2012BRM707埼玉600

 今朝も5時前に起床。昨日のハードなブルベの後だというのにちゃんと普段通りの時間に目覚めるのは、早起きが定着したということか。腰及び両脚の筋肉痛は予想通りだが、右膝の痛みは全くない。しかし、身体全体がどよーんとだるい。昨日は帰宅してから相当量の水を飲んだにもかかわらずトイレに殆んど行ってないのは脱水症状だったということか。天気がいいし自転車に乗ろうと思えば乗れるのだが、超回復を期待して今日は車で通勤した。というわけで週末のBRM707埼玉600のレポートである。

 数日前から天気予報は見る見る悪化し結局前日の宇都宮やら郡山やらの予報は終日の雨。BRM619埼玉400に続いてまたしても雨ブルベを覚悟しなければならない。

 今回のコースは巾着田をスタートし宇都宮を抜け磐梯山を登り猪苗代湖を回って郡山から戻ってくるというルート。埼玉ブルベにありがちなきつい山岳はないが雨のせいで難易度は上がった。

往路

復路


 また、今回は装備的に大きな変更を加えた。普段は荷物は最小限にするのだが、そこそこ容量のあるサドルバッグを導入した。来る北海道パラダイスウィークではドロップバッグがないのでそれなりの荷物を持って走らなければならず、そのテストも兼ねて今回使ってみることにした。いろいろ詰め込んで重さを量ってみたら2.5kg、専用のバッグサポーター込みで3kg超がサドル後部に加算されるのだがこれが走りにどれくらい影響するか確認する。

 当日朝はまだ降ってはいなかったがいつ降り出してもおかしくない空模様、気合を入れて巾着田に向かう。前回BRM616では何も食べずに出走して途中でハンガーノックをやらかしたので今回は抜かりなく車の中でパンを2個食べた。5時過ぎに現地着、人は少ないがそれなりに活気はある。受付で既に30人程がDNSしたと聞き、600kmで今日の天気ならばそんなもんかと納得する。
 ブリーフィング・車検を終えて定刻6:00前にスタート。が走り始めて直ぐにハートレートセンサーが反応していないことに気付きストップ。単純に装着前に肌に当たる電極部分を湿らせておかなかったことによる不具合だが、家でこの一手間を惜しんだのがやっぱり裏目に出た。センサーのある背中にボトルの水を引っ掛け心拍が正常に表示されることを確認し再スタート、定刻前のスタートだったのに結局6時過ぎのスタートになってしまった。
 雨は降っておらず気温もそんなに高くないので走り易い。今日は350km地点の郡山でホテルを予約してあるのでそこまでのペースを考えながら走る。できれば22時くらいには着きたいのだが雨次第で大きく遅れることも考えられる。

 スタートしてから2時間位経って雨が降り始めた。雨脚は強くないのでレインジャケットは着ずに走り続ける。60kmを過ぎた辺りから右膝に違和感を覚え始め、それから見る見るうちにはっきりとした痛みに変わってしまった。これは想定外のアクシデントだ。雨が降らないうちにできるだけ距離を稼いでおこうとちょっとオーバーペース気味に走ったのが裏目に出た格好だ。それにしても100kmも行かないうちにこれは拙いことになった。はっきりとした痛みなので悪化させると後々面倒なことになるのは過去に経験済み、真面目にDNFを考えたがすぱっと思い切れずにとりあえず様子を見ながらPC1までは行こうと走り続けることにした。

 76km地点のPC1に到着、チェックタイムは9:08。補給を摂っているうちに雨が強くなってきた。ここでグラフィック社の取材を受ける。何でも例のシクロツーリストVol.6(ブルベ特集)がバカ売れしたので今度はブルベのみに絞った特別本を出版するらしい。BRM212で同じ様に取材を受けたのだが雑誌には名前が間違って掲載されていたので一言添えておいた。またしても「ブルベの魅力は?」と聞かれたがやっぱり今回もつまらん答えをしてしまった。ぶっちゃけブルベに魅力なんて感じてないんだろうな。

 本降りの雨の中再スタート。右膝は痛いがクランクを上手く回せばかなり軽減されるのでケイデンス重視で走る。館林の市街地を抜け漸く信号もまばらになり落ち着いて走れるようになった。雨なので景色を楽しむこともなくただただ淡々と走る。
 115km付近で見覚えのある交差点に出た。ここはジャパンカップのコースの田野の交差点だ。ここまで自走で来たとはちょっと感動した。
130kmあたりの道を左折した途端、いきなりの向かい風になって一気に巡航速度が落ちた。基本的にこれから延々と北東へ向かって進むのでこのままの向かい風基調が続くのかと思うとかなりげんなりする。

