BRM1027埼玉300

 今日は予報通り雨。今日はいいんだよ、今日は。でも昨日降るとは…、天気にいちゃもんつけてもどうにもならないが、昨日の雨の精神的ダメージは相当大きかった。超ハードなブルべから一夜明け、予想通り身体はボロボロ、ここまで酷いのは恐らく昨日やらかしたハンガーノックのダメージだろう。とりあえず古都で昼食を摂り前後不覚な昼寝で17時過ぎに目が覚め、ようやく復活の兆しが見えてきた。そんなわけで昨日のブルべレポートである。

    • -

10/27、3:30起床。眠い。外は真っ暗、なかなか布団から出られず15分くらいもぞもぞしてようやく準備開始。バイクを車に積んで4時過ぎに出発。
 まだ夜が明けておらず空の様子は分からないがフロントガラスに霧雨の水滴がちらっとついた。まあ朝方の御湿り程度とさして気にしない。
 4時半過ぎにスタート&ゴール地点の巾着田到着。いつにも増して多くのライダー達で賑わっている。河川敷にキャンプを張っている人達は早朝から何事だろうとさぞ訝しがっているに違いない。

 ブリーフィング風景。埼玉のシーズン最終戦とあって超難関コースにも拘らず相当な人数が集まっている。今日のメインルートであるクリスタルラインは携帯電話が通じず走行不能なトラブルに陥ったら自力回復はほぼ不可能、そういう意味で”スーパーアタック”なんだと今回のコース製作者からの直々の説明があった。

 今日のコースは超難関山岳ルート、ちゃんとした勾配の峠が9個も配置されている。”スーパーアタック”の冠詞が付くこの300kmブルべは獲得総標高差実に6700m、どんなことになるのかさっぱり予想できない。同日には別の場所でもっと緩いブルべが開催されていたのに何故これにエントリーしてしまったのか、正直後で後悔した。

 トップチューブに各峠のピークまでの距離を貼り付けた。初めての峠が多くこれでペース配分を考えながら走るつもりだ。

 定刻通り5:00スタート。私にとっても今日が今シーズンの最終戦、とんでもないコースだが秋晴れの爽やかな空気の山岳を走るのが楽しみだ。
 スタートしてもまだ空は真っ暗、まずは最初の峠である山伏峠を目指して名栗方面に進路を取る。ここ数日の自転車通勤では何故が好調で疲労感もなく前日までペダルをガシガシ踏み倒して走っていたのだが、ちょっと調子に乗り過ぎて微妙に疲労感が残っている。でもまあ体調的にはまずまずだと思う。まずは勝手知ったる山伏峠で今日はどれ位登れるかチェックだ。

 走り始めて30分程、名栗を走り始めた頃に何ということか、雨が降り始めた!「何だとー!?」昨日までの天気予報では全行程ほぼ晴れだったはずだ(正確には飯能で18時頃に弱雨があった)。朝方の御湿りかと思ったが、徐々に夜が明けてきて空の素性が見えてくると分厚い雲でびっしり覆われどうみても晴れの気配はない。
それがいきなりこの雨とは予想だにしない展開に唖然茫然、怒り心頭意気消沈である。今年のブルべは要所要所で雨に祟られ、特に北海道では天気にやられっ放しだったので、最終日の今日くらいはすんなり晴れてくれるだろうと思っていたのにこの有様、ここまで来ると自分の雨男振りを確信せざるを得ない。

