Godinのエレガット

 風邪を引いた。
 3日前に発症して昨日まで酷い頭痛、喉痛、鼻痛に悩まされ昨日まで悶々鬱々とほぼ寝たきり状態だったが今日になってようやく回復基調になった。せっかくのGWなのに…と思っていたら連休も残すところあと2日、何とも悔しい休日消化となってしまった。

 ちょっと前に発症した”ギター欲しい欲しい病”もようやくここに来て終息方向となった。今回の発端となったとあるギターはこの1か月のうちに珍しく何本も出品されたが、結局入札することはなかった。

 今回の病の間に”自分にとって本当に欲しいギターは何なのか?”という命題を割とじっくり考えることができ、そして当面の結論を導き出せた。

 私の残りの人生で入手必然と目するものはソリッドのエレキギター1本とエレガット1本という結論に至った。ソリッドエレキはオールドでレアなものでやはり出物はなかなか目にすることはなく、この先もし手に入れることができたらその時に改めて書きたいと思う。
 エレガットについては、スティール弦では出せないナチュラルでクリアーな音が好きでスローバラードをエレガットで演りたいと思っていたし、ボサノヴァギターにも傾注したので私のミュージックライフには欠かせない存在だ。エレガットと言えば昔からGodin一択だった。でも社会人になってまだ数年の当時の私には高嶺の花でおいそれと手を出すことができず、18年程前に会社近くの楽器屋でたまたま見つけた安いソリッドボディーのエレガットを見つけて御茶濁し的に衝動買いして以来、今までずっと使ってきた。正直なところそのギターはそれ程気に入っていたわけではなく、使っているうちにペグが壊れたりネックの反りが出たりしてだましだまし使ってきたが、今回の病でそろそろGodinに手を出してみてもいいんじゃないかなあと思い始めた。

 そんな時、ネットオークションで不具合を抱えたGodinが相場的にはかなり安い値段で出品されていたので、駄目元で入札したら始値で首尾良く落札することができて、これはラッキーだった。

 遂に手に入れたGodinはこれ。

 Godin/ACS Slim SA。

 中古品だが、ネックの裏にちょっと傷があったりネックのジョイントボルトに錆が出ていたりしたが全体的に程度は良い。
 で、問題の不具合はこれ。

 アクティブサーキット用のバッテリーボックスの蓋がなくなっている。
 このままでも実使用には大して支障はないのだが、当然このまま放置するつもりはなく何とかスペアパーツを入手して修理する。
 こういうパーツは海外オークションで探すと案外簡単に見つかることがある。と思ったらebayであっさり発見、早速ゲット。

 送料込み$6。

 あっけなく交換作業終了。修理代はたったこれだけ、本体を難ありで安く落札できたのはほんとラッキー。

 試奏してみたが思っていた以上に弾き易い。今まで使っていたギターはネック幅が広く、それを弾いている分にはそんなもんかと思っていたが、弾き比べてみると違いは歴然だ。このGodin/ACS Slim SAというモデルはネック幅が普通のエレキと同じ位の細さなので手の小さい私にはかなり握り易い。Godinのナイロン弦のラインナップ中このネック幅はこのモデルだけなので迷わずこれを選んだがやはり正解だった。
 ボディーも抱え易く見た目ほど大きく感じなかった。生音もしっかり聴こえて、一見ソリッドだが実は中空なボディーでしっかり鳴っている様に感じる。
 小さなベースアンプに繋いで鳴らしてみたが、前のエレガットはパリパリとしてガット弦らしくない音が余り好きではなかったのだが、Godinは流石にアコースティックのガット弦の音はしないまでも、かなり中域が厚くて柔らかい音がする。この辺はやはりきちんと設計されそれなりにコストがかかったギターならではというところか。
 予想通りなかなか良いギターだった。エレガットに関しては他に競合は全くなくこれから積極的に情報を集める気もないので、これが我が生涯の唯一本になる可能性は相当高い。
 あと、このギターにはローランドのGKドライバーが内蔵されておりギターシンセを鳴らすことができる。これについてはまだ試していないがいずれ手持ちのGR-50に繋いで鳴らしてみたいと思う。

 自分の欲するところをきちんと分別してそれに見合ったものを手に入れることができると気持ちが満ち足りる、と言うより安堵する。昔はその時々の偏狭な拘りで衝動に走って後悔することもしばしばだったが、今は慌てることがなくなり、拘りと慣れが徐々に入れ替わりつつある。”まだ見ぬ何か新しいもの”ではなく”使い続けて慣れたもの”が良いものになるということだ。ちょっと寂しい気もするがそれが歳を取るということの一つの表れかも知れない。

 ”ギター欲しい欲しい病”は例えて言えば遠大な周回軌道を持つ彗星の様なものだ。十数年の周期で太陽系に廻って来た時に長い尾を輝かせた姿を憧憬の念を持って見上げ、その時に様々なインスピレーションを得る。次に巡って来た時には何を思うのか、いや、次は巡ってくるのか?
 もし、巡って来なくなったとすればそれは多分寂しいことなのだ。