MGM2018/Report 11:Stage 8,Day 2/Cangas de Onis-Cistierna(101km/803km)

 8/21(火)、17:50にC8/Cangas de Onisを出発。

 45分程の休憩だったが、身体の熱も下がって落ち着きを取り戻し、気力もそこそこ戻って来た。

 さあ、今朝出発したCistiernaに戻ろう。あと100km頑張れば仮眠できる。あと6時間、踏ん張ろう。

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 観光客で賑わうCangas de Onisの街を緩々と通過。ここにももう二度と来ることはないのかと考えると、ちょっと名残惜しい。

 Cangas de OnisからCistiernaまでの100kmは今回のMGM最大の難関ステージとなる。出発直後から46kmで獲得標高差1700mのPonton峠までの超級ヒルクライムが最大のヤマ場となる。夕刻の暑さも相俟って難易度は非常に高いが、ここを攻略できれば完走の目途が立つ。気合を入れて大勝負に臨む。

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 Cangas de Onisの街を出ると直ぐに登り基調になった。勾配は緩やかでせいぜい2%程度。

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 気温は高いが道の両脇には木が多く日陰が沢山あるので直射日光を浴びる時間が短い。これは有難い!暑さとの戦いがなければ相当楽になる。心理的プレッシャーがかなり軽減されてちょっと余裕が出て来た。

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 緩やかな勾配を淡々と登って行く。

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 往路では暗くて全く見えなかったが、谷に沿って走っていたのか。谷は結構深い。

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 Cangas de Onisから13km、Precendiという集落を通過。

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 緩やかな勾配はまだ続いている。

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 両脇の山は岩で出来ているのか。道に張り出した岩盤が崩れてきそうでちょっと怖い。

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 山の上の方は緑も少なく、岩の様な灰色の山肌が剥き出しになって荒々しい。

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 Cangas de Onisから18km、Ceneyaという集落を通過。

 素晴らしい風景に心が躍る。MGM最大の難関ステージでさぞかし苦しんで登っているだろうと予測していたのだが、まさか風景を楽しめる余裕があるとは思いもしなかった。これは嬉しい誤算だ。

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 相変わらず2~3%程度の緩斜面が続いている。余裕を持って登り続けられている。

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 Cangas de Onisから22km、ヒルクライムのほぼ中間地点に峠の茶屋的な休憩ポイントがあった。ジュースの自販機もあるが、心身共にまだまだ余裕があるので素通りする。

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 勾配は相変わらず緩いまま。もしかしたらこのまま山頂まで行ってしまえるんじゃないかと期待してしまう。

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 登っている間に谷の隙間から見える山の形が変化して眺めながら走るだけで楽しい。

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 Cangas de Onisから26km、壁面に掘られた大きな石の標識が印象的。

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 振り返ると下り方面にもあった。

 頂上まではあと20km。

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 道脇の谷底がどんどん深くなっていく。もし落ちたら谷底まで落下してしまう様な急斜面。しかし路肩のガードは高さ50cmにも満たない石のブロックでしかも隙間だらけ、自転車やオートバイなら簡単に落ちてしまいそうでちょっと怖い。

 この道の感じはブエルタで観た登りの道そのままでちょっと感動、このスリリングな感じがワクワクする。

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 こんなところにカバーのかかったバイクが置いてある。前後に民家は全くなく人影もない。ちょっと怖いぞ。

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 このまま緩々と山頂まで行けるのかと思っていたが、徐々に勾配がきつくなってきた。

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 残り16km辺りでいきなり勾配がきつくなった。10%を超える急勾配でダンシングで何とか凌ぐ。

 それ以降6~7%位の勾配が続く。やはりそんなに甘くはなかったか。ここからがいよいよ本当の勝負の始まりといったところか。気合を入れてペダルを踏む。

 踏みを入れ始めて体温が上がって来ると途端にきつくなって来た。何だかんだでここまで30km近く登って来ているのでそれ程自覚症状はなかったものの相応に疲労している。それがこの急勾配で一気に顕在化した感じだ。ちょっと前までの余裕のヒルクライムから様相が一変した。気温も急に高くなった様に感じられ、暑さとの戦いも始まった。

