SR600Fujiレポート2:宿泊~ゴール

 8/16、4:30に起床。眠い。PCのクローズタイムを気にする必要はなく多少の時間的余裕はあったのでもう少し寝ていようかと思ったが、朝の涼しいうちに今日のメインイベントの美ヶ原ヒルクライムをこなしておきたかったので予定通り準備する。身体の具合は特に問題なし。尻の痛みも多少治まっている。

 5時過ぎにホテルを経ち、コースに復帰。空には雲がかかり涼しい。緩々と走り出す。PC6までの距離は僅かだ。

 296km地点のPC6信濃国分寺に到着、チェックタイムは5:19。写真を撮って直ぐに出発、まずは長丁場ヒルクライム前の休憩ポイントを目指す。

 程無く308km地点の休憩ポイント4に到着。結構な空腹感があったのでパンを2個食べてしっかり補給する。
 ゆったり休憩をして出発。

 いよいよ26kmのロングヒルクライムの開始だ。

 徐々に空が晴れ渡り始め、目指すべき山々の上に青空が広がり始める。

 まだほんの序盤だがかなり勾配がきつくしかも真っ直ぐに見渡せる長い登り。精神的に結構堪える。

 すっかり晴れ渡った空と緑の山並み、涼しい朝の空気と相俟って清々しい。

 ここを左折して林道に入る。本格的な美ヶ原高原へのアプローチ開始だ。

 やはり勾配はきつい。こんな調子が12kmも続くのかと思うと、精神的にはかなり辛い。しかしキャンプ場の脇を過ぎると勾配が緩くなりぐっと登り易くなった。

 爽やかな林道をゆったりと登っていく。残り8km。
 のんびり走っていると前方の道の真ん中に鹿らしき動物がいた。こちらの姿を見ても逃げる気配はない。どんどん近づいていくが向こうも近づいてくる。チキンゲームか!?

 ニアミス!パッと見カモシカっぽいが定かではない。人間を余り恐れない様だが餌付けされているのだろうか。

 山頂近くの何かの記念碑。写真では文字が判別不能なので何の記念碑だかわからない。
 えっちらおっちら登って徐々に空が広くなっていく。山頂はもう直ぐだ。

 遂に山頂到達。333km地点のPC6美ヶ原高原美術館に到着、チェックタイムは8:52。2時間半をかけて美ヶ原までのヒルクライムを十分に堪能した。

 ここからの眺望。青い空と雄大な風景と清々しい空気、今回一番走りたかった道だが目的は見事に達せられた。満足感非常に高し。

 次の目的地は白樺湖、39km。
 ここで補給がてら休憩しようかと思ったが傍のレストハウスはやっていなかったので写真だけ撮って出発する。

 美ヶ原高原美術館の野外展示を外から眺める。ちょうど開館時間だったがこの格好でうろつくのは気が引けたしそこまでの時間的余裕はなかったので素通り。

 ここは標高1959m。
 下り開始だが、4km程下って直ぐに下り終了、アップダウンが始まる。結構脚を削られる。数度のアップダウンを繰り返し三峰展望台に到着、予定にはなかったがここで休憩することにした。

 ここからの眺望もなかなか。

 売店で売っていたキュウリの一本漬けを食す。冷たくて美味しい!塩分補給にももってこい。

 のんびり休憩して三峰展望台を後にする。
 高原道路をひた走る。車通りはかなり多くちょっと走り辛い。日差しは強いが空気が冷たいのでさして苦にならない。

 霧ヶ峰高原に到達、エアコンの霧ヶ峰ってここの地名なのか?