 149km地点のPC2に到着、チェックタイムは12:37。補給を摂っていたら青黄ツートンのカレラに乗ったK御大が到着。7時スタートの御大に早くもキャッチされてしまう。毎度の事ながら速い速い。そのうちオダックス埼玉のスタッフがやってきたのでしばし歓談。

 スタッフに別れを告げて再スタート、雨は相変わらずだが寒くないのでレインジャケットはまだ着ない。BRM616で忘れてしまった後輪の泥除けを今日はしっかり付けてきたので、尻が濡れてドロドロなることもなく快適だ。やはり泥除けがあるのとないのとでは雲泥の差がある。
 ぼちぼち登り基調がはっきりしてきた。勾配も距離もいつもの山岳ブルベに比べれば大したことはないが、右膝に負担を掛けないようにそろりそろりと登っていく。雨脚はかなり強いがそれ自体はそれ程苦にならない。それより向かい風の方が余程堪える。忍の一字でひたすたペダルを漕ぐ。
 もう少しでPC3というところで何となく寒くなってきた。と言うより寒く感じるようになったというのが正解だ。身体に力が入りにくくなってきたのも分かったので、これはBRM616でやらかしたハンガーノックの兆候と全く同じである。やはり雨天走行は夏でも体温維持でエネルギー消費が激しい。幸いそれほど重症ではなくPC3も目前なので悲壮感はない。

 223km地点のPC3に到着、チェックタイムは16:22。1000kcalのカツカレーをかっ込んで一息ついた。雨は幾分か小降りになったがこれからの区間は夜間走行に突入するのでレインジャケットを着る。今回は7月だし事前予報でもルート上は最低気温は20度を下回るところなかったのでレインパンツは持ってこなかったのだがこれが裏目に出なければよいのだが。

 再スタートして右膝の痛みがかなり軽減されたのはありがたい。が、体感的なペダリングの負荷はさっきまでと変わらないのに巡航速度ががくっと落ちてしまった。さっきまでは25km/hは出ていたのに20km/hそこそこしか出ない。雨は小降りだし向かい風は緩いし、何故だかさっぱりわからない。もしかしたらハンガーノックを引き摺っているのだろうか、カツカレーがエネルギーに変わるのを待つしかない。暫く走っていたら巡航速度が元に戻った。もしかしたらさっきの区間は緩やかに登っていたのかも知れない。
 230kmあたりから勾配がきつなってきた。いよいよ今回の最大の峠越えである勢至堂峠アタック開始である。今までの登りは大したことはなかったがこれはヒルクライムと呼ぶに相応しい勾配だ。右膝に負担を掛けないようにダンシングを入れながらえっちらおっちら登る。チェーンの摩擦ノイズが酷いのが気になっていたが足付きは嫌なので構わず登り続ける。何とか登り切って無事に勢至堂トンネルに到達、早速チェーンにオイルを塗布する。かなり暗くなってきたのでライトを点灯しトンネルに突入した。
 トンネルを抜けると雨は上がっていて路面も乾いていた。久し振りにダウンヒルを快適に走ることができた。しかし15分も走った所で再び雨が降り出した。雨脚はどんどんと強くなりもう完全に土砂降り状態、レインジャケットが全く役に立たない。会津若松に入って幹線道路の長い下り区間がかなり大変なことになった。土砂降りの上暗くて視界が悪く、路面は川の様で凹凸が全く分からない。とどめはアホみたいな猛スピードで抜いて行く車が巻き上げる水しぶきをもろに被ってバイクが揺さ振られる。もう生きた心地が全然しない、危険極まりないダウンヒルを余儀なくされた。
 市街地の明かりが見えてきて漸く下りは終了、全身の緊張が解けた。市街地を走るがとにかく路面が悪い、大震災の爪痕を体感することとなった。
 相変わらず猛スピードの追い越し車は後を絶たず抜かれる度に泥水を浴びせられる。1台の軽自動車には幅寄せもされた。他の地域では余り経験のない運転の荒さに正直なところ福島のドライバーは嫌いになった。

