8/22(木)、11:26に無事にランブイエにゴールした。
ゴールの瞬間、気持ちが一気に高揚して、コントロールでブルベカードにサインを貰ってオフィシャルに手渡し取り敢えず仮認定が確認されて、何か月も前から準備してきてそのその間にずっと抱えて来たプレッシャーから解放された安堵感はとても大きい。恐らく達成感や充足感が支配的になるのはもう少し時間が経ってからになるだろう。
先ずはどこかに座って落ち着こう。
ゴールコントロールで貰ったミールチケットを引き換えにフードコートに並ぶ。長蛇の列はなかなか進まない。
食事を受け取り、別売りのコーラを買おうと思ったら飲み物カウンターには誰もいなくてどうやら品切れ状態らしい。勝利のコーラは手に入らなかった。残念。
フードコートというかテントの中は大賑わいで空いた席を探すのは一苦労。人を掻き分けうろうろしていたら日本人が集まったテーブルに上手い具合に空席があったので座らせてもらう。
ナミキさんや内装変速機のランドナーに乗ってらっしゃる方(すいません、名前を失念しました)等の御顔が見えた。
無事に完走を果たされた皆様の写真。皆様適度にヨレた感じが如何にもという風情でとても良い。
ミールはパッと見で少なそうに見えるが食べてみるとそこそこボリュームがあって美味しい。前回のミールが貧相だったので今回は改善されたも模様。
ナミキさんとしばしの歓談。「今回こんなにキツイとは思ってなかった」と仰るナミキさんに完全に同意。確かに私的にも前回と比較してかなりきつかったというのが正直な感想だ。原因については天気が良過ぎたことと歳を取ったことというのがナミキさんと私の共通認識。
先程首にかけてもらった完走メダルをまじまじと見る。その場で直ぐにもらえるのも嬉しいけれど、この四角の部分に完走タイムを刻んでもらって後から送ってもらった方が良かったというのが正直なところ。
ヨシダさんが他国の参加者とジャージ交換。(後日談で、実はこの時ヨシダさんはジャージのバックポケットにガーミンを入れたまま渡してしまったらしい。さすが太っ腹)
食事を終えひとしきり歓談を終えて、さてホテルに戻ろうと皆に挨拶をして席を立った。
テントの外に出て、先ずはバイクを取りにバイク置き場に行ったがバイクが直ぐに見つからなくてちょっと探し回ってしまった。
ゴール地点は相変わらずの大賑わい。色んな国の言葉が飛び交い、大イベントが終わった安堵感と喜びに溢れた賑やかな雰囲気に満ち溢れている。この空気の中に紛れ込んでいるだけでこの歴史あるブルベの最高峰のPBPの構成要素の一部になれた様な気がして何だか誇り高い気分になる。
ゴールの瞬間に写真を撮ることができなかったゲートを改めて撮る。まずは裏から。
そして表から。ゴールの瞬間のこの風景をしっかりと憶えておこう。
もう少しゴールの余韻に浸っていたいと思いつつも、早くホテルに帰ってウェアを脱いでシャワーを浴びたいという思いも強く、その場を後にする。名残惜しさにもう一度ゴールを振り返る。こういうイベントのゴール後はいつものことだがあっさりとフェードアウトしていく。
ゴール前の最後の直線を遡るとこれからゴールする参加者達がどんどんやって来る。思わず手を挙げて「Congratulations!」と声をかける。
ゴール地点の敷地を出て、ランブイエの街中を緩々と走る。スタート前日に結婚式真っ最中の花嫁さんを見た教会の前を通り過ぎる。あれを見たのが随分前の様な気がする。
ランブイエ駅の到着。そそくさと切符を買いホームに入る。ホームはそれ程混んではいなかった。
10分程の待ち時間で12:52発のランブイエ行の普通列車に乗車。
一緒に乗り合わせた参加者達も心地良い疲労感に静かに浸っている様子。
列車に乗って一人になって静かになって、ゴールの興奮から覚めて落ち着いてきた。ぼんやり振り返ると、やはり今回のPBPはきつかった。2015年は楽に終わった印象があったので何が違ったのかゆっくり後程分析しよう。でも最終日で帳尻が合った感じ。今日は本当に最高だった。素晴らしい道、素晴らしい天気の中を達成感と充足感に浸りながら走った。素晴らしいアドベンチャー映画のエンドロールの様な時間、頭の中で相応しい音楽を探しながら走るのは楽しかった。やはりPBPは楽しい!夢の世界の出来事の様だ。また走りたい。まだゴールした直後なのに既にまた次を走りたいと思えるのがPBPの大きな魅力だ。
でも今は速くホテルに帰ってシャワーを浴びて全裸で冷たいコーラを50万リットル位飲みたい。そしてベッドに横になりたい。
1200km、86時間の道のりを走り切った我が両脚。じんわりとした疲労感が心地良い。
さあ、これでムール貝をバケツで食べながらビールを飲む権利を得た!スタート前に狙いを定めた店に突撃するぞ。
14時前にモンパルナス駅に到着。
4日振りのモンパルナスはもう何となく我が町という感じに懐かしい。
PBP参加者の一人が改札を抜けようとしたら抜けられない。どうやら切符がランブイエの自動改札を通過していないので切符に通過記録が記録されておらずにちゃんと認識されないのだろう。
直ぐに駅の係員がやって来て、PBP参加者をまとめて改札の隣の通用門の扉を開けて通してくれた。
駅に降り立った参加者達がそれぞれの帰るべきところに散っていく。皆さん御疲れ様でした!帰るまでがブルベです。帰宅まで御気を付けて!
