LEL2017/Report 1:出発前日まで

 LELを走り終えてイギリスから帰国して、早くも3週間が経過しようとしている。その間SR600KNやBRM819千葉200を走ってブログネタが溜まりに溜まっているがとにかくLELのレポートを書き始めないと記憶が薄れ且つ改竄され始めている。このタイミングでブログの引っ越し(はてなダイアリー->はてなブログ)を行って、移行作業に余計なパワーを使ってしまったが、漸く書き始める。

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  London-Edinburgh-London(以下LEL)の存在を明確に知ったのは、2015年のParis-Brest-Paris(以下PBP)が終わってからだったと思う。
 PBPを2度完走し、他の海外ブルベを走ってみたいと漠然と思いつつ何となく調べてみたら、RM1200超のブルベは世界各地で数多く開催されていることが分かった。私的にはヨーロッパが自転車の本場というイメージが強くサイクルロードレースのTV観戦で馴染みが深いヨーロッパ各所の風景を見ながら走りたいという思いが強かった。フランス以外で、特にイタリアやスペインはジロ・デ・イタリアやブエルタ・ア・エスパーニャで相当刷り込まれているのでいつかは是非走ってみたいと思っていた。2016年の夏辺りにちょっと真面目に考えてみるかと取り敢えず稲垣さんに教えを乞うてみると、フランスのPBP(1200km)、イギリスのLEL(1400km)、イタリアの1001Miglia(1600km)をヨーロッパ3大ブルベと呼んでいるらしく、これにスペインのMGM(1200km)を加えて4大ブルベと呼ぶこともあるらしい。この4つをいつかは制覇したいという野望がじわじわと湧いてきた。次の開催年を調べてみると、LEL:2017年、MGM:2018年(?)、PBP:2019年、1001Miglia:2020年ということらしい。各イベントは4年毎の開催の様だが、加齢による体力減退を考慮すれば余り迷っている時間はない。来年はLELだが、稲垣さんが「距離は1400kmと長いけどコースの難易度は低くPBPより楽」と仰っていたこともあって、ここはひとつ具体的に進めてみようかという気になってきた。

London Edinburgh London 2017 - ホーム

 LELのサイトには日本語のページが新たに設定されているのはなかなか有難い。取り敢えずメーリングリストに登録してみた。

 年が明けて2017年、1月のエントリー解禁が近づいてきた。オフィシャルメールのエントリー要綱によるとエントリー期間を日本時間で1/21 03:00,1/21 08:59,1/22 16:00の3回に分けて行うらしい。この日を空けておくためにその前週に自団体の200kmブルベの試走を行ったのだが、雨・霙・雪の極寒耐久ブルベになってしまい酷い目にあってしまった。とにかくエントリーできなければ始まらないので当日深夜は万全の態勢でPCの前に待機する。エントリー時刻になって早速オフィシャルサイトのエントリーページを開こうとするが全然繋がらない。ツイッター上でもエントリーしようとしている仲間達がやはり繋がらないとつぶやいている。エントリー権をカートに入れて決済するというネット通販の様な手続きだが、時間がかかってやっとそのページが開けてもエントリー権をカートに入れることすらできない。そうこうするうちにエントリー権の在庫が0になってしまい、ものの数分で締め切られてしまった。1回目はあっけなく玉砕。数時間の間を置いて2回目に臨んだがやはり何もできずに数分で玉砕。いよいよ最後の3回目も全く同じ展開で完敗。結局エントリーできなかった。まさかエントリー競争で敗れるとは予想だにしていなかったので落胆は大きい。LELのオフィシャルも「こんなことは初めてだ」とつぶやいていた。この日は随分と良い天気で絶好の試走日和だったので更に落胆度が増した。取り敢えずオフィシャルサイトにはエントリーできなくてもウェイティングリストに登録すればキャンセル待ちができるみたいなことが書いてあったのでそこに一縷の望みをかけることにした。数日経ってオフィシャルからウェイティングリストに載った旨のメールが来たけど詳細が明記されていないのでどうも落ち着かない。
 2月に入ってウェイティングリストに正式登録するためにはエントリーフィーの先払いが必要とのことでTransferWiseという海外送金業者を使って送金を行った。エントリーフィーは£319、日本円で45000円位。結構高いが、走行中のPCでの食事や仮眠施設の利用等が全て無料であることを考え合わせればこんなものかも知れない。日本国内で銀行口座に簡単に振り込めるのとは訳が違って、現地通貨で現地口座に振り込むためには刻々変化する為替レートを気にしながら不足なく送金しなければならないので結構手間取ったものの何とか送金手続きは完了した。その後またメールが来て「現状定員に10%増しの受付をしていて空きが出そうにないから今はwaiting listには載せられない」みたいなことが書いてあって「だったら何でwaiting listエントリー権を販売するんだよ!」と運営の拙さに腹立ってきた。メールの続きには「新しい計画を立てて2か月以内に新しいwait listを作る」みたいなことが書いてあるのでとにかくこちらとしては待つことしかできない。数日経ってLELオフィシャルから入金確認ができない旨のメールが来て不安感が更に増す。TransferWiseのreceipt mailには2/6には送金手続き完了していると書いてあるし、とにかく先方には調べてもらうしかない。何度も「Please Confirm again」とメールを出し続け、2/16にようやく受領確認のメールが来て安堵した。しかもこのメールには「次のステップはスタート時間選択、ドロップバッグの場所選択、イベントジャージ注文」とか書いてある。おまけに「See you in London!」とか書いてある。これってウェイティングリストをすっ飛ばしていきなり参加資格を得たと理解してよいのだろうか?半信半疑でオフィシャルサイトのライダーズエリアにログインを試みたらログインできて、スタート時間やドロップバッグの場所を選択できる様になっていた。ここまでのすったもんだでかなり気分的にも萎えていて半ばエントリーを諦めていたのに、急転直下のこの展開に正直全くついていけてない。コースもろくに把握できていないので走行プランが全く固まっておらず、スタート時間やドロップバッグの場所は当然選択できるわけもない。慌ててコースを調べて走行プランの検討に入った。

