1001Miglia2024/Report 23:ゴール後

 完走の実感はなくともとにかくゴール地点に辿り着いて走り終わったことは紛れもない事実。ゴールして真っ先にやろうと思っていたのはドロップバッグを受け取って中に入っている新しいジャージとレーパンを持ってシャワーを浴びること。この1週間、TP等で一度もシャワーを浴びることなく同じジャージとレーパンをずっと着続けていたので自分で薄々気付いている以上に汚れて悪臭を放っていることは容易に想像できる。とにかくこのジャージとレーパンを脱いで開放感に浸りたい。

 ドロップバッグを受け取りつつシャワーの場所をスタッフに教えてもらい着替えを持ってシャワーを浴びに行く。薄暗いシャワールームで全裸になった時の開放感が物凄い。頭から温いシャワーを浴びて全身の汚れを洗い流して生き返る。

 心身共にリフレッシュして新品のオフィシャルジャージとレーパンに着替えて”正装”して食事をしに食堂に戻って来た。参加者もまばらで静かな食堂でフードが揃うのをしばし待つ。

 無料の食事セットと有料のビールを買って席に座る。

 満を持してビールを飲む。空きっ腹からビールが直接血管に浸透し疲れた四肢にあっという間に広がって痺れていく感じが堪らない。とにかくゴール地点まで無事に戻ってきてビールが飲めるという状況まで持って来れたことが嬉しい。

 ビールを飲みながらさっき受け取ったメダルと完走証を改めて眺めてみる。今のところ私が完走したという物的証拠はこの2つのアイテムしかない。完走証をよく見たら完走時間が記入されていない。正直まだ完走が”確定”したという実感が持てず、イベントが終わった開放感と達成感と色々な感情が混然一体となってふわふわと落ち着かない妙な心境だ。

 痺れて痛い掌を見てみると右の掌に内出血のあざができていた。掌が痛くなるのは過去何度も経験しているがここまで酷いのは初めて。これは完治するまで時間がかかりそうだ。

 ビールをお代わりしつつのんびりしていたら周囲に日本人参加者の皆さんが集まっていた。皆さん無事にここに戻って来ることができて何より。

 タカマツさんもお元気そうで何より。

 時刻は7時半を回って外はすっかり明るくなっている。ゴールして来た人が徐々に増えて来てちょっと賑やかになって来た。ようやくゴール地点らしい雰囲気が出てきたか。

 PBPに比べれば規模はとても小さく喧騒はないが、こういう穏やかなゴールも悪くない。

 PBPでもLELでもMGMでもゴールした後は長居せずにすぐに立ち去っていたが今回は早朝ゴールということもあってのんびりとゴールの雰囲気に浸ることができる。

 朝日が出てきた。気温も控えめで朝の空気が清々しい。

 随分前にゴールして仮眠から起き出してきた人も多そうだ。

 食堂も人の出入りが増えてきた。

 日本人参加者の皆さんと記念撮影。皆さん本当にお疲れ様でした!

 強者共の夢の後、という感じかな。

 グラウンドの奥の部室にスタートの前に荷物を置いたのを思い出して取りに行く。

 無事に荷物を回収。

 再び食堂に戻ってきたらさすがに眠くなってきたので食堂の隣のドームの中に入って隅の空きスペースにマットが何枚か敷いてある場所を見つけて横になる。あっという間に気を失った。

 夢うつつの中ですぐ近くで日本語の会話が聞こえて来てぼんやりと目を覚ました。時計を見ると9時半を過ぎていた。1時間位寝ていた。

 ドームの外に出てみると会話の主はナミキさんだった。

 道中何度もお会いしたナミキさんとタイ在住のウエダさん、お二人とも無事完走で何より。お疲れ様でした!

 走行中”あの”牛舎前のドロドロの悪路でへばりついた粘土の様な泥を落とすために敷地内の空きスペースを見つけてペットボトルで水を掛けつつバイクを洗車する。

 洗車を終えて食堂に戻ってみるとひであさんの姿が。早々にゴールして近くのホテルで寝てから再びゴール地点の来たとのこと。お疲れ様でした!

