2012佐渡ロングライド210

 今朝は5時前に目が覚めた。佐渡から戻って3日も経つというのにまだ疲労感が残っている(まあ昨夜は飲み会だったのでその疲れも混ざってはいると思うが今回の佐渡ツアーは今までで一番疲れた感じがする)。取りあえず今日はリカバリーランがてら自転車通勤をしよう。
 そんなわけで佐渡ロングライド2012のレポートである。

 今年も佐渡ロングライド210に参加する。今年で6年連続6回目の出場、大会は7回目だから第2回からずっと参加していることになる。さすがに6回目ともなるとコースも熟知していて充分に堪能できたと思われるのでそろそろ佐渡も卒業かなと思い、今年がラストランのつもりでツアーを計画した。同行は例年通りのサイスタメンバー、osozakiさん、デンデンさん、ひたちやさん、みゅうさんで私を入れて5人ツアーは初となる。車1台で定員MAXだと最も費用効率の良いツアーができる。例年同様、2月3月で宿とカーフェリーの予約を完了し、万全の体制で本番を迎えた。

 5月19日(土)。朝4時起床。前日までに車に荷物は粗方積み込み終えていたので、そそくさと身支度だけして出発。メンバーの自宅をそれぞれ経由しピックアップしつつ関越道所沢ICから北上開始、一路新潟港を目指す。時間的に前倒しで進んだ分余裕を持って新潟港の佐渡汽船カーフェリー乗り場に到着、予約した乗船チケットを購入し乗船を待つ。フェリー乗り場は例年に比べれば若干大人し目な感じがするものの、それでも自転車を積んだ車やツアーバス、自転車のままで乗船するサイクリスト達で賑わっている。この情景の中にいるだけで否が応にも気分は盛り上がる。乗船が始まったがタッチの差で自転車屋根積みの車高の高い私の車は船首に入り込めず、船尾に回ることになってしまった。この影響で案の定2等船室の場所取りに失敗、硬いベンチに座って2時間半を過ごす羽目になった。
 定刻通り15時過ぎに両津港に到着、6回目の佐渡上陸である。巨大な能面のモニュメントから無表情な歓迎を受ける。両津港から島の中央部を縦断して対岸の河原田地区へ向かう。スタート/ゴール地点の河原田小学校グラウンドは沢山のサイクリストでごった返していて例年通りの盛り上がりだ。早速受付を済ませ無事にゼッケンと計測タグを受け取る。今年は計測タグが使い捨てになっていて回収の必要がない物になっている。
 今年からAコース210kmは申告制で完走タイム別に分けられている。A-1グループは”自信あり”なライダーで7〜8時間で走破できる脚力が要求される。A-2グループは”普通”で9〜10時間、A-3グループは”のんびり”で11〜12時間となっている。過去の大会ではスタート後は速い人と遅い人が入り乱れて走るため事故が多発しており、それを防ぐための措置だということだ。

 会場脇の出展ブースを一通り見て回り会場を後にする。途中のコンビニで買出しを済ませ、前泊定宿の”ホテルみやこ”に到着。例年ならここは素泊まりで外の居酒屋で前夜祭になるのだが、今年は宿に夕食を御願いした。部屋に入り荷物を解いて早速夕食、別室の座敷に案内されるとそこには宴会用の御膳がどーんと用意されていた。普通の晩御飯を勝手に想像していてかなり面食らったが、考えてみればホテル側にしてみれば宴会料理を用意するのは当然のことだ。ラストラン位は二日酔いなしで走りたいと密かにノンアルコールで前夜は凌ごうと思っていたもののこれでは無理と素直に諦め、ボリューム満載の海の幸に舌鼓を打ちながら旨いビールをしっかり飲み、部屋に戻っての2次会は控えめに買い出した酒もあっという間に空けてしまい、予定より夜更かしとなったが床に就いた。

 5月20日(日)。当日の朝は4時前に起床、そそくさと身支度をする。当然のことだが二日酔い気味、でもまあ走れなくはない。ホテルを出発し再び河原田小学校を目指す。予報通り天気は快晴、気温も思った程低くなく、日中は20℃を超えてくるのは間違いなさそう。半袖ジャージ&レーパンでも全く問題ない。
 スタート地点からそれほど遠くない駐車場に車を止めることができたのはラッキー。メンバーのバイクは屋根積みなので直ぐに準備ができるが私のは輪行バッグに入っているので組み立てに時間がかかる。もたついているうちに最初にスタートするA-1クラスがスタートラインに移動開始している。かなり焦りつつ準備をし、他のメンバーに別れを告げて慌ててスタートラインを目指す。時刻は既に5:30を過ぎて、A-1クラスは走り始めているが、A-2グループの最後尾になってしまっている。これは拙いと人目を気にしつつも誘導ルートの外から走ってスタート地点を目指した。スタートラインに着いた時には既にA-1クラスのスタートは終わっており、A-2クラスのスタート時間を待っているところだった。係員に無理を言って何とかA-2コースの最前列に入れてもらいスタートを待つこととなった。
 待つこと数分、いよいよカウントダウンが始まり5:40にスタート、佐渡1周210kmラストランが始まった。

