SR600Kyoto/Report 3:Day 2/舞鶴->守山(206.7km/490.0km)

[目次]

宿泊1/シーサイドホテルパルコ->PC8/エンゼルライン駐車場(50.6km/333.9km)

 11/22(月)、6時に起床。窓の外はどんよりと曇ってはいるがまだ降ってはいない様だ。取り敢えずスタート時に降られなければ幾分かは気は楽だ。そそくさと身支度をして朝食に向かう。

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 それ程空腹感は無いので控えめ。ブルベ中にまともな食事にありつけるのは殆どないので非常に有り難い。

 2日目は獲得標高差4457mの206.7km。後半に山岳が集中しているので前半はとにかく消耗せずに体力を温存しなければならない。休憩地点は概ね50km間隔で配置してある。

 一番高い山は800mなのでべらぼうに高いというわけではないが登坂距離が15kmとこれが今日最も長い登りなので今日の山場は125kmに設定しておく。あと気になるのはPC9前後の林道の区間。最近RWGPSでは未舗装区間がゼブラ模様で表示される様になったがこの区間が未舗装区間になっている。この表示を信用するならば20km位の区間が未舗装路ということになる。取り敢えずGoogleマップで前半部の映像を見てみるが確かに砂利道の様に見えるが路面はフラットの様にも見えるのでそれ程心配する必要はないのかも知れない。後半は映像は無いので未知数。とにかく走ってみなければ分からない。いずれにしても距離は200kmそこそこなので昨日よりは走行時間は短くて済むのではないかと前向きに考える。後は雨次第だな。

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 食事を終えてチェックアウトして外に出ると雨が降り出していた。がっかり。結局スタートから雨か。まあ最初にレインウェアを切るきっかけができて良かったと割り切る。上下レインウェアに防寒テムレスにレインシューズカバーの完全雨仕様で身を固める。

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 11/22の7:25にリスタート。雨の中を緩々と走り始める。今日最初の目的地は51km先のPC8だがその前に37km先の休憩ポイントに立ち寄る。PC8を過ぎてから先は休めそうなところが見当たらないのでこういう設定になった。

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 284.2km、昨日ルートを逸れた道を戻って左折、ルートに復帰する。

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 そこそこの降りの中、舞鶴市街を抜けていく。市街は朝から車通りが多いが平日ということなのか。

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 6.7km、序盤でいきなりの急坂が出て来て息が上がる。こんなところに山はなかったはずだが見落としたか。

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 7.2km、ちょっと登ったらトンネルだったので一安心。トンネルを抜けて直ぐに下る。

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 国道27号は舞鶴市街を抜けてもずっと車通りが多い。雨の中で道幅も狭いので神経を使わされる。

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 24.6km、小浜市に入った。海沿いの平坦路を淡々と進む。しっかりと寝たせいか昨日の疲労も殆ど感じることなく脚はそこそこ回る。今日も問題なく走れそうだ。

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 気温16℃、空が雲に覆われていると気温は高め。上下レインウェアで手袋が防寒テムレスだと暑く感じる。

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 31.8km、トンネルのすぐ手前を左折して枝道に逸れる。

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 ちょっと荒れ気味の路面だが車通りが無くなった分むしろ走り易く感じる。

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 海が見渡せるがこの天気なので眺めはいまいち。下りながら街の方に進んでいく。

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 36.1km、小浜市街に入って国道162号に合流して阿納尻方面に左折。

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 小浜市街も車通りは多い。休憩ポイントはもう直ぐ。

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 橋を渡ると休憩ポイントが見えた。ホッと一息。

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 36.9km/320.8km地点の休憩ポイント6に到着。チェックタイムは11/22の9:32。

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 休憩していると雨はほぼ上がったので、防寒テムレスを指切りグローブに変える。15分程の休憩の後出発。

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 さて改めて13km先のPC8を目指す。雨が止んで落ち着いて走れる様になった。

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 41.0km、分岐を一旦左折してエンゼルライン方面に向かう。PC8で折り返してから再びここに戻って来て後程右折方向に進む。

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 42.4km、エンゼルライン方面に進んでいく。徐々に登りになって来た。

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 43.6km、勾配が急にきつくなった。いよいよ本格的な登り開始か。PCまでは7km登るということらしい。

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 10%を超える急坂が続く。

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 あっという間に標高を上げて海を眼下に見下ろす。急坂を登っていることを強く実感する。

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 勾配が10%以下にならない。今回のバイクはリヤスプロケット28Tが付いている決戦用のORBEAを持ってきたが、いつもの25TのTitaniaだったら相当苦労していたはずだ。

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 目の前に電波塔の様なものが並ぶ山頂らしきものが見えた。もしかしてあそこまで登るのか!?絶望的な気分になる。

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 山頂が近付くにつれて霧が出てきた。というより雲の中に突っ込んだという感じか。風も出て来て急激に気温が下がっていく。そんなに標高が高いのか?