 そうこうするうちに山伏峠への登りが始まる。雨脚が徐々に強まる中、えっちらおっちら登り始めた。脚はそこそこ回っていて体調的には特に心配することはなさそうだ。でも、もし今日一日全般雨だったらと想像しただけで、精神的なダメージは大きい。
 山伏峠を難なくこなして下りに入ったが、寒い!今日の気温が場所によっては10℃を切ることは予め予想していたが、晴れだし日差しが当たっていれば体感的にはそれ程寒くないだろうと、半袖ジャージ&レーパンにアームウォーマー&七分丈レッグウォーマー、薄手の指付きグローブを身に着け、ウインドブレーカーを持参していた。雨は全く想定していなかったので、レインジャケットや泥除け、チェーンオイルは当然持参していない。
 強い雨脚で濡れたウェアに風が吹き付け体感温度が一気に下がり、下りでスピードが出せない。たまらず途中で止まってウインドブレーカーを着込むが既にウェアが濡れてしまっているので余り役に立たない。これから先は標高1500m以上まで上がるので更に気温が下がることを考えれば、もしこのまま雨が降り続けば非常に拙い。DNFが頭をよぎる。
 何とか山伏は下り終えたが、299号線に出て秩父まで更に下る。途中で後ろから来たダンプにけたたましいクラクションで煽られ更に精神的に凹む。
 秩父まで来て平地を漕ぎ始めてようやく身体が温まり始め、気を取り直して走り始めた。

 59km地点のPC1に到着、チェックタイムは7:40。出走前にパンを2個食べて来たのであまり空腹感がなく、80km先に休憩ポイントを設定しているのでここではアンパン1個を補給。ずぶ濡れになったシューズを脱ぎ靴下を絞る。

 15分程の休憩の後スタート。雨脚は弱まったが路面はしっかり濡れているので再びシューズは水浸し、泥除けがないので尻も濡れて冷たい。尻の皮がふやけてダメージを食うのが怖い。
 2番目の峠、78km地点の志賀坂峠へ登坂開始、何度か上ったことがあるので素性は分かっている。勾配は大したことないが距離が長いのでペースでゆるゆると登っていく。

 8:50、志賀坂峠頂上に到達。下りは相変わらず寒く、スピードは出せない。
 相変わらず雨はしとしと降っているが、一旦濡れてしまえばあまり気にならない。と言うよりこれがブルべのデフォルトの天気って感じがする。先月の台風の福岡1000を考えたら大したことはない。

 3番目の峠、ぶどう峠に登坂開始。地図読みではこの峠までのアプローチが一番長い。ここから先は初めてのルートなのでトップチューブに張った距離を指標にペースで淡々と上ることだけを考える。5%を超える坂道が延々と続く。脚はそこそこ回るし登っている最中は身体も温まって汗も出るので、今日はむしろ登りの方が良い。

 11:08、111km地点のぶどう峠山頂に到達。再び長い下り、相変わらず寒いが雨が上がり路面が乾いてきた。空模様も何となく雲が薄くなってきた様に見え、この先ひとまず雨の心配はなさそうだ。これでウェアが乾いてくれればかなり走り易くなる。何となく日差しが感じられるようになりぼんやりと自分の影が路面に映り始めた。ようやく秋のサイクリングらしくなってきた。
 4番目の馬越峠に登り始める直前、何となく空腹感を覚えて道の駅らしき施設が目に入ったのだがこの峠を越えれば休憩ポイントに辿り着くのでそこへは立ち寄らずに峠越えに入る。登り始めののっけからかなりな急勾配なのだが、ちょっと走っていきなり身体中に力が入らなくなってしまった。どうやらハンガーノックになったらしい、と思っている傍からどんどん症状が悪化してきて目の前に星が飛び始め真っ直ぐに走れなくなってきた。たまらず道端にバイクを止め、慌ててボトルのCCDドリンクをがぶ飲みした。普段なら余裕で持ち堪えられるだけのエネルギーは摂取していたつもりだが、寒さで体温維持に費やされるエネルギーを考慮していなかった。補給食も持っておらず、人里離れた山道で売店はおろか自販機すら見当たらない。頂上までは後5km程だがこの急勾配はどうやっても登れない。再び下ってさっきの道の駅で食事をすることも考えたが、再びここまで登ってくるのも億劫に感じられとにかく前に進むことにした(思考回路もかなり鈍っていた)。
 5km/h程で蛇行しながら這う様に登って行くが、ちっとも前に進まない。道端に落ちているドングリの実が妙に旨そうに見えて思わず食べたくなる。よたよたと登る坂の道の上に公衆トイレが見え、とりあえずそこで休憩しようかと近付いて行ったらその横に自販機を発見した。天の助けとばかりにコーラを一気飲みしてへたり込んだ。10分程休憩をしたら手足の痺れがかなり抜けてきた。走り始めてみると身体に力が入るようになり10km/h近くまで速度を回復した。コーラはほんと即効で効く。ハンガーノックの時はコーラに限るな。