 スタート直後、サイクルコンピューターに目をやるとスピード表示が出ていない。直ぐに止まってチェックすると案の定センサーのマグネットが曲がっていたので直して再スタート。
 スタートには遅れたし二日酔いだし後ろのクラスに混じって行くかなあと思っていたが、いざ走り出してみるとスイッチが入ってA-1クラスの集団に追いつこうとガンガン走る。やっぱりA-1クラスに登録した以上、その責任は取らねばならない(大盛りラーメンを注文したら完食するのと同じ理屈である)。
 とりあえず一人で前を追いかけるが、例年ならスタート直後はコース上にたくさんのライダーが走っているのでぼちぼちトレインが出来てきて早い段階でスピードアップできるのだが、今回はクラス分けの影響で前方には殆どライダーの姿がない。とにかくひたすら走り続ける。
 天気は申し分なく佐渡の道は相変わらず走り易いのだがとにかく集団の尻尾を捕まえたい一心で雰囲気を楽しむ余裕がない。A-1クラスは脚に覚えのある輩が集まっているはずなのでそれがトレインを組んでかっ飛んで行けばまず追いつけないのは分かっているが駄目元で走り続ける。とりあえず今年も中間地点の両津BS以外のASは全てパスするワンストップで走る予定だ。ハンドルが微妙に曲がっているのに気付いたが止まるのが嫌なのでそのまま走り続ける

 30km近くを走って結構バテてきて気持ちも萎えかけた時、A-2クラスの速いトレインが後ろからやって来たので飛び乗った。ようやくここから本格的な追走開始である。10人くらいのトレインが40km/h近い巡航で快調に走る。55km過ぎのZ坂に辿り着く頃にはA-1ゼッケンのライダーもぼちぼち見かけるようになりどうやら集団の尻尾には取り付けた様だ。集団のままZ坂に突入、いささか身体が重い感じはあるが脚は回っていてしっかり登れている。今年はZ坂は短く感じた。登りで集団から抜け出し、アップダウンをマイペースでこなしていく。島の北端を抜けるアップダウンは非常に楽しい。朝の清々しい日差しと微風を浴びながら大野亀の坂を上って行くのは非常に気持ちが良い。ここを走っていると佐渡はやっぱりいいなあと感じる。

 アップダウンが終わり、80kmを過ぎて再び平坦路に入ったところで後ろからトレインがやって来たので乗せてもらう。長いトレインなのでずっと後ろで楽をさせてもらったが両津BS直前になってようやく先頭が回って来たので申し訳程度に牽かせてもらう。程なくして100km地点の両津に到着。例年とBSの場所が違っていた。到着時刻は9:00ジャスト、ここまで3時間20分ならまずまずのペースだ。バイク置き場にはパッと見100台近くのバイクがあったので、A-1の出走が250名くらいだったことを考えればほぼ集団に混じることができたようで気持ち的にもすっきりした。早速弁当とみそ汁を頂き、椅子に座ってさあ食べようとふと近くのライダーの弁当を見たら私のより豪華、どうやら2種類あったようでちょっと落胆する。

 弁当を食べ終え、曲がったハンドルを修正し、20分程の休憩の後スタート。走り始めて直ぐにまたしてもハンドルが今度は反対側に微妙に曲がっていたので再び修正、走り始めたがまだハンドルが曲がっているような気がしてちょっと気分が悪い。
 とりあえずA-1のレギュレーションを考慮して8時間切りを目標とすれば残り110kmで4時間20分、十分に到達可能なので焦りは余りない。

 前方には先行者の姿は殆どないが、後半は一人旅になるのは例年通りなのでマイペースで走る。風が結構あって風向きがよく分からず何となく走り辛いのだが、海沿いに出てからは追い風基調となり快調に進み始めた。民家の鯉のぼり(まだ仕舞わないのか)がこっちを向いて泳いでいるのを見ると安心する。でも島の南端を回って逆向きに始めると向かい風になるのでちょっと憂鬱だ。
 一人で淡々と海沿いを走り続ける。前半の無理が祟ったのか、ちょっと疲労感が出てきて気持ち的にも抜けた感じなのでペースはそれ程上がらない。かなり暑くてしょっぱい汗をだらだら掻いてそれが目に入るとかなり痛い。でもまあ最後の佐渡だしぼちぼち行くかあと言い訳モードだ。130kmあたりで後ろからトレインが来たのでとりあえず乗ってみるがこれが速い。付いていくのがかなりキツいので千切れようかと思っていたらちょうど140km地点の小木ASに着いてトレインは解散、ASには寄らずに一人で先を急いだ。

