北海道パラダイスウィークレポートNo.6 第6ステージ(BRM810北海道300)

8月10日
 5時過ぎに目が覚める。睡眠は十分、疲労感もさほど感じず体調は問題なし。左膝も尻の皮もとりあえず痛みは治まっている。

 6時半に朝食、食欲は今一つだったので御代わり無しで済ませる。

 帯広の朝は予報通り雨。もう完全に慣れてしまったので悲壮感は全くない。
 今日はパラダイスウィーク最終日、ここまで1200kmを走破し今日300km走って札幌にゴールしてしまえばおしまいである。事前の想定では最終日などは凄い疲労と身体のあちこちの痛みと精神的な苦痛でかなり辛い状況に追い込まれているのではと予想していたが、全くそんなことはない。今日も単発のブルべの様に走り出せそうである。それも北海道の素晴らしいコース設定と余裕のある走行日程と抑え気味の走りで体力を温存した結果であろう。
 気温はそれ程低くないので今日はアーム&レッグカバーは無しにする。

 7時過ぎにホテルを発ち、12km程西のスタート地点の芽室町まで移動する。雨は小降りだが、路面はしっかり濡れていてシューズが直ぐに水浸しになる。これも毎日のことなのでもう今更不快にも思わない。

 8時過ぎに芽室公園に着、まだ人数もまばらだが時間が経つにつれぼちぼち人が集まって来た。エキップアサダのジャージを着たライダーさんとしばし談笑、そのジャージを着ていたのでてっきり関東あたりからの参加と思っていたら地元北海道在住とのこと、シクロパビリオンの存在もよく知らないとのことでちょっと意外だった。

 ブリジストンのロードマン発見!中学生の頃に欲しくてたまらなかったこれが現役でブルべを走っているなんてちょっと感動。
 ホテルからの移動中、左膝に違和感があったので公園のトイレで左膝にキネシオテープを貼る。
 ブリーフィング、車検を終え定刻9時前にスタート、いよいよ最後の300kmが始まった。

 今日のコースは、前半の山岳ルートを経て富良野を通過し美瑛町旭川を経由して初日の200kmのコースを一部逆走する形で札幌に戻ってくるというルートである。

 今日も心拍はLSDレンジ前半で抑え気味に走る、というよりこのペースで走ることに慣れてしまい勝手にこのペースに落ち着いてしまう。

 雨も上がり路面も乾いてきた、富良野まで80km、徐々に登り勾配がはっきりしてきた。

 最初の峠越え狩勝峠アタック開始。距離は9km、平均勾配4.3%でいい感じのヒルクライムだ。登っている最中に「x合目」という道路標識が立っているのでペース配分がやり易かった。登っていて楽しい坂だった。

 難なくクリア、そのまま長いダウンヒルに入る。

 富良野市に入る。

 ちょっとしたアップダウンを繰り返しながら周りは田園風景に変わっていく。私的に富良野は北海道で是非行ってみたかった場所の一つ。夏の爽やかな青空の田園風景の中をのんびり走るのを楽しみにしていたのだが、残念ながらそれは叶えられなかった。

 広大な富良野の田園風景は携帯カメラではとても写し切れない。

 富良野のひまわり畑、青空だったら最高だろうなー。

 青々とした広大な畑。

 刈取りの終わった牧草地。やっぱり携帯カメラだと表現できない。
 ここで昨日逆走していた外人さんブルべライダーと遭遇、聞けば今日はDNS、全身が痛くてもう300kmは走れないと言う。さっきまで私の随分先を走っていて狩勝峠などガシガシ走っていく姿を見ていたので冗談を言っているのかと思ったがそうではないらしい。ここまでのパラダイスウィーク全区間をガンガン走って来て後300kmなど余裕で走り切りそうだったが、外人さんは見切りが早い。


