帰省

 9/25朝、前日のFleche完走の余韻に浸りつつ目覚めた。空は穏やかに晴れ渡り風も爽やかに吹き抜ける。ホテルのベランダから見る海岸線は人影もなく、昔見たままだ。
 昨夜の酒も意外に残っておらず若干の疲れはあるものの空港までの自走は全く問題なさそう。7:00になり朝食の時間になったが、同室のシン3さんもタカトリさんもぐっすり眠っているので起こすのも忍びなくこっそり部屋を出て朝食に向かう。

 朝食を終え部屋に戻って身支度をしていると二人が目覚め朝食に出かけるとのこと、戻って来る頃にはきっと私は出発しているので別れを告げておく。

 8:00ホテル出発。海近くの田舎道を走り始める。今日も絶好の自転車日和だ。昨日まで仲間と楽しく走り宴会で盛り上がったので急に独りになるとちょっと寂しく感じる。でもまあ本来自転車乗りは"We are all alone"なのでいつもの様にマイペースで走る。

 今回のバイク担いでの初の九州遠征のもう一つの目的は幼少の懐かしの場所を辿ること。ホテルから7kmちょっとで宮地浜という玄海灘に面した砂浜に着くのだが、ここからちょっと内陸方面に入った所に父方の祖父の家があった。またそこから更に内陸に向かうと宮地嶽神社があり、この界隈は小学生の頃まで盆暮れ正月の帰省の度に遊んでいた場所だ。父方の実家は同じ年頃のいとこも多くて帰省するのが凄く楽しみだった。夏の夜に父の兄弟が大勢集まっての楽しい団欒、子供たちは蚊帳の中ではしゃぎ回っていたのをおぼろげに憶えている。

 津屋崎を抜け浜辺沿いの道を走る。道の脇には新しい建物がぽつぽつ建ったようだが基本的には昔の風景のままだ。程なく宮地浜海水浴場の入り口に到着。目印の鳥居もそのままだ。

 浜辺に出ると、眼前には昔と変わらぬ海がそこにあった。季節外れの浜辺には人影もなくちょっとうら寂しいが穏やかな波が音も静かに寄せている。ただ懐かしいの一言、しばし途方に暮れる。

 浜辺を離れ、内陸方面に向かう。実家までの距離はこんなにも近かったのかと思う程直ぐに着いた。距離にして1kmもないのだが、小さい頃はかなり遠く感じていて浜辺まで行くのもちょっとした遠足気分だったのを憶えている。
 とりあえず実家を通り越し、宮地嶽神社へ向かう。浜辺から1.3km程だ。

 神社も昔のまま。その当時はもっと地味な印象があったが結構大きな神社でちゃんと参道があって売店も並んでいる。
 神社の傍に祖父の菩提寺があり、入り口の前で手を合わせ遠巻きに墓参り。

 再び来た道を戻り祖父の実家へと向かう。祖父の実家は西鉄宮地岳線宮地岳駅の直ぐ脇にあった。西鉄宮地岳線は残念ながら2007年に廃線となり、駅舎や線路の跡地は草地となり見る影もない。電車が通過する度に鳴っていた踏切の音が今は懐かしく思える。
 祖父の家は今はなく更地になっている。家があった頃をかなり大きい感じがしたのに更に地になってみると案外狭い。周囲には家が幾つか建っていて昔の面影はない。少し寂しい気がした。

 ちょっと名残惜しさがないではないが、飛行機の時間もあり出発する。

 福岡市内に近付くにつれ、風景がどんどん都会の街並みに変わっていく。道が新しくなり商業施設が立ち並び全く違う所に見える。私の住む所沢より遥かに商圏は広く都会な感じがする。ここを走っているとどんどん現実に引き戻されていく。でもある意味、現在と思い出の場所がシームレスに繋がっていることがはっきりの自覚できた感じがして、また、帰ってこようと思えば案外いつでも帰ってこれることに気が付いた。

 10:00前に福岡空港に到着。空港ロビーでバイクを輪行袋に収容し着替えてチェックイン。11:50、予定通り機上の人となる。