2022RM812北海道1300/レポート2:Day 1/スタート・当別->豊富温泉(326.8km)

[目次]

スタートまで

 8/8(月)、4時に目が覚めた。もう少し寝られるけれど二度寝できそうにないのでアラームを解除してベッドから起き上がる。窓の外は隣のビルの壁なので外の様子は窺い知れない。取り敢えずパンを食べつつ身支度をする。

 5時にホテルをチェックアウト。4日後に再び泊まるのでフロントで荷物を預かってもらう。

 緩々とスタート地点に向かって走り始める。今朝の札幌は雲は多いが薄っすらと朝日が見える。取り敢えずスタート時点で雨が降っていないのは気分的に凄く楽なので有難い。

 札幌市街は早朝とは言え信号にしょっちゅう引っ掛かるのでなかなか進まない。この調子だと6時スタートに間に合わないか。

 今朝の気温は21℃、雨さえ降らなければ絶好のサイクリング日和だ。

 札幌市街を抜けてようやく信号に引っ掛からなくなった。当別目指して進む。

 6時過ぎにスタート地点のコンビニに到着。

 スタート時間は1時間刻みの登録になるが、6時スタートの許容範囲内のレシートがゲットできたので8/8の6時スタートでリモートブルベカードに登録する。

 今日の行程は当別をスタートして内陸部をひたすら北上し豊富温泉まで行く326.8km。初日が最も長い距離となるが、身体がフレッシュなうちに一番きつい距離をこなしておけば2日目以降が心身共に楽になるはずだ。

 200kmの美深峠まではそこそこアップダウンがあって獲得標高は2500m弱だが、取り敢えず北海道の信号がなくストップ&ゴーが少なくて済む道を考慮すればそれ程巡航速度を高く見積もらなくても順調に距離は消化できると考えているので17時間の走行時間で23時にゴールすることを目論んでいる。

 休憩地点の設定は前半は112km地点になったが、後半は219km地点からゴールまではコンビニ等の目ぼしい休憩施設が見つけられなかった。100km超のノンストップはちょっときついかも知れないが走りながら臨機応変に対応するつもりだ。

スタート/セブンイレブン当別太美店->通過チェック1/吉野公園(65.1km)

 6:20に緩々と走り始める。いよいよ1300kmの長旅の始まり。RM1200+は2019年PBP以来となる。

 最初の目的地は65km先の通過チェック1、吉野公園は過去の北海道ブルベで何度も言っているし恐らく同じルートを走っているので、先ずは脚慣らし的にさっくりクリアしたいところ。

 1.4km、当別方面に右折して道道81号に乗る。

 北海道らしい車もなく信号もない道がいきなり始まる。スタート地点が既に郊外なので当然と言えば当然か。

 8.0km、矢印の方向に道なりに右折。向かう先の北の空には低い雲が垂れて込めている。いずれ降られることは覚悟しておいた方が良さそうだ。

 9.0km、道道当別浜益港線方面に左折。

 道道28号に乗って北上。浜益までは61km。この道はそこそこ記憶に残っているので何度も走っていると思う。

 19.2km、緩々と登って行くと当別ダムが見えてきた。

 確か2018年の北海道1000の時に序盤にパンクしてここでパンク修理をした覚えがある。今日はパンクしないでもらいたいところ。

 22.8km、ダム湖に架かる望郷橋を渡る。この橋からの風景を見ると確かに今北海道を走っているということを強く実感する。

 浜益に向けて登り基調を進んでいく。普段通りの脚の回り具合で体調はまずまずといったところ。とにかく初日は疲労を背負い込まない様に極力抑えていくことを心掛ける。

 7時半を過ぎた頃に早くもパラパラと雨が落ちてきた。取り敢えず本降りになる気配はなく寒くもないので構わず走り続ける。

 39.1km、緑の青山ダムを見ながら5%超の登りをえっちらおっちら登って行く。

 40km、玉の湯トンネルを通過。

 トンネルを抜けてもまだアップダウンは続く。序盤の山岳地帯のピークの青山トンネルまではもう少し上ることになる。

 48.3km、国道451号に突き当たって滝川・新十津川方面に右折。

 国道451号に乗って更に登りは続く。

 51.8km、青山トンネルに到達。ここで序盤の山岳地帯は終わりだ。

 トンネルを出て新十津川町に入った。そのまま長い下りに入る。

 いつの間にか雨は止んで快調に進む。白樺の林が如何にも北海道の原野という感じ。

 道脇の蕎麦畑は花が満開。

 信号が全くないので止まることなくひたすら進み続ける。どんどん距離を消化していく。

 64.8km、平坦基調になり目的地が見えてきた。右折すれば直ぐに通過チェックだ。

 65.1km地点の通過チェック1に到着、チェックタイムは8/8の9:04。山岳地帯を抜けてここまで3時間かからずに辿り着けるとは流石北海道。まずは通過証明用の写真を撮る。