 どことなく熊本の草千里を思わせる風景。走っていて気持ちいい。

 霧ヶ峰ピークのレストハウスでまたまた予定外の休憩。ちょっと休み過ぎの感があるがすっかり休み癖がついてしまった様だ。冷たいジュースをがぶ飲みする。

 ちょっと走ったら白樺湖が見えた。

 372km地点の休憩ポイント5に到着。白樺湖畔は観光客でごった返していた。水分をしっかり補給する。今日もまだ今のところ脚攣りはない。
 人混みが辛くなってそそくさと出発する。次のPCまでは8km程と短い。

 直ぐに登りが始まる。想定外に勾配がきつい。

 夏の正午の日差しをモロに浴びつつこの真っ直ぐな激坂を登るのは心身共に非常に堪える。

 必死の思いでピークに到達。すずらん峠なんて全く頭に入っていなかった。今回の峠の中でここが一番きつかったかも知れない。
 ちょっと下ったところで378kmのPC8女の神展望台に到着、チェックタイムは12:22。

 今朝上田市街をスタートしてから80kmちょっとで8時間を費やしている。ちょっと時間がかかり過ぎだ。と言ったところでここからペースを上げようという気にもならず、取り敢えず写真を撮って出発する。

 次の目的地は麦草峠、再び標高2000m超まで登る。長い登りだ。

 ここまで一気に下って来て、ここを左折すると国道299号線に入り登坂開始。13kmの長い登りだ。

 只今標高1500m。勾配はきつくも緩くもなく淡々と登っていく。木立がまばらで日影が少ないので日差しがちょっと堪える。この先補給ポイントはなさそうなのでボトルの水をセーブしながら飲む。

 標高1900m、まだまだ先は長い。汗がどんどん流れ出てちょっときつくなってきたが脚はまだ回っている。ケイデンスを一定に保ち、ダンシングとシッティングを定間隔で繰り返す。とにかくペースを守って淡々と登る。

 漸く標高2100mまで来た。ピークはもう直ぐ。

 視界の先に目指す道路標識が見えた!長い長い登りが漸く終わった。

 401km地点のPC9メルヘン街道最高地点に到達、チェックタイムは14:21。
 ここはツール・ド・八ヶ岳のゴール地点。大会で何度か来たことがあるが反対側から登って来たのは初めて。これからヒルクライムコースを下っていく。

 ちょっと下った所の駐車場で休憩。ここはツール・ド・八ヶ岳の時はゴール後の待機所として使われている。ジュースを一気飲みして人心地着く。

 ここから長い下り、急勾配をガンガン下る。路面が悪いので神経を使うが、ここで時間の巻きを一気に入れる。
 ガーッと下って久し振りの平坦基調をひた走る。巡航速度も25km/hは超えているのでまずまずだ。次のPCの野辺山までの登りは標高差も距離もさほどではないので気は楽だ。
 ひとしきり平坦を走って野辺山への登坂開始、序盤は急勾配だが徐々に緩くなって平坦に近くなっていく。

 野辺山近くの気温は27℃。標高が低いので体感温度はもっと高い。休憩ポイントまでもう少しなのだが向かい風基調がはっきりしてきて前に進まない。結構脚を削られる。

 漸く434km地点の休憩ポイント6に到着、次のPCまで目と鼻の先の場所だ。
 ここでSR600Fuji走行中のライダーさんに遭遇。少しばかり会話を交わす。AJ神奈川のジャージを身に纏ったその方は、ツーリスト部門でこのコースを5日間で走行中で今日はPC11まで行って甲府で投宿とのこと。御互いエールを交わして先発して行かれた。
 もう夕暮れだが気温も高く暑さでへばって来たのでアイスクリームで補給、長めの休憩を取る。
 尻の擦過傷の痛みが増してきたので、トイレでオロナインを塗る。これで多少は緩和される。


 JR野辺山駅。

 437km地点のPC10JR鉄道最高地点に到着、チェックタイムは16:31。
 もう夕暮れ時だが、ゴールまで残り170kmもある。普段のブルベとは違うペースの遅さにここに来てちょっと途方に暮れる。とりあえずここからは長い下りなので、少しだけ気が楽だ。

