマ湖の脇を通るルートはちょっとした林道といった感じでアップダウンがそこそこある。雨も時折強くなりちょっと難儀した。

 次のPC4がある常呂までは31km、もうちょっとだ。

 334km地点のPC4に到着。チェックタイムは9:23、結果的にクローズタイムに1時間弱のマージンがあった。

 結構な人数のライダーが集まっている。

 北海道限定の炭酸飲料「キリンガラナ」、結構旨い。あと試しに買ってみたフライドチキンがコンビニの補給食に飽きた口には旨かった。
 ちょっと長めに休憩して再スタート。雨も上がって路面も乾いてきた。

 少し走ってサイクリングロードに入る。

 細いけど草木に囲まれた気持ち良さそうな道。車がかっ飛んで行く幹線道路を走る緊張感から解放されのんびり走る。全長は25km位。

 能取湖の風景、爽やかー。

 網走湖

 サイクリングロードを抜けちょっと走ると網走市街地に入った。網走は自然厳しい流刑の地という勝手なイメージを持っていたが普通に都会だった。

 網走刑務所。こんな街中にあるとは思わなかった。

 網走の街中を抜ける頃には日差しも出てきて暑くなったのでアームカバーを外して走る。

 網走の11時半の気温18℃。寒い。
 釧路本線と並行して走る斜里国道をひた走る。真っ直ぐな道がずーっと続く。時折ぽつぽつ見える釧路本線の小さな駅が北海道の田舎情緒を醸し出していい感じ。

 浜小清水、涛沸湖の風景。この広い感じは携帯のデジカメでは表現できない。
 走っていて気持ち良いのだが、相変わらず車のスピードが速い。80km/hで走る車を100km/hの車が追い越しをかける感じだ。時たま抜かれる車が頑張るからレースの様なデッドヒートになることもある。それが反対車線だったりすると追い越し車が車線を大きく超えて要するにこちら側の車線を逆走してくる感じになるから正面衝突しそうで肝を冷やすことがある。北海道の道のこの有様だけはなかなか馴染めそうにない。

 小浜清水を抜け小一時間走って無事にゴールの斜里のコンビニに到着。

 ゴールタイムは12:50だった。ジュースを飲んでゴール受付地点に移動する。

 ゴール受付地点の道の駅しゃりに到着。スタッフにブルべカードとレシートを渡して無事に認定確認完了、完走タイムは24時間50分だった。猛烈に御腹が空いたので直ぐ傍の食堂に入る。

 海鮮三色丼、1680円也。高いけど旨かった。

 空腹が満たされた後、スタッフに挨拶をして宿に向かう。いつの間にかすっかり晴れ間も広がり良い天気、こういうのを無駄晴れというのか。

 斜里の街から2km程離れた所にある「斜里温泉湯元館」に到着。チェックインしてまずバイクを洗う。毎回の雨天走行でドロドロに汚れるのでゴール後は必ず洗車をしている感じだ。宿は旅館というより合宿所的な安普請な造りだが私的にはむしろこっちの方が居心地が良い。
 ウェア類をコインランドリーに入れて、早速温泉に入る。昔ながらの造りの大きな浴場に入ると真ん中に岩風呂がドカンとある。先客は誰もおらず貸切状態でのんびり浸かる。湯の温度も私好みのぬるめで実に気持ちが良い。擦り切れた尻の皮にお湯が多少沁みるが、旅の疲れが心底癒される。極楽極楽である。
 風呂から上がって洗濯物を干し、持参のタブレットPCで館内の無線LANに接続を試みるがアクセスポイントが見つからない。部屋のパンフレットにはSSIDもパスワードも書いてあるのに駄目だ。しばらく悪戦苦闘してふと思い立って廊下に出てみたら電波が微弱ながらアクセスポイントが見つかった。それから館内をうろうろしてみたらどうやら食堂あたりがベストポジションの様だ。
 仕方がないので食堂傍で一通りネットチェックして部屋に戻り小一時間昼寝。

 18:00夕食、弁当形式で御飯味噌汁は御代わり自由なので茶碗2杯しっかり食す。食堂でネットチェックをしばらくやって部屋に戻る。特にやることもないので、明日の準備をしてボディーケアをして横になっていたら眠くなったのでそのまま20時消灯。

北海道パラダイスウィークレポートNo.2 第2ステージ(BRM806北海道400前半)