 公園管理等でトイレを済ませて水を飲んで何となく休憩した感じになった。10分程の休憩の後出発。

通過チェック1->通過チェック2/美深峠(135.8km/200.9km)

 次の目的地は135.8km先の通過チェック2美深峠だがその前に47km先に休憩ポイントを設定してあるのでまずはそこに立ち寄る。

 66.3km、再び国道451号に合流して右折。

 平坦な国道451号を淡々と進む。雨のリスクは若干遠のいた様で落ち着いて走ることができる。何となくペースを掴んだ感じかな。

 76.3km、左折して国道451号を離れる。

 78.2km、左折して国道275号に合流、本格的に北上開始。

 国道275号は結構車通りが多くて北海道らしくない。大型車両も結構通過するので神経を使わされる。

 美深までは143km。まだまだ遠い。

 石狩川の河口から100km地点を通過。そうか、右手に石狩川と並走していたのか。

 84.9km、雨竜の市街地に入って来た辺りで雨が降り始めた。今度は結構しっかり降り始めた。

 88.4km、深川・妹背牛方面に右折して国道275号を離れる。あっという間に路面に水が浮いた。もうこの先は雨天走行確定かな。

 90.8km、橋を渡って妹背牛町に入った。

 道道47号に入って車通りが少なくなって落ち着いた。

 95.0km、妹背牛の街中に入って秩父別方面に左折。

 95.3km、沼田・秩父別方面に左折して妹背牛の街中を抜けていく。

 100.0km、再び郊外に出て平坦路をひたすら北に向かって進む。雨は降ってはいるが更に酷くなる様子はなく一旦濡れてしまえば大して気にならなくなる。追い風基調なのでそこそこバイクが前に進むので気分的には割と楽に走れている。

 101.3km、秩父別町に入った。

 103.3km、右折して国道233号に合流、秩父別の街中に入って来た。

 旭川までは39kmか。39kmが全然遠く思えないのが北海道の感覚。

 104.5km、秩父別の街を出て直ぐに枝道に左折、国道233号を離れる。

 曲がった途端に登り基調。久し振りの登りがきつく感じる。

 107.8km、道道281号に突き当たって幌加内・多度志方面に左折。

 小さな峠だが結構きつい。平坦に慣れるとこういうことになる。

 多度志の街中に入って来た。休憩ポイントが見えてほっと一息。

 112.1km地点の休憩ポイント1に到着、チェックタイムは8/8の11:03。

 空は雨降りでどんより暗いのだがまだ午前中だということに気付いてちょっと嬉しくなる。ここまで5時間かからずに来ているので、取り敢えず想定を上回るペースで今日の行程の1/3を消化できた。

 目に付いてぱっと手に取ったプリン。高かったけれど美味しい。15分程の休憩の後出発。

 88.8km先の通過チェック美深峠に行く前に44km先に休憩ポイントを設定してあるのでまずはそこを目指す。と思ったら、うっかり北に行くべきところを西に行ってしまいミスコース。

 気を取り直して国道275号に乗り改めて北上開始。

 雨は小降りとなってちょっと落ち着いた。美深までは108km。

 再び雨が降り出しがっかり。何となく登り基調になって来た。

 121.0km、高橋峠イチイを通過。ここを何度か通ってみているけれどいまいちこの樹の存在感が分からない。小さな峠を越えて下りに入る。

 下りながらどうも後輪に違和感があるので見てみたらタイヤが潰れかかっていた。このタイミングでパンクかと思いきや、段差にタイヤを落としてあっという間に空気が抜けてしまって完全にパンクしてしまった。

 雨の中でパンク修理をするのは嫌だなあと思っていたら、下ったところで小さな集落があり上手い具合に小屋の様なバス停があったのでそこでパンク修理。チューブには大きな穴が開いていて普通のパンクではこんな穴は絶対に空かないのでタイヤに穴を開けてバーストさせたのかとかなり焦ったが、何度調べてもタイヤに異常は見られないので、これはさっきの段差が原因だと割り切ってチューブを交換する。20分程のタイムロスでリスタート。

 再び雨が弱くなった。取り敢えず車が殆どいないということで余計な神経を使わされずに走れるのは雨の影響を余り感じなくて済むので有難い。

 130kmを過ぎて登り基調になった。5%弱の真っすぐな登り坂をえっちらおっちら登って行く。

 真っすぐな登り坂は勾配以上に視覚的破壊力は抜群。遥か前方にトンネルが見えてきた。あれがピークなのか?