 287km地点のPC4に到着、チェックタイムは19:41。ここにはオダックス埼玉のスタッフがいて有人チェック、スタッフと談笑していると悪条件の走行でげんなりした気持ちが再び活性化する。私は4番目の到着らしいが、そもそも走っている人数が少ない。聞けば6時スタートの出走人数は14名、7時スタートを入れても40名程の出走らしい。まあ事前にこの状態を察知していたら私もきっとDNSだっただろう。
 それにしてもスタッフの献身的なサポートには頭が下がる。こっちは後3時間も走ればホテルで寝ることができるが、スタッフはぽつりぽつりとやってくる出走者のために長時間ずっと待っていなければならない。ただただ感謝するのみだ。

 再スタートして、ちょっと走ると登り基調で田んぼの中を走る。道には小さな蛙がいっぱいいて、こんなところで無闇な殺生は気分が悪いので轢かない様に気をつけて走る。そのうち山の中へ入ると街灯が全くなくなり真っ暗中を走る。ヘッドライトが1灯不調で心許無い。小さな峠越えを終えると、磐梯山へ登り始める。勾配は大したことはないのだが、行けども行けども登っていて終わりが見えない。この頃になって左膝の裏が痛み始めた。右膝を庇って負担がかかったのだろう。でも大きな支障なく走り続けることはできる。無茶な追い越し車は相変わらずでいい加減頭に来て、坂道に向かって悪態を突きながら登り続けた。漸く登り終え、ルート的には猪苗代湖の湖畔の辺りを走っていたはずだが暗くて何も見えなかった。

 長い下りを終えて348km地点のPC5に到着、チェックタイムは10:51。ここにPC2で抜かれたはずのK御大がいたのには驚いた。聞けば寒さで手の自由が利かなくなりここで1時間も回復を待っていたとのこと、K御大が珍しく弱気な発言をする程このブルベは過酷なものになった。明日の朝用の補給食を買ってレジでくじを引いたらカップラーメンが当たった。

 PC5を出て直ぐにコースを外れ仮眠場所のルートイン郡山インターを目指す。3km弱で現地着、予定時刻より1時間遅いが日付を跨がずに着けたのは良かった。自転車は部屋に入れさせてもらえるということで汚れ落としのタオルを貸してくれたのは非常にありがたかった。また、予約時には朝食は付いていなかったがサービスで付けてくれるという。一瞬補給食を買ってきたことを後悔したが、どうせ明日は朝食時間前に発つので丁重に御断りして部屋に入った。
 部屋番号はまるで意図したかの様に707号室、妙に嬉しくなる。部屋に入り濡れたジャージを脱ぎ捨て漸く苦行から開放された。そそくさとシャワーを浴び、コンビニでもらったカップラーメンを食べながら、タブレットPCでインターネットに繋ぐ。これも北海道パラダイスウィークのために導入し、テストのために持ってきたのだが難なく接続できた。0時過ぎにベッドに入り直ぐに眠りに落ちた。

 翌朝は4:45に目が覚めた。目覚ましは5:30にセットしていたが、眠くないので流れで出発準備をする。生乾きのウェアを身に着け荷物の整理。寝る前に食べたカップラーメンが少々胃にもたれているので朝食用のパンは食べずにサドルバッグに入れる。右膝の痛みは殆どなく疲労感もほとんど感じない。4時間半ベッドでしっかり眠れたのでかなり回復した。5:30にホテルをチェックアウト、ホテル前の駐車場でチェーンにオイルを塗る。たった一晩でデュラのチェーンが所々赤く錆びていた。
 今朝の天気はどんよりと曇りわずかに小雨がぱらついている。まあ昨日の土砂降りに比べれは降ってないようなものだ。気温は低くないのでレインジャケットは着ずに走る。

 ホテルからPC6までは区間距離114kmの長丁場、体調はばっちりで膝の痛みもないので基本はノンストップで行くことにする。田園の中を緩やかなアップダウンを繰り返しながら進む道は早朝で車通りもなく気分良く走れる。これで天気が良ければかなり楽しい道なんだけどな。途中で御腹が空いてきたのでパンを食べながら走る。食欲もしっかりあるので体調は問題ない。頭上の雲は厚いが遠い南の空は雲が切れて明るい。進む先が晴れているのを期待する。60kmあたりまでは緩い向かい風で今一つペースが上がらなかったが、その先から気持ち下り基調になって急に巡航速度30km/h超を出せるようになった。チャンスとばかり踏みを入れて走るが、また徐々に右膝が痛くなってきたので自重してペースを上げ過ぎなようにする。
 この頃になると尻の痛みが出てきた。昨日の雨で尻の皮がふやけたまま走り続けたので表層部分が擦過傷の様になってひりひり痛い。痛み回避のためのダンシングの回数が増えた。今回はサドルバッグの中にアソスのシャーミークリームを入れてあったのだがホテルで付けてこなかったことを今になって後悔する。