モンパルナス駅のロビーは相変わらずの人混み。でも少しだけ風景が違って見える。大仕事をやり遂げて何となく誇らしい気持ちで堂々と人混みを掻き分けて行く感じ。でも行きかう人達はそんなことには一切気付きはしないのだけれど。
モンパルナスの駅舎を出ると大都会。昼下がりの強い日差しも相俟ってちょっとクラッとする。PBP走行中の田舎の牧歌的な雰囲気からの一気の場面の展開にちょっと付いて行けていない。でももうホテルは目前。取り敢えずバイクに跨って走り始める。
もしかしたらこれがフランスで最後のサイクリングになるかも知れないので、ゆっくりと楽しみながら走る。
モンパルナスの街中をうねうねと抜ける。どんどんホテルが近付いてきて安堵の気持ちが強くなっていく。
14:10、ホテルに無事帰着。
フロントで鍵を受け取り部屋に入る。部屋に辿り着いてやっと本当に肩の荷が下りた感じがする。やっと終わった。
先ずはシャワー。5日間文字通り着っ放しだったウェアを脱いだ時の解放感は物凄い。水に近いぬるいシャワーを浴びるともう最高に気持ちが良い。身体中の汗と汚れを洗い流して心身共にすっきり、しばし全裸でこの解放感に浸る。
シャワーの後は当然冷たいコーラを飲みたいのだが、ホテルでは売っておらず、ホテルを出て買いに行くのが億劫なので水で我慢。それにしても、この部屋には冷蔵庫があって、走り終えて戻って来た俺がコーラを欲しがるのは簡単に予測が付くはずなのに何故事前に買い置きしておかなかったのか。5日前の俺を厳しく糾弾したい!
この後サンカンタンまでドロップバッグを回収しつつ日本人懇親会に参加しなければならない。懇親会スタートは18:00なので16時半にはホテルを出なければならず、一眠りする時間はない。取り敢えずベッドに横になってPCを開いてツイッターなどを眺めつつ短い休息をとる。
16時半にホテルを出て徒歩でモンパルナス駅に向かう。少しだけ遠回りをして通ったことの無い道を歩いてみる。都会の一部なのでどこを歩いても多層の建物が建ち並び商業区画といった風情。身体的には疲労感は確かにあるがまずまず普通に動けるし宴会に参加できる程度の余力は十分に残っている。疲労困憊で身体ボロボロということは無さそうだ。
駅の到着。17:01初のランブイエ行きの普通列車に乗る。
どうしてもコーラが駅のホームに会った自販機を試してみる。ICチップのクレジットカードとコインで買える様だがコインを使ってみる。投入はユーロコインしか受け付けてくれないが、端数の御釣りはちゃんと出て来た。コーラは500mlペットボトルで€2.5、日本の倍以上の値段だ。
列車が到着したので早速乗車。
やっと手に入れた念願のコーラ。旨過ぎる。ペプシでも充分に旨い。
そう言えば今回バイク無しで列車に乗るのはこれが初めてか。身軽なので2階席に座ってみた。乗客は少なくボックスシートを一人で占有できるのでゆったりできるのが良い。
ヴェルサイユに寄ってみたかったけれど時間が無くて見送り。ちょっと残念。
サンカンタンの駅に着いたら、日本人御一行に遭遇。田中会長やけーこさんの姿もあった。場所が良く分からないのでそのまま付いて行くことにする。
スマートフォンのナビを頼りに駅前の集合住宅群の敷地の中を抜けて歩く。
地図で見ると駅の傍に見えたが意外に結構歩かされる。
15分程歩いてようやくホテルに到着、無事にドロップバッグを回収した。ここのホテルが懇親会の会場なのでそのまま中に入る。