8月6日
 6時起床。軽い二日酔いではあるが、疲労感も殆どなく体調は問題なし。朝食前に羽幌の港まで散歩に出る。

 羽幌港は小さな漁港で近くの島までのフェリー乗り場もあった。

 この町のシンボル、オロロン鳥
 空はどんよりと曇り気温も低め、ぼやぼや歩いていたら激しい雨が降り出しずぶ濡れで宿に戻った。

 朝食は御櫃を空にしてしっかり食べる。出発準備をするうちに雨も上がり晴れ間も出てきた。ちょうどいいタイミングだ。
 10時に宿を発ち、20kmちょっと先のスタート地点の初山別を目指す。

 ようやく青い空が広がり北海道らしい清々しい天気になった。海風は向かい風気味だがこの爽快感なので腹も立たない。のんびりと北海道の爽やかな夏のサイクリングを楽しんだ。

 またしてもオロロン鳥

 11時にスタート地点の道の駅しょさんべつに到着。

 すぐ傍の小さな天文台

 ブリーフィング開始を待っている間、バイクを点検していたらリアディレーラーの動きが渋くてトップに入らないことに気が付いた。今回のパラダイスウィークで普段は使わないブルべ決戦用ホイールを装着し、ディレーラーの微調整を行っていなかったのが原因だろうとその場で弄ったがどうも芳しくなく、結局ワイヤーを緩めたりしてセッティングしたら何となく動き始めたので良しとした。(実はこれが後に起こる大トラブルの予兆であった)


 車検が始まりいよいよスタート。定刻の12:00ちょっと前に走り始めた。

 今日の予定はBRM806北海道400のうち250kmを走って紋別に宿泊する。コースはちょっとだけ海沿いを北上し内陸方面に左折、軽く峠越えをして浜頓別で再び海沿いに出て後はひたすら紋別まで南下するというルート。

 普段の400kmブルべでは仮眠を取らず一気に走り切ってしまうのだが、今回はスタート時刻が12時で、1500kmを走破するには十分な休息と規則正しい睡眠サイクルを維持するために敢えて仮眠のためのホテルを確保した。到着目標は24時だが250kmを12時間はちょっとハードルが高いか。

 晴れのサイクリングはやはり楽しい。北海道はやはりこうでなくちゃいけない。風は相変わらず向かい風基調で後続のライダーにどんどん抜かれるが、今回の1500kmも普段のブルべと同様に風除けなしで独りで走り切るつもりなので集団には付かずにマイペースで走り続ける。

 AJ北海道のスタッフさんに撮って頂いた写真。

 青い海と青い空とひまわり畑。爽やかー。

 20kmちょっと走った所で左折、内陸部に向かう。風向きが変わり走り易くなったが徐々に雲が厚くなって来て青空が見えなくなった。徐々に登り基調になるが勾配は大したことないのでのんびりとペースを守って登る。

 AJ北海道のスタッフさん撮影。

 そのうちまたしても雨が降り始めたが小雨程度なので構わず走る。北海道の天気がこんなに変わり易いとは想像していなかった。
 峠を一つ越えて下り切ってから天塩川の川沿いの道を走り始めたが多数のダンプカーが結構なスピードでガンガン抜いていくのでちょっと怖い。
 もう少しでPC1というところで、急激に腹が減ってきて身体に力が入らなくなってきた。ハンガーノックの兆候である。朝食をしっかり摂ったので大丈夫だろうとタカを括っていたが、考えてみたら6時間以上も何も食べずに走っていた。慌ててバイクを道端に止めサドルバックの中からエナジーバーを取り出し頬張る。

 程無くして70km地点のPC1に到着、チェックタイムは14:57。

 がっつり補給。北海道限定の乳酸菌飲料カツゲン」を飲む。味は可もなく不可もなくと言ったところ。駐車場で地元のおじさんと話をする。1500km走ると言ったら呆れていた。まあ普通の人の正常な反応だろう。

 30分の長めの休憩後、ゴミを捨ててさあスタート、と思ったらゴミ箱がない。このコンビニではゴミは持ち帰りとなっているとのこと。仕方がないのでサドルバッグにゴミを括りつけて走る羽目に。

 ちょっと休み過ぎて大きくペースダウンしてしまい紋別の今日中の到着が危うくなってきたのでここから少し踏みを入れる。ゴミ袋を付けて爆走である。PC2を出て程無く登り基調になり小さな峠をこなして後は下り基調で快調に進む。

 PC2のある浜頓別まで後40km。小雨が断続的に降っているが走行には全く支障はない。順調に進む。

 131km地点のPC2に到着、チェックタイムは17:39。ここのコンビニにはゴミ箱があった。やっとゴミが捨てられた。バイクから降りて初めて気温が低いことを実感した。休憩中に身体が冷えてはっきり言って寒い!とりあえずレインジャケットを着る。