 13:02、136km地点の馬越峠山頂に到達、ここまで来れば休憩ポイントまで一気に下るのみ、何とか首の皮一枚繋がった。エネルギー切れかけの身体に下りの寒さは一層堪える。

 143km地点の休憩ポイントのスーパーに到着したのが13:20。

 妙な取り合わせだが目についたものを手に取ったらこんなことになってしまった。食事をしてようやく落ち着いた。30分程の大休止の後スタート。
 日差しも出てきて気温も上がり、かなり走り易くなった。まだ中間地点まできていないが、ハンガーノックでダメージを負った身体を何とかゴールまで持たせなければならない。とにかく残り少ない体力を温存し、制限時間一杯使って完走することだけを考える。
 雨に濡れてオイルが流れ落ちてしまったチェーンが乾いてキュルキュルと音を立てている。摩擦抵抗もそれなりに増しているはずだが、それ以上にこの音が精神衛生上良くない。雨を予測していれば当然チェーンオイルを持って来ていたはずなのにこれも何だか腹立たしい。
 ここから先の3つの峠はだいたい4〜5km位の長さの登りで比較的短く、大物の峠に比べれは心理的に楽だ。確実にやっつけて行く。

 5番目の峠、151km地点の信州峠山頂に14:22に到達。ちょっと下ってまた直ぐに登り始める。日差しもしっかり出てきて暑くなりウインドブレーカーを脱ぐ。

 紅葉の林がずっと続く。
 しばらく走ると急に路面が砂利交じりのでこぼこのコンクリートに変わり走り辛くなる。急勾配なのででこぼこにタイヤが落ちる度に失速してバイクのバランスが崩れ、その度に立て直さなければならず上半身が疲れる。ここの2、3kmはかなり消耗した。程無くして山頂付近のみずがき山荘に到着、結構な数の登山客で賑わっていた。

 6番目の峠、159km地点のみずがき山荘に15:03到達。下りには道に縦溝の継ぎ目が頻繁に出てきて乗り越える度に衝撃を食う。タイヤの空気圧が低いとリム打ちパンクのリスクが付きまとうが、今日はいつもより空気圧をちょっと高めにしておいたので幸いパンクをすることはなかった。

 7番目の峠、168km地点の木賊峠に15:49到達。クリスタルラインの由来はなんだろう。この頃には徐々に日が傾き夕暮れが近くなってきた。この分だと明るいうちに山岳地帯を抜けるのは難しそうだ。8つ目の峠は今までより若干距離が長く9km近く登る。途中で紅葉の山々が見渡せる雄大な風景が見られたが日も暮れかかって暗くなりかけていたので写真は取らずに淡々と上り続けた。

 8番目の峠、186km地点の乙女高原に17:12到達。携帯のバッテリーが少なくなりフラッシュが光らなくなった。携帯電波の到達しない区間が長かったのでバッテリーの消耗が激しい。ここから通過チェックまで一気に下るがとにかく寒い!山頂付近は一桁台の気温だっただろうが体感温度は更に低い。雨は上がって路面は問題ないがとにかく寒くてスピードが出せない。顎ががちがちと歯の根が合わない程の震えがくる。こんなことなら登っている方が楽に思える。濡れたシューズの脚先の感覚がなくなっている。やはり雨に濡れたダメージは大きい。下りがこんなにも苦痛に感じられたことはなく、とにかく一刻も早く下りを脱したい一心で耐え忍んだ。