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 目の前に見える三角の山が、まるでこの辺りに住んでいる魔物の主の様に見えて、こっちが苦しみながら登っている姿を見ながらほくそ笑んでいる様に思えてしまう。あと15kmはどうやっても行けそうにない。悔しいが一気に登り切ってしまう試みは断念せざるを得ない様だ。

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 えっちらおっちら登っていると視線の先に集落が見えた。あそこまで行って休もう。

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 Oseja de Sajambreという街に入った。街の入口は10%程の急勾配、休憩前に試練が課される。止まりそうな速度で這う様に登って行く。

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 やっと街中に入って来た。バルか店を探しながら走る。

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 上手い具合に小さなコンビニの様な店があった。地元のサイクリストがちょうど出発するところだったので入れ替わりで立ち寄る。有難い、やっと休める。残念ながらここで力尽きた。

 Cangas de Onisから34km地点のOseja de Sajambreで休憩、チェックタイムは20:11。ここまで2時間20分かかった。

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 冷たいコーラとアクエリアスで身体を冷やす。どうやっても46kmを一気に攻略するのは無理だったな。悔しいがこれが今の自分の実力、素直に認めてまずは休憩して多少なりとも体力の回復に努める。

 時刻は20時半近くになりそろそろ日暮れの時刻、暗くなる前に峠を越えてしまわないと下りが危険になるのでうかうかしていられない。丁度一人の参加者が昇って来てここに立ち寄ったので席を譲る形で20分程の休憩の後リスタート。

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 店から数軒先にはレストランがあって10名位の参加者が食事をしながら楽しそうに談笑していた。やはり外人さん達は余裕度が違う。

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 Oseja de Sajambreの街を出る。さあ、もう一頑張り。あと12kmに再びチャレンジする。

 勾配は相変わらず7%前後が続く。休憩した分少し持ち直して遅いながらもペースキープで淡々と登って行く。

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 山の主が眼前に迫って来た。気温も下がって来て多少優しくなった様に見える。

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 山の向こうに太陽が隠れ暗くなってきた。ちょっと焦るが、ここで無理してペースを乱すと後で苦しくなるので忍の一字でペースキープ。

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 7%の坂の向こうに更なる傾斜が見える。10%超の急勾配が出てくる頻度が高くなっている様な気がする。山頂が近付くにつれて難易度がどんどん増してくる。

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 反対側の山の斜面に見上げるような高さの道が連なっている。あそこまで登らなければならないのかとげんなりする。心理的なプレッシャー効果は絶大。

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 雲の中を突っ切ってちょっとだけ夕焼けが見えた。いよいよ日暮れだ。明るいうちに峠を越えるのは厳しくなってきた。

 登っても登っても終わりが見えない。キツイ、キツ過ぎる。「いつまで登らせるんだよ!いい加減にしろよ!」と誰に対してかわからない悪態を吐きながらよろよろと登り続ける。

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 暗くなると同時に霧が出てきて急激に温度が下がって来た。さっきまで暑かったのに肌寒い。これは拙い。下りに入る頃には気温1桁まで下がるかも知れない。今度は寒さとの戦いかよ。もうやられ放題だな。

 疲労感と敗北感にやられつつ登っていたら多少勾配が緩んできた。いい加減に山頂に到達したのか?