 PC3の所で往路に合流、ここから来た道を引き返す。走っている途中でGURIさんに遭遇、言葉を交わす。7時スタートとのこと、さすがに速い。
 この頃になると雨は完全に上がり、雲が切れて青空が見え始めた。気温も上がって夏らしい雰囲気が出てきた。

 程なくして462km地点のPC6に到着、チェックタイムは10:20。トイレでレーパンのパッドにシャーミークリームを塗って、ナビの電池を入れ替えて出発する。残りは140km、気持ちに余裕が出てきた。

 完全に晴れてきて夏の日差しが降り注ぐ。昨日までというよりさっきまでの曇天がまるで嘘の様だ。気温がぐんぐん上がってボトルの水がどんどん減り始めた。昨日までは寒さの心配だったが、今度は暑さとの闘いだ。とりあえず休息はしっかり取れているのでペースを上げ過ぎずに走る。PC7までは区間93kmと長めだがノンストップで向かう。尻の痛みは若干和らいだ。

 気温が上がったので風は南風になり、当然ながら向かい風でペースが上がらず我慢の走りが続く。雨や暑さも条件的には厳しいが、やはり自転車にとって一番キツイのは向かい風だ。とりあえず下り基調なので巡航25km/h超は確保できている。ここまで来たら無理せずにペースを守って走る。
 館林の市街地に入ったところで急に信号待ちで止まる回数が増え、かなり走り辛くなった。今までののんびりとした田園の道の有難味がよくわかる。

 556km地点のPC7に到着、チェックタイムは14:35。ここまでで2本のボトルが空になったので満タン補給をする。ゴールまで後47km、2時間で600kmのハードな旅も終わりだ。

 とにかく日差しが暑い。しっかり日焼けはするし、腕や顔にガンガン塩を吹いている。今年はまだちゃんとした夏錬が出来ていないのでまだうまく汗をかけず、ちょっとだるい。ちゃんとホテルで休息を入れてなければ間違いなくバテているはずだ。
 復路後半はBRM616とほぼ同じ、昼と夜の違いはあるが何となくコースを憶えているので気分的に楽だ。見慣れた大芦橋で荒川を渡るともう帰り着いたも同然、完走の手応えをしっかり確認する。この頃になるともう完全に右膝の痛みは消えていた。前半のあの痛みが消えるとはちょっとびっくりだ。痛いのは尻の皮だけ、早く家に帰ってレーパンを脱ぎたい!

 東松山の市街地で信号に引っかかりまくりイライラする。ストップアンドゴーは体力を無駄に使うから辟易する。何とか17時前にはゴールしたいとペースを上げる。600km近く走ってきて終盤で30km/h超で巡航できるなんて、我ながら強くなったもんだと感心する。見慣れた日高陸橋を右折しラストスパート、何とか目論見通り17時前に巾着田の駐車場に滑り込んだ。
 16:50ゴール。認定完走タイムは34時間50分だった。無事にブルべカードの確認を終え、ようやく安堵した。コーラを頂いてスタッフの皆さんに挨拶をして帰途に就いた。

 昨日は低温耐久&水弾き試験、今日は高温耐久試験とまるでヒートショックテストの様なキツイ600kmだったが終わってみればまだまだ走れそうな余力はある。これもホテルでしっかり仮眠を取ったことが奏功したのは間違いない。来る北海道パラダイスウィークでも全日程で夜はホテルを確保することにする。

 これでニューバイクTitaniaで400km&600kmを走り終えたが、一言で言えば“バッチリ”である。400km&600kmでもちょうど良いポジションをキープできたし疲労感も少なく、それでいて踏めばしっかり進んでくれる、しっかりフィットしたバイクだ。これで北海道を走るのがますます楽しみになってきた。
 またサドルバッグも予想した程の影響はなく、支障なく走ることができた。これもひとまずは成功だ。

 2012年もSRを獲得、8月の北海道パラダイスウィークに向けて、自信につながる600kmブルべとなった。