2012北海道パラダイスウィークレポートNo.4 第4ステージ(BRM808北海道600前半)

8月8日
 5時起床。昨夜は20時過ぎに寝たから9時間近く寝たことになる。外はどんより曇り、雨は降っていない。疲れもすっかり取れて尻の痛みもかなり治まっている。ただ左膝は微妙に痛い。今日は初めてキネシオテープを使ってみる。

 ネットで貼り方を調べて見様見真似で貼ってみる。果たしてどのくらい効果があるのか。
 気温は低く今日もアーム&レッグカバーを着ける。

 5時半過ぎにホテルを発つ。ペダルを漕ぎ始めると、昨日ほどではないがやはり微妙に痛い。今日も我慢の走りを余儀なくされそうだ。

 途中、釧路本線を横切る。単線のレールが田舎の情緒を醸し出す。


 6時過ぎに昨日のゴール受付地点と同じ道の駅しゃりに到着、ここが今日のスタート地点となる。ぼちぼちライダー達が集まって来つつある。初日の200kmで落車し一旦離脱したIさんも無事に復帰を果たされ出走されるとのことだ。

 ブリーフィングでは、シークレットポイント(事前に告知したからシークレットではなくなったが)とPC5の通過チェックの説明があった。まずSC1は納沙布岬、駐車場の脇にある電話ボックスの上に載っているものを確認すること、次にPC5のJR川湯温泉駅では併設のトイレの名前を確認すること、そしてSC2は摩周湖第一展望台で郵便ポストの集配時刻を確認すること、という3つの課題が付加された。
 車検が終了し定刻7時前にスタートした。

 AJ北海道のスタッフさん撮影の写真。

 今日はパラダイスウィーク最長のステージで360kmを走破する予定、斜里を出て知床半島の真ん中を知床峠を越えて横断し海沿いを南下し野付半島ネイチャーセンターに寄り道して再び南下、根室に入って納沙布岬を回り再び内陸部に戻って中標津のホテルで仮眠というプランを立てている。

 何とか中標津には日付が変わる前に入りたいのだが360kmを17時間で走るのは第2ステージ以上にハードルが高い。まして左膝がこんな調子なのでかなり難しい。とりあえずはやれるところまでやってみるつもりだ。


 まずは最初の難関、知床峠を目指す。

 序盤は右膝の様子を見つつそろりそろりと走る。後続のライダー達にガンガン抜かれるが気にせずマイペースで走る。

 海沿いに出ると、海からの向かい風でペースは全く上がらない。今日中の中標津着がどんどん難しくなって行くがここで無理をすると左膝を完全に壊すので我慢して走る。

 途中でトイレに行きたくなって、トイレ休憩。

 オシンコシンの滝。特に寄ろうと思っていたわけではないがついでなんで記念撮影。

 更に進むと、知床峠への登り口が見えてきた。

 いよいよ知床峠へのアタック開始である。知床峠ヒルクライムは距離15km、平均勾配5%のしっかりとした峠である。オーバーペースにならない様に気を付けながらも気合を入れて登り始めた。
 ペースで登っていると徐々に左膝の痛みを感じなくなってきた。前回の埼玉600kmの時と同じ様に走っている最中に痛みが薄らいでいく。何でそうなるのかはわからないが、いずれにしても痛くなくなるのはありがたい。調子に乗って上げ過ぎないように気を付けて走る。

 途中キタキツネ発見!近付いても逃げないのは人間に餌付けされているのか?

