まず、物議を醸しそうなタイトルを御容赦頂きたい。
今朝の出来事である。いつものように自転車通勤の途上、幹線道路を走行中に前を1台のピストバイクがゆっくり走っていたので何気なく追い越した。追い越しながらそのバイクを見遣るとブルホーンバーにはブレーキレバーはなくブレーキアーチも見当たらない。ノーヘルの”それっぽい”格好をした若者が乗っていた。
ちょっと走って幹線道路から脇道に入った。住宅街へ通ずる車一台分位の幅の道で100mちょっとを緩やかに下っている。この道の先には小学校があり学童が登校する時間帯に重なるので当然ながら徐行する。
坂を下っていると前方に鞄を持ったサラリーマン風情の男性が1人歩いていてその先にはスクールゾーンを示す時限の車止めが左側に置いてある。坂を下りながらその男性を右から抜き、そのまま車止めも右からパスしようとした時、後から物凄い勢いで迫ってくる自転車の車輪の音が聞こえてきた。そのスピードは尋常ではない。坂道を慣性で下って来るスピードとはまるで違い明らかに”踏みが入って”いて、私を追い抜こうとする意思が感じ取れた。
一瞬、「何事か!」と思ったがこちらは既に歩行男性を追い越し右側に寄って車止めを回避するコースに入っていたのでそのまま進んでいると、今度はその車輪の音が一気に左側に移動し、直ぐ傍まで迫って来た。左から強引に追い抜くつもりらしいがどう見ても車止めと私のバイクの間にはスペースは無い。「マジか、こいつ!?」と驚きながらも、タイミング的には私の方が先に車止めと並ぶので、その自転車が急ブレーキ音を鳴らしながら急停車する場面を想像した。
しかし次の瞬間、私の直ぐ背後で”ドン!”という大きな音とともに男性の叫び声が聞こえてきた。ブレーキ音や車輪の擦れ音などの回避行動の気配は全く無しに、いきなりである。
「やったか!?」と思い急いで後ろを振り返ると、さっき追い越したピストバイクが倒れ、サラリーマン男性が腰を押さえて仰け反り苦悶の表情で呻き声を上げていた。バイクの若者は男性を起こそうとしていたが、あの勢いで背後から突っ込まれたのだからそう簡単に起き上がれそうに無い。
私は引き返して手を貸そうかと思ったが、バイクの若者のあの尋常ではない無理抜きに私に対する敵対心を感じたので、戻れば更に面倒なことになるかも知れぬとその場を後にした。
スポーツバイクに乗ったことのある者なら、ブレーキの無いバイクの振る舞いがどんなものかは容易に想像が付くはずだ。「止まれるわけが無い!」のである。
ノーブレーキピストに乗っている輩からすれば「ロードバイクだってスピード出るんだから似たようなもんだろ」と言うかも知れない。確かにロードバイクだってブレーキが付いているとは言え制動距離が0になるわけではなく乗り方を誤れば凶器となることは否定しない。だからと言って五十歩百歩でブレーキ無しバイクが容認される余地は断固として存在しない。
一般公道でブレーキ無しバイクに乗ることは、絶対に止めて欲しい!
何が怖いかと言えば、ブレーキの付いていないバイクでも乗りこなせると思って敢えてブレーキ無しバイクを選択する輩の慢心・自意識過剰である。
事故に遭った歩行男性に大事無いことを祈ると同時に、これでまた自転車に反感を抱く人が1人増えたかと思うと暗澹たる気持ちになった。