 この付近の風景。思わず座り込んでぼーっとしてしまいそうだ。

 気を取り直して出発、直ぐに下りが始まりガンガン下る。車通りが多く走り辛いが下りで巻きを入れないと何時にゴールできるかわからない。そこそこ緊張感を持って下る。

 夕焼け。長い下りを終え、どこかの市街地の渋滞をくぐり抜けてきたがここがどこだかわからない。相変わらず途方に暮れる感じは続いている。

 どうやら南アルプス市にいるらしい。と言ってもそこがどの位置になるのか見当もつかない。
 夕闇迫る中、川沿いの平坦路をひた走る。向かい風が強く前に進まない。登りより向かい風の方が精神的に堪える。速度も20km/hそこそこしか出ない。とにかく次の目的地である休憩ポイントを目指して走る以外に何もない。

 やっとの思いで489km地点の休憩ポイント7に到着。

 焼うどん。空腹感もしっかりあったし、これから河口湖までの最後の長い登りが控えているのでしっかり食べておく。ちょっと精神的に疲れたので気持ちを立て直すべくしっかり休む。やはり普段のブルベより進行が遅いことが精神的な疲れを呼んでいる様だ。と言っても手を抜いて走っているつもりはない。要するにこれがSR600の特筆ということだろう。

 気合を入れなおして出発、ここからPC11は数100m先、直ぐそこだ。

 490km地点のPC11芦川駅に到着、チェックタイムは19:11。
 完全に日が暮れてナイトラン開始だ。ゴールまでは113km、漸く先が見通せる残り距離になって来た。しかしここから若彦トンネルまでの22kmの登りが待ち構えている。ここが最後の正念場だ。心してバイクに跨る。

 出発して直ぐに急勾配が始まり相当な心理的プレッシャーに見舞われたが、その急勾配も直ぐに終わり川沿いの道をなだらかに登っていく。日も落ちて涼しくなったので落ち着いて走ることができる。

 暗闇の山間部の道を淡々と走っていると前方に花火と思しき光が山肌に照り返して見える。人気のなさそうな山中にいきなり花火とはちょっと驚いたが近づいていくと集落が見えてきた。

 その集落では道端に火が灯されていた。さっきの花火も恐らくは盆の送り火ではなかろうか。何となく郷愁のある風景に後ろ髪を引かれつつその場を通り過ぎた。
 再び暗闇の山間部を淡々と走る。時折急勾配が現れてはっとするが距離は短くて済み緩やかに上る。思い出したように現れる小さな集落の家の明かりが気持ちをほっとさせてくれる。この登りはもっときついものと構えて入って行ったが、意外にジェントルなのでゆったり登っていく。
 そろそろピークになる距離まで登って来たがなかなか若彦トンネルが現れてくれない。そうこうするうちに勾配がきつくなってきたのでルートを間違えたかと不安になったところでやっと前方にトンネルが見えてきた。

 若彦トンネル入り口。漸く最後の難関を突破した。

 トンネルは滅茶苦茶長くておまけに急勾配で下っている。反対側からは絶対に登りたくないトンネルだ。
 トンネルを抜けても下りは続く。どうやら河口湖までは下りの様だ。事前の地図読みで見落としていた様で嬉しい誤算だ。

 河口湖に到達。湖畔を走って山中湖に向かう。21時を回っているが富士吉田市街は観光客でまだ賑わっている。山中湖までは車通りは多いし登りがそこそこきついので再度気合を入れ直す。まあ何度も走っているのでそれ程のプレッシャーには感じない。

 程無く539km地点の休憩ポイント8に到着。山中湖畔に到達だ。この辺りはもう勝手知ったる守備範囲なので”帰って来た”という気分になる。麦茶をがぶ飲みして喉の渇きを癒し、尻に再度オロナインを塗って最後の行程に備える。
 現在時刻は22時半過ぎ。ここからゴールまでは64kmで半分は道志の下りとは言え3時間弱はかかるだろう。今日の走行距離300kmのコースを通常の300kmブルベと見立てて通常300kmブルベの規定時間20時間内の完走を意識してきたが結果的には無理の様だ。でも、本来目的であるSR600の規定時間からすればマージンは6時間以上はあるので完走は間違いないだろう。ここまで来たのでリスクは取らずにのんびり走ることにする。
 休憩後出発。最後のPCは直ぐそこだ。

