Paris-Brest-Paris 2015/レポート1:出発からフランス到着まで

 18th PARIS BREST PARIS Randonneurに参加してきた。
 8/14〜22の日程で渡仏し、イベント自体は8/16〜20。今回もSt Quentin-en-YvelinesをスタートしてBrestで折り返し再びスタート地点に戻ってくるという1230kmを走った。今回は制限時間90Hのクラスにエントリーし、結果86時間29分で無事に完走した。

 帰国して1週間が経つが、今回のブルベの唯一の後遺症だった右膝痛もほぼ解消し普段通りに自転車に乗りたいのだがこの1週間はずっと冴えない天気が続いていて思うように乗れずちょっとストレスが溜まって来ている。
 帰国して旅の後始末やら仕事のリカバリーやら時差ボケやらが大方片付いたので、記憶が薄れてしまわないうちにぼちぼち走行レポートを書いていこうと思う。

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 8/14(金)、5時過ぎに起床。前日までにバタバタとパッキングを済ませたので何となく忘れ物がありそうな不安を抱えつつ、6時過ぎにバイクケースとボストンバッグを持って家を出た。成田行きのリムジンバスは所沢駅から出るので所沢駅まで徒歩で向かう。距離は3km位だがアップダウンがあって地元の割には道が定かでなく結局7時発のバスにぎりぎり飛び乗った。

 バスで移動中、ツイッター上でオダ埼玉清水班のK田さんと会話。K田さんも今成田に向かって移動中、10:40成田発のANA直行便ということなので同じ飛行機に乗ることが分かった。

 9時過ぎに成田着。出発まで1時間半近くあるのでそれ程切羽詰まったことにはならずに済んだ。事前チェックインは済ませてあるので手荷物カウンターに行ってバイクケースを預けなければ。

 ANAの手荷物カウンターに行ってカウンターの女性にeチケットの紙を渡すと驚天動地の答えが返ってきた。

「お客様、このフライトは羽田発ですね」

 あまりの出来事に頭の中が真っ白になり、そしてもうただ笑うしかなかった。何か忘れ物をしそうな一抹の不安が付きまとっていたがまさかこんな物忘れをしでかすとは…。諦念の脱力感に苛まれつつ次にどう対処すべきか分からないのでカウンターの女性がどこぞに電話しているのを見守る他はない。なぜこんな初歩的なミスを犯したのか自己批判しつつ、バカ高い正規料金を払う覚悟をしなければならないと自問自答していると長い電話は終わった。受話器を置いた女性から更に予想外の言葉が出て来た。

「上司の決裁が下りましたので成田発の便に振り替え致します。今回限りの特別対応ですので次から御気を付け下さい」

 突然突き落とされた奈落の底から一本釣りで引き抜かれて天国に投げ出された様な感覚だ。カウンターの女性が女神の様に見えた。改めてバイクケースを計量、重量・サイズ共にパスして13:55発のパリ行きの搭乗券を受け取った。別途空港使用料520円を負担しなければならないとのことだが、航空券を買い直すことを考えれば喜んで払わせて頂く。
 空港使用料を支払いながら係りの女性に空港間違いをする人間はどれ位いるものなのか聞いてみたら日に数人はいるとのこと。1日当たりの成田空港利用者の人数を考えればそれ位はいるか。

 結果的に搭乗手続きは無事完了した。どっと疲れが出て出発ロビーの端のPCデスクに腰を下ろした。

 PCデスクは電源があって非常に便利。
 出発は予定より3時間遅れだが乗れるだけでもありがたい。冷静になってこの重大なミスを振り返ってみるが、チケットをネットで予約した時から今日成田のカウンターで指摘されるまで1度たりとも羽田発と認識した覚えはなく、何の疑いもなく成田発だと思い込んでいた。原因は単純で羽田発の直行便は高くて買えるわけがないという思い込みだ。ディスカウントチケットを買ったつもりの身としてはまさか自分のチケットが羽田発のものだとは夢にも思わなかった。どこから見ても自分自身の完全な落ち度なので乗れなかったとしても何の文句も言えないが、この様なANAの臨機応変な顧客サービスは只々感謝の一言だ。

