MGM2018/Report 15:Stage 12,Day 4/Ayllon-Cogolludo(100km/1173km)

 8/23(木)、女性スタッフに起こされた。時計を見ると0時過ぎ。モーニングコールを頼んでいたわけではないのだが起こしに来てくれるのは有難いものの、この場合はちょっと迷惑。スタッフに「まだ寝る」と伝えて二度寝する。

 再び起こされたのは1時半、女性スタッフに「時間は大丈夫か?」と真顔で尋ねられると文句を言うのも申し訳ないので「もう少し寝る」と言って毛布に潜り込んだが、今度は目が覚めてしまって二度寝できそうにない。仕方が無いのでそのまま身支度を始める。最初は眠かったがもそもそと動くうちに少しずつ覚醒して来た。睡眠時間は4時間半位か、まあ良く寝たと思い込むことにする。

 着替えて起き上がり、体育館の中を見回すと2人位まだ寝ていた。音を立てない様にそろりそろりと体育館の入口に停めてあるバイクまで行って外したサドルバッグやサイコンなどを取り付け出立準備。

 外はそれ程寒くはない。10℃は余裕で越えている様だ。アームウォーマー&ニーウォーマーは着けない。

 1:55リスタート、寝静まった街中を緩々と走る。

 走りながら身体各所をチェック。尻の皮がちょっと痛いことを除けば特に問題となる様なことはなさそう。4時間寝れば疲労感もかなり薄れて、普通に走り出すことができた。あと10時間走ればゴール、ハードな旅も終わる。今日はホテルのベッドで寝ることができる。そう考えると元気が出てくる。

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 橋を渡ってライトアップされた古建築の壁を観ながら右折、進路を南に取る。

  何とか最終日まで漕ぎ付けた。ゴールまでは167km、10時間かかっても12時にはゴールできるので時間的な余裕はある。ここまで来たら無理せず安全に余裕を持って走る。前半の山岳地帯のアップダウンをやり過ごせば後半は楽になるはずだ。

 次のPC、C13/Cogolludoまでは100kmだが、59km地点の休憩ポイントAtienzaに立ち寄る。リスタート直後からの長い登りが最初の関門、まずはここを登り切ることに集中する。

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 Ayllonの街を出ると直ぐに登りが始まった。往路ではかなり長い時間下ったので相当長く登らされることは覚悟している。

 序盤は勾配はせいぜい2%程度と緩やかだが、路面がかなり悪く走り辛い。取り敢えず心身共にリフレッシュした状態なのでそれ程苦にならずに順調に登って行く。真っ暗闇だがここ最近のメインのヘッドライトFenixのBC30の光量は充分で不安はない。MGMを走り始めてからまだ電池交換をしていないのでランタイムもなかなかのものだ。

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 Ayllonから6km地点、Francosの街に入る。小さな寝静まった住宅街をあっという間に通過。

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 真っ暗闇の緩斜面を淡々と登る。この区間は往路も夜だったので周囲の景色がどうなっているのか知ることはできなかった。

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 8km地点のEstebanvelaという街に入る。

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 小さな住宅街は明かりも少なく暗い。ちょっと不気味。

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 路面は相変わらず悪い。舗装路されてはいるがかなり酷い状態でバイクの振動が凄い。手足と尻にずっと小刻みな衝撃が加わり続けるので徐々に痛くなってきた。時々深い陥没があったりするのでタイヤを落としてパンクしない様に走るのもなかなか神経を使わされる。

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 14km地点のSantivanez de Ayllonという街を通過。

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 街を出ると勾配がきつくなった。5%位はある。ここからが本格的な登りなのか。

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 暗くて良く分からないが周囲は森の様な感じだ。路面は更に悪くなった感じで勾配がきつくなったことも合わせ難易度が急に上がった。

 徐々に標高が上がって行くにしたがって気温が下がり、登りで身体が暖まっているのに寒く感じる様になってきた。登り始めはまだ余裕があったのにだんだんシビアな状況に変わって来て苦痛が増してきた。取り敢えず空の満天の星を眺めながら気を紛らわせつつ走る。

 パヴェの様なヒルクライムはなかなか終わりが来ない。ちょっと勾配が緩んでこれで終わりかと思いきや、再び登り始めるというのを何度も繰り返す。坂の無限ループに嵌まってしまった感じだ。体力的にはまだ余裕があるが心理的にキツイ。

 周囲の風景がだんだん開放的になって来て風力発電の航空灯の赤い点滅が幾つも見え始めた。山頂が近くなってきた証拠だ。もう一頑張りだ。

 1時間40分かかって22km地点の山頂にやっと到達。標高1420mをピークにようやく平坦基調になった。

 風力発電の林の中を走りながら全身の緊張が緩んでほっとした。この先これ以上高い山はないはず、ゴールまでは下り基調と考えるとかなり気が楽になった。まだ完走の確証は持てないがゴールが近付いているのは間違いない。