 最後のPC12では本来なら山中湖と富士山を背景に写真を撮るのだが、夜では富士山は映らないのでサブシーンでの撮影を行う。

 540km地点のPC12に到着。遂に最終PCまで到達した。後は道志を下って一路ゴールの高尾を目指すのみだ。

 山中湖畔をひた走る。脚は十分に残っている。気温は思ったより低くちょっと寒く感じる。そこそこ脚を回して早く体温を上げたい。ママの森の登りに差し掛かるが普段ならきついと思う勾配も苦にならない。体温を上げるにはちょうど良い。
 平野の交差点を左折し、道志道下り前の山伏峠越えだ。これはもう今日のおまけみたいなものだ。ぶっちゃけさくさく登っていく。トンネル前の急勾配もきつく感じない。要するにここまで標高差10000m以上も坂を登り散々ヒルクライムの練習をしてきた成果が表れたということだろう。

 山伏トンネル。昨日は名栗の山伏峠から始まり道志の山伏峠で終わる。オチとしては気が利いているかな。
 道志道をガーっと下る。道が悪い印象があって夜間だし余りスピードに乗せられないかと思っていたが、路面はスムーズで問題なく下っていけた。時折走り屋達が猛スピードで追い越しすれ違うのがリスキーだがそれ以外は快調そのもの、どんどん下っていく。
 途中数か所の登りがあるが全く苦にならない。ゴールが近いことの心理的余裕も手伝ってさっくりやり過ごして順調に残り距離を消化していく。

 あっという間に道志道を下り終え青山交差点に到達、左折して相模原方面に向かう。
 城山ダムを越えて進路を北に取った所から再び登りが始まる。反省会的登りで2日間かけて身に沁みついたペダリングを反芻する。ブルベで何度も登ったルートだが楽に登れている。やはり今までと何か違うスムーズなヒルクライム走法のコツが分かった様でちょっと嬉しくなる。

 道路標識に高尾の文字が。もうゴールは目前だ。
 町田街道の中央線高架下までの最後の下りを終え、左折してゴール。昨日スタートしたコンビニに到着した。

 ゴールタイム確定のため買い物をしてレシートを貰う。レシート打刻時間は1:43だった。通常のブルベならゴール後すぐにスタッフによる認定受付手続きがあるか、SR600はこれからブルベカードとスタート及びゴールのレシート、それと各PCでの写真を送って手続きを行う。全て不備なく完走認定されたとして、完走時間は45時間43分といったところか。

 高尾駅に移動して記念撮影。そう言えばスタート時に駅で記念撮影していないことに今頃気が付いた。

 駐車場に移動して、服を着替えてほっと一息。漸くハードなブルベが終了したという解放感に浸った。
 猛烈に御腹が空いたので深夜だが何かがっつり食べて帰ろうと車に乗り込む。何故かカレーが食べたくなったので、松屋でカレー大盛りを注文。

 ぶっちゃけ味はいまいちだった。何故ココイチは24時間営業じゃないのだろうか。そこそこニーズはあると思うんだけどなあ。

 SR600Fuji、終わってみれば意外に苦しかったという思いはない。良く走ったという達成感が強く滲み出てくる。勿論走っている最中は色々ときついこともあったが、それらがゴール直後に見事に打ち消されて達成感・充実感が際立って感じられるというのは、コースや規定時間が絶妙であることの証なのだろう。パーマネントという、走行プランを出走時期から出走者が自由に考えて組み立てられる設定は、それが嵌って完走に繋がれば達成感も更に増す。

 出走前はBRM810千葉200のダメージもあって正直完走できるイメージを持てなかったが、走り終えてのこの結果には非常に満足している。残念ながら2日目の走行時間が20時間内に収まらず、通常300kmブルベだったらDNF見当になってしまったが、まあこれはあくまで参考ということで割り切っておこう。

 この勢いを駆ってSR600Nihon Alpsも今年中に…なんて一瞬思ったりもしたが、まあスケジュール的にも無理なのでこれは来年に挑戦するとして、次はBRM907、908宇都宮200の超級山岳200kmダブルヘッダーだ。今日の経験を自信に変えて確実に完走できる様にこれから英気を養う。