気が付けば5月も下旬に差し掛かり、コロナ禍によるいつもと違う春がそろそろ終わろうとしている。4月7日に緊急事態宣言が出されて以降、世の中は至る所で我慢を強いられ停滞している。私的には元々人混みに行くこともなく公共交通機関も使わず交友関係も殆ど無いので行動変容は余りない。変わったことと言えば週に1日だけテレワークになったことと行きつけのラーメン屋が営業自粛していたこととハードオフがマスク無しで入店できなかったこと位か。一方でブルベが団体として開催自粛となりこの時期に全く走れないのはやはり寂しい。去年から気合を入れつつ準備を進めてきた、3度目の日本縦断となるRide Across Japan2700が残念ながら中止となり、更に8月に開催されるはずだった初のイタリア遠征となる1001Migliaも来年に延期となり、今年の大きな目標が相次いで消失してしまったのは残念な出来事だった。でも、自転車通勤は変わらず継続しているし自粛ウォッチャーを刺激しない様に御近所自転車散歩と称しつつ家の近くの多摩湖CR周回でぼちぼち自転車には乗れているので、9月のブルベシーズン再開を目指して気持ちを切らすことなく身体的にも準備を怠らない様に意識している。ブルベの全くない週末はこの時期ではもう10年来無かったことなので、ちょっと不思議な感覚だがいずれ年齢的に自転車に乗れなくなった時のことを何となくイメージしつつのんびりと楽しく過ごしている。総じてこのコロナ禍が私的に辛いものでないことはありがたいことだ。
ゴールデンウィークが明けて直ぐの朝の自転車通勤途上、いつもの様に多摩川CRをちょっと走って府中四谷橋に上がる傾斜でちょっとダンシングでもがいたところで急に左足の踏み心地に違和感を感じ、何やらペダルの軸が斜めになった様な妙な感覚があったのでシューズが壊れたかと思い信号待ちで停まった時に足元を見たらなんと左クランクのペダルねじ込み部にクラックが入っていた。驚きつつも会社に行かねばならずそのまま左足に力を掛けない様にそろりそろりと脚を回して何とか会社まで辿り着いた。
バイクを降りて改めてよく見るとクラックはかなり大きく、恐らくもう数回踏み込んだら破断する様な状態だった。もし気付かずにダンシングで踏み込んだ時に折れてペダルが外れてしまったら大惨事になるところだった。正に危機一髪のところで気が付いて良かった。今朝走り始めは何ともなかったので、クラックはいきなり入ったものと思われる。恐らく金属疲労だろうが破断する時はあっという間だ。この78DURAのクランクは確か2005年位に中古で手に入れたからもう15年以上使い続けてきたことになる。チェーンリングは数度変えつつ全く問題なく動作していたが遂に寿命が来てしまったか。いきなりの終焉にちょっと呆然としてしまった。会社からの帰りもほぼ右脚一本でクランクを回して何とか帰宅、無事にバイクを家まで持ち帰ることができた。
さて、どう対処するか。たまたまカーボンバイクのORBEA/DIVAをこのブルベ中断中に11速化しようとして外したばかりの79DURA一式が手元にあるのでこれに載せ替えるというのが順当なのだが、今の78DURAは捨て難い。私的に使った歴代DURAのクランクのデザインは78>90>91>79だと思う。正直なところ79DURAのクランクのデザインはどこか中途半端な感じがして余り好きになれない。費用をかけても78を遺したい気分なので取り敢えずネットで165mmの78DURAの左クランクを探してみるが出物は見つからない。新品のスペアパーツを買うという手もあるが12000円という値段に怯む。取り敢えず次の自転車通勤までには使えるようにしなければならないので迷っている時間は余りない。取り敢えずバイクの状態を全体的に確かめてみたら、アウターチェーンリングが相当減っていて交換必至だし、ペダルも片方がぐらついていて既にベアリングも相当小さくなっているので流石にもう玉当たり調整もできないし、あちこちガタが来ていることを考えると78を使い続けるにはそれなりの費用を掛けなければならないことが判明した。そうなるとまだ使用頻度の少ない79に載せ替えるのが合理的という結論に至った。