 そう言えばK田さんも成田に向かっていたということは同じミスをしていた可能性が考えられ、携帯で急ぎ連絡を取ってみた。やはり成田まで来て間違いに気付いたものの、まだ時間に余裕があったためタクシーを飛ばして羽田まで行き予定通りのフライトに間に合ったとのこと。とりあえず安堵すると同時に、リカバリーの余裕もなかった自分が更に情けなくなった。

 出発1時間前に搭乗口に移動。搭乗口で座って待っていたらいきなりアナウンスで名前を呼ばれた。「やっぱり乗れません」とか言われるのではないかと恐る恐るカウンターに行ったら、シートをプレミアム・エコノミーに変更してくれると言う。フライトを振り替えてもらった上にシートまでアップグレードしてもらえるとは感謝感激。ここまでされたらもうずっとANAに乗り続けるしかなさそうだ。

 いよいよ出発。
 14時過ぎ離陸。騒動はあったが取りあえずパリに向かうことができる。

 プレミアムエコノミーのシート。足元が広いのは長時間フライトではやはり有難い。
 隣の席には初対面だが同じくPBPに参加される宮城のSuzukiさんがおられた。この飛行機はグッドウィルツアーの一行と同じなので他にもPBP参加者が結構乗っている。
 ビールを飲んで機内食を食べたらすんなり眠くなり、かなりの時間寝ていたので12時間のフライトはそれ程苦にならなかった。

 20時前にシャルルドゴール空港着。まだ夕方の様に明るい。

 また来たよ、パリ。

 入国審査をすんなり通過し、バイクケースもそれ程待たずに受け取ることができた。

 さて、これからホテルのあるヴェルサイユまで移動しなければならない。今回は経費節減のためにツアーを使わずに航空券もホテルも個人で予約し、当然空港からホテルまでの移動は独自でなんとかしなければならない。事前に空港からエールフランスバスに乗りMontparnasseまで行き、Montparnasse駅からSNCFという鉄道でVersailles Chantiers駅に行くという計画を立てていたが、たまたまツアーの飛行機と同じだったこともあり駄目元でツアーのチャーターしたバスに乗せてもらえないかツアー添乗員に聞いてみることにした。空港ロビーで待っていた添乗員さんを見つけて早速聞いてみたが「契約上できません」とあっさり断られてしまった。仕方ない、予定通り自力移動するしかないか。

 空港内の案内表示を頼りに移動。

 空港の出口を出たらすぐ目の前がバス乗り場だったので取りあえず行ってみたら、どうやらそこはエールフランスバスの発着場の様だ。そこにいた係員と思しき人に「モンパルナス?」と聞いたら肯定的リアクションが返ってきたので間違いなさそうだ。

 待合室の中にある自動券売機でチケット購入にトライ。取りあえず画面表示は何となく理解可能だったのでMontparnasse行きを選択するところまではいったものの、往復チケットの選択方法が良く分からない。その画面をしばらく睨んでいたら傍にいた地元と思しき若い女性が話しかけてきたのでRound Tripと言ってみたけど通じなかったので身振り手振りで往復を伝えたら理解してくれて、片道チケットを2枚買えと言う。事前リサーチでは往復購入だと多少割引になるということだったのだが、時間もないので彼女の教え通り片道2枚を選択。次に決済、VISAのクレジットカードを挿入するも画面表示に何も変化がない。事前リサーチではICカード付きのクレジットカードじゃないと使えないところが多いとのことだったので、早速駄目なケースにあたったかとカードを引き抜いたらチケットが2枚出て来た。

 とりあえずチケットは買えたらしい。片道17.5ユーロ。

 10分程待ってMontparnasse行きのバスが来た。バイクケースもすんなり積んでもらえて、運転手にチケットを渡して席に座る。

 バスに乗ってまずWiFiルータの動作確認。事前に色々調べた結果、現地調達より日本で買える「MIGHTY SIM」なるものを使った方が安いという結論に至ったので手持ちのWiFiルータに予めセットしてきている。とりあえず電源を入れてみたが繋がらない。出発前に現地用の設定にしておいたのだが改めて見直してみたら国際ローミングの設定がOFFになっていたのでONにしたらあっさり繋がった。持参のNEXUS7もipod touchもWiFi接続できたので一安心。これで通信手段も確保できた。
 日暮れの中、バスはパリ市街に入った。街並みを眺めていたらようやくパリに来た実感が湧いてきた。