 1時間程かけて知床峠をクリア。

 頂上付近はかなりの濃霧で視界が悪い。

 AJ北海道のスタッフさん撮影の写真。
 下りは視界が悪いそうでスタッフさんから全ライト点灯するよう指示があった。更に下りは寒いのでレインウェアを着る。
 長い長い下りを一気に下って行く。

 雄大な知床峠の坂道は携帯カメラのフレームには全く収まらなかった。

 ダウンヒルを一気に終えたところで70km地点のPC1に到着、チェックタイムは10:18。朝食を食べていなかったのでここではしっかりと補給を摂る。
 長めの休憩を終えスタート、ここから再び海沿いを南下するが風向きが追い風基調に変わって俄然やる気が出てきた。右膝の痛みも丁寧なペダリングを心掛ければほぼ気にならない、ここから追撃開始である。
 下ハンドルを持ちっ放しでタイムトライアルの様にガンガン走る。巡航速度は30km/hを大きく超えて一気にペースアップ、時折強い雨が降るが御構い無しで走り続ける。膝さえ痛くなければ身体の調子はすこぶる良いので走っていて滅茶苦茶楽しい。北海道の道は自分がやたら強くなったと錯覚させる道である。
 あっという間に野付半島への分岐に到達、ここを左折して野付半島へ向かう。
 ここから風向きが変わり今度は強い向かい風で一気にペースが落ちる。
 分岐を曲がって直ぐの所で先頭と思しきKさんとすれ違う。ここから折り返し地点の野付半島ネイチャーセンターまではおよそ15km、ここですれ違ったということは30kmも差がついていることになる。さすがKさん、速い速い。
 風を遮るものは何一つない細い半島の真っ直ぐな道をただひたすら漕ぎ続ける。

 たくましい馬が風にも負けずに走り回っている。

 小雨交じりの風を何とか押しのけて135km地点のPC2野付半島ネイチャーセンターに到着。

 AJ北海道のスタッフさんの有人チェックを受ける。チェックタイムは12:49。

 補給食は1個300円のシュークリームを奮発。中身はクリームかと思ったらアイスクリームで、かちかちに凍っていて固くて食べるのに時間がかかってしまった。休憩中に福島から参加のライダーさんと談笑。彼は5月の埼玉ヘルウィークも完走したという強者で、この北海道パラダイスウィークを走り切ればトリプルSR達成とのこと、凄過ぎる。その彼が言うには埼玉ヘルウィークよりこっちの方が過酷とのこと。

 野付湾の景観は荒涼としていた。
 30分程の休憩の後、再び来た道を戻る。ここから次のSP1の納沙布岬までは区間距離125km、かなり長いのでどこかで補給を入れなければならないかも知れないが、とりあえず調子に任せて行ける所まで行くことにする。
 相変わらず海からの横風がきつくスピードが上がらない。これからネイチャーセンターへと向かうライダー達とすれ違い、手を挙げて挨拶を交わす。

 再び244号線に戻り南下開始、追い風基調に乗ってペースを上げて走る。

 厚床の駅前で44号線を左折し根室へのアプローチに入る。ここから根室市街までは30kmちょっと、納沙布岬まではそこから更に20kmでかなりの距離がある。納沙布岬で折り返して再びここに戻ってくる頃は、完全に夜間走行に突入しているはずだ。
 小雨に加えて向かい風になりペースが落ちる。細かいアップダウンが続くので結構脚が削られる。

 この辺りで17時近く、暗くなる前に納沙布岬に辿り着けるかどうか微妙になってきた。
 根室市街地に入った所でハンガーノックの兆候、バイクを止めて補給食を食べる。どこかのコンビニに寄ろうかと思ったが、暗くなる前に納沙布岬に着いてそこで何か食べようと思い先を急ぐ。
 市街地を抜けると道脇に住宅が点在する寂しい道になった。そこそこ住宅の数があるのだが人の気配が感じられない。途中で110年以上の歴史がありながら廃校となる小学校が2つもあった。何とも寂しさ漂う北の街並みである。

 霧の中から忽然と姿を現した風力発電の巨大な姿にハッとする。

 かろうじて薄暮の残る18時半に納沙布岬に到達。

 岬の灯台。

 岬の周辺には幾つも記念碑らしき物があって、記念撮影をしようとした石碑には「北方領土奪還」なんて威勢のいい文字が刻んであるので近寄ってよく見たら右翼団体が建てたものだった。
 岬の周辺の店は全部閉まっていて人の気配は感じられない。補給の目論見は外れてしまった。とりあえずSPのクイズの答えである電話ボックスを探したがなかなか見つからない。岬の周りを何度もうろうろするうちにどんどん暗くなってきて焦る。見つからないので諦めてとりあえず撮影した道標の写真を答えの代用にしようと岬を離れた所でふと道端の駐車場の脇に目をやったらまるで公衆トイレと見紛う電話ボックスを見つけた。

