以前にも書いたことがあるが以前の私はライブを観るのが苦手だった。観たいという気持ちはあるのだが人混みがとにかく苦手で人と至近距離で接しつつ長時間じっとしていなければならないというのがどうにも苦痛で音楽に集中できないというのがその理由で、せっかく東京に就職で出てきたというのに最近までプロアマ含めてライブに行ったのは数回しかない。それがどうしたことかここ1、2年でまるで憑き物が落ちたかの様に苦手意識がなくなり、今年はかなり行っている。相変わらず人混みは苦手なままなのだが歳を取って来て人生の終わりが見えて来て、やはり観たいものは観ておかなければという意識が強くなったことが原因ではないかと思われる。
昨日はCount Basie Orchestraを観に高崎芸術劇場まで行ってきた。大学のビッグバンドサークルに入って初めて聴き、好きか嫌いかもよくわからずに4年間やり続けたベイシーを、それが一体何だったのかを確かめるために一度は観てみなければと思いつつ、何度も来日しているのを先送りにしてきたのだが遂に実現することとなった。
今週末から日本でCount Basie Orchestraのコンサートがあるのを知ったのは4日程前。今度こそ観たいと慌ててどこかで観られないかとチケットを探したらBlue Note Tokyoは既に全日程Sold Outだったが高崎で空席があったので取った。自分のライブの前日だけれど景気付けに行ってくることにした。

車を飛ばして16時半前に高崎に到着。高崎芸術劇場は初めて来たが、なかなか綺麗はホールだ。

ロビーはそこそこの人で賑わっている。年齢層はやはり高め。お洒落に着飾った人達もちらほらいてかすかに本場の雰囲気が漂っている。

館内のデコレーションもクリスマス一色で何となくウキウキする気分でホールに入っていく。

席は後方右側だがステージ全体が見渡せるのでそれ程悪くない。今時ちょっとメジャーなアーティストだとチケットは1万円前後が当たり前の時代でベイシーが6,800円で観られるというのはかなりお得な気がする。
17時過ぎの開演と同時にステージに並んだバンドから出てきた音を聴いた瞬間、鳥肌が立つ程に素晴らしい管楽器のアンサンブルにノックアウトされた。ゴージャスで深く柔らかく暖かく、時にスリリングに時にファンキーにスウィングする正統派ストロングスタイルのビッグバンドジャズは40年近く前に擦り切れるほど聴いた私的に不朽の名作”Way Out Basie”のままだった。あの頃からバンマスは何度か代わってメンバーもかなり入れ替わっている様だがバンドの個性は見事に引き継がれている。途中加わったパティ・オースティンは私の中ではコンテンポラリーなシンガーに分類されていたが、ビッグバンドを従えて堂々のジャズシンガーになっていてちょっと驚いた。私的にクリスマスソングの中で一番好きな”Have Yourself a Merry Little Christmas”にはシビれた。あっという間の1時間半が過ぎてアンコールの”April in Paris”、アレンジも昔のままで今まで散々やったしアマチュアバンドのそれを数多く聴いて来たけれど遂に本物を観た聴いた!という感動が湧き上がって来た。エンディングで”One More Time!”と叫んでしまったよ。
帰りの車の中で久し振りに”Way Out Basie”を聴きながら上機嫌で帰宅した。

Way Out Basieは数ある作品の中でも私的にはベイシーのリファレンス的なベスト盤だと思っている。1985年の日本公演の模様が収録されたものだが、当時はCDとLDが発売されていて、社会人になって買おうと思ったらどちらも廃盤で超希少盤になってしまい何年もかかって何とかLDは入手できたもののCDは未だに見つからない。昔友人が所有していたものをCD-Rに焼いて聴いている。素晴らしい内容なのに何故この盤を再発されないのか。マイナーなレーベルが所有するこの音源は日の目を見ることなく眠り続けているのだろう。凄く勿体無いことだ。この盤の中で私的に特に好きなのが”And That's That”という曲。ベイシーならではのミディアムテンポで秀逸な管のアンサンブルがばっちり楽しめる佳曲。ライブでやってくれないかなと秘かに期待していたのだが残念ながらなかった。
その昔、今はなき我がバンドSwingin' Mind Jazz Orchestraが演ったバージョン。原曲そのままのアレンジだが、今聴いてみるとちょっとノリが軽いかな。
大学の頃にサークルで初めて聴いて”演る音楽”として理解していたベイシーを40年近く経って”聴く音楽”として理解しその素晴らしさを再認識した”本物に触れた”夜になった。そして管楽器の出音の良さ、ジャズアンサンブルの素晴らしさを再認識させてくれた。またいつかビッグバンドをやりたいという思いが更に強くなった。とりあえず今日のライブに昨夜の高揚感をそのまま持って行って楽しく演奏したい。
来年以降も来日するだろうから今度はライブハウスで是非観たい。