 131.5km、幌加内トンネルに到達。トンネル内も登り基調。

 トンネルを出て幌加内町に入った。どうやらここがピークの様だ。

 再び後輪に違和感があるので確認したら空気が抜けている。スローパンクの様だ。さっきのパンクの原因を除去できていなかったのか。トンネルを出たところで駐車場があったので再度停車して後輪をチェック。チューブの穴を見つけるのが非常に大変で、何度も探ってようやく小さな穴を見つけた。さっきのパンクの場所とは違う様だ。その穴の付近のタイヤを何度も探ったが原因が全く見つからない。使ったチューブは中古の修理品だったので修理した時に別の穴を見逃していた不良品だという結論にして、チューブを交換する。パンク修理はバンクの原因が簡単に見つかるかどうかで所要時間が大きく変わって来る。またしても20分程のタイムロスの後リスタート。

 長い下りを快調に下る。パンクの原因がいまいちわからなかったので何となく不安感が残っているがスペアタイヤは持っているし替えチューブもあと4本あるので、充分に対処は可能だと自分に言い聞かせる。

 国道275号をひたすら北に向かって進む。追い風基調は継続していて順調に距離を消化していく。

 今は雨は落ち着いているが向かう先の北の空には暗い雲が垂れ込めている。いずれまた本降りに遭うだろう。幌加内市街までは4km。

 このタイヤのロボットの交通安全、見覚えがある。いつ見たのかは思い出せないが。

 143.8km、幌加内の街中を通過。

 幌加内を出てから何となく登り基調になって来てアップダウンが出てきた。

 156.2km、休憩ポイントに設定していた道の駅森と湖の里ほろかないに到達。それ程疲労感はなくトイレも大丈夫なので止まってペースを崩したくないのでスキップすることにする。

 微妙なアップダウンを繰り返しながら北上を続ける。再び雨が降り始めた。美深までは57km。

 168.4km、北海道ランドヌールの間では有名な蕎麦屋さんの霧立亭を通過。タイミングが合えば寄ってみようかと思っていたけれど月曜日は定休日なので素通り。取り敢えず今日の行程の半分を消化。時刻は14時過ぎでここまで約8時間、巡航20kmはキープできているのでまずまず順調。

 170.1km、音威子府・美深方面に左折して国道275号をトレースしていく。

 微妙な登り基調の真っすぐな道を進んで行く。美深までは49km。峠はもっと手前にあるはず。

 176.4km、朱鞠内トンネルを通過。

 179.4km、音威子府・美深方面に右折して更に国道275号をトレースしていく。曲がって直ぐに登りが始まる。

 5%弱の真っすぐな登りをぼちぼち登って行く。

 181.7km、峠のピークを通過。左側のこの公園は確か2019年の札幌600の時に反対側から登って来て休憩した場所だ。確かあの時も雨が降っていた。そのまま下りに入る。

 一旦下って再び登りになった。アップダウンを繰り返しつつ標高を上げていく。

 192.8kmのピークを越えて長い下りに入る。これだけ下ると美深峠まで改めて登り直さなければならないということか。

 196.3km、下りを終えて母子里の街を通過。再び登りが始まる。登り始める前に雨が小降りになってくれてよかった。

 いよいよ美深峠への登り開始。2.5km、平均勾配5%程度だからそれ程きついヒルクライムではない。

 直線的な登りは視覚的にきつい。5%の坂が10%に思えてくる。

 山頂が見えた。ホッと一息。

 山頂到達。美深町に入った。

 200.9km地点の通過チェック2に到着、チェックタイムは8/8の15:54。通過証明の写真を撮って一息ついて直ぐに出発する。

通過チェック2->宿泊1/ウスカイモシリ湯治の湯(125.9km/326.8km)

 これで今日の通過チェックは全てクリアしたのであとはホテルを目指すのみ。ホテルまでは126kmだがその前に19km先に休憩ポイントを設定しているのでそこに立ち寄る。

 長い下りを快調に進む。もうこの先山岳地帯はないので気楽。予定通りホテル23時着が見えて来た。

 218.1km、下りを終えて天塩川を渡り美深市街に入っていく。

 219.0km、コースは左折方向だが休憩ポイントは右折。曲がって600m程コースアウトするがここしかコンビニがなかったので止む無し。

 219.6km地点の休憩ポイント3に到着、チェックタイムは8/8の16:38。

 このコンビニは2019年の札幌600で通過チェックだった場所だ。あの時は早朝だが正にこんな天気でデジャヴの様だ。休憩ポイント1から区間距離107kmの長丁場だったが、それ程疲労を溜め込むことなく無難にここまで来ることができた。15分程の休憩の後出発。