<往路>

<復路>

 このブルベはLELの文字通りロンドンをスタートしてエジンバラまで行って折り返しロンドンまで戻って来る1400km。制限時間は116時間ちょっとなので、「日中走って夜は寝る」という私の走行プランの基本姿勢を当て嵌めれば単純に4泊5日で走るという基本プランになる。LELの特徴はドロップバッグが2か所に送ることができることだが、往路と復路は多少違っているが往復共通のPCが幾つもあるので往路と復路の仮眠PCを共通にすれば、走行中は最低限の荷物で走ることができる。これらを考慮しながら仮眠ポイント即ちドロップバッグの送るPCを選ぶと、「Louth」と「Brampton」の2か所にするのがベストという結論に至った。大雑把に250km->300km->300km->300km->250kmで4泊5日の走行プランは毎日平均的に走るということでは妥当な線だろう。早速ライダーズエリアで選択入力を行った。次にスタート時間、スタート時間は7時からは制限時間100時間のエントリーのみで制限時間116時間のスタートは9時から15分刻みで午後まで続く。夜間走行をできるだけ短くしたいということではできるだけ早い方が良いのだが、各スタート時間には人数制限があってその人数を上回る希望者がいた場合抽選になるとのこと。ライダーズエリアではリアルタイムで各スタート時間の登録状況を見ることができるのだが、やはり早い時間程希望者が多い。できれば9時台のスタートにしたいところだが競争率が高く外れた場合午後に回されるので、そうなると走行プランに大きな狂いが生じてしまう。スタート時間と競争率の兼ね合いを眺めつつ、10:15を選択する。これでも人数制限を多少上回る登録がされているので後は自分のクジ運に期待するのみだ。

 2月の後半に入ってフライトとイベント前後泊のホテル探し開始。フライトについては経済的な理由により直行便は見送り、フライト時間とコストのバランスを見ながらカタール航空の乗継便を選択。ドーハでの乗継を含む片道19時間のフライトで、往路は羽田発が7/28の午前0時でヒースロー着が同日15時過ぎ、復路はヒースロー発が8/5の15時で成田着が8/6の18時過ぎというスケジュールとなる。チケット代金は11万円ちょっと。
 ホテルはかなり悩ましい。イギリスには一度も行ったことがないし予備知識は全くない。過去LELに参加した人のブログを読むが情報に乏しい。まず空港からの移動手段を色々と検討するが、どうも鉄道を乗り継ぐというのがベターだということになりそうだ。プラ段のバイクケースを引き摺って移動することを考えれば駅から近い所が望ましい。勿論スタート地点に近い方が良いのでそれらを考慮しつつ海外ホテルのブッキングサイトで探すが選択肢は少ない。その中で条件に合いそうなホテルに「バイクの部屋入れは可能か?」、「LEL参加中に一旦チェックアウトするがバイクケースを預かってもらえるか?」の2点について問い合わせをしてみた。1つはケース預かりを断られたがもう一つのホテルは2点ともOKとのことだったので取り敢えずそこを前泊2泊後泊2泊の計4泊を予約した。スタート地点から直線距離で5,6kmのところにあるChingfordという街にあるMacy's Hotelというところ。Chingfordという鉄道の駅の目の前でしかもこの駅は終点ということもあって移動は便利だと思われる。値段は1泊1万円超と安くはないが諸条件を考慮すれば良い選択ではなかったかと思われる。フライトとホテルの予約が完了したらちょっと落ち着いた。
 3/30に届いたオフィシャルメールでスタート時間が確定した。抽選の末、希望通りの10:15となった。そしてライダーズナンバーもP48と決まった。これで約3か月に渡るエントリーのドタバタ劇がようやく終結した。