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 50.2km、駐車場に上がる分岐で更に勾配がきつくなる。最後の最後までキツイ。

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 50.5km、駐車場はまだ上なのか。駄目押しの急勾配でもうヘロヘロに打ちのめされる。

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 50.6km/333.9km地点のPC8に到着、チェックタイムは11/22の11:21。

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 滅茶苦茶苦労して登って来たのに周囲は真っ白な雲の中で何も見えない。強風が吹きつけてバイクは倒されるし寒いし何も良いことは無い。こんな酷い天国はないな。エンゼルラインとは人を叩きのめして昇天させる道なのか。とにかく早く下界に戻りたい。通過証明用の写真を撮って早々に退散する。

PC8->PC9/広域基幹林道若狭幹線展望台(15.5km/66.1km/349.4km)

 次の目的地は15.5km先のPC9だが、先ずはこの山から安全に下りなければならない。荒れ模様の雲の中の山頂から下り始める。今登って来たばかりの急勾配の登りは当然ながら急勾配の下りに変化する。おまけに路面には濡れ落ち葉やら小枝やらが多数散乱していて全くスピードが出せない。ブレーキ掛けっ放しでそろりそろりと下っていく。写真を撮っている余裕など全くない。殆ど登りと同じ速度だ。これは厳しい。

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 9km程の下りを終えてようやく前進の緊張が解けた。下界が妙に暖かく感じる。山頂のあの荒れた風雨は一体何だったのかという感じだ。それにしても登りで失ったタイムを下りで取り戻せないのは非常に痛い。現在時刻は11:40、たかだか60km位しか走っていないのに4時間もかかっている。このペースでタイムを失い続ければ今日中にホテルに着くことはできないと考えると結構な心理的プレッシャーだ。

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 60.3km、T字路を田烏・阿納方面に左折。

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 左折したと思ったら直ぐに枝道に逸れる。ここから林道に入っていく。

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 入口からいきなりの激坂で面食らう。取り敢えず舗装されているのか救いか。

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 2.5km位まで登ったところで徐々に路面が荒れ始め、3km位のところで完全な未舗装路になった。勾配がきついのでまともに登れない。パンクが怖いので常に路面を注視しながら走らなければならずこれは辛い。

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 断続的に舗装路が出て来るが直ぐにまた未舗装路になる。何故こんな中途半端な舗装の仕方をするのか全く理解に苦しむ。

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 未舗装路で10%を超える激坂区間が出て来てどうにもできなくなり遂にストップ、バイクを押しながら登る。SPD-SLのロードシューズだと歩きにくいことこの上ない。何故こんな無茶苦茶な道を走らせられるのか、正直コース設計者の悪意を感じる。

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 66.1km/349.4km地点のPC9に到着、チェックタイムは11/22の12:36。何とかPCまで辿り着いた。もうぐったりだ。取り敢えず通過証明の写真を撮って一呼吸置く。

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 さっきのPC8と違って何となく景色が見渡せるが楽しめる心理状態ではない。とにかくこの未舗装区間から脱出することだけしか頭にない。この林道の案内板を見るとここまでは全工程の1/3でまだ2/3残っている。出口までは14km弱と分かって絶望感に襲われる。ここで止まるわけにもいかずとにかく進むしかない。覚悟を決めて再びバイクに跨る。

PC9->PC10/道の駅三方五湖看板(19.7km/85.8km/369.1km)

 次の目的地は20km先のPC10だが、兎にも角にもこの無茶苦茶な林道を抜けるのが先だ。

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 PCを出てちょっと走ったら再び上り始めた。PCはピークではなかったらしい。相変わらず申し訳程度に断片的に舗装されて大半はガタガタの未舗装路をのろのろと進んで行く。

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 舗装部分でも10%超の登りはきついのに未舗装路だともう何もできない。無理して登ろうとするとトラクションがかかり過ぎて後輪が滑って落車しそうになる。路面の凹凸や瓦礫が大きいので前輪が振り回されてとても乗れない。もう押し歩くしかない。雨が強くなって完全に土砂降り状態になって最早苦痛でしかない。

