MGM2018/Report 7:Stage 4,Day 1/Fromista-Cistierna(115km/437km)

 8/20(月)、13:40にFromistaのスーパーマーケットをリスタート。約40分程の休憩、予定より丁度休憩分の遅れだが休憩すると多少復活するので休憩を省略することはできない。

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 Fromistaの街中を抜けていく。相変わらず人影は少ない。俺もシエスタしたい。

 Cistiernaまでは115kmとMGMの中では最長の区間距離。獲得標高差は800m超とそれ程でもないがゴール直前に山越えがあるのが厳しい。後は昼下がりから夕刻まで一番暑さが厳しい時間帯を丸々走らなければならず、この区間の難易度を一気に上げる。恐らく一気に走るのは難しいので中間辺りで休憩を入れるつもりだ。とにかくあと6時間頑張れば寝られる。それだけが心の支えだ。

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 街を抜けると先程と同じ様に真っ直ぐな平原の中の道が続く。暑さも相変わらず。でも休憩した分、多少心持ちに余裕がある。とにかく運動強度を上げず、無闇に体温を上げない様にそろりそろりと走る。

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 このクソ暑い中、道脇のあぜ道を歩いている人をちょくちょく見かける。ただの一本道が延々と続いているだけなので一体どこへ、何のために歩いているのか不思議に思える。ロバもいた。通り過ぎ様に写真を撮ったら驚いて走り去ってしまった。放し飼いみたいなのでこっちに向かって走って来なくて良かった。

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 337km地点、小さな街の中にあったジュースの自動販売機。ここまで走って来て何カ所か見かけた。どこかで試してみたいと思ってはいるが、ちょっと休憩するには早いのでここは素通り。

 とりあえず今日のゴールまで100kmを切った。あと5時間。

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 ひたすら平坦。向かい風でないのが救い。もしここが向い風だったらと想像すると底知れぬ恐怖を感じる。

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 342km地点、Carrion de los Condesという街に入った。

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 古く立派な建物がある。歴史を感じさせる小さな街だ。

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 時たま道脇に木が生えていて日陰を作ってくれている。ここを通り抜ける時は無茶苦茶涼しい。日陰は正にオアシスだ。

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 多分1~2%位の緩い勾配のアップダウンが出て来た。坂自体はどうということはないが、日差しが厳しい分堪える。気温はともかく体表面の温度は40℃を軽く超えているに違いない。東京の暑さは蒸されているという感じだが、ここのは文字通り焼かれているという暑さだ。こういう広大な平原は気候が良ければ解放感を存分に楽しめるはずだが、今は涼しさの欠片も見えず恨めしく思える。

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 Fromistaを出発してから1時間経過、ちょっとへばって来たので木陰で小休止をしたいと思うのだが、木陰が全然やって来ない。向かう先に木を探しながら淡々と脚を回す。

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 Fromistaから1時間半、40km近く進んでようやく木陰を見つけて小休止。日陰に入ると本当に涼しい。湿度が低いと熱対流が少ないので日向と日陰の温度差が凄い。10分程休んでリスタート。

 今は西に向かって進んでいるが区間の丁度中間地点辺りの街で北に進路変更をする様なので、そこで休憩を入れることにする。

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 幾つもの緩いアップダウンを越えつつ、向かう先に街らしきものが見えて来た。やっと休憩できると思うと、少しだけ元気が出て来た。

 街が近付いて来たと思ったらルートは街中を通らない。街にはちょっとコースアウトしないと行けない様だ。余計に距離を走って無駄脚を使いたくはないがどう考えてもあと60kmを走り続けられそうになく、気持ち的にも休憩モードになってしまったのでコースアウトして街に向かうことを決断する。

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 385km地点からコースアウトしてSahagunという街に入った。街中までは2km程、短いが急勾配のアップダウンがあって脚を削られる。

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 街中に入ったもののスーパーマーケットが見当たらない。入り組んだ街中の路地を彷徨い走りながらスーパーマーケットを探す。バルは1、2軒あったがコーラではなくアクエリアスが飲みたかったので、バルにはアクエリアスは置いてないだろうと決めつけてあくまでスーパーマーケットを探すのに固執した。15分程街中を彷徨ったが結局見つけられず、何かだんだん腹が立って来てあくまでも決めた通りにアクエリアスを飲むことに拘りこの街での休憩を断念、再び2kmのアップダウンを越えてコース復帰した。

