ウクレレ

 6月に入ってどうやら関東も梅雨に入った様で、今日も朝からどんよりと曇り時折雨がぱらつく天気。コロナ過は緊急事態宣言は解除されたものの、日々新規感染者の数字が垂れ流しの様に報道されている。政府の休業補償策は遅々として市井に浸透せず、経済的疲弊が顕在化した状況ではこれ以上の自粛施策を打てるわけはなく、実質的に政府は御手上げ状態といって差し支えない。これから先、ウイルスと共存するための社会実験が本格的に開始されたわけで、第2波が来るかどうかは定かではないが感染防止も収入確保も同一線上で扱わねばならない生活防衛を個々人が自分で考えて行動しつつ凌いでいく以外にはない。

 

 5月の末頃、ツイッターでブルベ仲間がウクレレを弾いている動画を目にして、そうだそろそろウクレレを買おうと思い立った。ウクレレはもうそれこそ20年以上も前からたまに思い出しては買おうかなと考えるのだが、その都度品定めの段になって右往左往している。予算も含めて一体どれ位のグレードのものを買ってよいやらさっぱり見当がつかない。そもそも俺はウクレレで何をしたいのかも良く分かっていない。そうやって考えているうちにいつも熱が冷めてしまい結局手に入れることなく先送りになっていた。こんなことを繰り返していると死ぬまでウクレレを手にすることはできないので、今回はとにかく入手することを目的としてネット上の中古品を探して回った。そして、ネットオークションで値段も手頃な出物に狙いを定めた。見た目にかなり古くてボロいのに競って来る人がいて予算上限値ギリギリまで行ってしまったが最終的には落札できた。気持ち的にはもっと安く落とせると思ったのに意外な展開だった。他の似た様な中古品も軒並み想定以上の値段が付いていたのでインドア状態でウクレレが密かに人気なのかも知れない。

 6月に入って、物が届いた。

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 こんなケースに入っていた。このチェック柄が如何にも昭和の風情、私的に子供の頃の雰囲気をたっぷりと醸し出していて何とも懐かしい感じ。

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 遂に念願のウクレレと御対面。まるでおもちゃの様な軽薄な作りではあるが、どことなくヴィンテージの風格が滲み出ているのにちょっとニヤリとしてしまう。

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 これは日本のウクレレメーカーとしては老舗のキワヤ商会のFamousブランドのウクレレ。COCOANUTS UKULELE No.202という型名はとうの昔に廃盤でネットを調べても確かな情報が得られないが、どうやら1960~70年代に製造されていたものの様だ。もしかしたら自分が生まれた年に製造されたかも知れないと考えるとかなりワクワクする。自分のバースイヤーの楽器を手に入れることは願い事の一つではある。

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 ざっと楽器全体の外観チェックを行うと、経年相当の傷やらネックヘッドの欠けやらが見つかったが、楽器として致命的な欠陥を見つけてしまった。裏板がネックのジョイント部の直下で剥がれかかっている。オークションの出品者説明では一切の記述はなかったのでちょっと騙された気分。確かにジャンク扱いではあったが、こういう重要な瑕疵について触れられていないのはそこはかとなく悪意を感じてしまう。がっかりしつつ一瞬クレームを考えたが揉めるのも面倒だし、折角俺の手元に来たからにはきっちり直してやろうじゃないかと生来のリペア魂に火が付いた。ネットで楽器のリペア情報を検索するとたくさん実例が出てきた。接着に関して通常の木工用ボンドでは硬化後も接着部分が柔らかいので楽器には不向きとのことで、タイトボンドというものを使うのが良いということが分かった。間髪入れずにamazonでタイトボンドとついでに交換用のウクレレ弦を発注する。

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 翌々日にボンドが到着、早速接着する。

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 裏板が剥がれた部分に接着剤を塗布して、クランプでしっかりと固定して硬化するまでしばらくの間放置する。

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 丸2日放置してクランプを外し接着個所をチェック。ガッチリ接着されて裏板のビビリが完全に消えた。接着面は余り美しい仕上がりではないが素人仕事にしては上出来。弦の張り替えはもう2日程間をおいてから行うことにする。。

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 3日後、いよいよ弦の貼り換え。何を買ってよいやらさっぱり分からなかったのでえいやでダダリオを選んだ。

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 ウクレレのチューニング、4弦が1弦と同じ位細くて2弦、3弦より音が高いというのを初めて知って驚いた。チューニングの基本はG-C-E-Aというのが標準らしい。実際にウクレレを買うまでその事実を全く知らなかったというのも我ながらなかなかのもの、この世の中まだまだ知らないことだらけだ。

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 弦を貼り換えて一応完成。ウクレレのペグはダイレクトなのでチューニングがかなりセンシティブで狂い易い。ペグのノブのねじを強く締めてペグが緩み難くしてできるだけチューニングが狂わない様にしてみるが、貼り換えたばかりの弦がまだ安定しないのがチューニングが直ぐ狂ってしまうのは現時点ではどうしようもない。しばらく様子を見るしかなさそうだ。

 中古の楽器を買うのはある意味野良の犬や猫を拾ってくる感覚に似ている。何か問題があったとしても我が家に連れてきた以上何とか治そうと努力して、そうこうするうちに情が移って手放せなくなる。取り敢えずリペアして楽器としてきちんと使える状態に自らの手で持って行けたことでもうこのウクレレは私のものになった。

 早速弾いてみる。いきなり何を弾けるわけでもないがウクレレと言えば私的にまず思い浮かぶのはこれ。


ウクレレを買った。

 ネタは幾らでも思い付くがこれを歌詞にして上手く唄に乗せるのはかなり難易度が高い。やはりこれは名人芸、素人がそう簡単にできるものではないので取り敢えず口笛で御茶を濁す。もしかしたらこれが一体何なのか世代的に知らない人は多いのかも知れない。

 ウクレレをポロポロと弾いているだけで空気が和む。難しいコードも速弾きも必要なく穏やかな音色だけであっという間に雰囲気が出てしまって簡単に悦に入れるのはとても良い。楽器単体で自己完結して音楽が成立するというのは楽器と技量がそれなりに整わなければならないが、ウクレレという楽器は相当にハードルが低くて簡単に音楽に入っていける稀有な楽器ではないかと思う。ついでに、私的にはウクレレと口笛は相性が良いということが分かった。御手軽な弾き語り的に色々できそうだ。私的にはソロパフォーマンスとして音楽を成立させることをぼちぼちと追い求めているのだが、ウクレレという新しいアイテムを手にしたことでまた少し領域が広がった。そして、自室のソファの脇に置いて、ぽっと手に取って弾くことのできる新しい手遊びの友が増えてちょっと嬉しい。