Fretless Jazz Bassその2

 さて2本目。

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 フェンダージャパンのフレッテッドジャズベース。1本目を落札した後に直ぐに見つけて勢い余って落札したもの。ジャンクベースなのに実は結構競って想定落札価格より高いものになってしまった。届いてみるとネット上の写真で見るより更に酷い状態だ。まるで倉庫の中に剥き出しで何年も放置されていた様な荒れ様だ。

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 金属パーツは錆び錆びで酷い状態。塗装はぱっと見ラッカー塗装だが、傷・打痕は多数ある上にビニールか何かがへばり付いて塗装表面が化学変化を起こして荒れてしまった様な妙な模様が付いてしまっている。試しに音を出してみようと思ったが、案の定音は全く出ない。1本目と比べてこれはもう完全なジャンクである。

 それでもこのベースを手に入れたかったポイントは下記にある。

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 その1:ペグが逆巻きクルーソンタイプであること。Jacoのベースもそれだ。1本目は順巻きペグで、逆巻きペグが付いたモデルはフェンダージャパンでは珍しい。

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 その2:ブリッジアースが太線であること。Jacoのベースもこれ。1本目も含め通常は細線。私的にこの太線のブリッジアースを殆ど見たことがなくかなり珍しいものと思われる。また、細かい所だがブリッジのサドルはネジ溝のあるヴィンテージタイプであることもJacoベースと同じだ。

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 ネックを外してこのベースの素性を探る。ネックポケットにはJB62-95の刻印がある。ネットで調べてみるとどうやらフェンダージャパンの1991年モデルのJB62-950というモデルではないかと推測される。3TSの手書き文字は3トーンサンバーストの略ではないだろうか。

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 ネックのシリアルの印字はK、フジゲン90~91年製だと思われるので、ボディー&ネックはオリジナルの組み合わせだと思われる。どうやらこのベースは当時のフェンダージャパンのハイエンドクラスのモデルらしい。オークションで競ってきた人は恐らくこれを見抜いてのことだったのだろう。

 このベースの素性は分かった。ボディーはボロボロだがネックは真っすぐで問題なさそう。どこまで修理するか、思案しながらワクワクして来た。修理屋の腕が鳴るぜ。

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 まずは金属パーツの錆落とし。見た目にはこだわらないとは言え、ブリッジのネジ類が固着していたのでは調整ができないのでCRC5-56に浸して程々に錆を落とす。

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 ボリュームとノブを全交換。フェンダーの純正部品を奮発する。

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 ボリュームを交換し、ジャック内部の分厚い錆を無理矢理削り落としてようやく音が出た。がフロントピックアップの音が出ない。どうやら断線している様だ。

 取り敢えず電気パーツのリペアは一旦終了して、フレットレス化を行う。最初は自分でやろうかとも思ったが、素人が下手をしてネックを駄目にしたら元も子もないのでここはプロに頼むことにした。どうせプロに頼むならばフレットレス化だけではなくてJacoのベースにも施されていた指板のエポキシコーティングもやることにした。もうとことん似せてしまおう。依頼先をネットでリサーチした結果、大阪のGombo bass guitarsさんに決定。去年の12月頭にベースを送り、年が明けて1月下旬に戻って来た。

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 流石プロの仕事、綺麗な仕上がり。指板のエポキシコーティングは弦が鏡の様に映る程につるつるに仕上がっている。

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 ネックは真っ直ぐで見事なフレットレスに仕上がった。ベースのことは良く分かっていない素人でも見た目に満足度は高い。

 ベースをリペアに出している間にピックアップをどうするか思案していたが、最初はフェンダー純正のピックアップでいいかなと思っていたが色々調べてみると凄いのが見つかった。セイモア・ダンカンのWeather Reportというピックアップである。その名が示す通り実際にJacoのベースに搭載されていたものを再現したものらしい。完全受注生産でベースの落札価格とほぼ同じ位の値段がするので、ベース弾きでもない人間が自宅で半分御飾りなベースにそこまでしても文字通り宝の持ち腐れなのは分かっているが、ここまできたらもう行くところまで行くしかない。思い切って12月の中旬に注文、年明けの1月下旬に届いた。

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 カスタムメイドらしい箱に入ったピックアップは眺めているだけで満足してしまう。

 ベースを弄る時間がなかなか確保できなくて数か月が経ってしまったが、このGWにいよいよピックアップ換装に着手する。

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 まず古いピックアップを外す。

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 新しいピックアップを取り付ける。30分程の作業であっさり完成、一発で音が出て一安心。

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 半年かかってやっと完成したBass of Doomもどきのフレットレスジャズベース。

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 とどめは弦。これまたJacoが使っていたSWING BASS 66 | ROTOSOUNDを張ってみた。フレットレスの指板にラウンドワウンドの弦を張ると指板が削れそうで折角ピカピカのコーティングが駄目になりそうだが思った以上に固くて素人がちょろちょろっと弾いた位では全く問題なさそうだ。アンプラグドで弾いただけで何となくJacoっぽい音が出たのは気のせいか。


Continuum (Jaco Pastorius cover)

 ちょっと弾いてみた。Jacoのあの音はそう簡単には出せないし何より曲を満足に弾くこともできないが、本人的にはここまで持ってこれただけでも充分満足した。

 

 ゴールデンウィークの最終日はこうやって終わった。明日からまた仕事、何やら不穏な空気が流れる会社に行かねばならないが、英気は充分に養ったし状況を見極めつつ程々に働くことにする。