9/28(日)渡辺貞夫のRendezvousツアーを観に群馬県太田市まで車を飛ばして行ってきた。

去年行くはずだったのに悪天候で中止になってようやく念願叶った。ステージから出てきた貞夫さんの歩く姿を見るとやはり老いたなという感じはあったが、曲が始まって吹き始めると昔から全く変わらない貞夫さんの音が出て来てちょっと感動した。ランデブーと銘打たれたツアーだからあのアルバムをトレースするのかなと思いきやオープニングこそランデブーだったけれど後はオレンジ・エクスプレスやカリフォルニア・シャワーなどの往年のフュージョン系の曲をMCも殆どなくバンバン演奏していく。ドラムとパーカッションが強力でブラジリアンビートやアフリカンビートの洪水がアグレッシブで心地良い。92歳の貞夫さんなりの穏やかなステージかと思いきや見事に裏切られるテンション高めの曲が続き、途中休憩を挟みつつも2時間16,7曲をやり切るとてもパワフルなステージだった。それにしても90歳を過ぎてなおアップテンポにきっちり乗っかって淀みないフレーズを紡いでいく姿に驚きつつ全く衰えを感じることがなかった。これから老いていく自分にとって90歳を過ぎてもきっちりビートを掴んで楽器を操作できる姿に物凄い希望をもらった。いたわりを込めてこれからは渡辺貞夫さんと呼ばなければいけないかな、と思っていたけれど昔私がガンガン聴いていた頃のナベサダのままだった。この先も敬意を込めてナベサダと呼ばせてもらおう。次にライブを観る機会があったらナイス・ショットをやってくれないかなあ。とても良いライブだった。

私の中でのアルトサックスプレイヤーといえばダントツで渡辺貞夫だ。まず、とにかくサックスの音が良い。昔から変わらないハードラバーのマウスピースから出てくる音は倍音が抑えられてふくよかでとても聴きやすい。アルトといえばもう一人デヴィット・サンボーンも好きなのだがこの人のメタルマウスピースの音はピーキーでちょっときつい。最初に渡辺貞夫を聴いたのは多分中学生の時、当時の米国のヒットチャートや日本のニューミュージックばかり聴いていた中でラジオから流れてきた”ナイス・ショット”のカッコよさに衝撃を受けた。
この曲は私が徐々にジャズ・フュージョンを聴き始めるきっかけを作った1曲になった。それからどっぷりとフュージョンにはまってしまい、常に追いかける程のファンではなかったが80年代90年代の渡辺貞夫はそれなりに売れていたのでジャズ・フュージョン界隈をうろついていれば大体耳に入って来た。渡辺貞夫はプレイヤーとしてだけではなくコンポーザーとしても優れていると思う。数多くの楽曲を作り、ジャズ、フュージョンだけでなくブラジルやアフリカの音楽を上手く咀嚼して聴き馴染みやすい曲に変換していく能力は相当に高いと思う。私的にブラジル音楽の原体験のひとつは渡辺貞夫だったと思う。
私の中の渡辺貞夫のベストテイクは勿論ナイス・ショットだがアルバム単位でいえばやはりRendezvousになるだろうか。
アメリカのトップミュージシャンを従えた極上のリラクゼーションサウンドは圧巻。このライブツアーも観応え聴き応え充分だった。
ナベサダのナイス・ショットがカッコ良過ぎていつかは吹いてみたいと昔からずっと思い続けていてちょっと前に遂にアルトサックスを買ってしまった。

でも家で思う様に練習できず、何より難しいのですぐに投げ出してしまった。しかし92歳のナベサダの姿を目の当たりにしてもう一度頑張ってみようかなと思い直している。私が90歳になるまで30年、十分な時間があるではないか。ナベサダの様なカッコ良い爺さんになりたい。
渡辺貞夫は爺さんの定義を確実に変えている。素晴らしいことだ。いつまでもお元気で。