8/3(木)、19:40にPC19 Great Eastonを出発する。
PCもこれで最後かと思うと何となく寂しい気もするが、とにかくゴールに辿り着きたい。ここまで来てもまだ完走できる気がしていない。あと48kmなのに、本当に48kmでゴールなのか確信が持てない。
ここまで1390kmをほぼノートラブルで走って来た我がバイク。あと48km、頼むぞ。
ゴールまではあと48km。3時間足らずの距離だが時間的にはナイトランは必至。予定より2時間40分遅れているがここまで来たらもうどうにかなる時間ではないしもうどうてもいい。とにかく無事に完走することのみだ。
Great Eastonの街中を緩々と走る。
街中の結構急な下り。
これからどんどん暗くなっていくので田舎の街並みを眺めるのもこれが最後かも知れない。
街を抜けると薄紫の花の絨毯の様な草原が広がる。この道中で観た記憶がないので新鮮。
ここまで散々眺めてきたこの田園風景もいよいよこれで見納めかと思うと名残惜しい気がするが、とにかく早くゴールしたいという思いが勝っている。
ここまで1400kmを走って来て、身体のあちこちが痛い。尻の表層も擦れて痛いし内側も打撲的症状でかなり痛い。手のひらも打撲的に痛くて若干の痺れも来ている。イギリスの荒れた路面がじわじわとダメージを蓄積させていき、終盤には流石に乗り続けるのが辛くなってきた。右膝もじわじわ痛いし右のかかとも結構痛い。でもこれもあと2時間の辛抱のはずだ。
時刻は20時半を過ぎいよいよ日が沈む。
向い風はさして気にならなくなった。とにかく脚を止めなければゴールに辿り着けるはずだ。ここまで来ても正直まだ完走できる気がしない。
ナイトラン開始。予定通りならばまだ明るいうちにゴールできそうだったのに無理だった。
予定では20時前にはゴールして21時頃にはホテルに戻ってChingfordのFish&Chipsの店で食べ物を買って完走打ち上げをやろうと目論んでいたが確かあの店は22:30が閉店時間だったような気がする。どうやら無理そうだ。それどころかホテルの最終チェックイン時間の23:30に間に合わないという恐れも出てきた。あのホテルは24時間ホテル関係者が常駐しているわけではないので、チェックイン時間を過ぎると閉められてしまうと思われる。ホテルに戻れないということになったら一大事なのでちょっと焦る。
ゴールが近くなってきてもまだアップダウンが続く。終盤に来ても脚を使わされる。でももう明日まで脚を取っておく必要はないので使い切っても構わないんだな。
Great Eastonを出て35km、ゴールまで10kmちょっとなのにまだずっと田舎道を走っている。本当にあと10kmちょっとでゴールなのか?まだ完走できる気がしない。
かろうじて残っていた薄暮もいよいよ消えそうだ。淡々と走る。
森の中のアップダウンを抜けると突然視界が開けて道路灯の列が見えた。どうやら高速道路の様だ。街が近付いてきたか。ゴールまで10kmを切った。
高速道路を渡る。ここに来て雨がぱらぱらと落ちてきた。最後の最後まで楽をさせてくれないな。
高速道路の車列を見ているとゴールが近付いていることは実感できるのだが、まだ完走できるという気がしないのは何故だろう?良く分からない。
22時前、まだ遠くの空にちょっとだけ夕焼けの名残が残っていた。本当に日暮れが遅い。街の入り口に入った。ゴールはもう目前。
見覚えのある住宅街の中を走る。取り敢えずゴールに戻って来れたという安堵感は湧いてきた。
ゴール。遂に1441km の旅が終わった。
バイクを停めたところで日本人スタッフさんと再会。日本語の会話に身体の緊張が解けて和む。まずは最終のコントロールに向かう。
見慣れた学校の入り口を見て、戻って来たという実感がじわじわ湧いて来た。
London-Edinburgh-London 2017/Control in Loughton, Goal
ゴールタイムは22:03。ブルベカードにサインされるのを眺めながらもまだ完走できたのかどうか半信半疑の心境。
ブルベカードの全ての欄が埋まった。多分完走できたのだろう。食事券と記念品を受け取り、フードコートに向かう。