 11時になったのでそろそろミラノのホテルに戻ろう。ドロップバッグやらの荷物を抱えて自転車に跨る。

 ゲートを出てゴール地点を振り返る。もう二度と来ることはないこの場所をしっかりと記憶に留めておく。Parabiagoの駅に向かって1.4kmの道のりを走り始める。

 身体のあちこちが痛いが何とか自転車に乗れた。のろのろと進んでいく。

 11:10にParabiagoの駅に到着。

 切符を買ってホームに入る。ボトルを2本とも失くしてしまったのは今となっては良い思い出。日本に帰ったら速攻で手配しなければ。

 電車を待っている間、一人の参加者に話しかけられてお互い片言の英語でしばし会話。お互い完走できて良かったねと称え合う。

11:27のミラノ行きに乗車。

 12:10、ミラノ・ポルタ・ガリバルディ駅に到着。自走でホテルに向かう。

 ホテルまでの1.5kmの道のりをのんびりと進む。7日前、この道を駅に向かって行った時は緊張と不安と気合で張り詰めた心境だったが今はプレッシャーから解放されて心は軽々としている。ミラノの街中は同じ風景のはずなのに明らかに違って見える。

 12:20にホテルに帰着。もう自転車には乗らない・いや乗れないのでこれでイタリアサイクリングは完全に終了。

 チェックインして預けていた荷物を受け取って部屋に入る。ホッと一息。前泊の時とは違う部屋で冷蔵庫がなかった。ちょっとがっかり。

 スタート前に受付で巻かれたリストバンドを遂に外す時が来た。

 イベントからの拘束は解かれた。これで晴れて自由の身。

 間髪入れずに改めてシャワーを浴びる。ゴール地点のシャワールームには石鹸がなかったのでボディーソープで念入りに身体を洗ってようやく普通の人間に戻った。そして間髪入れずにウェアを洗濯、自分史上最も臭いウェアをやっつけてすっきりした。シャワーから出て全身鏡を見たら久し振りに腹筋のシックスパックと引き締まったウエストを見た。いやあイタリアの道は過酷だった。

 シャワーを終えると次は猛烈な空腹感なのだが食事に出かける気がしないし買い物に行く気力もない。前泊の時に買ってあった菓子が残っていたのを食べて飢えをしのぐしかない。そのうち睡魔が襲ってきてベッドに倒れ込んで気を失った。

 13時過ぎに気を失って、16時半に目が覚めたものの夢とうつつの区別がつかず身体が全く動かず15分位かかってやっとPCのキーボードが打てるようになった。ベッドから起き上がれない。もう幾らでも眠れるし明後日までに帰り支度をしなければならないのが途方もない重労働に思えて呆然自失。ちょっと寝たら身体が走行モードから修復モードに切り替わってしまいベッドから全然動けない。打ち上げやりたいのにこれは困った。取り敢えずホテルのレストランはディナーがあることはわかったので最低限の保険は確保。それにしてもお腹が空いた。ベッドの上でツイッター上の所沢大勝軒や所沢D麺のラーメン画像を見て悶絶する。食いてー!!

 ひたすらベッドの上で横になってうだうだと過ごすうちに19時になってさすがに何か食べなければ拙いと気合を入れて起き上がる。打ち上げ会場の目星は全くつけていないが、ホテルの並びにあった一番近いレストランをまず覗いてみることにする。

 ホテルから100m弱のそのレストランまで頑張って歩いて、もうこれ以上歩きたくないので自動的にこの店に決まった。

 庶民的な雰囲気のレストランの席に案内されて独り打ち上げ開始。まずはビール。五臓六腑に染み渡ってあっという間に全身に心地良い痺れが広がっていく。旨い。旨過ぎる。疲れ過ぎて食事は楽しめないかと思ったがビールを一口飲んだらそんな杞憂は吹っ飛んだ。

 トマトとモッツァレラチーズのサラダ。オリーブオイルとビネガーをかけて食べるのがとにかく美味しい。

 ムール貝があったので当然注文。イタリアでもしっかり食べることができて大満足。

 パスタはペスカトーレを選択。何も言うことはない程に美味しい。走行中に食べたパスタはどれもそんなに美味しいものだとは思えなかったが、そこはイタリア、あるところにはちゃんとある。間違いなく生まれてから今まで食べた中で最高に美味しいペスカトーレだった。イタリアに来たら美味しいペスカトーレを食べて帰るのが観光的な唯一のミッションだったがあっけなく果たされた。

 ビールを2杯立て続けに飲んだ後はワインにスイッチ。今日の体調だとデキャンダで確実に致死量を超えるがそんなことはお構いなし。ハウスワインは普通に美味しい。

 ステーキ。普通に美味しい。

 勢いに任せてたくさん注文して1時間20分程の美味しい打ち上げは終了。これだけ食べて飲んでの€60は走行中の有料食品の値段と比較してかなり安いと思う(但し€同士の相対比較であって円換算は敢えてしない)。大満足で店を出て千鳥足でホテルに戻る。

 時刻は20時半過ぎ、ホテルの直ぐ傍の教会にはライトアップが始まっているが空はまだ十分に明るい。

 ホテルの部屋に戻ってもうちょっと飲みたい感じだったが、2次会に行く気力は全くなし。天井が回るので恐らく簡単に気絶するだろう。PCを開いてちょっと眺めていたら案の定気絶した。就寝時刻は21時半頃か。