 170km地点の標識を観た所で残り時間はちょうど2時間、20km/hでいける計算だからまず問題ないだろう。南端を回った所で案の定向かい風に変わる。結構強いのでペースがガクッと落ちる。
 海沿いの漁村を抜け、いよいよ激坂区間に突入。井坪の激坂は相変わらずキツい、左のハムストリングが攣るが構わず走る。でも今年は意外に坂が短く感じられた。遂にこの坂を自分のものにしたのだろうか、やはりラストランということかな。
 急な下りを終え再び海沿いを走っていたら、浜辺の掘っ立て小屋の中に大きな飛行機を見つけてかなり驚いた。写真を撮ろうかと思ったが止まるのが億劫だったので素通りする(後で調べたらこれは現在撮影中の佐渡を舞台とした映画のセットの一部らしい)。

 180km地点の素浜AS通過時点で残り時間が1時間30分、実際に20km/hで走っているのでちょっと雲行きが怪しくなってきた。ちょっとだけ気合を入れる。だらだらと長い素浜坂を何とか攻略し、ゴールを目指してひた走る。向かい風がキツくてスピードが上がず焦りが出てきた。最後の登りとなる国道坂をこなして後は下り基調でゴールを目指すのみだ。そこそこ疲労感はあるが無理な時間でもないのでとにかくペースを乱さずに走る。200km付近は海風が吹きっ晒しでちっとも前に進まない。街中に入ってようやく向かい風も弱まり、気を取り直して走る。
 ここまで来ればほぼ目標時間内完走は間違いない。そう思ったらちょっとペースが上がった。


再び河原田の海岸線に戻って来た。直線の前方にはゴールのゲートが見える。今年はもがかずにするっとゴールしようと思っていたら、私の名前が呼ばれない。薄々気づいてはいたのだがスタート前に計測チップの通過チェックを飛ばした様で、計測では私は出走していないことになっているらしい。でもゲート通過時にはちゃんと名前が呼ばれたのでゼッケンを目視で判断してくれたのだろう、やっぱり「おかえりー!」って言われないと佐渡を完走した気がしない。
 ゴールタイムは13:20、実測完走タイムは7時間40分で何とかA-1クラスでの出走の面目は保たれた。一昨年は7時間20分、去年は7時間30分だから毎年10分ずつ遅くなってはいるがまあ満足な走りはできたと思う。
 

 私の名前入りの完走証もちゃんと用意されていたので一安心、例年同様つみれ汁を頂きながらアンケート用紙に記入する。車に戻ってウェアを脱ぐとかなり塩を吹いている。まだ身体が暑さに慣れていないので上手く汗を掻けない様だ。自転車を輪行バッグに仕舞い、のんびり走っている他のメンバーがゴールして来るまで少しばかり仮眠を取る。小一時間うつらうつらして起き上がったら猛烈に腹が減ったので、恒例の豚串を食べようと再びゴール会場に向かう(ロングライドの後は何故だか猛烈に肉が食べたくなる)。豚串を食べていたら傍にキラーカーンの様な風貌のおじさんがビールのジョッキを2杯抱えて座り、それをグイとあおりながら「あ゛ー」を10回ぐらい唸っている。余程ビールが旨いのだろう、その気持ちよーく分かります。

 17時過ぎにメンバー全員が無事にゴール、完走を果たし御互いの健闘を称え合う。さあ、これで後は打ち上げだ。
 ゴール会場を後にして、途中スーパーで2次会用の買出しを済ませて常宿のホテル吾妻へ向かう。部屋に入ってまずは風呂、露天風呂で日本海に沈む夕日を眺めながら温泉に浸かるのは最高の癒しだ。そして宴会、ビールがどうにも旨くて止まらない。部屋に戻っての2次会でも話が尽きることはなく、まったりとした時間が夜更けまで続いた。

 5/21(月)。朝は6時過ぎに起床。少しばかり身体がだるい。やはりちょっと昨日の暑さにやられたらしい。朝食前に日食の観測会、かなり欠け始めていた。朝食後、日食がちょうど最大になり佐渡でもかなり金環に近い太陽を見ることができた。雲がないのに辺りがかなり暗くなるのはやはり不思議な体験だ。
 8時過ぎに宿を出発し、北雪酒造の酒蔵と佐渡トキ保護センターを巡って11時過ぎに両津港に到着、12時40分に予定通り船上の人となる。
 15時過ぎに新潟に到着、高速に乗ってひたすら東京を目指す。日没後に東京着、メンバーをそれぞれの自宅に送り届けつつ22時前に帰宅。正直なところ例年になく疲れた感じだ。ちゃんと目標タイム通り完走できたこともさることながら、兎にも角にも事故やトラブルなく無事に佐渡ツアーを終えることができて肩の荷が下りた。

 毎年同じ台詞だが、佐渡1周コースはよくできた面白いコースだ。あれだけ変化に富んだコースを信号や車の往来を気にせず210kmも走り続けられる所はそうそうないだろう。とりあえず今のところは今回がラストランだと思っているが、来年になったらどう心境が変化するか、その時見てみることにする。