LEL2017/Report 10:Stage 7,Day 2/Barnard Castle-Brampton(83.2km/557.8km)

 7/31(月)、16:50にPC7を出発。

 仮眠予定のPC8 Bramptonまでは83.2km、この区間にはLELでの最高標高地点となる峠越えがある。最高標高地点と言っても標高600m程度だから日本の山岳ブルベを考えれば大したことはない。あと4時間ちょっとを頑張って走れば休息なので、今日の終わりが見通せて気分的には軽い。

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 Barnard Castleの市街地に入った。かなり大きな街で人も車も賑わっている。久し振りに渋滞に嵌まった。

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 街中のちょっとキツイ登り。

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 街を抜けると再び田園地帯。真っ直ぐな登り基調の道が続く。

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 広大な牧場には羊が多数放牧されている。道脇に牧場が増えてくるに従って路面に落ちている家畜の糞の量が増えてきて、避けながら走るのが結構大変。晴れて路面が乾いているからそれ程でもないが、これが雨でウェットな状態だとかなり面倒なことになりそうだ。

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 勾配3~4%程度の坂が延々と続く。日差しが強くてちょっとバテ気味でかなりきつく感じる。

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 もう何kmも登っているのになかなか終わらない。道の先に見えるのがピークかと思いきやそこに辿り着いてみると更に登っているということを何度も繰り返し精神的には結構堪える。

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 5km位登ってようやくピークをクリア。そこそこ長い距離を下る。

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 下りを終えて再び上り始めたところで、空が俄かに掻き曇り大粒の雨が降って来た。

 かなり激しい雨だが、これは局部的な俄雨と見てレインウェアは着ずにそのまま走り続ける。

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 読み通り20分程で雨は上がり青空が戻って来た。一時的に全身ずぶ濡れにはなったもののウェアは直ぐに乾き始めた。

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 登りの途中に家数軒の集落がぽつりぽつりと点在する。この集落には妙な案山子が幾つもあった。

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 なだらかな山の稜線が連なる。今まで真っ平らな地平線を散々眺めてきたのでこの風景はかなり新鮮。

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3%位の勾配が遥か先まで延々と続いている。どうやら最高標高地点までのヒルクライムは既に始まっていたらしい。

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 真っ直ぐな道の先にピークらしきものが見える。あそこまで行けば終わりか?

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 そこに辿り着いてみるとまた遥か先まで登りが続いている。PCを出てから30kmを過ぎたがまだ登りは続いている。もうかれこれ10kmは登っているはずなのに終わる気配がない。

 道のちょっと先に野ウサギがいたが直ぐに道脇の草むらの中に入って行ってしまった。その風貌は正にピーターラビットだった。ここまでの道のりで野ウサギの轢死体を幾つも見てきたが、遂に生きているピーターラビットを目撃することができてちょっと感激した。

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  行けども行けども山の稜線の向こうにまた新たな稜線が出てきて登りが終わらない。荒涼とした風景と緩やかで果てしない登り坂がまるで坂の無間地獄に思えてくる。

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 勾配がちょっときつくなり視線の先にはっきりとしたピークらしきものが見える。今度こそ終わりか!?

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 まだその先があった。また騙された。

 身体的な疲労に精神的なダメージが折り重なってかなりしんどい。たかだか標高600m程度の峠越えのはずなのに2000m以上の山を登らされている様な錯覚に陥る。思考停止してただ惰性でペダルを回し続ける。

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 何となく勾配が緩くなって平坦っぽくなってそして何となく下っている様な気がしてきた。もしかしてここがピークなのか?