 70.0km辺りでピークを過ぎたが、本当の地獄はこれからだった。未舗装路の急勾配の下りは危険極まりない。ブレーキを目一杯握ってもバイクが止まらず足を着いて止まるしかない。これは登りよりも遥かに辛い。土砂降りの雨で路面が川の様になって汚泥が流れて路面の様子が全く分からないので登りと同じスピードで這う様に下っていくしかない。もう正直生きた心地がしない。

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 下ったと思ったらまた上る。もう完全に地獄の未舗装路の無間地獄に陥った様だ。このブルベにうっかりエントリーした自分が恨めしい。どうして雨予報が見えた時に素直に延期しなかったのか、自分のつまらない意地がこれ程馬鹿馬鹿しく思えたことは無い。ピークを過ぎて再び下りに入った。全身をがちがちにこわばらせて止まりそうなスピードで這う様に下っていく。いつまで経っても下りが終わらない。正に無間地獄だ。

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 80.8km、文字通り命からがら地獄の林道から脱出した。国道162号に出てもう両手の握力が残っていないので左折して登らなければならないのに止まり切れずに右折方向に下ってしまい足を着いて何とか止まった。雨の中しばし放心状態でその場に立ち尽くしてしまった。我に返って時計を見ると14:10、この20kmの林道に2時間半近く費やしたことになる。このタイムロスは全くの想定外で非常に痛いが今更どうしようもないので気を取り直して先に進む。

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 80.9km、坂を登ってトンネルに入る。束の間雨を避けられただけでほっとする。

 走りながら写真を撮ろうと思ったらメインのカメラが水没して動かなくなってしまった。取り敢えず止まってサブのカメラに切り替えようとしたが、サブのカメラも起動してくれない。このアクシデントは非常に拙い。単にブログ用の写真が撮れなくなっただけでは済まず、写真を通過証明とするSR600で写真が撮れなくなるのは致命的だ。最早スマホのカメラだけが頼りになってしまった。とにかくスマホを水没させない様に細心の注意を払い、撮影は最小限にすることとして先を急ぐ。取り敢えずPC10まではあと数km。

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 85.8km/369.1km地点のPC10に到着、チェックタイムは11/22の14:37。ここまで86kmに7時間を費やしてしまった。これは完全に想定外。後半に今日の山岳の大半が集中していることを考えれば、この後もどれだけタイムを失うことになるのか見当もつかない。当初は遅くとも22時までにはホテルに着けるだろうと踏んでいたが、全く無理そうだ。ホテルの最終チェックイン時間が24時なので、目標を大幅に繰り下げて今日中の到着に切り替える。通過証明の写真を撮ってトイレを済ませて一呼吸おいて出発する。

PC10->PC11/おにゅう峠石碑(39.7km/125.5km/408.8km)

 次の目的地は40km先のPC11だが21km先の休憩ポイントに立ち寄る。休憩ポイントまではほぼフラットなのでちょっとだけ気分は楽だ。

 降り続ける雨の中を淡々と走る。頭の中ではひたすらこの後の走行シミュレーションを繰り返し走行時間の再計算を行う。ワーストケースで見積もるとどんどんホテル着の時間が遅くなり睡眠時間が少なくなっていくのが憂鬱だ。それでもさっきの林道に比べれば常識的な速度でバイクが進むのは精神衛生上非常に宜しい。1分1秒でも失ったタイムを取り戻したいところだ。

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 107.1km/391.6kmの休憩ポイント7に到着、チェックタイムは11/22の15:45。 

 ようやく今日の行程の半分を消化したがここまで8時間かかってしまった。通常のBRM200kmならばもう完全にタイムアウトの状況だ。この事実が精神的に非常に大きなプレッシャーになっているが、とにかくこれはSR600でしかも無茶な未舗装路のせいで不可抗力なのだからと、冷静になろうと自分に言い聞かせる。20分程の休憩の後出発。

 さて、気を取り直して改めて18km先のPC11を目指す。ここから先はひたすら登りになる今日最長の登り区間になるはずだ。途中で日が暮れて夜間走行になることも覚悟しておかねばならない。ふとサイクルコンピュータを見ると表示が消えている。昨日ホテルで充電したのでバッテリー残量は全く問題ないはずだが取り敢えず電源を入れても無反応。どうやらサイコンも水没故障してしまった様だ。Garminのウェアラブルウォッチも同時に動かしていてサイコンの情報はそのまま得ることができるので大きなトラブルではないのだがいちいち左腕を見なければならないのがちょっと面倒だ。