 会社の休暇はかなり早めに職場内の根回しを行ったので、すんなり確保完了した。

 7月に入って準備を本格化させた。まず詳細な走行プランを練る。PBP2015の時の実績を基に算出したので余りマージンは考慮していないが、稲垣さんの「PBPより楽」という言葉を取り敢えず信じたプランニングは下記の通り。

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 休憩を除く走行時の巡航速度の平均は22km/h。ちょっと速過ぎる感じもするが、PBPではこれ位の実績。仮眠PCでの滞在時間は7時間45分に設定、6時間程の睡眠時間確保を目論む。このプランで行けば105時間で完走できることになり、規定時間の116時間40分に対して11時間40分のマージンがあるため、途中で数時間の遅れが出ても何とかなる見込みだ。

 次に装備。今回はドロップバッグ2か所で全ての仮眠PCで利用することができるので、走行中携帯する荷物を通常の200km、300km並みに思い切って削ることにした。具体的な内容は下記の通り。

フロントバッグ(モンベル製)
1.ウェア類
 ①モンベルレインウェア上下
 ②アームウォーマー&ニーウォマー
 ③モンベル携帯用ウィンドブレーカー
2.工具・ケミカル・保守パーツ
 ①シフトワイヤー1本
 ②チェーン3コマ+ミッシングリンク2個
 ③チューブ2本
 ④チェーンオイル
3.電装系
 ①単3電池6本
 ②USB4口充電器+ケーブル4本(USBx3、Lightningx1)
 ③ルータ&アクションカム用予備バッテリー各1個
4.医薬品
 ①風邪薬少々
サドルバッグ
 ①チューブ2本
 ②タイヤレバー2本
 ③応急タイヤパッチ
 ④タイヤブート3枚

ドロップバッグ(Louth用)
 ①半袖ジャージ1枚
 ②レーパン1枚
 ③Tシャツ1枚
 ④パンツ1枚
 ⑤短パン1枚
 ⑥タオル2枚
 ⑦チューブ2本
 ⑧タイヤ1本
 ⑨単3電池6本

ドロップバッグ(Brampton用)
 ①半袖ジャージ1枚
 ②レーパン1枚
 ③Tシャツ1枚
 ④パンツ1枚
 ⑤短パン1枚
 ⑥タオル2枚
 ⑦チューブ2本
 ⑧タイヤ1本
 ⑨単3電池6本
 ⑩レッグウォーマー
 ⑪フルフィンガーグローブ

 Londonの気温は15℃~25℃位だがEdinburghは10℃~20℃位らしいので、Edinburghに近いBrampton用のドロップバッグにはレッグウォーマーとフルフィンガーグローブを念のため入れておく。まあ最低気温が10℃あれば基本半袖ジャージ+レーパンでウォーマー類を組み合わせれば私的には何とかなると思う。

 イギリス滞在中の通信手段は現地データsimを使ってWiFiルーター+ipod touchを動かそうと思っているのだが、シムについてはイギリスEEの2GB容量のデータ専用simを渡航前にamazonで入手した。価格は2,280円。

 7月に入ってぼちぼちパッキングを開始しようと思っていたのに結局始めたのが渡航1週間前。尻に火が点かないと動かないのを何とかしなければ。渡航当日は家を出るのが19時頃なのでどうせ一日休暇だし日中に仕上げればよいかと、結局パッキングは渡航前日になっても終わらなかった。何か忘れ物をしそうで怖い。