 はっきりと分かるとがったピークではないが明らかにペダルを漕がなくてもバイクが進み始めた。どうやら今度こそピークに到達したらしい。2時間以上かけて20kmを登り、19:10に遂にLELの最高標高地点を越えた。

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 道は遥か先の谷間の方に向かって伸びている。

 長い長い下りが始まった。勾配は下りの方が若干きつく、どんどんスピードが出る。ここまで精神的に打ちのめされた様に登ってきたことが嘘の様に爽快な気分で下る。荒涼とした長い長い下りの道のりは、ツール・ド・フランスの超級山岳の下りで観るイメージそのもの。PBPでは感じられなかった相当にヴィヴィッドな体験だ。登りも長ければ下りも長い、一体いつ終わるのかという程に下り続ける。折り返してまたこの坂を登り返さなければならないのかと考えるとかなりナーバスになる。

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 10km以上下ってAlstonという街に入ったが、その街中の石畳の急勾配が半端なく怖い。10%以上の斜面に荒い石畳でバイクがばらばらになるんじゃないかと思う位の振動にビビりながら下る。Bramptonまではあと30km。

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 街を抜けて平坦基調を淡々と走る。20時半だがまだ日は充分に高い。何とか明るいうちにPCに辿り着きたいところだ。

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 工事用信号機に引っ掛かった。これがなかなか青にならない。後ろ追い付いてきたライダー達が無視してどんどん抜いていく。こっちは意地になって青になるのを待つ。もう一人のライダーも一緒になって待つが、10分近く経っても変わらないので結局無視して進むことにした。間抜けだ。

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 地平線に日が落ちた。路面が濡れているので直前に俄雨が降った様だ。

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 21時前にBramptonの街に入った。どうやら明るいうちにPCに辿り着けそうだ。

PC7 Bramptonに到着。今日はここがゴール、やっと休むことができる。まずはコントロールに向かう。


London-Edinburgh-London 2017/Control in Brampton, PC7

 チェックタイムは21:04。Barnardからの山岳地帯はかなりきつい思いをしたが結果的に大崩れせずに済んだので良かった。

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 次にドロップバッグを受け取りに行く。

 建物前にいたボランティアの人にライダーズナンバーを告げるとベランダの上の人にそのナンバーが伝えられ、上の人が建物の中に入ってドロップバッグを探して持って来て、建物前の人に投げ落とすというシステム。「これぞドロップバッグ!」とボランティアの人がはしゃいでいたのが可笑しかった。

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 食事とシャワーの前にベッドを押さえておこうとベッドブッキングのブースに行くと、ボランティアとしてフルクボさんがおられたのを見てびっくりした(後に聞いた話によると、元々はLELを走るつもりでエントリーされていたが直前で怪我をしてしまい走れなくなったためそのままボランティアとして参加されていたとのことらしい)。日本の仲間からのサポートが直接受けられるのは非常に有難いし心強い。

 早速ベッドをブッキングしようと思ったら、先に食事とシャワーを済ませてから来て欲しいということだったので出直すことにした。

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 食事は軽め。厚切りのベーコンが塩味が効いて旨かった。スープ2種も薄味だが悪くない。

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 疲労感がそこそこあるので、疲労回復のクエン酸摂取のため家人が持たせてくれた梅干しのペーストをここで食べる。懐かしい酸っぱさが何とも有難い。

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 取り敢えず2日目までは無事に終了した。明日はいよいよEdinburghに到達する予定。

 食事を終えてシャワーに向かう。受付でタオルを受け取りシャワールームに入るとちゃんと御湯が出て一安心、更にボディーソープまで用意されていたので汗や汚れを綺麗に洗い流すことができてすっきりした。シャワーを終えてドロップバッグに入れてあったTシャツや短パンに着替えるとサイクルウェアの束縛感から解放されて非常に心地良い。

 再びベッドブッキングのブースに行ってベッドを確保、明日の起床時間を4:30と告げてベッドに案内してもらった。ベッドはやはり体育館の中に並べられていてLouthと同じ様にエアマットと毛布が2枚用意されていた。昨日よりは既に寝ている人は多い。この感じだとこの後それ程時間がかからずにベッドが満杯になりそうだ。

 暗闇の中で荷物を整理して、アクションカムをモバイルバッテリーに繋いで充電開始。微妙に寒いので毛布は2枚とも上に掛ける。耳栓をして22時半過ぎに就寝。