 短い休憩の後スタート。

 オホーツク海沿いの道を走り始めるが、斜め前からの海風が強くバイクが進まない。巡航速度も25km/hを下回ってしまい、このペースだと120km先の紋別着は日付を越えてしまう。ちょっと走って身体も温まって来たので空気抵抗を少しでも減らすためにレインジャケットを脱ぐことにした。読み通りレインジャケットを脱いだら巡航速度が2km/hくらい上がった。やはりジャケットの空気抵抗は無視できない。雨は相変わらず降っているが身体が温まってしまえばそれ程苦にならない。
 トンネルを一つ抜け、海のすぐ横からちょっと高台になった所を走り始めたところで海風が弱まり更に巡航速度が上がった。ここから再び踏みを入れて遅れを挽回する。

 日もすっかり落ち、夜間走行に突入。道路灯はないが積雪の際の路肩を示す矢印が点滅するので意外に明るく走行に支障ない。車は相変わらず猛スピードでぶち抜いていく。夜間ということもあり台数は少ないが後ろからヘッドライトが近づいてくる度に緊張させられる。
 小雨が降り続いてアイウェアが水滴で視界を悪化させるので外して走る。こういう時に目が悪いことが恨めしく思う。
 しばらく走っていると道の真ん中に黒い物体が幾つか見えた。近づくとそれは鹿の親子だった。写真を撮ろうと更に近づいて行ったら一目散に道端の草むらの中に駆け込んでいった。
 海沿いとは言え意外にアップダウンはある。ただ道が真っ直ぐなので緩やかに長く登ったり下ったりしているとそれが登りなのか下りなのか平坦なのかだんだんわからなくなってくる。

 213km地点のPC3に到着、チェックタイムは20:55。

 到着直後にAJ北海道のスタッフさんに撮って頂いた写真。呆けた表情をして情けない。
 休憩していたら数名のライダーが到着した。聞けば皆さん紋別のホテルに泊まるという。
 紋別まで後40km、何とか今日中には到着できるだろう。

 ここで明日朝の補給食も調達ししっかり休憩を取って再スタート、もうひと頑張りだ。

 この頃になって左膝が痛くなってきた。ちょっと前に痛めた右膝は問題ないのだが、もしかしたら無意識のうちに右膝を庇って走って左膝に負荷をかけて来たのかも知れない。それと尻の痛みも顕在化してきた。今回は尻の表皮の保護のためにボルダースポーツというムース状のスプレーを使っているのだが効果が薄れてきたようだ。両方ともあまり良い状況ではないが、もう少しでホテルなのでそのまま走り続ける。
 更に今度はメカトラ発生、リアディレーラーの動きが渋くなりトップ側の4枚くらいのギアにチェーンが落ちなくなってしまった。最初はディレーラーの油切れかと思ったが、良く考えてみたらこれはワイヤーが切れかかっている症状だと気付いた。幸い今回は出発前にふと思い付いてスペアのワイヤーを持って来ているのだが、どうせ膝が痛くて重いギアは踏めないしこのままホテルまで行ってしまおうと走り続けた。
 このペースならば23時にはホテルに着けるだろう。結果的に目標より早くなりそうなので気持ちに余裕がある。膝に負担をかけ過ぎないようにペースを落として走る。
 紋別の市街地に入り、風景が賑やかになってきた。本来の設定ルートを逸れホテルに向かう道は結構な勾配の下り坂、明日の朝コース復帰する時にこれを登り返さなければならないと考えると憂鬱になる。
 程無くしてホテルが見え、駐車場に入ってギアを軽くしようとシフトレバーを動かした途端、ガクッと手応えがなくなりギアがトップに入った。ワイヤーが完全に切れてしまった。到着と同時に切れるなんて何ともドラマチックな展開だが、それにしても変な場所で切れていたら雨の中の交換作業はかなり難儀したことを思えば運が良かったと思う他はない。

 23時に紋別プリンスホテルに無事チェックイン、ワイヤーの交換は明日にすることにしてバイクを倉庫に保管してもらう。部屋に入って濡れたウェア脱ぎ捨ててようやく人心地ついた。室内LANに接続するがインターネットに繋がらない。まあ直ぐに寝るだけなので速攻で諦めて、大浴場へ向かう。大きな風呂に浸かって疲れを癒せるのはかなり贅沢で有難い話だがとりあえずここまではプランニングの勝利と言ったところか。
 次の334km地点のPC4まではここから約80kmちょっと、PC4のクローズ時間が10:16なので6:00にホテルを出発すれば間に合う計算である。とりあえず4時間以上は眠れる。
 両脚にコンプレッションタイツを履き、尻にオロナインH軟膏を塗り込み、24時過ぎに就寝。