 109.3kmを左折し県道45号に乗った辺りからじわじわと登り始める。

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 112.4km、川沿いの道をじわじわと登って行く。若干雨が小降りになったので駄目元でサブカメラを撮り出したら反応したので撮ってみた。1枚撮って直ぐに駄目になってしまった。この絵は一体何だろう。3%程度の緩い坂が続いている。この先もずっとこのままであればよいのだがPC11は今日の最高標高地点の800m超まで登るはずなので当然この後勾配がきつくなることを覚悟しておかねばならない。

 114.5km、小さな橋を渡ったところで道が細くなり勾配がきつくなって来た。いよいよここから本格的な登り開始か。PCまでは11km、まだまだ先は長い。

 取り敢えず5%前後の坂が続く。辛うじて薄暮の残る山道を淡々と登って行く。雨は若干弱くなったものの相変わらず降り続いているが路面が舗装されていてさっきの林道に比べれば格段に走り易く楽に感じられる。変なところで未舗装路走行の効果が発揮されている。

 118km辺りで小さな集落に入って一旦勾配が緩んだが直ぐにまた登りになった。完全に薄暮が消えて真っ暗になった山道をじわじわと登っていく。

 120kmを過ぎて勾配がぐっときつくなった。10%を超える急坂が出てきてかなりきつい。ここが踏ん張りどころとこまめにダンシングを交えながらじわじわと登って行く。山頂が近くなってきて徐々に森が開けてくると同時に風が強くなってきた。気温も低くなってPC8の様な荒れ気味の天気になって来た。

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 125.5km/408.8km地点のPC11に到着、チェックタイムは11/22の18:10。

 やっとの思いで山頂に辿り着いたと思ったら暗闇の中でいきなりボヤっと明かりが灯って幽霊が出たかとかなりビビったのだが、よく見ると小さな掘っ立て小屋の様なものの中にテントが張ってあって中に人がいる様だった。こんなところにこんな雨風の荒れた天気の夜にテントを張って泊まろうという人間の気が知れないが、多分向こうもこんな天気の夜に自転車でここまで登っている馬鹿がいるのかと思っているに違いない。周りを見回しても真っ暗で何も見えず、ここにいても何も良いことは無いのでとっとと下りてしまいたい。通過証明用の写真を撮って直ぐに出発する。

PC11->PC12/百井地域周辺マップ(53.4km/178.9km/462.2km)

 次の目的地は今日最後のPCとなるPC12だが53km先と山岳の真っただ中であることを考えればかなり遠い。先ずは21km先に設定した休憩ポイントを目指す。

 直ぐに下り始めて登り同様に急勾配になった。真っ暗で何も見えず路面の状態も良く分からないので全くスピードが出せない。ブレーキをかけっ放しで登りと大差ないスピードで下っていく。この山越えでも登りのロスを下りで全く取り戻せそうにない。どんどん時間を失って完走時間の目算がどんどん狂っていくのは心理的にかなりのストレスだ。

 それでもぼちぼち下りつつ距離を消化していたら、いきなりバシュッ!という破裂音と共に前輪の空気があっという間に抜けた。慌てて停まってパンク修理できそうなスペースを探す。こんな真っ暗闇の雨の山道の中でパンクとはもう試練の連続だが、何かにタイヤが乗り上げたわけではないいきなりのパンクにもしかしたらブレーキシューがタイヤに穴をあけたかと嫌な予感がして、フロントライトを外してまずフロントブレーキシューをチェックしたらものの見事にブレーキシューがかなり削れていてリムに当たらなくなった部分が飛び出している。次にタイヤをチェックすると案の定リムの境目辺りに穴が開いていた。京都に出発する前にブレーキシューの残量が充分であることは確認していたが今日1日で半端なく削れてしまった様だ。幸いタイヤもブレーキシューもスペアを持っているので最悪交換することができるが、まだ先は長いので取り敢えずブレーキシューの位置を修正してタイヤブートでタイヤの穴を塞ぎチューブを交換することでこの場は凌ぐことにした。暗闇の中でライトを頼りに作業するのは大変だったが取り敢えず20分程で作業は終了、再び走り始めることができた。パンクも勿論痛いがタイムロスが痛い。これで更にホテルに到着するのが遅くなる。残り距離はまだ80kmあるのでこのままだと最終チェックインの24時に間に合わない公算が大きい。どこかでホテルに電話してチェックインの時間を延ばしてもらう様に御願いしなければならないかも知れないがとにかく今は先に進むことだけを考える。

