8/18(日)、6時前に目が覚めた。昨日の18時から2度の寝落ちで合計6時間位眠れたと思う。12時間で半分眠れたと考えると結構な睡眠量ではないか。今日は21時スタートなので17時頃にホテルを出ようと思うと後11時間、その間に3時間位眠れれば丸一日分の睡眠時間としては充分だろう。時差ぼけの嫌なところは睡眠不足だと思い込むこと、しっかり寝たと思えば心理的プレッシャーも軽減される。
今回はスタート前の陰鬱な精神状態が軽いのが非常に有り難い。去年のMGMは相当酷くてもう海外遠征は止めようと思っていたのに比べれば雲泥の差だ。MGMは日本からの参加が私一人だったのと初めての国で事前情報が非常に少ない中での強行遠征のプレッシャーだったが今回は過去2回分の経験値と多くの日本人参加者がこの地にいるという心強さに助けられている。
それにしても寝落ちの間に見る夢が結構面白い。微妙に現実生活及びPBPが絡んでいるが突拍子もない設定と展開で、よくまあこんな夢を頭の中で構成できるなあと我ながら感心する。
外は雨が降っている。予報ではスタートする夕方頃には止む見込みだが果たしてどうだろうか。走行中の天気予報をチェックする。取り敢えず全行程雨予報は俄か雨程度の予報、特に後半の8/21のルディアックから8/22のランブイエゴールまでは俄か雨を含む雨マークが全くないというのは非常に心強い。もしかしたら3回目にして初めて全行程雨無しで走れるかも知れない。でもそんなに上手く行く訳はないので過度の期待は止めておこう。
ライダーズアイテムを改めて確認する。ライダーズナンバープレートは3種類。ヘルメットとバイク全面とバイク横面に取り付ける。ブルベカードホルダーは前回と同じ物。使い勝手は良いのだがストラップのクリップ部分が鉄なので身に着けていると汗で直ぐに錆びてくるのが頂けない。せめてプラスティックにしてもらえると有難いのだが。
ブルベカード。これから4日間でこの空欄を一つずつ埋めていく作業が始まる。
ヘルメットにシールを貼る。Vの文字がヘルメットのデザインに何となくマッチしている。
前面のプレートは、フロントバッグの開け閉めがやり難くなるがここしかないので止むを得ず取り付ける。
横向き用のナンバープレートの取り付け位置に迷う。ICタグが見えない様に取り付けようとするとバイクの左側になるのだがそれが正解なのだろうか?でも見栄え的には右側にするのが自然だと思われる。考えるのが面倒なので前回と同じ右側に取り付ける。
ナンバープレートを取り付け終えて昨日のうちに買っておいたあり合わせで朝食。フランスに来て必ず買う物のもう一つはYOPというヨーグルト飲料。日本にも似た様な物はあるがサイズが違う。850mlという量は満足感大。寝てばかりなので余り空腹感はないのだが食べ始めると案外食べられる。ブルベライダーにとってしっかり食べられることは良いことだ。食べたらまた寝る。
ベッドの上で横になりうだうだと過ごしているうちに16時になった。6時から結局一睡もできず。まあ殆どベッドの上で寝て過ごしたので休息は取れているものと思い込む。去年のMGMと同じ展開なので、自分のMGMのブログを読み返し「非常にきつかったMGMでも結果完走できた。PBPはそれよりも楽だから完走できないはずはない」と自己暗示をかける。そう、できないはずはない。
インターネットで完走した暁には打ち上げ本番をやる店を決定(というより4年前に既に決定していた)。これをモチベーションの一つにして走る。
そろそろ出立の時間だ。覚悟を決めて身支度をして準備をする。
ホテルのフロントの男性に戻りは22日と告げて、17時にホテルを出発。次に戻って来るのは4日後か。
パリの空は雲は多めだが晴れ。今日は日中は雨予報だったが、空を見る限り今のところ降る気配はないので一安心。
街中をうねうねと抜けてモンパルナスの駅へ。
駅のロビーは相変わらずの混雑。
昨日学習した通り10番乗り場の自動券売機に脇目も振らずやって来た。
画面はタッチパネルになっている。デフォルト言語は当然フランス語なのでまずは”Langage”ボタンを押して英語を選択する。
イギリス国旗を選択。その後再び上記の画面に英語表示になって戻るので左側の”Purchase Tickets”を選択。
一番上の”ile de France”を選択。
”RAMBOUILLET”を選択。
一番上の”Full Fare”を選択。
購入枚数の数字を選択。
”Pay”を選択。
電卓の様なパネルの下側にスロットがあるのでICチップ付きのクレジットカードを挿入してPIN CODE(暗証番号)を入力。ちょっと時間がかかるので慌てずに待つ。
無事に切符を購入することができた。
昨日は人間用のゲートを無理やりくぐったが、ちゃんと大荷物や自転車通過用のゲートも用意されている。10番乗り場と9番乗り場の間にある。ゲートは一人ずつ通過する方式。右下の赤いバツ印が緑の丸印に変わると利用可となる。右の指差しマークのある銀色のボタンを押すとゲートが開くので自転車ごと中に入る。