 元来た道を戻って美深市街を抜けて行く。向かう先の空は暗くどうやってもがっつり降られそうだ。

 220.2km、先程の右折ポイントまで戻って来てコース復帰。稚内・音威子府方面に直進する。

 美深市街を出て国道40号を北上する。案の定スコール的な土砂降りになった。

 ここまで降られるともう笑うしかない。車通りがそこそこあってちょっと緊張するが追い風基調なので30km/h近い巡航速度が維持できるのは有難い。もしこれが向かい風だったらと想像すると寒気がする。

 245.6km、小一時間走ってようやく雨が弱くなってきた。更に北上を続ける。

 250.0km、音威子府の街中に入って来た。

 250.6km、その先の分岐を稚内・中川方面に左折する。

 と思ったら、左折方向は通行止めになっていて、作業員の人に止められた。この先集中豪雨の影響で道が完全に水没して自転車も通れないという。これは困った。迂回路を聞いたら「どこに行くのか?」と逆に聞かれたので取り敢えず豊富まで行きたいと言うと作業員さんはちょっと考えて、「このまま国道275号を進んで途中で左折するしかないね。相当遠回りになるけれど」と答えた。どの位遠回りですかと聞くと「車で30分かかるところを1時間かかる」と言われて目が点になった。北海道には街を結ぶ幹線道路しかなく一か所通行止めになるととんでもない遠回りになるということを思い出して愕然としてしまった。作業員さんは「この先峠を2つ越えなければならないからかなり大変だよ。自分も2,3回しか通ったことがないけれど相当大変な坂道だよ」と脅された。これはえらいことになってしまったと焦ったが徐々に日が暮れるし何としてもホテルに辿り着けないと明日以降の走行プランに重大な影響を及ぼすことになる。躊躇している時間はなくとにかく迂回一択で進むしかない。「中頓別辺りまで行って、標識に稚内とか中川とか書いてあったらそっち方面に左折すれば行けるだろう」という作業員さんの言葉を反芻しつつ、道なり右方向で国道275号を進み始める。

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<ゴール後に確認したルート比較>

 オリジナルルートはこれだが、

 こうなってしまった。

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 国道275号を進むうちに徐々に登り基調になって来た。本来ルートならばもう峠はないはずなのにこんなハプニングが待ち受けているとは予想だにしなかった。雨が止んでくれたのは不幸中の幸いか。

 迂回路起点から10.3km、登坂車線が出てきた。そんなきつい坂を登らされるのかと暗澹たる気持ちになって来た。

 迂回路起点から12.3km、取り敢えず最初の峠をクリア、大したことは無くて良かった。ピークで中頓別町に入ってそのまま下る。

 迂回路起点から14.9km、分岐では道路標識を確認しつつ取り敢えず左方向を意識して走る。ナビの地図の縮尺を大きくして大雑把に自分がどこにいるのかを把握して走る。オリジナルのルートから相当離れてしまったので不安感が募るがとにかく進むしかない。

 道路標識には稚内の文字があるので取り敢えず進むべき方向は間違っていない様だ。取り敢えず作業員さんの言葉を信じて国道275号をひたすら進む。

 時刻は19時を回りいよいよ暗くなってきた。再び雨が降り始めてがっかり。道路標識を見落とさない様に慎重に進む。

 迂回路起点から36.3km、分岐が来た。直進方向は浜頓別・中頓別で左折方向は問寒別となっていてどこにも稚内や中川の文字はない。ナビの位置確認ではこのまま直進すると東の海に出てしまいそうなので、ここを曲がるしかなさそうだ。覚悟を決めて左折を敢行する。

 曲がって直ぐに登り基調になって来て、徐々にはっきりとした坂道になって来た。これが作業員さんが言っていた凄い登りなのか。身構えつつ登って行く。真っ暗闇な上に雨が徐々に激しくなってきた。南風のはずだったのに正面から風が吹いてきて何だか荒れてきた。ここに来てこんな状況が訪れるとは、参ったなあ。 

 真っ暗闇の土砂降りの山道を忍の一字で登って行く。物凄く酷い状況なのに脚はそこそこ回るし疲労感もそれ程ないので大して悲壮感を感じていない自分にちょっと驚いた。今回の北海道1300ではブルベの勘がかなり鈍っていて精神的に辛い思いをすることを覚悟していたが、こういう状況に直面してそれ程動じていないのは過去の経験が無意識のうちに精神的苦痛の閾値を上げている様な気がする。