取り敢えず洗車。このクランクが遂に退役かと思うと寂しい限り。
初めて見た時はかなり気持ちの悪にデザインに思えたけれど慣れてくるとカッコ良く見えてきた。もしかしたら将来また復活させたくなるかも知れないのでコンポーネント一式は屋根裏で寝かせておくことにする。
週末に一気に作業を行い79DURAのコンポーネント一式を載せ、ついでにチェーンを新品にしてトレッドが擦り減って殆どなくなっていた後輪のタイヤを前輪と入れ替えて前輪に別のタイヤを装着し通勤用バイクのオーバーホールを完了した。
翌日、早速新装備の通勤用バイクを使用開始。走行中リアスプロケの2,3,4速辺りでガチャガチャとチェーンが音鳴りする。過去にもチェーンを新品に交換した時に良くこんな感じになるのだがリアディレーラーの調整がいまいちなのだろうと時々止まっては調整しながら進む。しかしどんなに調整を追い込んでも音鳴りが直らない。トラクションをかけるとチェーンラインが外れる様な感じだ。チェーンは新品なのにかなりおかしい。今回コンポーネント一式交換したが良く考えてみたらスプロケットは変えていない。今まで余り注目したことはなかったのだがもしかしたらこの音鳴りはスプロケットが駄目になっている可能性を考え始めた。取り敢えず替えてみるかと思い立ちその日の帰宅後にネット通販でCS-6700の11-25Tを発注した(まだスプロケ交換で直るという確証は持てなかったので79DURAのスプロケは値段的に踏み込めなかった)。翌朝もリアディレーラーを調整しつつ走ったが後ろは相変わらずチェーンの音鳴りがする。音鳴りの瞬間を何度見てもチェーンの横ずれしている様には全く見えない。しかも音鳴りのするギアは2,3,4速辺りで限定されている。それらの事象から推測すると使用頻度の高いギアが摩耗してチェーンの掛かりがおかしくなっている気がする。やはりスプロケットが駄目になっているという思いが強くなってきた。
帰宅したら新しいスプロケットが届いていたので、付け替える前にギア板の状態を現行品と新品で見比べてみた。
減りの激しい4,5枚目を比較してみると、単独では分かり難いが並べてみると相当減っているのがよく分かる。
翌朝、早速スプロケット交換を交換したバイクを試したが完璧に不調が解消された。やはり擦り減ったギアと新品のチェーンがうまく噛み合わずトラクションを掛けると縦滑りを起こしていたとみて間違いない。消耗したスプロケを使うと何が起こるのか体感できたのは良かった。これでまた一つ経験値が上がった。DURAのスプロケットは高額なので中古品を買うことがあったが、この経験を元にスプロケットは消耗品と割り切ってこれからは必ず新品を買うことにしよう。
それにしてもアルミの棒とも言えるクランクが、しかもDURA ACEが折れるなんて全く想定していなかった。15年使って1年平均5000km以上使っているはずだから総距離75,000km。50x15tで平均的に踏み続けたとするとギヤ比3.33で650Cのタイヤ周長1940mmだとひと踏みで6.46m進む。そうすると11,609,907回踏んだということになるか。1161万回踏んで壊れたというのは果たして多いのか少ないのか分からないが、少なくともDURA ACEと言えどもクランクが一生モノということではないことがこれで分かった。そうそう壊れる場面に遭遇することはないだろうが、ブルベ走行中に壊れると即DNFに見舞われることを考えればDURA ACEのモデルチェンジの間隔である4,5年で載せ替えるというのは妥当な判断なのかも知れない。
78DURAとの別れは唐突にやって来て寂しい気がするが、”DURA ACEのクランクを踏み壊した”という事実は妙な達成感と言うか満足感をもたらしてくれた。サイクリストとしてそう簡単に手に入らない勲章を得た様な感覚だ。この先またクランクを踏み壊すことはできるだろうか。年齢的に先が見えて来てはいるがまだまだガシガシ踏み続けますよ。