 街を出てからふと我に返り、何でさっきの街でバルでも何でも良いから休憩しなかったのか、後悔した。折角時間と脚を使ってコースアウトしたのに休憩しなかったらただの無駄じゃないか、ちぐはぐな状況判断に自分でも腹が立つ。とにかく休まないと持たないので次の街に向かう。

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 388km地点、Villapecenilという街に入った。街というより集落と言った方が良い程小さい街で、街中に入ったもののバルも店もなくすごすごと退散。街から出ようと小さい路地に入ったら荒れた路肩を通過する羽目になり、狭くて側溝のある路肩でバランスを崩して落車して側溝に落ちてしまった。側溝の落差は数10cmあったが幸い土と枯草だったのでバイクも人間も壊れずに済んだ。横倒しになったバイクをなかなか起こすことができず、無闇にもがきながら途方に暮れた。一体俺は何をやっているんだ。こんなところで意味もなく落車して怪我したりバイクを壊したりしたら只の大馬鹿野郎じゃないか。まともな判断ができなくなっていて事の重大性に今更ながら気が付いた。ようやくバイクを起こして、気を取り直しバイクに跨った。とにかく何でもいいから休もう。次の街に向かってよろよろと走り出した。

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 幸い次の街は直ぐにやって来た。394km地点、Ceaという街に入った。この街で絶対休む。

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 街の入口にバルがあった。他の参加者のバイクが数台停まっている。助かった!吸い寄せられる様にバイクを停め、よろよろと店の中に入って行った。

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 なんと、アクエリアスが普通に置いてあった!ここまでの苦労は何だったんだ。最初からここに来ればよかったじゃないかと激しく落胆しつつも、氷の入ったグラスに注がれた冷たいアクエリアスのオレンジ味を一気飲みした。

 「…!!!…」この旨さは筆舌にし難い。正に九死に一生を得たという感じだ。暑さでグロッキー寸前の心身が身体内外から冷やされて徐々に落ち着きを取り戻してきた。結局アクエリアスを3本飲み、親切な店主にボトルを氷水で満タンにしてもらった。20分程休憩して店を出た。

 あと40km、とにかく2時間頑張ろう。バイクに跨り再び走り出した。

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 街を出たらいきなり登り。休憩直後だったので何とかやり過ごした。

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 小高い丘を一つ越えたら再び真っ直ぐな平坦が続く。

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 もう無闇に抵抗するのは止めた。どうせ勝てっこないのだから負け犬らしくこそこそと走ればいいじゃないか。どんなに遅く走ったって4時間はかからないはずだからもうたらたら走ろう。心拍をリカバリーペースまで落としてゆっくりと思考停止して進む。

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 416km地点、Almanzaという街に入った。道路標識にCistiernaの文字が出て来た。今日のゴールまで20kmを切った。

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 日はだいぶ西に傾いたがまだまだ気温は高い。再びバテ気味になって来たので今度は躊躇せずに直ぐに道端の木陰に停まって小休止。15分程休んで出発。

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 平坦基調が緩やかな登り基調に変わって来た。向かう先には山が連なっている。これが事前の地図読みで見た最後の山越えか。心の準備をしつつ進む。

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 430km地点、Fromistaから108kmでCL-626という幹線道路に出た。Cistiernaまでは10kmを切ったはずだ。あと数km登れば街までは下りゴールのはずだ。

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 最後の坂を残りの力を振り絞って脚を回す。もう限界に近いところまで消耗しているのが良く分かる。身体が思う様に動かなくなってきた。両太腿も攣りっ放しの状態だが痛みにも慣れた分脚を止めることはなくなっていた。きつい西日を正面から受けながら、カメの歩みの様な速度で何とか登って行く。

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 やっと頂上が見えた!これを越えればあとは下ってゴールだ。

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 下りに入ったと思ったらちょっと下って直ぐにまた登りになった。束の間の喜びが絶望に変わった。目の前に続く長い登り坂は無間地獄だ。

