Paris-Brest-Paris 2015/レポート18:15th Stage/Dreux - Saint-Quentin-en-Yvelines(63km/1230km)

 8/20、7:40にDreuxを出発。

 最終ステージは63km。

 あと63kmを6時間、もう完走は間違いないだろう。順調に行けば3時間でゴールだ。
 あと3時間で終わりか、もう終わってしまうのか…。こんなにあっさり1200kmを走り切ってしまうことになろうとは本当に予想していなかった。
 しかし、雨も降っているしこれから都会の道に入るので油断は禁物だ。とにかく確実に完走することを意識して少しだけ気を引き締める。

 Dreuxの街中を緩々と抜けていく。雨は小降りになって殆ど気にならなくなった。

 Dreuxから5km程走って、Marsauceuxの街を抜けた途端、目前に大平原が広がった。


 この緩やかな大平原の中に延々と続く道を走るのが何よりも楽しみだった。4年前、無我夢中で1200kmを走って来て満身創痍で疲れ果ててこの道に出た時、その穏やかで雄大な風景に思わず途方に暮れる位に静かな感動を覚えたあの時の感覚をもう一度体感したくて、ここまでやって来たようなものだ。今回の走行プランもここを朝の爽やかな日差しの中を走りたいと思って組み立てた。


 しかし、残念ながら雨。どんよりとした風景は4年前の感覚を再現することはできそうにない。

 感動が薄いのは前回の様に体力も気力も出し尽くしていないからかも知れない。

 K田さんに遭遇。K田さんも完走間違いなし。ウイニングランを楽しんでいる様。

 晴れの日もあれば雨の日もある。どっちだって御構い無しに、いや、それぞれに楽しみを見出しあるいは辛い目に遭っていること自体を楽しみながら走るのがブルベだ。

 「こういう日もあるさ」、それがブルベ。

 このどんよりとした風景の中を淡々と走りながら、改めて4年前にここで途方に暮れる位に感動できたことがとても貴重な体験だったことを再確認した。そしてまた、この先もう一度その感動を味わいたいと思った。4年後再びPBPを走る動機がこれになりそうだ。

 そんなことを考えているうちに平原区間は終わった。

 La Pillaiserieという小さな街を抜ける。街と街の間隔が狭くなってきた感じ。

 Bourdonneの街に入る。速度警告表示は40km/h?そんなには出てないだろう。

 Gambaisの街の中の交差点。小さな街の中にも信号があるのは、何となく都会が近いことを予感させる。

 Gambaiseuilの街を抜けた後の激坂に差し掛かる。4年前、ここをえっちらおっちら登っていたら地元の”老人”サイクリングクラブの集団にあっさりぶち抜かれたのを憶えている。あの時の様に大勢ではないが数人の観客に応援されつつ頑張って登る。右膝が痛いけどまあいいや。

 激坂を終えて一息。コース上のイベントが一つ一つ終了しどんどん終わりが近付いている。残りは30kmを切った。さっきまでは右膝の痛みは間欠的だったがここに来て痛みが続く様になった。どうやら本格的に右膝を痛めた様だ。帰国しても治癒に1週間位はかかるだろう。でもまあ1200kmを走ってきてどこも痛くないっていう方が反っておかしい。この右膝の痛みで4日間の長い旅路を実感する。

 長い下りを終えてBazoches-sur-Guyonneの街を通過。

 高速道路の高架をくぐる。壁の落書きが都会の気配を強く醸し出す。

 オダックスジャパンのジャージに遭遇。

 この並木道はスタート直後に通過してよく覚えている。本当にゴールが近い。

 小さな集落の真ん中の教会もこの辺で見納めか。ここを左折。

 ついにあと10kmの看板が。あと10kmで本当に終わってしまうのか。俄かに信じ難い。

 Elancoutの街に入った。
 もう数kmでゴールというところで俄かに雨が強くなってきた。
 街中をすり抜け、ちょっとだけ大通りに出たと思ったら、直ぐに公園の中に入った。前回はゴールまで交通量の多い大通りを走ったが今回は違う様だ。
 サイクリングロードの様な公園内の道を土砂降りの中走る。ウイニングランが雨とは冴えないが、まあこれがブルベなんだな。

 10:30、ゴール。
 前回は大通りから大勢の観衆が詰めかける沿道を走りアーチをくぐるというゴールらしいフィニッシュランだったが、今回は狭い裏道の様なところを走って敷地内に入るというちょっと盛り上がりに欠けるフィニッシュだった。それでもこの雨の中を傘を差して出迎えてくれた観客やスタッフの拍手と声援はやはり嬉しい。
 バイクの駐車スペースでミクロンさん夫妻の出迎えを受けてちょっとびっくりやら嬉しいやら。

 やあ、1230kmを走ったよ。あっさり終わっちゃったよ、っていうのが正直な感想。最終日の雨でちょっとモチベーションをそがれたっていうのはあるけれど、もし晴れていたらもっと走りたかったと思ったかも知れない。バイクを降りてもそれ程の疲労感もなく、右膝は多少痛むけれどその他の部位は多少の凝りはあるけれど痛みはない。尻が最後まで持ってくれたというのは驚きだし嬉しい。これは画期的なことだ。これで今日以降の超長距離ブルベでの尻の痛みを恐れなくて済むというのは精神衛生上非常に良い。


 最終コントロールに向かうためヴェロドロームに入る。

 コントロールは長蛇の列。列の中ではいろんな国の人がいろんな言葉で喋っているが皆完走した喜びを語っているのだろう。

 ブルベカードを眺めてみる。このスタンプのひとつひとつがPCを通過した時の風景を思い出させてくれて、確かに走って来たことを実感する。

 ドームの中は人で溢れている。

 なかなか進まない。まあクローズまでは3時間以上あるので少々ゴールタイムがずれたってどうってことはない。


 やっと私の番が来た。ブルベカードにしっかりチェックしてもらいブルベカードはそのまま回収。
 チェックタイムは10:29。
 完走の紙をくれた。これがバイク駐車スペースから出る時の持ち主証明にもなる。

 Paris-Brest-Paris 2015、86時間29分で完走。1230kmの長い旅はこれで終わった。