そこそこ人は集まっているがなかなか受付が始らないので何となく顔見知りと会話しつつうだうだと過ごす。開始時刻の18時半近くなってようやく受付が始り、受付待ちの長蛇の列ができる。どうもツアコンの段取りが悪く、受付が遅々として進まない。
19時を過ぎてようやく開会。やっと飲める。
ビールはまあ旨い。随分待たされて何となくだらだらと無駄に時間が過ぎてしまい興醒め感が強いというのが正直なところ。
完走された人、残念ながらDNFだった人、それぞれの思いを和やかに語り合っている。
フルクボさんに御会いしてしばし歓談。話題は早くも来年以降の海外ブルベのこと、私的に来年メインターゲットはイタリアの1001Migliaなのだが山岳が物凄くキツそうなのでかなり腰が引けているのだが、フルクボさんが「そんなことないですよ。楽勝ですよー」と太鼓判を捺してくれたのでちょっと気が楽になった。
テラスにはバイクが数台。ゴールしてそのまま乗り付けた人もいる様だ。
懇親会自体の雰囲気は悪くはないのだが、正直打ち上げとしては全然物足りない。会費6300円も払ったのに、ビールをグラス2杯しか飲めないし食べ物もオードブルに毛が生えた程度のもので、走り終えた参加者達が群がってあっという間になくなってしまった。幾らフランスは物価が高いと言ってもちょっとコストパフォーマンスが悪過ぎる。ツアコンの段取りも余り良くないし、かなり興醒め。ビールをグラス2杯なんて飲んでいないのに等しいので、今の時間ならこの会をなかったことにして打ち上げの仕切り直しが可能だ。そう思ったら善は急げ、ビールをさっさと飲み干して、会が始まってまだ30分も経たないうちにそそくさと会場を抜け出した。
前回のスタート地点だったヴェロドロームは懇親会場のホテルのほぼ隣。懐かしい。こうやって見ると、前回のスタート地点はこんなに鉄道の駅に近かったのか。ならば前回は既にモンパルナスから鉄道移動を実行していたので、ヴェルサイユに宿を取らずにモンパルナスに宿を取るというアイディアに思い至らなかったのが我ながらちょっと解せない。前々回が自走移動だったので、基本自走でしか行けない場所だという思い込みが強かったのと、自走途中でヴェルサイユを通過したというのが思考を支配していたからだろう。でもまあリサーチ不足と言った方が早いか。
サンカンタンの駅に着いたらちょうど列車が行ったばかりで30分程待たされて列車に乗った。
さて、改めて打ち上げだが当然一も二もなくムール貝だ。過去2回フランスに来たのに1度もムール貝を食べることはなかった。8年越しの悲願である。既にPBPスタート前に店の目星は付けてある。というより4年前に既に店は決まっていた。そこに向かう。スマートフォンで今日は営業中であることを確認した。
21時前にモンパルナスの駅に戻って来た。
駅舎を出てそのまま打ち上げ会場に向かう。既に場所はリサーチ済み。駅から南に向かって歩く。
21時を過ぎてもまだ明るい。ちょうど宵の口で良い感じ、飲み始めるのは絶好の時間帯だ。
10分足らずを歩いて目的の店”Léon de Bruxelles”に到着。
時間的に混んでいる時間帯らしかったが、着いてみるとそこそこ空席があって問題なく着席。
うー、店の中の匂いを嗅いだだけで空腹で死にそうだ。一気に気分が盛り上がって来た!