 電話ボックスの上にはあざらしがいた。ようやく答えが見つかって一安心。電話ボックスの横の駐車場には右翼団体の街宣車が何台も停まっている。車の中ではきっと酒盛り集会でもやっているに違いない。
 猛烈な空腹感に苛まれつつ次のPC3を目指す。距離は20km、何とかハンガーノックにならずに済みそうだ。
 完全に夜間走行に突入、小雨が降り続いてアイウェアを外しての走行となる。途中でナビの電池が切れ、止まって交換。民家も殆どなく明りのない道を淡々と走る。小一時間走ってようやく先の空に街の明かりが見えてきてほっとした。

 281km地点のPC3に到着、チェックタイムは19:34。パスタを食べてしっかり補給する。
 気温がかなり下がり寒い。レインウェアを着て出発する。中標津まで80km、後4時間で辿り着けるかかなり微妙になってきた。

 根室市内を抜け数時間前に通った道を戻って行く。これから納沙布岬を目指すライダー達とすれ違い、手を挙げて挨拶を交わす。
 明るいうちに通った道も夜になると道路灯もまばらでかなり暗い。

 ようやく厚床の駅前の分岐に到達、ここを右折すれば後45kmで中標津だ。
 243号線を左折すれば後はひたすら道なりに40km走れば中標津である。ここからの内陸の道は殆ど道路灯もなく真っ暗である。両側の森の中で時々ガサガサっと動物の動く音がして肝を冷やす。雨は相変わらず降り続いてアイウェアが使えず視界不良のためにスピードが上げられない。夜間&雨天走行ではアイウェアが使えるかどうかで巡航速度が大きく違ってくる。いずれ撥水加工した度付レンズを導入するのを強く決意する。高性能のアイウェアを手に入れる方が下手にバイクに投資するより遥かに効果が高い。

 アップダウンが結構あって脚は削られるが、右膝の痛みは大したことはなく余力は十分、スピードが上げられないのでLSDレンジで走ることとなり結果体力が温存できている。ただ尻の表皮の痛みが出てきて、適度にダンシングを入れないと持たない感じだ。

 別海の街並みを抜け中標津まで20kmちょっと、1時間で行けるはずだ。どうやら今日中の到着は確実になったので一安心、最後のアプローチを気を抜かずに安全第一で走る。

 ちょっとした坂道を登った所で中標津の街の明かりが見え、ようやくゴールが近付いてきた。PC4は中標津の町外れにあるので、街の中心に通ずる道を一旦左折する。

 361km地点のPC4に到着、チェックタイムは23:21。明日朝の食料と何故か急にスナック菓子が食べたくなって乳酸菌飲料と一緒に購入。再び中標津の街中に戻ってホテルを目指す。

 ホテルBiZ Innに23時半に無事到着、フロントで気立ての良さそうな若い従業員が遅くまで待っていてくれた。バイクを掃除すると告げると雑巾代わりのタオルをたくさん用意してくれ、更にホテル玄関前の水道も使えるようにしてくれた。手早く洗車し、バイクをホテルの中に運び込む。予約当初はバイクはホテルの中には持ち込めないと言われていたが、ブルべライダーが他に何人も泊まることになって急きょ食堂をバイク置き場に仕立ててくれた。

 部屋に入り服を着替えてほっと一息。明日は6時半過ぎにホテルを発てば421km地点のPC5のクローズ時間11:08には余裕で着ける計算なので、目覚ましを6:00にセットする。スナック菓子を食べつつネットチェックを行い、24時過ぎに就寝。