最後のサイクリング

 昨日のライブは個人的にいつになく調子がよく、その後の打ち上げまでハイテンションで駆け抜けました。心身共に過放電状態になると気持ち的に無防備になることがままあります。

 昨日のうちにネットで見つけた通勤用ホイールの中古の安い出物を見せてもらうのを店にメールしていたので、昼前に起き出してとりあえず車に乗って出発しました。
 雨の中を運転しながらカーステから流れる音楽を聴いていて、無防備な気持ちに染み入ってきたのがザヴィヌル・シンジゲートの「The Immigrants」というアルバムの7曲目の「You Understand」という曲。淡々と流れるスローテンポな曲に、特にこれといった具体的な何かを思い出すわけではないのだけれど昔を振り返った時に気持ちの中に醸成される懐かしさや一抹の寂しさや満足感やらが混ざったちょっと形容し難い感情に途方に暮れてしまいました。

 そんな時に「最後のサイクリングにはこの曲を聴いていたいなあ」なんてことをふと思ってしまいました。
 「これで自転車に乗るのも最後か」なんてことを果たして意識して走ることがこの先訪れることになるのかどうかなんて想像できませんが、でも間違いなくその機会は訪れるでしょう。
 最後にどこを走りたいかと考えると、天気の良い昼下がりにただ真っ直ぐな道以外周りには何にもない所を独りで淡々と走りたいなあなんてイメージが浮かんできました。その時にこの曲を聴いていたいなあっていう感じです。

 そんなこの曲の作者、ジョー・ザヴィヌルも昨年秋に亡くなりました。時間だけは確実に過ぎていってます。この先もせいぜい悔いなく生きていかねばならんな、なんて取り留めのないことをぼーっと考えていた雨の日曜日でした。