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 平坦基調になったら急激に身体が冷えて寒くなった。恐らく気温は一桁台まで下がっている。ちょっと耐えられなくなってきたので止まってアームウォーマーとニーウォーマーを着ける。

 山頂を境に路面が急に良くなった。一気に走り易くなって平坦基調を順調に走る。

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 ひとしきり平坦基調を走って下りに入り、37km地点のSomolinosという街に入った。

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 時刻は4:35、まだ街は寝静まっている。静かに通過する。

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 ちょっとしたアップダウンがたまに出てくるが基本的には平坦基調が続く。順調に距離を消化。

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 56km地点、幹線道路から支線に入りAtienzaの街に向かう。BPまであと3km。

 ナビを頼りに暗い街外れの休憩ポイントであるバルのある場所に辿り着いたが、店の明かりが見えない。往路でも立ち寄った場所だから憶えているはずなのに様子が違うので場所が変わったのかと焦った。でも、暗闇の中を良く見たらなんと閉まっているではないか!

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 MGMの公式サイトのコントロールの説明ではここAyllonのBreak Pointは袋もこの時間はオープンしていることになっているはずなのに、閉まっているとは予想だにしなかった。まあちょっと冷静に考えてみると、200人強の参加者が30時間位の幅の中で五月雨式に到着するのを特に夜通し待つのは割に合わんとバルの店主が勝手に店を閉めてしまったのかも知れない。ここで往路で九死に一生を得たコーラとサンドイッチをもう一度食べるのを楽しみにしていたのに、残念。ここにいても仕方が無いので、先に進むしかない。

 ちょっと遅れて到着して来た2人組の参加者に閉店していることを告げてリスタートする。59km地点の休憩ポイントAyllonは結果素通りとなった。

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 再び真っ暗な道を進む。御腹も空いて来たし更に40kmを走るのはちょっと辛い。途中で寄れるところがあれば休みたいところだが、この時間だし往路の記憶を辿っても何も無さそうなので他に休憩ポイントを見つけるのは難しそうだ。携帯していたビスケットを食べながら走る。

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 4km程の勾配5%位の登りをえっちらおっちら登って来た。71km地点でピークを通過。往路でもこの区間は結構アップダウンがあったのを憶えている。

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 時刻は6時を回った。そろそろ夜明けが近付いてきて満天の星空も少しずつ消えていくだろう。スペインの荒野で見る素晴らしい星空もこれで見納め。返す返すも星空モード付きのデジカメを持ってこなかったことを後悔する。

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 PCのCogolludoまでは23km。あと1時間頑張れば休める。

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 東の空が薄っすらと赤くなってきた。夜明けが近い。寒いので日差しが待ち遠しい。

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 あと16km、アップダウンでペースが上がらずなかなか距離が縮まってこない。

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 夜が明けて周囲が明るくなった。MGMを走り始めて4回目の朝。大きな湖の傍を通過。月明かりに照らされていた往路の風景とはまた違った趣の朝の風景。とても清々しい解放感のある眺望に思わず止まってしばし眺める。87km地点を通過。

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 最後の最後でまた登り。だんだん両手の指に力が入らなくなって来てシフトチェンジをするのが辛くなってきた。えっちらおっちら登ってCogolludoの街の入口に辿り着いた。PCは更に2km先。

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 お!あの牛の看板じゃないか!ブエルタの中継で見た砂漠の中の巨大な牛の看板を見るのが楽しみだったが走行中は一度も見ることができなかった。このまま見ずに帰るのかと落胆していたがこんなところで見られるとは。但しサイズは極小、それでも見られただけでちょっと満足。

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 Cogolludoの街を抜けたところでMGMのバナーを見つけホッとする。やっと着いたよ。

 スタートから1173km、Ayllonから100kmのC13/Cogolludoに到着。遂に最後のPCまで辿り着いた。

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 早速コントロールでチェックを受ける。

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 チェックタイムは8/23の7:45。全てのPCの欄がスタンプで埋まった。後はゴールの1つを残すのみ。

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 コントロールの直ぐ横の小さなバルのカウンターで朝食。黒板にメニューが書いてあったがさっぱり分からないのでカウンターの中のスタッフに「肉が食べたい」と伝えたら「ハムでいいか」と返って来た。ハムのサンドイッチを頼む。

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 しばらく待たされて出て来たサンドイッチ。随分ぶっきらぼうな見てくれだが、焼いたばかりのハムとパンは塩味が効いてとても美味しい。コーラと込みで€3.5。

 ”遂にここまで来た...!!”という万感の思いと言ったらちょっと大袈裟だが、我ながらここまで良く頑張って堪えて辿り着いたなあと思う。泣いても笑ってもあと67kmでこの旅も終わる。ゴールクローズまでは6時間近くあるからトラブルさえ無ければまず問題はない。ここまで来たら何としても完走しなければ。最後にミスをしないように気持ちを入れ直す。40分程休憩する。