もう6月も最終日、梅雨らしい雨模様の天気が続いている。気温もいまいち上がらず夏の暑さは殆ど感じられない。世間の状況は相変わらずでもういちいちコロナ禍の状況を書くのは面倒臭いの一言、とにかく首都圏の緊急事態宣言やら蔓延防止等重点措置はずるずると切れ目なく延長されそのあおりでブルベが全く走れない状況が継続しているということのみ。もう来月下旬は東京五輪の開会式でそれまでに蔓延防止等重点措置が延長されるのはほぼ確定状態である。日々のニュースはいらいらするものばかりだしもう何が起こっても我関知せずだ。ひたすら自己防衛に走るのみだ。マイペースで音楽やら映画やらを楽しんで自堕落に有意義に過ごす日々を淡々と過ごすのみだ。
もう1年近く前のことだが、何の気なしにネットオークションをつらつらと眺めていたらふと1本のベースを見つけた。TUNEの4弦ベースだ。このベースは1980年代後半に発売されて一世を風靡した。会社に入ったばかり頃に住んでいた独身寮の仲間達と日本の歌物バンドを組んでいたのだが、その時のベーシストが使っていたのがこれだった。何度か借りて弾かせてもらったがボディーがとても小さくて軽くて、自分で持っていたジャズベースと比べて格段に弾き易かったのを良く憶えていた。そのオークションはまだ1万円にも満たない入札価格だったので、これは安いと思いついうっかり2万円の上限で入札してしまった。当時の定価は15万円以上だったことを考えれば当然そんな値段で落とせるわけはないだろうと完全冷やかしモードだったが、何と2万円を下回る価格で落札してしまった。予想外の展開に驚いたが数日のうちにそのベースはケースにも入れられずエアパッキンにくるまれただけの無造作な姿で我が家にやって来た。
30年前に友達から貸してもらって以来の再会という感じで何となく懐かしい。私的には正直このベースが絶対に欲しいと思い入れていたわけでは全くなく、これ位しか知らなかったという方が正しい。ただ実際に弾いてみて弾き易かったという記憶が残っていたというだけのことだった。本当にはずみとしか言い様のない顛末ではあったが、これが2万円にも満たない金額で手に入るなど思いも寄らなかった。これだからネットオークションは止められない。それにしても安いなあと思ったがこれを手に入れてからちょっとネットを徘徊してみるとオークションでもフリーマーケットでも結構な出物があって確かに中古価格は大きく値崩れしている様だ。フェンダーのプレベやジャズベの様に不変のステイタスがあるわけではなく、若かりし頃に音楽をやっていた人間が歳を取って弾かなくなって放出したものが巷にたくさん出回っているという様な状況なのだろう。
いざ弾いてみて確かに昔の記憶の通りで弾き易い感じがする。ネックは細いしボディーは小さいし私の様に身体の小さい人間にはマッチしている。これを弾いてしまうと、手持ちのジャズベがやたらと大きく感じてしまう。外観的には程々に傷や打痕や塗装剥離があるが30年物にしてはまずまずのクオリティだし、音も普通に出るのでサーキットも生きている様だ。少なくともこれを買ったのは失敗だったということにはならなかった。
それからちょっとの間適当にいじっていたら、ふと、これの5弦ベースだときっと弾き易いに違いないという”悪魔の囁き”が聞こえてきた。一旦これに気付いてしまったらもう試すしかない。ネットを徘徊して中古の出物を探し回る。数日かけてあちこち見て回っていたらハードオフのネットモールで先に手に入れたTUNEの4弦ベースと同じボディー形状の5弦モデルの中古を見つけた。値段はオークションでのハプニングの様にはいくわけもなくそれなりだったのでちょっと勢いでというわけにはいかない。見た目はかなりくたびれているので、もしかしたら近いうちに値下げされるのではと思って1週間程じっと観察していたが値下げされる様子は全くない。その間頭を冷やして考えたけれどやはりどうしても欲しいので”買えない理由が値段ならば買え”の鉄則に従うことにした。
届いたのがこれ。相当に弾き込まれていて写真で見た以上にくたびれている。ペグも1本ワッシャーがなくなっていて動きが渋くなっている。取り敢えず音は出たもののボリュームもトーンもかなりへたっていて交換は必至、正直かなりボロボロの状態だったがネックはほぼ完璧に真っ直ぐなのが幸いだった。5弦ベースは既にスクワイヤのジャズベを持っていて5弦相応にネックが太いことは承知しているつもりだったがいざこのTUNEを弾いてみると別物の様に弾き易い。一瞬にしてジャズベは敗北、主役の座を明け渡すことになってしまった。
TUNEのオフィシャルサイトでボリュームポッド単体を購入し4本のうちほぼ駄目になっていた3本を交換し、ペグのワッシャーを交換して修理し、ついでに弦高を少し下げて調整し更に弾き易くしてみた。ここまで手を入れるともう完全に自分のものになった気がした。
何だかんだでこの短期間でベースが2本も増えてしまった。ギターにせよベースにせよ、この先の人生の残り時間を考えた時にそろそろ数を減らして身軽にしていかなければならないという認識はきちんと持ったつもりなので、未練を断ち切ってフェンダーのフレットレスジャズベ、シェクターのフレットレスジャズベ、スクワイヤの5弦ジャズベを立て続けに売却することとなった。
それから更に時間が経過し年が明けて春になった頃、またしても悪魔の囁きが聞こえてきた。”このボディーサイズのスルーネックの5弦が欲しい”。これも何の根拠があるわけではなく、ただスルーネックは高級品の仕様だというイメージだけだった。①TUNE②5弦③スルーネック④エボニー指板という付加条件で中古の出物を何となく探していたのだが、いつもは余り覗かない大手楽器量販店のサイトで1本見つけた。値段的にはちょっと勇気のいる数字だったが、今年はブルベの遠征が全く行けなくて予算が余っているしベースの最終ゴール的買い物なのだとすれば思い切っても良いかなと思い注文したら、店から速攻でメールが来て既に販売済みだったとの詫び状だった。肩透かしを食らってがっかりしたのも束の間、別のショップに同型の中古の出物が出現しこれは逃してはならぬと間髪入れずに注文、今度は首尾良く私の手に落ちた。
これがそのベース、TUNEのZi-3-5というモデル。見た目には程々に傷ははあるが全然気にならないレベル、音も普通に出るので楽器としてのコンディションは全く問題ない。
ネックとボディーの接合部のこのスルーネックとのなだらかなカーブが握り具合も良く見た目にも美しい。これぞスルーネックという仕上がりは所有欲を十分に満たしてくれる。
TUNEベースの意匠で私的に好きなのがこのヘッドの形状。コンパクトで無駄がなく機能的にまとまっている感じがとても良い。
取り敢えず先着のベースと並べてみた。先着のものは何だかんだでそこそこ馴染んでしまっているので、これから暫くの間この2本を弾き比べてどちらか1本だけを手元に残すつもり。でも何となく2本共残ってしまいそうな予感がする。