LEL2017/Report 26:総括

 LELを走り終えて2か月が経過した。記憶の改竄はそこそこ進んでしまったが、きつかったという印象はまだ残っている。
 イベント前後もほぼ晴れだったし、走行中も本格的に雨に降られたのはトータルで10時間に満たなかったのではないかと思うので、「イギリスは雨」という印象は全くない。但し事前には全く想定していなかった風にやられてしまったという印象が強い。走行中はずっと南風が吹いており、往路は快調だったものの復路、特に4日目5日目は強い向かい風でかなり苦しめられた。
 コースプロフィールとしては、小さな街と街を結ぶ田園の中の道の繰り返しということでは基本的にPBPと似ているが、アップダウンの様子がちょっと違う。LELの場合は距離は短いが勾配が急なアップダウンが結構出てくる。急勾配で登り急勾配で下る時、登りでかなり脚を使わされるのに下りではスピードが出過ぎるのでブレーキをかけ続けなければならず休む時間も短いので疲労がどんどん蓄積していくイメージだ。往路ではそれ程気にならなかったアップダウンも、復路では向かい風に痛めつけられている分余計に鋸の歯の様に厳しく感じた。田園風景の中の道は、景色は勿論のこと信号もなく車通りも殆どないところが多かったのでそれぞれの区間で見ればサイクリングにはもってこいの道がたくさんあった。PocklingtonとBramptonの間の標高600m超の山への長い登りもそこだけならかなり楽しい登りのはずだ。でもこれが繋ぎ合わされて1400kmの長丁場になり、雨や風が加わってくるとハードさを増してくる。稲垣さんが言っていた「コース的にはPBPよりも楽」というのはあながち嘘ではないが、雨風次第といったところだろう。
 気候的には昼間は晴れていれば最高気温は20℃を超えてくるので夏のサイクリングコンディションとしてはベストだが、エジンバラに近い場所での夜になると10℃位まで下がるのでかなり寒い。私の場合は比較的に寒さに強い方なのだが、初日は半袖ジャージ+レーパンだけだったが2日目以降はアームカバーとニーカバーを付けて走った。人によっては冬装備を準備しても大袈裟ではないかも知れない。
 イベントの内容に関しては走行中は色んな面で特段の不都合はなかった。全てのPCでの食事はそこそこ充実していて私的には何でも美味しく不足なく食べることができた。仮眠所ではエアマットが用意され寝心地は良く、ベッド同士の間隔も広く、ホテル並みとは言わないまでもかなり快適に安眠できた。また、シャワー施設もきちんと御湯が出たし清潔なタオルと各人1枚ずつ貸し出してくれた。そして2か所にドロップバッグを送ることができるの私的には非常にポイントが高い。往復で仮眠所を共通(私はLouthとBrampton)にしてそこにドロップバッグを送るという走行プランを立てて走行中の携行物を最低限にしたことは実際相当に楽に走ることができた。これについてはPBPと比較して相当なアドバンテージだ。バイクメンテナンスのブースは主要なPCには必ずあったし、電子デバイスの充電ブースも大抵のPCに設置されていた。総じて主催者のホスピタリティーは高く、走行中は全くお金を使う必要がなかったことも考えれば4万円を超える参加費もこの内容ならば安いと思える。

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 走行予定と実績を比較してみるとやはり往路と復路では明確に差が出ている。初日の速過ぎペースは追い風で復路は向かい風、そして2日目からアップダウンによるロスが加わり、2015年のPBPの走行実績をベースに作った予定を大きく下回る結果となった。4泊5日で一日当たり5時間程度の睡眠は確保できたものの、ゴール直後のダメージは全身疲労は勿論のこと、両手のひらが打撲的な痛み、腰と背筋の痛み、右膝の痛み、尻は打撲的と擦過傷的痛み、右のアキレス腱が結構腫れ等々、ノーダメージに近かった2015PBPの時よりゴール翌日はベッドから起き上がれなかった2011PBPに近いものがあった。
 私自身の体感も勿論のこと、今回のLEL参加者全体の完走率が67%だったことを考え合わせればやはり相当にきついブルベだったと言える。風がなければ随分と印象は変わっただろうが、今回のコンディションで完走できたことで得られた達成感と充実感を喜ぶべきだろう。
 総じて、今回のLELは事前に思い描いていたイメージよりかなりハードなコースコンディションではあったが、主催者のホスピタリティーは高く安心して走ることに集中できたので、ブルベの苦し楽しさを存分に味わえたと思う。

 今回LELを何とか完走できたので、現時点では満足したという思いが強く次回また走ろうという意識はない。海外遠征は費用もかさむしそうそう何度も行けるものではない、年齢的な要素も加味すれば新しい目標を設定して別の場所を走りたいと思っている。自分の中では既に来年の目標を定めつつあるが、具体的に明らかにするのはもう少しはっきりと意志を固めてからにしようと思う。

 以下、備忘録。

1. ヒースロー空港からLondon各所への移動は基本的に地下鉄が圧倒的に便利。ホテルも地下鉄の駅に近いところに確保すると良い。
2. ヒースロー空港の到着ロビーを出て右にどんどん進めば自ずと地下鉄(Underground)乗り場に行ける。
3. 地下鉄の切符売り場でオイスターカードを買っておくと日本のsuicaと同じ要領で乗り降りが便利。とりあえず25ポンドのデポジットにしておくとやたらに観光で出歩かなければ事足りる。
4. オイスターカードの販売機はICチップ付きクレジットカードが硬貨しか受け付けない。紙幣はNG。
5. 地下鉄の車内はかなり狭く、バイクケースと一緒に乗るのはちょっと気を使うが何とかなる。
6. 地下鉄の駅によってはエレベーターがないところがあるので路線図で要確認。
7. 地下鉄Piccadilly Lineのヒースロー空港方面行は、ターミナル2,3,5行きとターミナル4行きは別の列車。
8. 各PCに用意されている食事は基本無料だが、コーラは有料だった。(私は買わなかった)
9. PBPの時はPCによっては便器に便座がなかったり汚かったりしたが、LELではそんなことはなく私の見た限りにおいてはトイレで不自由をすることはなかった。
10. 仮眠所での夜は寒い。Tシャツ・短パンでは毛布1枚だと寒いので下に敷くための毛布を上にして2枚重ねで凌いだが、長袖の服があれば問題なし。
11. 到着が深夜になるとPCによってはベッドの空きがなくなるので注意が必要。
12. 各PCでは充電コーナーが用意されていた。USBケーブルや電源プラグがあれば利用可能。
13. データSIMはイギリスEEという会社のものを日本で調達していったが滞在中は全く問題なく使用できた。携帯の電波も走行中の各PCでは問題なく受信できた。
14. ヒースロー空港のバイクケース預け入れは航空会社のチェックインカウンターではなく、共有の大型荷物預かりカウンターに行く必要がある。
15. ヒースロー空港では出国審査はない。
16. 飛行機がA380だったら2階席が良い。かなり静かなので耳栓なしでも眠れる。
17. 費用はエアチケット、ホテル、滞在費等の総額で20万円弱だった。

 さて、LELから帰国して10日後にはSR600KNを走る予定だ。こんな無謀なスケジュールを立てたことを激しく後悔したが、かなり身体はボロボロな状態で果たしてまともSR600を走ることができたのか?それはまた後日。