 やっとの思いで下りを終え210km地点の通過チェックに到着、チェックタイムは18:21。カップラーメンと缶コーヒーで温まる。先着していたブルべライダーさんの一人はこのコンビニでヒートテックインナーを買って着ていて、私も一瞬買おうかと思ったが、このブルべは罰ゲームと割り切りそのまま耐えて走ることにした。

 通過チェックを出て直ぐにいよいよ最後の峠、柳沢峠へのアタック開始である。この強烈な難関山岳ブルべの一番最後に自らの名を冠した峠を持ってくるあたり、コース設計者の意気込みを感じる。約15km平均勾配6%超の峠は200km超の山岳ブルべを走って来て更に破壊力を増している。脚は余り残っていないがこれさえ超えてしまえば後はゴールまで下り基調、とにかく気力で乗り切るのみである。
 無心でひたすらペダルを漕ぎ続ける。この峠は幾つもの橋を渡っていくが、視界の遥か上の方にこれから向かうべき橋の道路灯が見える。いつもならげんなりするところだが今日は不思議と「あそこまで辿り着ければ楽になれる」と前向きな気持ちになる。今まで散々登って来て、ペダルさえ回し続けていれば間違いなく山頂に到達するというイメージがしっかり意識に植え付けられているからだろう。身体はハンガーノックの影響でボロボロだが、気力はまだまだ充実している。スピードは10km/h前後をキープしていて最後の峠にしては思いの外安定して登れている。

 9番目の峠、225km地点の柳沢峠山頂に20:19到達。ようやく今日の全ての峠は越えた。後は下るのみである。長い下りはやっぱり寒い。柳沢峠の山頂付近の気温は6℃、スピードを殺してゆっくり下る。
 丹波山まで降りてきて下り勾配も緩くなりペダルを回し始めて全身の緊張が緩んだ。制限時間までまだまだ余裕があるので完走は間違いないと思うが、気の緩みで事故を起こさない様に慎重に走る。見慣れた青梅街道の風景が目に入って来てようやく戻って来た感じがした。平地巡航で心拍は120bpm以下のリカバリーレベルで落ち着いたまま、抜いて走っているわけではなく、これ以上上げられないというのが正直なところ。ハンガーノックでダメージを食った身体が過度の負荷入力をカットしている感じだ。急ぐ必要はない、残り少ない体力を持たせて走る。
 奥多摩湖を通り過ぎ再び下り、普段の休日日中なら交通量も激しくトンネル内も緊張して走らなければならないが、夜のこの時間は車通りも少なく走り易い。順調にゴールまでの距離を縮めていく。

 青梅坂下で青梅街道を左折し飯能方面へ進路を取る。前方に一人のブルべライダーが目に入ったが、道路工事の仮設信号を無視して赤のまま突っ込んで行ってしまった。その直後、前から車が来たので危うかったに違いない。ここまで来てリスクを取ってまで慌てる必要はないだろうに。

 見慣れた飯能の景色の中、今シーズンのブルべを断片的に振り返りながら走る。最終戦まで無事に走り終えることができた安心感がじんわりと湧いてきた。

 無事巾着田に戻って来た。23:30ゴール。認定完走タイムは18時間30分だった。

 恒例のオダックス埼玉謹製豚汁を頂きながらほっと一息、スタッフさんと談笑する。それにしても今日のブルべはきつかった。最終戦がこのボリュームでもう御腹一杯、今シーズンはこれ以上走ろうという気にはならない。そういう意味で締め括りに相応しい内容だったとも言える。

 オダックス埼玉のスタッフの皆様、今シーズンも運営大変御苦労様でした。来年もまた宜しく御願いします。