英語メニューを貰ってオーダーする。
まずはビールと小魚のフライで独り打ち上げ開始。ビールが旨いぞ!空きっ腹にビールが染み渡っていく感じを存分に楽しむ。さっきのサンカンタンで既にちょっと飲んでしまったので、ここでの1杯目の楽しみが半減してしまうのではないかと不安だったがそんなことは全然なかった。やはり打ち上げは独りで行きたいところに行き食べたいものを食べるに限るな。
2杯目のビールを飲みつつムール貝を待っているがなかなか来ない。近くのカウンターにどうやら私の分のムール貝の鍋が運ばれてきているのだがなかなか持ってきてくれない。もしやと思って、3杯目のビールを頼む時に「ムール貝まだ?」って店のおねえさんに聞いたら、ニコッと笑って「持って来ていいの?」と言いつつまだ残っている小魚のフライを下げようとしたので「まだ食べるからそのままでね」と伝えた。前々回のPBPでも、ゴールしてホテルに戻ってレストランでステーキを食べに行って、ビールを飲んでサラダを食べながらステーキを待っても一向に出てこなくてサラダを食べ終えた途端に間髪入れずにステーキが出てきたということがある。まあフランスではレストランではそういう食べ方をする文化なのだろうが、私的には何品も並べてちょこちょこつまみながら飲みたいので、もしかしたら下品なのかマナー違反かも知れないがここはひとつ我流を通させてもらおう。
遂に来た!鍋一杯のムール貝。8年越しの宿願を遂に果たす時が来た。カウンターにしばらく置きっ放しにされたのでちょっと冷めているかも知れないがそんなことは最早どうでも良い。早速頂く。
旨い、とても旨い。語彙が貧困なので的確に言い表せないがとにかく旨い。
毎度のことだが、時間をかけて準備してプレッシャーに耐えてそれなりにきつい思いをして実際に走り、そして首尾良く完走を果たし解放感と達成感と充足感に満たされた中で飲むビールと食事はもう何物にも代え難い無上の幸せの瞬間だ。この経験をしたいがために苦手でしんどい海外遠征をしている様なものだ。今回もこの瞬間を迎えることができて本当に良かった。
窓際に座っていたのだが、後ろでコンコンと音がしたので振り返ったらサイクルジャージを着た恐らく参加者と思われる男性がサムズアップで挨拶をしてくれた。私がPBPの公式ジャージを着ていたのでそれだと分かったのだろう。ちょっとびっくりしたがこちらもサムズアップで返す。本の数秒の出来事だったけれど、もう最高に嬉しい。
あっという間に一鍋分のムール貝を食べ終えてしまい、まだ食べ足りないのでおねえさんにメニューを貰って、もう一鍋ムール貝を注文したら「今何て言いました?」と聞き返されてしまった。2回もムール貝を注文する客は殆どいないのか?「御腹空いているので」と言い訳しつつ注文をねじ込んだ。
二鍋目がやって来た。今度のはトマト入りの物にしてみた。
これもなかなかに旨い。どんどん食べられる。二鍋目もサクサク平らげて、もうちょっと食べられそうだったけれど流石に三鍋目に行くと財政的に大変なことになりそうだったので腹八分目で満足したということにして1時間半程の打ち上げは無事終了、店を出た。
ほろ酔い加減に夜風が心地良い。街の明かりがとても綺麗なモンパルナスの街中をぷらぷらと歩く。
打ち上げの前に比べれば人通りは減ったものの街はまだまだ活気がある。雑踏に紛れて歩いているだけでも何となくパリの街に同化できた様で楽しい。パリの街中は大体イメージ通り。人はフランスパンを剥き出しで持ち歩き、カップルはそこら中でキスをして、パトカーはあの音で走り回っている。要するに正確な情報がきちんと世界中に伝わって正しい認知がされているということか。それに比べて海外で作られる日本のデフォルメ映像は余りの的外れさに辟易する。要するに情報量の差ということだな。
それにしても海外苦手で人見知りする肝細の俺が、パリのド真ん中で独りでムール貝の殻をつついてビールを飲んでいるなんて誰が想像しただろうか。この変貌振りが一番信じられないのは俺自身。
モンパルナス駅前を通り過ぎ、ホテルへの道のりを緩々と歩いていく。
ホテルが近付いてくると再び空腹感が増してきた。全然食べ足りない。目星を付けていたホテル近くの中華料理屋はもう閉店していた。私的に拙い経験で言えば、海外で食事に迷ったら中華に行けばハズレは少なくて済む。世界中で中国人が一定範囲を確保できているのは中華料理の威力だと信じて疑わない。インドネシアで食べたナシゴレンで一番美味しかったのは地元土着の店ではなく中華系の店だったのを思い出した。うろうろと歩き回るのも面倒になってそのままホテルに戻った。
ホテルに戻ってベッドに横になり、PCを開いてツイッターなどを眺めていたら睡魔がふんわりと襲って来たので無闇に無抵抗でそのまま夢の中へ退場。就寝時刻は0時前と思われる。