 田園風景をのんびり流しているうちに94km地点のPC1に到着、チェックタイムは12:52。朝食が少なめだったのでここではしっかり補給を摂る。

 パラダイスウィーク期間中に何度か食べた豆パン、かなり旨いし補給食には最適だと思われる。是非関東でも手に入らないものか。

 ここでも茹でとうもろこしにかぶりつく。旨い旨い。

 30分程休憩してスタート。

 田園の中をゆるやかに長々と登っていく。

 中富良野に向かって走る。

 整然とした木立の間を走る。とにかくサイクリングには最高の道が延々続く。

 写真では分かり難いが、ずっと先の山まで真っ直ぐに道が繋がっている。
 富良野の道をLSDペースでゆるゆる走りながら雨も上がった夏の午後のそよ風を感じながら走っていると、やっぱり北海道に来てよかったとしみじみ思う。


 富良野を抜け美瑛町に向かう。この辺りから再び雨が降り始める。

 美瑛町の花畑、徐々に雨脚が強くなってきて景観を楽しむ状況でなくなってきた。
 美瑛町の田園風景を見るのも今回の北海道遠征の楽しみの一つだったが、美瑛町に入る頃には夕立の様な土砂降り、遠く雷鳴も聞こえる。寄り道して美瑛町
景観の名所を見ようと思っていたのだがこの状況では楽しめそうにない。でもせっかくここまで来て次にいつ来れるかわからないのでとりあえず見に行ってみようとコースを外れる。

 ケンとメリーの木、この天気だとただの道端の木だ。
 雨脚は強くなる一方、仕方なくコースに戻り先を急ぐ。ここからが大変だった。集中豪雨といった感じの土砂降りが延々と続き、まるで水中サイクリングの様だ。進む先の空も真黒な雨雲で覆われ自分から土砂降りを追いかけて走っている様なものだ。雨粒が剝き出しの腕や脚にあたって痛い。私的には雨天走行には慣れているつもりだが、ここまでの土砂降りをこれだけ長時間走ったことはちょっと経験にない。こんな雨の中でもここでは車が御構い無しですっ飛んで抜いて行くので、抜かれる度にバケツで水をぶっかけられるような水飛沫を浴びせられる。追い越しも当たり前に行われ、一車線道路で前方から完全な逆走で車が正面から来た時には心底肝を冷やし、思わず罵声を発していた。
 雨に濡れたキネシオテープが膝の下で剥がれかけたら左膝の痛みが出てきた。やはりキネシオテープは効果がそれなりにあるようだ。
 旭川市街地に入って若干雨脚が弱まったが、市街地を抜けると再び雨脚が強まった。2時間以上延々と水中サイクリングを続ける羽目になった。

 最後の峠越え、湯内トンネルに到達。トンネルを抜けてもやっぱり土砂降りだった。
 峠を下ってしばらく走ると189km地点のPC2に到着、チェックタイムは17:32。

 北海道限定缶コーヒーで人心地つく。残りはあと110km、6時間弱でこの長かった度も終わる。ここまでの土砂降りでは緊張の連続でちょっと精神的に疲れたが、体力的には結果的にスピードが上げられなかった分体力が温存され疲労感は殆どない。ゴールまでは十分余裕を持って行けそうだ。
 ここまで来れば完走は余程のトラブルがない限り大丈夫だろう。リスクを取らずに抑え目で走る。

 日も落ちかかった道を淡々と走る。
 遠くの空が夕焼けで赤く染まっているのが見え、思わず止まって見入ってしまい、写真を撮った。

 そう言えばこのパラダイスウィークに来てから夕焼けを見た記憶がない。広大な大地の向こうの山の更に先が何とも言えない綺麗な色に染まり、眺めているとさっきまでの土砂降りの苦行をすっかり忘れて途方に暮れてしまう。
 この1500kmは大半は雨に祟られたシビアな北海道ばかりを見せられた旅になったが、北海道の大地に宿る豊穣の女神は最後に少しだけ振り返って微笑みを見せてくれた、そんな感じの夕焼けだった。

