次期主力ホイールを組む

 雨である。時々雪や霙が混じりつつも一日中降っている。激しい降りではないのだが如何せん寒いのでレインウェアを着て強引に走りに行くという気概もなく、一日中家の中で悶々と溜まったやっつけ仕事を片付けている。

 去年から次の手組ホイールの構想をあれこれ練っていてほぼ仕様が固まったので部品集めを本格化した。低身長な私の場合は650Cという、普通のロードバイクのホイールサイズ700Cより一回り小さいホイールを使っている。昔はホイールのサイズバリエーションも豊富で650Cも普通に手に入ったのだが、数年前から急速に姿を消し始め今では完組ホイールは現行品では入手は困難、絶滅の危機に瀕している。

 素直に700Cロードバイクに乗り替えれば困ることもないのだが、低身長でもロードバイクらしいフォルムのバイクとライディングフォームを維持するために敢えて650Cサイズに拘り続けている。
 完組ホイールが買えなければ手組みすればよいわけで、実際に今まで数セットの手組ホイールを作って使用してきた。その間、完組ホイールも数少ない市場流通品をゲットして手持ちのスペアホイールにも余裕が出てきて、当面は困ることはなくなった。
 ただメカニックのはしくれとして、市販完組ホイールに負けない手組ホイールを作ってロングライドイベント特にPBPを走りたいという野望を実現したくて、現状のパーツを使ってできるベストホイールを組むことにした。いろいろと構想を練りつつ、少しずつパーツ集めをしていくうちに、最終的に種類の違う2セットを組むことにした。

 基本コンセプトは、

「ロングライドに使えてヒルクライムに強い軽量クリンチャーホイール」

である。

 まずリム。Velocity社の「AEROHEAD」だが、アルミクリンチャーリムだと現状の選択肢はこれしかない。

 過去に組んだホイールでも使用していて素性は分かっているし、リム単体重量390gと比較的軽量なので軽量ホイールを作ることができる。またこのリムにはノーマル(スポーク穴がセンターにある)とO/C(スポーク穴は片側に寄っている)ものがあり、O/Cはリアホイールの左右のスポークテンションを近づけるのに有利である。スポーク穴は前後とも24Hを選択した。耐久性やロングライド使用を考えればスポークは多い方がよいが、重量や空気抵抗を考えれば少ない方がよい。私の現状体重や手持ちの完組ホイールの実績を考慮して多からず少なからずと言ったところだろう。
 今回はアメリカのwheelbuilder.comから購入したのだが、確実に入手できる反面送料がバカ高いのでどうせなら2セット分買っておこうということで、2セット組みの流れを決定付けることとなった。

 次にハブ。1セット目はAmerican Classic社のフロントハブ「Micro58」とリアハブ「RD205」だ。

 このハブはロングセラーモデルで、手持ちのAmerican Classicの完組ホイール「Sprint350」にも使われている。重量はモデル名に入っている通りフロント58g、リア205gと非常に軽量、リアハブはラージフランジでスポークを短くすることでホイールの剛性を高くすることができる。決戦用手組にはこれしかないとずっと前から決めていて結局今日まで対抗馬は現れなかった。ネックは価格、現行品は非常に高く市場流通も少ない。国内外のオークションでずっと探し続けて去年の年末にようやく希望の穴数&カラーのハブが揃った。このリアハブとAeroheadのO/Cを使用することで、左右のスポークテンションをL:R=100:93まで近づけることができる。

 2セット目は、フロントは前出のMicro58だが、リアはBikeHubStore.comというアメリカの小さなショップで見つけたスペシャルなハブ(正式名称不明)である。

 2セット組むことにしたもう一つの要因はこのハブを見つけたことにあるのだが、どうスペシャルなのかというと、スポーク穴がフリーハブ側は16H、反対側が8Hという変則24Hである。基本的にリアホイールはフリー側フランジが反対側のフランジよりホイールセンターに近いので構造上スポークのテンションが高くなる。これを応用してフリー側のスポークを多くし反対側を少なくすることでスポーク全体のテンションを均一化しようという狙いがある。「2to1」と呼ばれるこの組み方は市販の完組ホイールではFulCrum社のラインナップに確かあったと思うがそれ程メジャーな組み方ではない。ましてや650Cではまず見たことがない。以前から特殊な組み方にチャレンジしてみたいと思っていたのだが、このハブを見つけた瞬間にメカニック魂に火が付いた。

 スポークは2セットとも、フロントはSapim社の「Laser」、リアはSapim社の「Race」を選択。

 この2種類のスポークは両方ともダブルバデッドで、Laserは2.0-1.5-2.0mm、Raceは2.0-1.8-2.0mmである。フロントの細いスポークはちょっと冒険だったが、手持ちの完組ホイールReynolds社の「Solitude650C」のフロントホイールが20Hで同じ規格のスポークを使っており、私の現状の体重は60kg程度であることを考え合わせれば十分にマージンはあるものと思い切って採用した。
 本当ならSapim社の「CX-Ray」という究極のスポークを使おうかとも思ったが値段が3倍以上で今回は思い切れなかった。まあこれは今回組むホイールが上手くいったら次に採用することにしよう。

 最後はニップル。今までは真鍮のニップルだったが軽量化を目論んでアルミニップルを採用した。

 アルミニップルは今回初めて使うのだが、耐久性は真鍮に劣るのだがライダーの体重を考えればマージンはあるものと考え採用することにした。あと、是非赤いニップルを使いたかったという理由もある。

 これらの部品を組み合わせて最終的には2セットともフロント560gリア750g程度のホイールが組み上がる見込みである。この重量は市販完組に十分に張り合えるスペックだ。

 さて、いつから組み立て始めるか。できれば長期休暇中にやりたいのだが当分なさそうなので、もう少し様子見かな。でも春には試験走行を開始したいなあ。明日も一日雨なら始めるかなあ。でも始めると没頭してしまうし…、うーん悩ましいところだ。