Toots Thielemans

 昨夜、トゥーツ・シールマンスさんの訃報に触れ愕然とした。
 私の中の数少ないベスト・フェイヴァリット・ミュージシャンの一人がいなくなってしまった。

 トゥーツさんのハーモニカを初めて聴いたのは多分中学の頃、ジャズ・フュージョン系のインストの曲に目覚めた頃にFMラジオでエアチェックしたテープの中に何曲か入っていたのを何の気なしに聴いていたのを何となく憶えている。

 彼の存在が確固たるものとなったのはジャコ・パストリアスの「Word of Mouse」とAurex Jazz Festivalのジャコのビッグバンドでの彼の演奏だった。私のベスト・フェイヴァリット・ミュージシャンであるジャコとのコラボレーションは余りに凄過ぎた。

 この「Sophisticated Lady」の二人の絡みは最高。

 物の本で、ジャコの父親が若き息子に「もしトゥーツ・シールマンスと共演できたらお前は本物のミュージシャンだ」と言ったらしいが、ジャコにとってもトゥーツさんは偉大で憧れの存在だったことが良く分かる。

 そしてyoutubeで見つけたこの映像にはもう鳥肌が立つ程に興奮して感動した。

 ジャコの楽曲の中で最も好きな「Three Views of a Secret」をジャコのピアノとトゥーツのハーモニカのデュオで、という信じられない演奏だ。この演奏を聴くことができたことを心底幸せに思う。
 この二人のコラボレーションは私的には音楽の奇跡だ。

 私の愛聴盤の「Brasil Project Vo.1,2」。

 ブラジル・ミュージックにも彼の思い入れは深い。
 youtubeを見ていたらこんな映像を見つけた。

 エリス・レジーナのバックでギターと口笛を披露するトゥーツさん。(私が彼がギタリストだということを知ったのは、彼を初めて聴いてからそこそこ時間が経ってからのことだった)

 私の守備範囲のジャズ、フュージョン、ブラジル・ミュージックではハーモニカは全く主流ではないが、唯一トゥーツさんだけが見事に調和した稀有な存在だったと思う。

 私は性懲りもなく色んな楽器に手を出して、いつかは1曲演ってやろうとこそこそ練習したりしているが、ハーモニカだけはやってみようと本気で思ったことはなかった。何故なら私の中でトゥーツさんが唯一無二のハーモニカのリファレンスであり、彼のあのエモーショナルな音はどうあがいてもできそうにないからだ。(だからと言って他の楽器がちゃんと演奏できているわけでもないのだが)

 彼のハーモニカがもう聴けないのかと思うと残念で寂しいと思う他はない。

 享年94歳。Rest In Peace.