 132km辺りで勾配がようやく緩くなり全身の緊張が解けてほっとする。道脇に建物がちらほら出てきて人里に降りてきた気がする。下り基調は続いているのでようやく順調に距離を消化し始めた。道はそれ程狭くなく路面には相変わらず落ち葉やら枝やらが散乱しているが勾配が緩いのでそこそこのスピードで走れるのは有難い。

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 146.1km/430.8km地点の休憩ポイント8に到着、チェックタイムは11/22の19:50。

 こんな山の中にコンビニはあるわけもなくgoogleマップで見つけた自販機を休憩ポイントにした。気温が下がった上に下りで身体がすっかり冷えてしまいかなり寒く感じる。レインウェア上下を着ていても寒いのでホットコーヒーを飲みながらレインウェアの下にアームウォーマーとレッグウォーマーを着ける。ついでにびしょびしょの靴下を絞ってシューズカバーを着け直す。これでかなり快適になった。先程パンク修理した前輪をチェックすると心なしか空気が抜けている様な気がする。もしかしたら交換作業をしくじってスローパンクさせたかも知れないが、取り敢えず空気を継ぎ足して走りながら様子を見ることにする。携帯していたパンを食べつつ20分程の休憩の後出発。

 仕切り直して30km先のPC12を目指す。この区間をクリアできれば今日の登りはほぼ終わりで後は下ってホテルを目指すだけなのでもう一踏ん張りだ。雨も殆ど止んで霧雨程度になりほとんど気にならなくなった。

 150kmを過ぎて登りになった。確か標高差200mちょっと山がひとつあったと記憶しているがそれに差し掛かったか。5%前後の坂をぼちぼち登って行く。時たま急勾配が出てくるがさっきのおにゅう峠に比べればかなり楽だ。それにぽつぽつと道路灯があって真っ暗でないのが心理的に有り難い。

 153.2km、すんなりとピークを越えてそのまま下りに入る。下り始めは急勾配で相変わらずスピードを殺して走らなければならないが、3km位下ったところで勾配が緩くなった。民家が点在する川沿いの細い道を下り基調で順調に進む。ここまで全く見なかった車が時折前から来てちょっとびっくりする。

 164.8km、分岐を左折して橋を渡ったところで下りは終わり直ぐに登り始めた。ちょっと登ったところで道幅が広くなり、勾配も5%に満たない感じなので楽に感じる。このまま穏やかに山頂まで行ってもらいたいところだ。

 170kmを越えて勾配がきつくなってきた7~8%位の感じだが適度にワインディングして登り易い感じだ。しかしPCまで距離があるのでそんなに長く登るかのとちょっとナーバスになる。

 174.3km、ピークらしきところに到達してそのまま下り始めた。あれ?PCは山頂ではないのか?もしかして見落としてしまったかと疑心暗鬼になりながら下り始める。下りに入ってどうも前輪のグリップ感が弱いのが気になる。停まってタイヤをチェックするとやはり空気が抜けている様だ。どうやらスローパンクは間違いない。チューブを交換するかこのまま空気を継ぎ足して走るかちょっと考えたが、この先まだ30kmの距離が残っていて下り基調でスピードを稼ごうと思えば前輪が万全でなければならないのは自明の理、それにここで焦って下りで事故を起こしては元も子もないのでここでタイムロスを厭わずに交換することを選択する。現在時刻は23時過ぎ、どう考えても24時にはホテルに到着しないので作業の前にホテルに電話する。到着は2時ごろになりそうだと告げたら遅くなってもチェックインさせてもらえるという返事をもらって一安心、電話を切って作業を始める。幸いパンクの穴は直ぐに見つかり20分程の作業でチューブ交換は完了した。結局この場でのタイムロスは30分程、再び坂を下り始める。

 175.3km、うっかり見落としそうな細い枝路への分岐を鋭角に左折したら再び登り始めたがどう見ても勾配がおかしい。目の前にあるのは坂というより壁に見えてどう頑張っても全く登れない。何が起こったか理解できずに足を着いて止まってしまった。20%を優に超える様なとんでもない激坂が目の前に立ち塞がっていることをようやく理解し絶望感がどっと押し寄せてきた。終盤でのこの仕打ちはどうにも精神的に堪える。ついつい悪態をつきながらバイクを押して登る。あまりに坂がきつ過ぎてバイクを押し上げるのが辛い。500m位押し歩いたところでようやく勾配が緩んだのでバイクに跨って進み始める。

