GOKISO

 遂に”最終兵器”が届いた。

 GOKISOのハブである。

 GOKISOとの最初の出会いは2010年秋のサイクルモードだった。余り見るべきものがなく退屈しながら会場を歩いていた時小さなブースの説明員に呼び止められて覗き込むと、ハブだった。非常に精密に作られていることが一目で判る物で、説明員はほんの僅かな荷重で回転する高精度な作りを力説していた。重量を聞くと前後で800g弱と言われ、その当時の私は徹底した軽量化マニアだったので問題外と思い、更に値段を聞いて十数万円という常識外の数字に唖然として、唯ナンセンスとしか思わなかった。自転車の門外漢が見当違いな物を持ち込んできても商売にはならんだろうと心の中で鼻で笑って、そのメーカーが何という名前なのか覚えることもなくその場を離れた。直ぐにそのハブのことはすっかり忘れてしまった。

 次にそのハブに出会ったのは去年の秋のブルべ、BRM1006西東京200でのことだった。シクロツーリスト誌(今はランドヌール誌といった方が通りがいいか)の編集長の田村さんのバイクに装着されていたのがGOKISOのホイールだった。
 山中湖で折り返し道志道をひたすら下る復路で10分近くも差があった編集長さんに下りの中盤であっという間に追い付かれ抜かれてしまった。その後の編集長さんの走りを後ろで眺めながら、下りは勿論登りでもすいすいと漕いで行く姿に唸ってしまった。(勿論編集長さんの脚力もあるのだが勝手に”それ以外の要素”を付加してしまった)
 ゴール後、編集長さんのバイクのハブを再チェック、GOKISOというのが例の高精度重量級超高額ハブであることを思い出した。

 それからもう頭からGOKISOのハブのことが離れなくなって、ネットでいろいろと調べてみたら意外に使っている人が多く、インプレッション記事もそこそこありその性能についてはほぼ一様に絶賛な論調だった。しかし流石にそれだけでは定価20万円以上もする代物に手を出す勇気はなく、これはもう自分で試すしかないとサイクルモードに勇み足で出掛けていった。

 サイクルモードでのブースは2年前と同じ小さいものだったが訪れている人の数は明らかに多い。一通り説明を受けた後、いよいよ試乗となった。例のハブが装着されたバイクをブースから試乗コースまで押して行く時のバイクの見た目の重量感と手で感じる重量感の大きなギャップにまず驚かされ、実際に試乗した時の乗り初めこそインパクトはなかったが走り始めてスピードがそこそこ出てから足を止めるとするするぬるぬるとバイクが進み続け、ちょっとした傾斜地点も踏まずに越えてしまう程に速度が維持される感覚は今まで経験のないものだった。
 もうこれは”決まり”である。

 早速GOKISOのサイトのオンラインショップで注文。折りしもシマノのDURA-ACEが全面モデルチェンジしてスプロケットが10速から11速になり、リアハブのフリー部分の寸法が変更になったためそれに合わせたハブは年明け1月下旬の完成とのアナウンスがあった。

 長距離サイクリングでは”如何に体力を温存し楽に走るか”。これが今の私にとってもっとも重要な問いなのだが、今まではこれを達成するために”如何にバイクを軽くするか”に腐心してきた。しかしこのハブは昨今の軽量ハブの倍近い重量だが、走りは圧倒的に軽い。ホイールの走行(回転)抵抗をハブの段階で徹底的に減らすことで、軽い走りを実現するという今までの発想にはなかったアプローチである。
 これが本当にあり得るのかどうか、もう自分で試してみないことにはこれから先の私のバイシクルライフはあり得ない。

 ハブのみで22万円。一般の人が聞いたら莫迦かと思うに違いない。いや、普通の自転車乗りが聞いてもあり得ない金額だろう。正直私自身もそう思う。でもまあ酒も殆ど飲まずタバコはとうの昔に止めたし服は上から下までユニクロで1年に1回買うくらいだし散髪はセルフカットだしCDや雑誌は中古をちまちま買ってるし、総じて日頃から慎ましい生活を送っているのだから一点豪華主義ということで許されたし。

 近日中にこのハブを使ったホイールを組み始める予定なので、物の詳細はいずれ改めて書くことにする。

 GOKISOのサイトはこちら。
http://www.gokiso.jp/index2.html