DX7修理

 最近、ここ数年来あまり高まることはなかった音楽制作へのモチベーションがぐっと持ち上がって来ている。日頃はときたまふっとやろうかと思うことはあるのだが、現状の機材環境がぐちゃぐちゃでそれをやり直すにはかなりの作業量が必要となることを思うと直ぐにモチベーションダウンして途切れてしまっていた。今の勢いからすると1、2曲完成まで持っていける位の持続力はありそうなのでまずは機材環境を再構築してしまって曲作りに専念できるところまでは年内中に持って行ってしまいたいところだ。
 どこから手を付けようかと考えて、まずは前々からやろうやろうと思いつつも実行に移せなかったDX7の修理からと決めた。

 我が家には2台のDX7がある。
 1号機は高校3年の時に入手したもの。その当時、自宅のアップライトピアノが駄目になって来て買い替えの話が持ち上がった時「DX7はピアノの代わりになる」と何日もかけて必死に親を説得し(というより騙して)拝み倒して買ってもらったもの。DX7が我が家に到着した時の衝撃的な感動は今思い出しても身震いがする。以来30年ずっと使い続けて今だに現役。2号機は会社に入って程ない頃に会社の同期が処分しようとしていたものを捨て値で譲り受けたものだ。こちらも使い始めて20年以上経つ。

 現状とりあえずそのまま使えるのだが、1号機は大学時代にうっかり折ってしまったボリュームのノブがそのままの状態で使い辛いし、サークルの後輩がタバコの火で鍵盤の一つに焼け焦げを作ってしまったのもそのまま放置していた。また、両機とも内蔵のメモリーバックアップの電池がなくなりかけなので交換の必要がある。更にどうせいじるのならこの機会にLCDユニットをバックライト付きのものにアップグレートしてやろうと目論んだ。
 パーツはLCDパネル以外は全てebayで見つかった。発注から1か月程でぼちぼち届き始めたので、届いた部品から少しずつ修理を始めた。

 まず鍵盤の交換。

 顔を引きつらせながら不始末を詫びるサークルの後輩の顔を何となく思い出して懐かしくなった。

 鍵盤の交換は至って簡単。メインパネルを開けて、鍵盤の直ぐ上の白く細長いストッパーを外せば鍵盤が一つ一つ簡単に外せる。

 あっさり外れた。

 交換用部品は中古品で送料込み1000円位。海外に発注した後、日本で更に安い物を見つけてちょっとがっかりしていた。

 これをはめ込んで鍵盤修理は終了。

 次はバッテリー交換。

 標準電圧は3.0Vで2.2V位まではバックアップ機能は働くらしいのだが、こいつは4.5Vと異常な値を示している。今のところメモリーの内容は保持されている様だが、いつ消えてしまうか分からないので今回バッテリーを交換してしまう。

 交換作業はちょっとやっかい。まずバッテリーがソケットに嵌め込まれているわけではなくメインボードに直に半田付けされてしまっている。更にこのメインボードを外すためには鍵盤ユニットを外して全てのコネクタを外さなければならない。

 底面の4本のねじと左右のカバーを外せば鍵盤ユニットが外れた。意外に簡単だった。メインボードのコネクタを一つ一つ外していく。元に戻せるかちょっと心配。

 ようやくメインボードの取り出し完了。

 直付けバッテリーを外し、ソケットをリード線で空中配線。据え置きなのでこの状態でも特に問題はないだろう。

 メインボードを本体に再装着してバッテリーを入れる。

 一通り組み立て直してバッテリーの電圧確認。3.0Vの正常値になった。

 更にLCDユニットのアップグレード。

 まずは部品集めバックライト付きLCDユニットについては、実際に交換された方のブログにパーツ型名が記載されていたので、ネットで探したら割と簡単に見つかった。先人の知恵は有難い。リード抵抗やピンヘッダーは送料を含めてもebayで調達した方が日本で買うより全然安い。難点は日数がかかることだが急がないので苦にならない。

 交換用LCDユニットのアッセンブリ完了。

 メインパネルのLCDユニットを外す。

 クリアパネルはLCDユニットに両面テープでしっかり貼られていたので剥がすのがちょっと大変だった。コネクタは完全ピンコンパチなのでそのまま差して使うことができるので交換は非常に簡単。

 装着後、LCD表示の濃度調整をこのボリュームで行う。

 作業完了。バックライトが光って暗くても視認性はばっちり。まあステージに上がることはこの先ないだろうから実際に役に立つことはないだろうが私的には大満足。

 さて、最後は折れたボリュームの交換だ。

 大学の時、ほんとうっかりでボリュームのノブを引っ掛けて折ってしまった時はショックだったが金が無くて修理ができずに放置、時々これを見ては喉に刺さった小骨の様に気持ち的に引っ掛かっていつか直してやろうと思いつつ月日が流れ今に至る。
 今回修理を思い立って、ボリューム部のスライド抵抗探しを始めたが、DX7に使われている松下製の10kΩ・Aカーブの30mmスライド抵抗がネット上を探し回っても全く見つからない。松下でも当然廃盤だし、パーツブローカーでも品切ればかり。20数年前の部品探しはやはりハードルが高い。ヤマハ社内のパーツナンバーを突き止めてヤマハに問い合わせてみたがとっくに保守期限が切れていて在庫なしとの回答、まあ予想通りではあったがこれで交換用の同型パーツの調達は断念した。次善の策は、スライド抵抗の折れた可動軸のみを交換するという方法。松下の同系列のスライド抵抗ならば恐らく可動軸は共通部品が使われているものと予想して、長さや抵抗値の違う同系列のものを探したらebayで見つかったので早速発注。

 本体から外したボリューブの折れたスライド抵抗と今回手に入れた部品取り用の松下製スライド抵抗。長さも抵抗値も違うが可動軸の部分は見た目にコンパチの様だ。

 分解して可動軸を取り出す。

 折れたボリュームを外す。単層の基板なので外すのは簡単だった。

 分解して軸の比較。可動部はどうやら完全コンパチ。軸の材質は新しい方はアルミなので簡単には折れない。ちょっとだけアップグレード。

 新しい可動軸を装着してスライド抵抗を組み立て直しテスターで抵抗値を測ったらばっちり所定の値が出た。この瞬間、してやったりでにやり!想定通りにスライド抵抗を復活させることができた。基板に再び半田付けして修理完了。

 本体を組み立て直してボリュームノブを付けて作業完了。ボリュームの動きはスムーズで音量もちゃんと変化する。積年の憂鬱もこれでやっと解消。

 修理完了品2台を自室にセッティングし直した。電池交換の際に消えてしまった本体メモリーはPC経由でMIDIOXというソフトを使い、ネット上で拾い集めていたシステムエクスクルーシブデータを送り込んで復活させた。
 早速動作チェック、2台ともちゃんと音が出て完全復活、これにて修理完了。

 この先恐らくキーボードを買い替えることはないだろう。DX7はこの先もずっと現役で使い続けることになる。