 176.8km、登り返しは距離も短くピークは直ぐに来てそのまま下りに入ったが真っ暗な細い林道を真っすぐ下っていくのでブレーキを掛けっ放しでおっかなびっくり下っていく。距離的にもうPCは目前なのでもう登りはないはずだ。

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 178.9km/462.2km地点のPC12に到着、チェックタイムは11/23の0:11。最初は暗くて目的看板を見つけられずにちょっと辺りをうろうろしてしまったが程なく見つかって一安心。通過証明用の写真を撮って直ぐに出発する。

PC12->宿泊2/守山アートホテル(27.8km/206.7km/490.0km)

 さあ、後は下り基調でホテルを目指すのみだ。ホテルまでは28km、下りではどうせスピードは出せないだろうから下り基調と言っても1時間半はかかるだろう。とにかく安全に下り切ることだけを考える。

 案の定下り始めは10%を超える急勾配の連続でブレーキ掛けっ放しでゆっくりと下っていくしかない。3km程耐えて下ったところで勾配が緩んできて全身の緊張も解けてまともに下れるようになって来た。いつの間にか雨も完全に止んで路面も所々乾いてきている。もう降られる心配はなさそうだ。

 184.7km、国道367号に突き当たり下りが終わった。小浜・朽木方面に左折すると再び上り始めた。こんなところに峠は無かったはずだが見落としたか。

 186.7km、2km程の短い登りでピークに到達、滋賀県に入った。そのまま下りに入る。

 186.8km、下り始めたと思ったらすぐに国道367号から枝道に逸れた。もしかしてまた山の中に向かって登るのかと身構えたが裏道のままずっと下り続けているのでどうやら登りに行くことは杞憂だった様だ。

 国道477号に合流して道が広く綺麗になって道路灯に照らされて明るい道を快調に下っていく。最後の最後で今日初めてようやく安心して走っている様な気がする。進むに従って道の両脇に建物が増えてきた。街が近付いているのが良く分かる。下りながら怒涛の様な今日一日を振り返り、その苦しみからようやく解放されたのだとまだホテルに辿り着いていないのに妙な安堵感が湧いてきた。とにかくあと10数kmで今日の仕事は終わりだ。後は風呂に入って御飯を食べて寝るだけだ。

 196.7km、琵琶湖大橋に差し掛かった。登りが微妙に辛い。1.5kmの長い橋を渡って下る。料金所で自転車も有料かと係員に聞いたら無料だった。この道は一昨年の元旦の近畿200で走ったので何となく見覚えがある。国道477号はこの時間だと車通りは少ないものの大型トラックが時々結構なスピードで抜いていくので注意しながら走る。

 206.4km、目の前の交差点を曲がれば直ぐにホテルというところにコンビニがあったので立ち寄って夕食を買って再びバイクに跨る。

 206.7km/490.0km地点の仮眠ホテルに到着、チェックタイムは11/23の1:50。

 夜間出入り口から入ってチェックインする。フロントの人には仮眠中のところをわざわざ起きて対応して頂いてひたすら恐縮至極、バイクの部屋入れはOKというのも非常に有り難い。

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 部屋に入ってホッと一息と行きたいところだが、とにかく1秒でも長く寝たいのでやるべきことをどんどん片付けていく。先ずは荷物を解いて電装品の充電をセットし着替えを取り出しウェアを脱いで風呂に飛び込む。風呂は浴槽と洗い場が分かれている贅沢な作りになっていて時間は無いが浴槽に湯を張ってしばしの間のんびりと浸かる。全身の疲労感がじんわりと癒される感じが実に心地良く無上の幸せを感じる。

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 風呂から上がってさっぱりして遅い夕食を摂りながら明日の起床時間を考える。明日の走行距離は120kmでタイムリミットは17時、どの位のマージンを取るかを色々と思案したが7時起きの7時半リスタートというところで落ち着いた。睡眠時間とのバランスを考えればこれがギリギリの線だろう。それにしても今日は無茶苦茶な日になった。200kmちょっとの距離でまさか18時間半もかかるとは全く想定してなかった。通常のBRMならば完全にタイムアウトでDNFしているところだ。正直なんでこんなことになったのかきちんと理解・納得し切れていないというのが今の心境だが、まだ終わったわけではないし今日をこんなに苦労して乗り越えたのだからこのブルベは絶対に落とせない、と自分に言い聞かせてとにかく明日に備えて全力で寝るしかない。食事を終えて歯を磨いて速攻でベッドに入る。消灯時刻は3時前。