第3ステージ:VILLAINES-LA-JUHEL〜FOUGERES(区間距離:89km、総距離:310km)
3時過ぎにスタート、やはり走り始めは寒い。アームカバーを付け直す。しばらく走っているといつの間にか15人くらいの集団になっていた。いままでもちょくちょく集団になるのだか、所謂列車を組んでの先頭交代で走るということは全くない。ただ無秩序に団子状態で走るだけだ。前走者の走行ラインが安定しないのでいまいち走り難いことがしばしば。PBPに臨む前はできるだけ列車に乗って体力を温存して走ろうと思っていたのにこれはちょっと計算外だった。集団の風除け効果が期待できないならむしろ疲れや睡魔による集団落車のリスクが残るだけなので、極力一人走行をすることに決め、集団とは距離を開けて走るようにする。
途中小さな街Lassay-les-Châteauxを通過したのだが、夜中に街灯に照らされた街並みはまるで映画のセットの様、そしてこれまた映画のシーンの様に、交差点の角の古い建物のベランダにドレスを着たまるで高級娼婦を思わせる美女が手を振っている。たまたまその時集団の先頭で交差点に入って行ったのでつい気取って「ボンソワー」って挨拶を返したら、そこの交差点を左折しなければならなかったのに真っ直ぐ行ってしまって後続の何人かを巻き添えにコースアウトしてしまうという失態をやらかしてしまった。かの美女も手を振っていたのではなく、「左に曲がれ」と合図していた様で何とも恥ずかしい思い出が一つできてしまった。
またしばらく走っていると、オフィシャルの巡回バイクが傍にやって来て何か話しかけてくる、言葉がわからないのだが身振りでテールランプが点いていなことを注意しているようだ。慌ててスイッチを入れると、サムズアップで笑顔で離れて行った。こういうオフィシャルの夜を徹してのレースの監視体制にも頭が下がる思いだ。
相変わらず何となくの集団走行が続いているのだが、アップダウンのを繰り返すうちに下りや平坦では離れ気味になるのに登りになると逆にこっちが速くて追い越してしまうというのを繰り返していることに気付いた。たまたま私の周りだけなのかもしれないが、どうやら外人さんは傾向的に登りがあまり速くない様だ。私は日本では中の中のレベルだが、ここでは正直結構な優越感がある。そんな中、登りで先程のイタリアのパンターニスタイルのライダーが並走しているのに気付いた。暫くは並んで走るのだがしばらくすると付いてこれずに落ちていく。こちらはそれほど競っている意識はないのだが、向こうとしてはもしかしたら競り合っている風に意識したのだろう。その後も何度か上り坂で並走する場面があった。そして長い上り坂で、例の下ハンダンシングでアタックしていく彼の姿があった。私はシッティングでマイペースで登りほどなく彼をキャッチ、そのままするりと抜き去った。それ以降彼が競りかかってくることはなかった。
その後しばらく連続した上り坂が続いたせいか集団から随分先行しての一人走行が続く。脚は回っていてアップダウンは苦にならない。むしろ他のライダー達との相対比較で走れている感じがあってそれが精神的に楽にしてくれているようだ。
空が白み始めた頃、FOUGERESに到着。チェックタイムは6:53。次の区間が短いので軽く補給をして20分程の休憩を取る。