Paris-Brest-Paris 2015/レポート4:1st Stage/Saint-Quentin-en-Yvelines - Mortagne-au-Perche (139km/139km)

 スタートまで1分を切った。頭に血が上り武者震いしそうな程にテンションが一気に上がる。
 集団後方からペダルのクリートを嵌めるパチパチという音がひっきりなしに聞こえてくる。
 ステージMCのカウントダウンが0になり、先頭は弾かれた様に飛び出していく。


 スタートロードの両脇に集まった観衆の拍手に送られて、ついつい速度が上がってしまう。4年前は80Hクラスだったのでスタート直後のスピードはとんでもなく速かったが、今回は90Hでそれ程でもないにせよやっぱりそこそこ速い。旅の始まりのワクワク感に身を任せてどんどんペダルを踏み続ける。この瞬間が他に例え様なく楽しい。

 先頭の誘導バイクの背中を見ながら街中を疾走していく。時間が遅いせいか4年前に比べて沿道の観客は少なめだがそれでも大勢の地元の人達が辻々で拍手と声援を送ってくれるのはとても嬉しい。

 1stステージの区間距離はPBPの中で最長の139km。かなり長いがノンストップで行く予定。

 コース全体としては4年前とほぼ同じではないかと思われる(細かく見比べていないので定かではないが)。

 しばらく街中を走って郊外に出た。4年前は集団がとてつもなく速くてもうこの辺りで集団の最後尾で千切れかけていたが、今回はまだ20時スタートの先頭付近を走っている。このペースなら十分付いていけそうだ。加えて4年前は16時スタートだったので、日が十分に高く暑さにやられてグロッキーになってしまったが、今回は日暮れ前でかなり涼しく絶好のサイクリングコンディション、非常に調子良く走れている。バイクの調子もすこぶる良い。今回満を持してGOKISOホイールを投入、更に出発直前にリアホイールのホイールバランスをしっかり取って来たし、更にこれも満を持してコンチネンタルのGP4000SⅡを装着してきたのでホイールはほぼ完ぺきな状態だ。事実これまで使い続けていた練習用のKysrium Eliteと比較して物凄く乗り心地が良い。細かい振動が非常に少なく滑らかに進んでいく。気分的には通常時の2割は体力をセーブできそうな位に楽に進む。

 序盤先頭を走っていた数名のチームはかなり速くもう既に姿が見えなくなり、その次の集団の中で順調に走る。特にトレインを組んでローテーションということにはなっていないが脚の合う数名が団子状態でぽつぽつと先行者を抜いていく。

 サドルバッグに犬のぬいぐるみを付けているライダーを何となく目標にして同じペースで走る。
 微妙にアップダウンのある平原の道を小気味良いペースで淡々と走るのはただそれだけで楽しい。

 21時を過ぎてようやく夜になった。
 20時スタートは90時間の最終スタートの組で、その前には15分おきに既に数千人が先行しているが、そこそこ時間が経つと各スタート時間の集団がばらけて15分の時間差による集団密度の疎の部分がなくなっている。そこそこのペースで先行者を抜きつつ進んでも、その先には更に先行者が延々と連なり夜になると暗闇の中に赤いテールランプの帯が道の遥か先まで連なって見える。これがランタン・ルージュか。4年前は話には聞いていたが、集団から千切れて疎の部分を単独で走っている時間が長かったのでそういう情景を余り見なかったが、今回はランタン・ルージュと呼ぶに相応しい情景を十分に眺めることができた。


 3時間程走ってとある街に入ると割と大きな施設エイドステーションがあったので多くの人が停車するが、特に補給の必要性も感じていなかったのでそのまま素通り。と、ふとナビに目をやるとルート表示が消えていた。ミスコースか?と停車するが先行者は構わず先に行ってしまうし後ろからどんどん抜かれてあっという間に数十人が先に進んでいった。このまま直進でも大丈夫かな?とは思ったが念のためナビのルートの通りに戻ってみると、後続のライダー達は曲がり角で右折していく。やはりミスコースだった。ずっと集団で走っていてルートを人任せにしていると、こういう集団ミスコースが起きてしまう。行ってしまった数十人はちゃんと元に戻ってくるのか?

 コース復帰して単独走行になる。それなりのペースで走れているので敢えて集団に入る必要もないので独りで淡々と走る。

 5時間程走ってそろそろ最初の休憩ポイントが近付いてきた。計画ではこの区間は7時間と見積もっていたがかなり早く着けそうだ。それ程頑張ったわけではないが信号が殆どなく文字通りほぼノンストップで走ることができた結果だろう。140kmがかなり短く感じられた。

 日付が変わって8/17の1:10にMortagne-au-Percheに到着。ここはコントロールポイントではないので、ブルべカードのチェックはない。

 物凄い人でごった返している。90HクラスはPCが混んで大変と聞いていたが確かにその通りだ。まずトイレに行ってそれから腹ごしらえだ。
 ホールに入ったらタカトリさん・つかぽんさん夫妻に遭遇。カフェテリアではパンがなくなってしまいサンドイッチが買えないとのこと。

 ちゃんとした食事が買えるフードコートは長蛇の列でかなり時間がかかりそうだが、仕方なくその列に並んだ矢先、カフェテリアに新しいパンが届いたのでサンドイッチが買えるようになった。

 なんとか手に入れたサンドイッチ。フランスパンとハムだけの潔いレシピだがそこそこ旨い。

 アサノさん、ゆりかさんも先着していた。のんびり食事をしつつ40分程休憩する。