 開けた空の道の先に看板が見えた。やっと着いたよ。

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 Cangas de Onisから46km、スタートから748km地点の標高1280mのPonton峠に遂に到達。時刻はは21:36、登坂開始から3時間40分のヒルクライムが何とか終わった。ぎりぎり薄暮の残るうちに山頂まで来ることができたが、直ぐに暗くなるだろう。真っ暗になる前に少しでも下って距離を稼いでおかなければならない。写真を撮って一呼吸置いてから直ぐに下り始める。

 ギリギリ視界の効くうちにどんどん下る。そこそこの傾斜でかなりスピードが出るが、疲れているし暗くて路面の凹凸を見落として落車したら大事に至るのでブレーレバーを握りしめたまま慎重に下る。

 下っている途中で突如冷気の中に突っ込んで驚く。「寒っ!」と思わず叫んでしまう位に冷たい。下る程に気温が下がるというのはどういうことだ。とにかく急激に気温が下がってきているので再び何かを着なければならないかも知れない。

 10km程を一気に下ってようやく勾配が緩んできた。長い下りが終わって全身の緊張が解けてホッとする。

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 日が完全に暮れたが月明かりがあって闇夜ではないのは有難い。最大の難所を終わらせた安堵感もあって落ち着いて進む。PCまではあと40km、今は22時だから到着は日付が変わる頃になりそうだ。

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 下り基調が一段落してダム湖沿岸のアップダウン区間に入った。往路ではそれ程きつく感じなかったが、300km以上走って来て疲労感満載でここを走ると全然違う道の様にキツイ。どうせ日付は跨ぎそうだし今更頑張って漕いだところでそんなに睡眠時間を稼げるわけでもないので、ペースを乱して残り少ない体力を無闇に消耗しない様に無理しないペースを維持する。

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 ダム湖に映った月の光が幻想的。夏なのに虫の声が全く聞こえない。静寂の中を淡々と進む。

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 Cangas de Onisから76km地点のダムを通過、PCまであと25km。

 ダムを過ぎると何となく下り基調になった。あと1時間頑張れば寝られる。もう少しの辛抱だ。

 ペースを落として走っていると体温も上がらず、かと言ってペースを上げられる程の体力は残っていないので普段なら耐えられそうな気温でも寒く感じる様になってきた。一旦止まってアームウォーマーを着けて走る。

 集団に追い付かれた。ちょっといいペースでそれ程無理しなくても乗れそうだったのでトレインに乗って行こうかと思ったが、マイペースを崩したくないのと疲れて接触落車のリスクもあるので、動画撮影の間だけ付いて行って見送る。

 残り10kmを切ってアップダウン、ちょっとした登りがしんどいがもう頑張る必要はない。淡々とできることをやるだけ。

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 Cistiernaの街に入った。今日の仕事はこれで終わった。安堵感に浸りながらPCを目指して最後の一踏み。

 803km地点のC9/Cistiernaに到着、今日はここで終わり。

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 コントロールに向かうと先程の集団の人達がいた。このまま寝ずに先に進むらしい。

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 チェックタイムは8/21の24:00。元々ぎりぎりゴールの予定より更に1時間半遅れとなってしまったが、何だかんだ言ってもここまで辿り着けたことの方が嬉しい。スタート直後はここまで来ることは到底できないと思っていたが何とかなって本当に良かった。

 ここまで52時間で800kmを消化して、残り440kmを38時間、1泊2日で走ればよいと考えればかなり楽に思える。それにもう300km/Day走ることもないのでかなり気が楽になった。ここまで辿り着いてようやく完走の目星が付いた感じだ。

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 まずは寝床の確保。この時間なのにやはり寝ている人は少ない。昨日と同じくマットを体育館の端に引き摺って行きベッド確保完了。

 遅れを取り戻して少しでも長く睡眠時間を確保するため、シャワーは断念。受付の食事セットは買わず、昼間Gijonでテイクアウトした干し肉とパンを食べて夕食代わりにする。

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 ドロップバッグを取ってベッドに向かう。ドロップバックのモバイルバッテリーでスマホやサイクルコンピュータなどの必要電装品だけの充電をセットし、アラームを5時半にセットする。ウェアは着たままで昨日と同じ様に着られるものを全部着てベッドに横になる。またしても身体のあちこちが攣ったが昨日程ではなくちょっともぞもぞしたら治まった。就寝時刻は1時前と思われる。