2022RM812北海道1300/レポート1:スタート前日まで

 今年2度目の北海道遠征から戻って来てそろそろ1週間が経とうとしている。身体各所のダメージもほぼ消えて普段通りの日常に戻っているのだが、1200km超の超長距離ブルベを完走したという実感が余りないというのが正直なところだ。走っている最中は色々と大変な場面もあってそこそこ辛い思いもしたのだが、走り終わってみてそういうものが心理的にダメージを与えたとかそのダメージの反動としての大いなる達成感とかそういう非日常的なメンタルの揺さぶりというのは今のところない様だ。まあまだ正式認定を確認したわけではないのでいずれリザルトを見て実感するのかも知れないが、それにしても未だに続くコロナ禍の中でブルベに出走することへの何か釈然としない不安定さが完走を果たしても心を解放できない要因になっているのかも知れない。いずれにしても一刻も早くこの呪縛から解き放たれたいと願うばかりだ。それまでは気持ちを切らさない様に適度にブルベを走りそしてそのブログを書くというルーティーンを淡々と続けていくことが重要だと思っている。今回のブルベの走行レポートを書きつつその時の記憶を反芻することで完走の実感が湧いてくるかも知れない。

 そんなわけでRM812北海道1300の走行レポートを書き始めよう。

 

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[目次]

序章

 2022年、コロナ過は3年目に突入した。丸2年経っても感染の波は収まらず、蔓延防止等重点措置が断続的に発令され、結局一昨年、去年と海外遠征も含め1000km以上のブルベを全く走ることができなかった。2年越しで1001Migliaを断念してその埋め合わせとして去年の夏に北海道1300にエントリーしたが蔓延防止が解除されることは無くDNSを余儀なくされてしまった。一昨年の中止の雪辱を果たすべく改めてエントリーしたゴールデンウィークの日本縦断2700は自らが感染したと思い込んでしまい土壇場でDNSしてしまい、直後に受けたPCR検査で陰性が判明した時はもう超長距離ブルベを走るだけの気力や体力を失ってしまったかのような喪失感と落胆を漠然と味わうこととなった。俺はもうこのまま超長距離ブルベを走ることは無くフェードアウトしていくのかという思い始めて何とかそれに抗いたいと気を取り直し今年も開催されることとなった北海道1300にちょっと大袈裟ではあるが”自らの進退を賭ける”意識を持ってエントリーすることにした。

 この北海道1300は総距離1309kmを制限時間109時間5分で走るRM準拠のブルベだ。

 当別をスタートし内陸部を北上し稚内から宗谷岬を経由して沿岸部を南下、網走から再び内陸部に入って藻琴山を越えて釧路に出て釧路から再び沿岸部を南下して襟裳岬を経由して更に沿岸部を進み再び当別に戻って来る、時計回りに北海道の中央部を周遊するコースだ。

 通過チェックにオープン/クローズ時間のあるPCは全くないため4泊5日の余裕のある走行プランを立てることができる。おまけにN2ルールでの開催なのでスタート日時を8/1~8/26の範囲で設定できるので、会社の夏休みに合わせて8/8~12で走ることにした。走行プランは去年の段階で完成していたので今年もそれに合わせて宿とフライトを首尾良く予約することができあっさりと旅程を確定させることができた。

 走行プランは下記の通り。

<8/8:1日目>

<8/9:2日目>

<8/10:3日目>

<8/11:4日目>

<8/12:5日目>

 初日が330kmと最も長く、2日目から4日目の3日間は280km前後、最終日は150kmという距離の配分となった。走行時間については初日を17時間、2~4日目を15時間、最終日を8時間と見積もると初日は6時スタートで23時ゴール、2日目は7時スタートで22時ゴール、3日目4日目は6時スタートで21時ゴール、最終日は6時スタートで14時ゴールで日中走って夜は6~7時間しっかり寝るという普段の生活サイクルを壊すことなく104時間での完走というかなり理想的な展開が見えてくる。あとは天候次第だが、現状の夏の北海道は基本雨が降ると予測しておけば間違いはないが問題は雨降りの場合の気温がどこまで下がるがというのが留意点となる。雨具の他に防寒具を携帯すると荷物が増えることになるのだが、7月中旬に走った北見シリーズでも雨に降られたものの結局レインウェアは着なかったし取り敢えず天気予報では最北端の稚内でも最低気温が15℃前後の予報なのでウェアの基本は半袖ジャージにレーパンと指切りグローブでレインジャケットとレインパンツを防寒的に携帯するということで割り切ることにした。風は基本南風と考えておけば宗谷岬までは追い風でその後襟裳岬までは向かい風、そしてゴールまでは追い風と大雑把に予測しておく。まあ天候はとにかく走ってみなければ分からないので余り深く考えないようにする。