 1時間程で終点のMontparnasseに到着。バスを降りてバイクケースを引き摺りながらgoogle mapの位置情報を頼りに駅の入り口に向かう。日も暮れて暗くなり、ぱらぱらと雨が落ちてきた。

 通りの正面に見えた立派な建物が駅の入り口かと思ったが、傍まで行ってみると違った。

 駅の近くの割には人通りもなく薄暗い通りをちょっと歩いたら、ようやく駅の入り口らしき看板を見つけて入ってみる。
 駐車場を突き抜けると、駅のロビーに出た。周りを見回すと事前に確認しておいた通り黄色い自動券売機があった。

 操作方法は予め予習してあるのでタッチパネルからさくさくと必要事項を入力して決済画面まで辿り着いたのだがその画面が事前情報と違う。「xxxxクーポンを入力しろ」という画面になって、当然持っていないのでNoを選ぶと「それがないと切符は買えないよ」と蹴られてしまう。

 何度かやってみたが他に選択肢はなくどうしても切符が買えない。これは困ったと自動券売機での購入を断念し、対面販売の窓口に向かう。するとまだ鉄道は動いているというのに窓口は全て締まっていて誰もいない。更に困って近くのインフォメーションカウンターに行って聞いてみると「向こうの青い券売機を使え」と教えられた。

 彼が指差す方向に青い券売機があったので早速トライする。
 今度は決済画面まですんなり行って「クレジットカードを入れろ」と言われたのでVISAを選択してクレジットカードを挿入するが「このカードは使えない」と拒否される。どうやらICカードじゃないと駄目らしい。再度決済方法選択画面に戻って良く見るとCOIN表示があるので、持っていた小銭を入れてみたら切符が買えた。Versailles Chantiers行きの料金は3.55ユーロ。
 無事切符を購入できたと思ったら次のハードルはホームへの移動。駅のロビーは2階でホームは階下にあるのだが、別のホームに降りるエレベーターはあるのだが目的の列車が出るホームへのエレベーターが見当たらない。エスカレーターはあるが登り方向のみ。やむなくバイクケースを引き摺りながら階段で降りる。この過程でいわゆる改札口というものはなかった。

 ホームに降りると既に電車が到着しており早速乗り込む。


 2階建ての車内は広くバイクケースも全く問題なく持ち込める。ほどなく出発、Versailles Chantiersまでは一駅だ。

 15分程で到着。
 この駅にはエレベーターがありロビーまでは問題なく上がれた。

 改札出口は自動改札だが事前に調べていた通り狭くバイクケースはとても通せそうにない。とりあえず近くにいた警備の女性に聞いてみたら入口改札にある専用の広い改札口を開けてくれたので無事に通過することができた。

 無事にVersaillesまで辿り着いた。ホテルまでは1kmちょっと、歩いて移動する。

 時刻は23時前、人通りも少なく静かな街並み。

 見覚えのある大通りに出た。正面にはヴェルサイユ宮殿。4年越しで再びここに戻って来た。

 ホテルに到着。事前にオンラインチェックインしておいたので直ぐにカードキーが出て来た。ホテルは日本の小さなビジネスホテルを御洒落にした感じ。

 部屋に入って大移動は完了。


 部屋はなかなかいい感じだが、バスタブと冷蔵庫がないのはちょっと残念。
 明日は午前中のうちに受付やらをしなければいけないので寝る前に準備をしなければならない。直ぐにバイクの組み立てを開始する。

 20分程でバイク組立完了。大雑把にチェックしてみたが異常はなさそう。自作手組のホイールの破損も取りあえずなさそう。念のため交換用のスポークを持ってきていたが出番はなさそうだ。

 間髪入れずにドロップバッグのパッキング完了。
 これで本日予定していた全ての作業を完了した。本来の予定通りなら4時間近く早く着いているはずだったのでこの後前夜祭で軽く1杯行こうかと思っていたのだが残念ながらその時間はない。まあ空港間違いのペナルティと思うしかないか。シャワーを浴びてベッドに横になり、ホテルのWiFiに接続したPCでネットをチェックしつつ1時過ぎに就寝。