 きつい、きつ過ぎる…。

 あと数kmが途方もなく遠く感じる。思う様に動かせない身体を引き摺る様に脚を無理矢理回して這う様に登って行く。

 後ろから数名の参加者が楽しそうに御喋りをしながら追い付いて来た。「Allez, Japonais! Last 5km!」と声を掛けて軽々と抜いていった。5km!まだ5kmも登るのか…。死刑宣告に近い一言に奈落の底に突き落とされる思いだった。ひょいひょいといいスピードで登って行く男女の小集団を見送りながら敗北感に苛まれる。何なんだこの力の差は、やはりこのコースを走るのは無謀だったか。もうメンタル的にも打ちのめされてふらふらと登り続ける。

 2km程登って山頂を通過、流石にもう目の前には山はない。ホッとして下りに入る。意識も朦朧としているので最後の気力を振り絞って集中して下る。

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 Cistiernaに着いた。何とかここまで来ることができた。

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 コントロールの案内板に促されて敷地内に入った。

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 敷地内の階段をバイクを抱えて徒歩で移動。たった数段の階段で脚がもつれてコケそうになった。

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 437km地点のC5/Cistiernaに到着。やっと着いたよ。心底安堵した。我ながら良くやった!

 兎にも角にも今日の仕事はこれで終わり。一晩寝れば次の展開が出てくるだろう。とにかく休む。

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 まずはコントロールでチェックを受ける。

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 チェックタイムは8/20の19:29。終わって見れば予定より30分遅れで食い止まっていたのには我ながら驚いた。

 受付で売っていた夕食セットを買って、まずは寝床の確保だ。受付でベッドブッキングはどこかと聞いたら「受付はない。ホールで勝手に寝て」みたいなことを言われた。

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 体育館と思われるホールに入ったらマットが20枚程敷いてあるだけだった。まだ殆ど使われていなかった。ここまでの道すがら、ベッドが一杯だったらどうしようかと心配だったが全くの杞憂だった。それにしてもこれだけの枚数で足りるのだろうか。

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 ドロップバッグを受け取る。受け取るというより置いてあるものを勝手に持って行って出発する時に元に戻しておくというシステム。

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 マットを一枚引き摺って体育館の隅に移動。ここなら多少騒がしくても大丈夫だろう。上に掛ける毛布等は用意されていないのは想定外。

 寝床を確保してからシャワーに行く。シャワーも特に誰かに断る必要はなかった。シャワーは水しか出なかったが火照った身体にはむしろ気持ちが良い。ボディーソープが置いてあったのは幸い。汗と汚れを綺麗さっぱり洗い流してすっきりした。ウェアからTシャツ&短パンに着替えて束の間の解放感を楽しむ。

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 シャワーの浴びてすっきりして夕食。受付で買った夕食セットは€7。御世辞にも豪華という感じではないがそこそこ量はある。パスタは見た目よりは美味しかった。疲れ過ぎていて余り食欲がなくパスタを2/3程食べてパンには手を付けられず、明日の朝食に回すことにした。日本ではほとんど食べることはないリンゴの丸かじりがとても美味しかった。

 明日のリスタートは予定通り3時ということで起床時間は2:30でスマホとリストウォッチ両方にアラームをセットする。

 食事を終えて21時前にマットに横になる。気温が下がって来たので、アームウォーマーとニーウォーマーを付けてスタートの時にもらった反射ベストを上に掛けて毛布代わりにする。

 横になった途端に、両手の指が数本攣った。揉み解そうとちょっと身体を動かすと今度は脚が攣った。もそもそと動いていると身体のあちこちが攣るので全然眠ることができない。これはヤバい、塩分が全然足りて無さそうだ。干し梅は外のバイクのフロントバッグに入れてあるので取りに行くのが億劫だし、どうしようかと思ったらそう言えばさっき食べ残したパンにハムが挟まっていたぞとそれをもそもそと取り出し食べた。すると直ぐに何やら全身各所で小さな泡がプチプチとはじける様な音が聞こえる気がして(多分錯覚)、徐々に解れてきて全身の攣りが治まった。以前のブルベで全身が攣った時も梅干しを食べて直ぐに治ったのと同じパターンだ。とにかく1秒でも長く寝なければと、目を瞑って深呼吸を繰り返す。就寝時刻は21時過ぎと思われる。