 延々と登っている感じだが周りの景色が見えないので逆に登りの素性を知らずに済むことで脚を回すことに集中できている感じだ。

 国道275号を離れて10km程登ってトンネルが出てきた。ようやくピークが来たかと思ったらトンネルを抜けた後も登りが続いていてがっかり。この感じだと美深峠よりも高い峠を登らされているのではないかという気がしてきた。

 迂回路起点から47.8km、ようやく山頂らしき場所に着いた。その途端に正面から物凄い風が吹いてきて暴風雨状態になった。

 こんな無茶苦茶な暴風雨の中を今登ってきた距離と同じだけ下るのかと考えると正直ヤバいと思うが、ここでこのまま立ち往生することもできないので覚悟を決めて下るしかない。ブレーキシューの状態を確認して恐る恐る下り始める。

 幸い路面はそれ程悪くないので、ブレーキはほぼかけっ放しだが何とか下ることができる。標高が下がってくれば荒天も少しは収まって来るだろうと期待しつつそろりそろりと下っていく。こんな山道だと鹿やら熊やらが出てくることを注意しなければならないところだが、ここまでの暴風雨だと動物もじっとしていそうだから逆にその心配をしなくても済みそうだ。

 10km程下って勾配が緩み、風雨もかなり弱くなった。下りが終わって全身の緊張が解けた。道路標識に豊富の文字が出てきて、取り敢えず向かう方向は間違えていなかった様だと安堵する。ようやく落ち着きを取り戻し直進方向に進む。

 迂回路起点から68.3km、取り敢えず豊富方向に右折する。

 曲がって再び登りになった。まだ峠は残っていたのか。

 迂回路起点から73.9km、登りの先にトンネルが見えてきた。さっきの峠に比べれば全然大したことは無かった。長いトンネルを抜けると下りになったので一安心。

 迂回路起点から77.1km、幹線道路にぶつかったので標識はなかったがナビの目的地方向を頼りに左折。更に下りが続く。

 ナビによると目的地まで直線距離で10kmを切ったのでもう道を間違えることは無いだろう。

 迂回路起点から84.8km、ここでようやく本来のルートに復帰。いやあ長かった。何となく20km位遠回りした感じだし(実際には10km程だった)、とんでもない峠を登らされたし想定外の迂回路走行は初日からなかなかにインパクトのある出来事に遭遇してしまった。豊富市街方面に直進すれば4km程でホテルだ。写真を撮ろうと思ったらデジカメがまともに動かなくなってしまった。どうやら水没したらしい。

 暗がりの中にぼんやりと温泉街の明かりが見えて来た。ようやく今日の苦行が終わりそうで安堵感が広がる。326.5km地点を右折すればもうホテルは目前。

 326.8km地点のホテル”湯治の湯ウスカイモシリ”に到着、チェックタイムは22:40。何だかんだで取り敢えず想定通りの時間に辿り着けたが、もし迂回が発生しなければ恐らく1時間以上は早く辿り着けたはずで、それを考えると何とも残念だがまあこればかりはどうしようもない。

 このホテルはホテル関係者は無人で入口のオートロックの暗証番号をメールで事前に教えてもらって入館するシステムだ。取り敢えずバイクを玄関の土間の空きスペースに置かせてもらって建物の中に入る。

 アパートの様な作りの部屋も同じ暗証番号で入る。部屋に入ってほっと一息。先ずは濡れたウェアを脱いで着替える。結構な空腹感で取り敢えず何か食べ物を手に入れられないかと館内に何か売っていないかと探したが何もなかった。止む無く外に出てホテルの周りを歩いてみたが店はなく小さな街中は完全に寝静まっていた。

 ジュースの自販機はあったので一番カロリーの高そうなコーラを買って戻って来た。温泉街だが温泉施設は既に閉まっていたので館内のシャワーで汚れを洗い流し、スッキリして部屋に戻りさっき買ったコーラと携帯していたカロリーメイトで飢えをしのぐ。明日はスタートして直後に豊富市街に入るのでコンビニを見つけたら朝食休憩を入れることにする。スマートフォンを見たら主催者さんから通行規制に関するダイレクトメッセージが届いていたので、迂回した旨を伝えて問題ないかどうか質問したら大丈夫と言う返事が来て安堵した。何だかんだで一番距離の長い初日を走り終えたので明日はスタートを遅らせても旅程に大きな狂いは生じない。明日は6時半起床の7時スタートとしてアラームをセットしベッドに横になる。消灯時刻は24時前。