2013BRM713岡山1000レポート3:宿泊1~宿泊2(349km)

 7/14、0:30前に目が覚めた。鳴る前の目覚ましを止め起き上がる。昨夜は消灯してから直ぐに眠りに落ち、疲れが酷い時によく見る意識が混濁した様な妙な夢はなかったので、正味4時間はしっかり眠れた様に思う。眠気も疲労感もそれ程でもないのですんなり走り出せそうだ。

 身支度をして1時過ぎにホテルを出発。寝静まった三次の市街地を抜け再び郊外へと向かう。ここから次のPCへは約60kmと長く小さな峠越えが3つある。クローズタイムは5:08なので余り余裕がない。パンクなどのワントラブルで間に合わない可能性があるので若干踏み込み気味で先を急ぐ。尻の痛みは気にならない程度に納まっている。昨夜寝る前にオロナインを塗っておいたのが奏功した。

 最初の登りが始まるが予想よりも勾配がきつく長い。ペースががくんと落ちて峠越えに時間を使う。昨夜は起床時間を何時にするか迷って1:00起きにしようかとも思ったのだがもしそうしていたらマージンが全くない状況だった。危ない危ない。一つ目の峠を越え急勾配の坂道を下っている時、急にヘッドライトの輝度が落ちた。バッテリーは時間的まだ持つはずなのに困ったことになった。取り敢えずスピードを落として下り切り、街灯の下で止まってバッテリーを交換する。またしてもサドルバックの中身をいじることになり、これが後輪と擦る原因を仕込むことになるかと思うとナーバスになる。

 2つ目の登りに突入。やっぱり標高が上がるに従って勾配がきつくなっていく。タイムマージンをどんどん失っていく。焦りが増していく。

 極めつけは3つ目。登坂車線が出てきて激坂になり、おまけに距離が長い。事前の地図読みの予想と全然違う様相に2日目序盤から精神的ダメージを食らう。まだ60kmも走っていないのにこの調子では後300kmの山岳を走り切ることができるか相当に不安になる。

 何とか峠を越えてちょっと下った所で512km地点のPC5に到着、チェックタイムは4:12。

 何とか30分強のマージンを持ったままこのPCを通過することができそうだ。今回の走行プランの中でここをクリアできるかどうかが大きな関門だったが、無事クリアできてよかった。ここまで来る途中で数名のブルベライダーをパスしてきたが、皆時間内にここまで辿り着いてくれればよいのだが。
 距離的にはここが全行程のほぼ中間地点、残りは後500km。

 休憩後再スタート。気温がそれ程高くないのがありがたい。というよりちょっと寒い位だ。

 昨日に比べて夜明けが遅い気がする。空には雨雲が広がり、この先降られるのは避けられそうにない。次の通過チェックポイントまでの区間距離は100kmと長く、3つの大きな峠を含む多数のアップダウンを繰り返しながら一つの大きな山を越えるというこれまた厳しい行程となる。

 登坂途中で雨が降り出す。結構な雨量だ。基本は登りだし車通りが殆どないので走行には大した支障はない。ひたすら登り続けるのみ。
 登ったり下ったり、降ったり止んだり。ただ淡々とルーティーンワークを繰り返す。脚はあるので問題ないが、この繰り返しは無間地獄に嵌った様で精神的にはちと堪える。

 次のPCのある益田まで58km。この区間の半分にも到達していない。

 この区間の最高標高地点への長い登りの途中で雨脚が更に強くなりスコールの様な土砂降りになった。もうなんかどうにでもなれとやけっぱちな気持ちで脚を回し続ける。

 深入山というのがこの山の名前らしい。

 この峠のピーク付近は土砂降り。この状態での下りは結構危険。

 何とかかんとか区間最後の峠を越え長い下りに入ったところで雨の勢いは弱まった。全く自然の気まぐれには翻弄される。
 長い下りをだーと下るうちに空も明るくなり青空も見えてきた。さっきまでびしょ濡れだったのに下るうちにウェアはすっかり乾いてしまった。
 風は昨日に引き続き西風、下り基調なはずなのにペースがいまいち上がらない。
 下り終える頃には市街地に入った。気温もぐんぐん上がり、汗が噴き出る。

 竹島返せの看板を見るに、この場所がどこかを理解する。

 この交差点が今回のコースの最西端。ここから進路を東に取る。

 程無くして617km地点の通過チェックポイント4に到着、チェックタイムは10:03。

 店先のベンチ&テーブルが有難い。

 結構な空腹感があったので焼きそば大盛り。

 手の甲が真っ赤に日焼けして痛い。グローブを忘れた代償は大きい。

 長めの休憩の後、出発。次のPCまでの区間距離は93km。峠越えは小さめのが1つだけだが、前半は海沿いアップダウンが延々と続くいやらしいコースだ。

 さてここから追い風基調だと思って期待していたのに風が止んでしまっている。全く自然の気まぐれには一々してやられる。

 日本海がちらりと見えた。海からは若干距離がある所を走るので海の風情は乏しい。
 案の定アップダウンが繰り返される。登りの勾配は急でどんどん脚が削られていく。

 路肩は狭く、車通りも多く走り辛い。
 再び尻が痛み始めた。部位としては尻というより股の真ん中、所謂「蟻の門渡り」が擦れて傷になっている様だ。ちょっと触ると激痛が走る。傷の大きさは大したことはないのにペダリングには多大な影響を及ぼすからたちが悪い。
 サドルの着座位置を上手くすれば痛みを緩和できるので、ダンシングを多用して尻に負担をかけない様にだましだまし走る。しかしどうにも我慢できなくなって途中で止まり、オロナインを患部に塗る。若干だが緩和された。