スタート時と同じフードコートは人もまばら。まだゴールした人はそれ程多くないのかも知れない。
本当に最後のPCでの食事。チキンカレーは味は薄めだけど疲れた体に沁みる。
食べながら完走時間を計算する。スタートが7/30の10:15でゴールが8/3の22:03だから107時間48分か。とりあえず規定時間内は間違いなさそうだから認定完走したということだろう。さっきコントロールでもらった記念品の中を見たらメダルだった。
食事が終わったらまた次のPCに向かって走り出さなければならないという感覚があってちょっとメンタル的な違和感がある。超長距離ブルベの、走って休んでまた走るという生活サイクルが染み付いていてまだ抜け切れていない様だ。
食事を終えて、ドロップバッグを回収に行く。Louthからのドロップバッグは戻って来ていたがBramptonからはまだ戻って来ていないとのこと、多分深夜になると思うが何時になるか分からないとのことなので明日また出直すことにした。明日またここまで自転車に乗って来なければいけないのかと思うとちょっとナーバスになる。
30分程休憩してホテルに戻ることにする。終わったんだか続いているんだか良く分からないふわふわした感覚はまだ続いているがとにかくバイクに乗ってホテルに戻らないとチェックイン時間がちょっと心配だ。
帰路、身体はバキバキだがまだ何とかペダルは漕げる。アップダウンをえっちらおっちらこなし、道に迷いつつホテルに向かう。
見慣れたChingfordの街並みが見えた。やっとここまで戻って来れたと安堵感がどっと沸いて来た。
23時ちょうどにホテル到着。まだ入り口は開いていたので助かった。
階段をバイクを抱えて上がっていくとフロントには最初にチェックインした時に会った人達とは別の女性がいて「待ってたよ!来ないんじゃないかと心配してた」と明らかに待ちくたびれていた雰囲気を醸し出していた。多分私のチェックインを終えればとっとと帰るつもりだったのだろう。部屋は出発前の2階ではなく3階だと言う。更にバイクを担ぎ上げるのが難儀だ。預かってもらっていたバイクケースを出してもらいそれもえっちらおっちら担ぎ上げて部屋に入る。
新しい部屋は広くて窓も大きくなかなか綺麗、確かこのホテルのホームページの部屋案内に載っていた写真の部屋だ。多分このホテル一番の部屋なんじゃないかと思われるのでちょっと嬉しい。
まずは夕食兼打ち上げ用の食料を調達しに着替えもせずに急いで外に買い出しに出る。街並みを歩いてみるがFish&Chipsの店は勿論のこと、スーパーもコンビニも全部閉まっている。自販機など当然ないのでコーラすら買えない。開いている店と言えば騒々しいパブと高級そうなレストランのみ、ちょっとその中に今から入るだけのメンタリティーは持ち合わせていないのですごすごとホテルに戻る。
シャワーを浴びようとウェアを全て脱ぎ捨てた後の解放感が凄い。もうこのウェアを着なくても良いのかと思うと何とも有難い気分になる。シャワーを浴びて汗や汚れを洗い流してすっきりして身体各所をチェックする。両手のひらが打撲的な痛み、腰と背筋の痛み、右膝の痛み、尻は打撲的と擦過傷的痛み(多分大皮が剥ける)、右のアキレス腱が結構腫れている。走行中はそこまで酷く感じてはいなかったが自転車を降りてみると結構ダメージ食っている。
特に心配なのはアキレス腱、ここまでアキレス腱が腫れたのは2011年にPBPを初めて走り終えた時以来か。これらのダメージが10日後に走る予定のSR600KNまでに果たして治るかどうか。って言うか10日後にSR600を走るなんて到底考えられない。何と無謀なスケジュールを組んでしまったのかと今更ながら激しく後悔する。
食料調達ができなかったので仕方なくバイクケースの中に入っていた出発前の食べ残しのポテトチップスとチョコレートクッキーと部屋に置いてあったミネラルウォーターのボトルを開けて簡易打ち上げを行う。
ポテチを食べながら改めて完走メダルを眺める。ようやく完走したという実感が少し湧いて来た。じわじわと達成感と充足感が出てきた。
ベッドに横になりつつPCでネットを眺めているうちに睡魔が襲ってきたのでそのまま就寝。消灯時刻は2時頃と思われる。