 夕焼けは数分で消えてなくなった。再びバイクにまたがり先へ進む。ゴールまで後100km足らずだ。

 夜間走行に突入、雨は相変わらずしとしと降り続けており慎重に進む。

 ちょっとした街中に入って信号待ちで止まる。ふと右を見ると見覚えのあるコンビニが目に入る。ここは初日の200kmのPC1だ。新十津川町まで戻ってきた。それにしてもここを最初に通過したのが随分昔のことに思える。ゴールまで後70kmちょっと。

 再び雨が強くなり、我慢の走行が強いられる。北海道の女神はゴールまでそう楽はさせてくれない様だ。
 ここからの道は路肩が悪い。アスファルトを重ねて敷いて修復しているので、段差が道路に平行にできている。おまけにその段差と路肩の白線とが重なっているので雨天走行では見え難く神経を使う。車通りがそこそこあるので車をよける度に段差をうまくやり過ごさなければならない。注意しているつもりだが、それでも何度かタイヤを取られ転びそうになった。
 更に路肩には小さなカエルたちがたくさん飛び跳ねている。轢かない様に走るのも大変だ。


 261km地点のPC3に到着、チェックタイムは20:35。ここが最後のPC、あとはゴールだけである。軽く補給をしてスタート。
 後40km、2時間でこの長かった旅も終わる。

 札幌が見えてきた。「うわあ、1500kmがホントに終わっちゃうよー」っていうのが正直な感想。名残惜しいというかあっけないというか、とにかくもうすぐ終わってしまうのである。勿論早くバイクを降りウェアを脱いでビールを飲みたいって言う気持ちもあるけれど、でもまだまだ旅を続けたいっていう気持ちも強い。
 どんどんゴールが近付いてくる。道も広く綺麗になり、札幌の市街地が近いことが良くわかる。
 遠くにコンビニの看板が見えた。あーあ、帰って来ちゃったよー。この辺りの路面は全く濡れておらず雨が降った形跡がない。つい数km前まではびしょ濡れだったのに今までは一体何だったんだという感じだ。
 ゴール、ゴールタイムは22:29。
 ぶっちゃけ1500kmを走ったという感覚はない。単発ブルべが普通に終わった感じだ。いやそれ以上に疲労感はない。
 AJ北海道のスタッフさんにブルべカードとレシートを渡し、無事認定確認完了。完走タイムは13時間29分、最終区間も無事完走した。

 AJ北海道のスタッフの皆さん、どうもありがとうございました!(後から写真を見て気付いたが、右端の男性は確かPBPの時同宿だったYさんではなかったか。最終日にビエネッタを御馳走になったし、挨拶し損ねてちょっと残念)
 スタッフの皆さんに挨拶してその場を後にする。

 モエレ沼公園近くの交差点にもキタキツネがいた。(ちょっと見難いかな)

 札幌市内のホテルまでの凱旋ランを楽しむ。徐々に1500kmを走り終えた実感が湧いてきた。達成感と充実感はひとしおだ。

 6日振りに戻って来た札幌の街。今までの広大閑散な風景とは真逆だが、よそ者の私にとってはどちらも違う世界の風景に見えて新鮮不思議な感覚だ。

 23時過ぎに無事にホテルに帰還。荷物を受け取り、バイクを洗車して部屋に入る。ウェアを脱ぎ捨て風呂に入りすっきり人心地つく。打ち上げは明日にする予定だったが、予想より早く帰ってこれたし疲労もさほどでもないので、軽く一杯やろうとホテルを出る。なんか無性にラーメンが食べたくなってホテル近くのラーメン屋に入る。

 ラーメンと餃子とビールで一人打ち上げ。このサッポロ瓶ビールが死ぬ程旨かった!こんなに旨いビールを飲んだのは46年間の人生でちょっと記憶にない。
 ほろ酔い気分で部屋に戻り、ベッドに横になってそのまま夢の中へ退場した。