中に入ると右側に切符を入れるスロットがあるのでそこに切符を入れる。確認が取れると出口のゲートが開くので、切符を忘れずにとってホームに入る。
乗るべき列車はまだ来ていないのでホームの手前でしばし待つ。
列車が来たのでホームに入っていく。
ドアに大きな自転車のマークが付いている車両にバイクラックが設置されている。
バイクラックにバイクをかけて無事作業完了。予定通り17:35発の各駅停車に無事乗車することができた。
昨日と同じ様にサンカンタンからベイさんが乗ってきた。ベイさんと私は同じ21時スタートだ。
18:40にランブイエ駅に到着。昨日と同じ様に地下通路をバイクを持って歩く。
駅前には他の日本人参加者の姿が見える。AJのPBP記念ベストは良く目立つので日本人の判別が簡単にできる。
ベイさんのバイクの日の丸ポールが早くも起立。密かな闘志がそこはかとなく感じられる。
他の参加者の流れに乗って街中に入っていく。昨日は気付かなかったが街中には小さな遊園地みたいな場所があって人も多くちょっとした御祭りムードが漂っている。こちらのテンションも徐々に上がってきた。
スタート地点の敷地の入り口の門に到着。門の前も石畳になっていて、こんな所で落車して怪我でもしたら洒落にならないので慎重に進む。
敷地内にはたくさんの車が停まっているが、参加者の数は案外少ない。現在時刻は19時、既にスタートは始まっていて、80Hクラスは既にスタートを終え、90Hは17時から順次スタートしていて既に半分が走り始めているはずだ。
敷地内の道路にはスタート待ちと思しき集団ができている。90Hクラス最終となる21スタートにはまだ2時間近くあるので、道脇の芝生の上でしばし休むことにする。
ベイさんはスタート風景を見に行ったので、私はバイクを見張りながらのんびりと休憩。
スタートを待つ参加者達がのんびりと過ごしている。これから1200kmを走ろうという緊張感は余り感じられない。私自身も3回目という慣れもあるのかそれ程の緊張はない。
一眠りする程の時間はないが、寝転がって空を見上げる。それにしても雨が止んでくれて本当に良かった。もし雨が降っていたらこんなにのんびりと心穏やかなスタートは絶対に迎えられなかった。それだけでも非常に有難い。
ちょっと御腹が空いてきたので持参したサンドイッチを食べる。今回はオフィシャルが用意したスタート前のミールチケットを購入しなかった。前回のPBPでは並んだ挙句に食べ物切れでチケットの払い戻しもないという酷い目にあったので、自前で用意することにした。スタート前にバタバタと動き回る必要もないためやはりミールは利用しないのが正解だったと思う。
ベイさんも戻ってきてしばし横になる。ちょっと離れたところからこちらに向かって歩いてくる人がいたから誰だろうと思ったらナミキさんだった。国内のブルベではたまに顔を合わせる豪脚の持ち主、久しぶりの再会にしばし歓談。ナミキさんも21時スタートとのこと。
時刻は20時を過ぎ、そろそろ並ぶべきかと列の先の方を偵察に行く。
列の先頭付近ではUのプラカードを持った人の後に既に隊列ができている。アルファベットはスタートのグループを示しているがUはVの一つ手前だからもう並ばなければならない。急いで芝生に戻ってベイさんに声を掛けて列に並ぶ。
スタート30分前。列に並んで少しずつ前に動いていく。21時スタートのVグループには数人の日本人参加者がいた。
刻一刻とスタート時間が迫って来て、何となくのんびりムードだったのが徐々にテンションが上がって来た。
Uグループが進み始めた。Uグループのスタートは20:45。Uグループの最後尾に切れ目なくVグループも続く。
20:45、Uグループのスタートが始まった。前方に見えるスタートゲートの辺りから歓声が聴こえてくる。
Uグループのスタートが終わって、Vグループがスタートラインに立った。いよいよ我々の番だ。思いの外前方にいることが分かってちょっとびっくりした。ステージではDJのおじさんがイケイケのテンションで喋りまくっている。そう言えば2015年のスタートの時もこんな感じでDJのおじさんが観客や参加者を盛り上げていたのを思い出した。
スタートまであと10分、遂に念願のスタート地点に辿り着くことができた。まずはここまで来ることができたことに強い安堵感を覚えると共に、これから始まる1200kmの長い旅を前に再び夢の国で冒険ができるという喜びと高揚感、何が起こるか分からないという不安感、3回目だから完走して当たり前というプレッシャーが入り混じった複雑なテンションで気分が盛り上がって来た。ちょっと筆舌にし難いこの感情が揺り動かされるスタート直前のこの雰囲気は何度経験しても楽しい。色々と苦労はあったけれど、やはり来て良かった。
さあ、行こう。1200kmを我が脚で走り切ろう!