 沿岸部のアップダウンが漸く終わり、山間部へ入る途中の区間唯一のまとまった登りが始まる。もう同じことの繰り返しなので言うのも面倒だが、激坂勾配で滅茶苦茶きつい。おまけに再び土砂降りスコールで踏んだり蹴ったり。もういい加減にしてくれ!と怒り心頭と憔悴感が入り混じったボロボロな精神状態だ。あの優しそうなAJ岡山代表の姿が魔女のように思えてくる。こんな拷問の様なコースは人間の仕業じゃない!と自分の非力さを棚に上げて恨み節・泣き言三昧である。

 悪態をつきまくっているうちに山頂に到達。小さい峠なのに「大峠トンネル」というネーミングはとてもよく理解できる。
 峠越えが終わったところで雨が小降りになった。全く自然の気まぐれには(以下略)。

 この大峠の破壊力は絶大で一気に脚がなくなり平坦基調になっても脚が全く回せなくなった。ちょうどナビの電池もなくなったので道端の郵便局で休憩。

 冷たい御茶を飲みつつナビのバッテリーを交換。しばしの休憩で脚の回復を待つ。

 長めの休憩の後スタート。少しだけ脚が回り始めた。
 下りを終えてようやく正真正銘の平坦基調に入った。

 車通りもさっきまでとは打って変わって少なくなり走り易くなった。

 川沿いの清々しい道。青空も広がりサイクリングが楽しめている。このコースを走り始めて初めてではなかろうか。

 島根県に入る。PCまでもう直ぐ。

 710km地点のPC6に到着、チェックタイムは15:26。

 今までの道中で何度か一緒になった関西からのライダーさんと再び遭遇、会話を交わす。
 今日の宿まで100kmを切った。時間的には予定時刻到着は絶望的だが、取り敢えず終わりまでは見通せたので若干気は楽だ。
 次の通過チェックポイントは三瓶山の上にある。今日の行程最後のハードな登りだ。もう一頑張り、意を決して出発する。


 一路三瓶山へ、暫くは平坦基調を走る。

 今回のルートは鉄道と並走することが多い。ぽつりと佇む無人駅。

 三瓶山へのアタック開始。序盤から急勾配の真っ直ぐな道。きついが脚はかなり回復してきているので何とか登れそうだ。ダンシングとシッティングを規則正しく繰り返しつつペースとリズムを保ってゆっくりと登っていく。
 やはりやはり終盤は激坂勾配、喰らい付く。

 取り敢えず踊り場地点まで到達、ここからちょっとだけ平坦基調を走る。

 三瓶山の山頂には雲がかかっている。

 三瓶山は気持ちの良い高原。ちょっと休憩していこうかとも思ったが時間的に後ろ倒しなので先を急ぐ。

 再び登り始めて通過チェックポイントへの最終アプローチ。やはり勾配はきつめで距離が長い。もう一踏ん張りで脚を回す。

 747km地点の通過チェックポイント5に到着、チェックタイムは17:58。
 早速写真を撮って送信する。この数分間の間に脚のあちこちを虻に吸血されてしまった。
 残りは50km強、少しでも睡眠時間を稼ぐために宿にはできるだけ早く着きたいところ。先を急ぐ。

 下りをガンガン下って再び登り基調、この区間もう一か所峠を越えなければならない。案の定激坂だがこれが今日最後かと思うと意外に脚が回る。

 あのトンネルまで登れば今日はおしまい。激坂に喰らい付いて何とかクリアした。

 ここから宿手前の雲南市までは長い下り。どんどん下るが路面状態が悪く、尻に容赦なくダメージを与える。バウンドの度に尻に激痛が走り叫び声を上げる。半ケツずらしてサドルに座り、できるだけ脚を回さなくて済むように重いギアで走る。

 日が暮れた。もしできれば宿でちゃんとした食事を摂りたかったのだがその時間には全く間に合わなかった。

 20時に雲南市街に入る。宿には食事がないので食糧調達のためルートを外れてコンビニに立ち寄る。弁当を買い、宿に電話を入れる。ここで再び先程の関西ライダーさんと一緒になる。聞けばこのまま走り続けるという。御互いにエールを交換してその場を離れた。

 宿までは10kmちょっとだが登りであることが頭に入ってなかった。残り少ない脚を絞りつつせっせと暗い山道を走る。


 21時前に無事に宿に到着。チェックインして速攻で風呂に入る。ここは出雲湯村温泉、大浴場の湯船に浸かることだけを励みにここまで走って来たのだ。
 身体を洗って汗と汚れを洗い流し、湯船に浸かる。湯は熱めで日焼け跡と尻の痛みにはきついが構わず浸かる。ただ手の甲だけは余りに痛いので浸けられず。
 いやーっ、極楽極楽!今日の苦行がまるで無かったかの様に頭の中から抜けてしまった。
 温泉を堪能した後、部屋に戻って弁当を食べる。

 走行中と変わらぬコンビニ食だが、落ち着いて食べられるので旨い。
 食事を終え、床を作る。ここの国民宿舎は自分で布団を引くシステム、シーツを広げて敷き布団に被せる作業をするのは何時振りだろうか。さっそく布団に横になる。いやあ極楽極楽、こういう時はホテルの洋室より和室の方が断然寝心地が良い。
 目覚ましを3:30にセットし、22時過ぎに消灯。