2時間ほど眠ったがまた目が覚めてしばらくして眠る。明け方に雷の音で目が覚めた。何か日本の雷の音と微妙に違う感じ。それからウツラウツラしつつ朝6時を迎えた。ベッドの上には8時間くらい横になっていたのに眠れたのは半分くらい、相変わらずの睡眠不足にかなり不安を覚えるが寝られないよりはましと前向きに考える。
7時、ドロップバック回収の時間。各ホテルを回ってドロップバックを集めて回っているツアコンがホテル前に来ていたので、自分のバッグに番号シールを貼って渡す。その際フロアポンプが一緒に回ってくるので自室からバイクを持ち出してしっかりと空気を入れる。外はどんより曇って雨がぱらついている。スタート当日の朝がこれではかなり不安を覚える。
バイクと共に部屋に戻り、朝食に昨日の残りのサンドイッチを食べ再びベッドに横になる。スタートまで後8時間。プログラムは予定通り確実に進行していく。もう少しゆっくり進んで欲しいのだがそうもいかない。目覚ましを10:00にセットし眠ろうとするが、結局眠ることなく10:00になった。
そそくさと身支度をする。今回は3つのジャージを持ち込んで400km毎の3つの区間を着替えて走ることにした。最初はオダックスジャパンのジャージ、往路のLoudeacから復路のLoudeacまでがこ〜ぢ倶楽部のジャージ、そこからゴールまでが会社チームのジャージという順番にした。オダックスジャパンジャージに袖を通し、いよいよ出陣だ。
10:30に一旦ホテルをチェックアウト、手荷物をそのままホテルに預かってもらいバイクでスタート地点に向かう。3回目ともなればさすがに迷わずにスタート地点に辿り着くことができた。
相変わらず曇り空の中、スタート地点のSaint-Quentin-en-Yvelinesのロータリーには既に多くのサイクリストや観客が集まり始めていて活気づいている。誘導のバリケードが張られスタート&ゴールのアーチも立てられている。場内の実況アナウンスも流れて嫌が応にも雰囲気が盛り上がる。まずは近くのレストランで予め申し込んでいたウェルカムディナーを食べに行く。
昨日の受付でもらったチケットを入り口の係員に渡し中に入ると、ビッフェスタイルレストランがあり、前菜やメインディッシュ、ドリンクやデザートをそれぞれ1品づつ取って食べるという形式だ。メインディッシュはどれを取ってよいかよくわからなかったので咄嗟にフィッシュフライが美味しそうに見えてオーダーした。付け合せのマカロニが山の様に盛られて食べ切れるかどうか心配。デザートは当然「パリブレスト」を取った。味はまあまあ、個人的にはちょっと薄味な感じだったがまあ美味しく頂けた。パリブレストはかなり美味しかった。そそくさと食事を済ませて再びメイン会場に戻る。
最初にスタートする80Hのグループがスタート地点に入れるのが14:30、まだ2時間近くあるので結構時間を持て余す。周りを見ると道の周りの木陰や芝生の上で寝転がっている人も散見されたので、とりあえず同じように芝生に横になろうと場所を探して歩いた。するとドイツのチームらしいジャージを着た人に話しかけられ、「その日本のジャージが欲しいんだが、レース後に交換してくれるお前の友達はいないか?」と聞かれた。なんで私じゃないのかピンと来なかったが(今から考えたら私の小さなサイズが合わなかったのか)「私は一人で参加しているので友達はいない」と答えたら納得して去って行った。なるほど、話に聞いていたジャージ交換というのは結構な確率で起こるみたいだ。
ロータリーの直ぐ脇の傾斜のついた芝生でしばし横になる。眠ることはできないがそれでも休養にはなる。天気は相変わらず不安定、時折雨がぱらつくがそれ程強くなるわけでもないのでその場に居続ける。
そうこうするうちに14:30になり、スタート地点へ向かうゲートがオープンした。バイクに跨りゲートを潜って競技場の入り口に入る。そこで一旦停止、前後には80Hクラスに出走する世界中から集まったつわもの達がひしめき合っている。様々な国の言葉が飛び交い、水を飲む者、バナナを頬張る者、近くの茂みに駆け込んで用を足す者など、粗野な活気に溢れている。ちょっと気後れしそうだがこっちだって東洋からはるばるバイク担いで乗り込んできたちょっとは脚に覚えのあるサイクリスト、この雰囲気を楽しまなければ!
ようやく車列が徐々に前に動き出し、競技場の中に入る。競技場のトラックを囲むように数100名のライダー達が見えた。列はなかなか進まず、その場に足止めされたままだ。この頃になって暑い日差しが戻ってきて日陰のない競技場を照り付ける。暑くてボトルの水を飲んでしまいスタート前なのにボトルが空になりそうだ。少しずつ動いてはいるが競技場の出口はまだはるか先だ。暫くして日本人ライダーKさんと遭遇。話しながら少しずつ進む。
待ちぼうけの間、傍にいた北欧(国は失念)のライダーがKさんのハンドル周りの写真を撮ってもよいかと話しかけてきた、ついでに私のバイクの写真も撮っていた(後日その写真がPBPオフィシャル経由で見つかった!)。
時計は16:00を回った。スタートのゲートのあたりで歓声が上がり、どうやら第1ウェーブがスタートしたことが伝わってきた。もう少しで出走サインのゲートを通過というところで第1ウェーブの足切りとなった。ここでまたしばらく足止め。ボトルが2本とも空になりそうだったので、オフィシャルスタッフに注意を受けながらも背に腹は代えられず体育館の水道まで水を汲みに走って戻る。
再び車列が動き出し、ブルベカードに出走サインを受けスタートのゲートに並ぶ。いよいよスタートだ。と思ったがまたここで暫くの待ち。背の高い女性リポーターとカメラを持ったクルーが私のすぐ横でカメラを構えている。女性リポーターが「ジャポネか?」とか「フランスは初めてか?」とか「PBPはどうか?」とか矢継ぎ早に質問を投げかけてくる。怪しい英語で受け答えしたが果たして伝わったかどうか。最後に「Good Luckを日本語で何というのか?」と聞かれて直ぐに答えが思い浮かばず咄嗟に「幸運を!」と答えてしまった。レポーターは「kouunwo…」と口遊んでいたがいい加減な日本語を教えてしまった、反省。
そうこうするうちに実況レポーターの声が一際甲高くなりカウントダウンが始まった。いよいよだ…、「トゥロア、ドゥア、アン、ゼロ」スタート!
16:40、PBPが始まった!