 走行中の携行品は最終的に下記の通りとなった。

フロントバッグ(モンベル)
・エネループ単三4本
・USB充電機
・USB充電ケーブル4本
・Tシャツ
・パンツ
・カロリーメイト2袋
・塩タブレット

サドルバッグ(APIDURA/BACKCOUNTRY SADDLE PACK 6L)
・スペアチューブ6本
・スペアタイヤ1本
・タイヤレバー3本
・タイヤブート
・応急処置用チューブパッチ
・チェーン4コマとミッシングリンク2組
・スペアブレーキシュー1組
・シフトワイヤー1本
・集合工具
・レインジャケット
・レインパンツ

スタート前日(北海道へ移動)

 8/7(日)、朝から雨が降っていて出発当日なのに何となく気乗りがしない。遠征出発前のウキウキした気分はもう随分味わっていない。相変わらず長期コロナ禍の心理的影響は色濃く残っている様だ。取り敢えず携行品のパッキングはほぼ完了しているが肝心のバイクはまだパッキングできていない。朝から何となくうだうだと過ごし出発1時間前になってようやくパッキングを済ませた。尻に火が付かないとやらないのは多分もう死ぬまで治らないだろう。

 11時半に自宅を出発、輪行袋とバックパックを背負って最寄り駅までの1km程を徒歩で向かう。上手い具合に雨が止んでくれたので傘を差しながら歩くという苦行は回避できた。先日の北見シリーズの時と同様、コロナ感染での乗務員不足による減便で丁度良い時間のリムジンバスがなかったため今回も電車を乗り継いで羽田空港に向かう。

 西武池袋線、山手線、京急本線と乗り継いで羽田空港に向かう。電車内もそこそこ混んでいるが乗換時の池袋駅や品川駅で人混みの中を歩くのはやはり苦痛だ。元から人混みが嫌いなのにこのコロナ禍の感染の懸念で更に苦痛度が増している。ブルベ遠征が憂鬱なのは移動の人混みも多分に影響していると思う。

 14時前に羽田空港第2ターミナルに到着。まずはバイクの預け入れ、今日のフライトはAIR DOなのでまずAIR DOのカウンターでチェックインした後に直ぐ隣のANAの手荷物カウンターに行く。

 バイク預け入れの際、今回初めてチェーンオイル(フィニッシュライン/Wet Lub)を持ち込みにトライした。フィニッシュラインの公式サイトからダウンロードして持参した安全データシートを提示したのだが、書面に記載されている商品名とパッケージに印刷されている商品名が完全一致と駄目だと言われてしまった。ダウンロード元の公式ページをスマートフォンで見せてこの製品の安全データシートはこれしかないことを説明したが、一致しなければ駄目の一点張りで頑として譲らず結局没収となった。担当者に自転車用品の知識を期待するのは無理からぬことではあるが、出展まで明示して成分的には持ち込み可の製品であることは明確なのだからもう少し融通を利かせてもらいたいところだ。

 取り敢えずバイクの預け入れは完了して身軽になったものの結構な敗北感に苛まれつつ空港内を歩く。何となく空腹感はあるがフライトは15:50なのでのんびり御飯を食べる時間はなさそうなので搭乗口に向かう。

 搭乗口で待機していたら使用飛行機の到着遅れで登場開始が25分遅れるとのアナウンスが流れる。言われるままに待つしかない。

 16:00にようやく登場。離陸待機で更に遅れてようやく機上の人となる。

 18時前に約40分遅れで新千歳空港に着陸。

 雲は多いものの夕暮れが見える程に天気は良さそう。

 バイクもすんなり出てきた。取り敢えずダメージはなさそうで一安心。そのままJRの駅に向かう。

 18:30発のエアポート快速に乗車、札幌に向かう。

 車内は殆ど混んでいなくて自由席でも輪行袋を横に置きつつ座ることができた。

 19:15に札幌駅に到着。札幌は良い感じに涼しい。この位の気温で走れるなら最高だ。ホテルに向かう前にチェーンオイルの代わりを調達するために駅の右隣のエスタの地下にある100円ショップに行く。輪行袋を抱えて店の中に入るのはかなり苦痛だったが取り敢えず潤滑スプレーをゲットして応急手当はできた。

 19時半過ぎに駅から500m程歩いたところのホテルに到着。このホテルは過去に何度か泊ったことがあるので勝手は分かっている。バイクの部屋持ち込みもOK。

 部屋に入ってホッと一息。Door to Doorで約8時間の移動は完了した。

 座る前に一気に輪行解除。バイクを組み立てて大雑把にチェックするが破損個所はなさそうで一安心。次にウェアや携行品をチェックしたら心拍センサーを忘れたことに気が付いてがっかり。大一番でこういうミスをやらかすと結構な自己嫌悪だがこれがなくても走れなくはないので気持ちを切り替えるしかない。PCをwifiに接続してざっと明日の準備をして今晩の夕食と明日の朝食を買い出しに近くのコンビニに行く。

 買い出しから戻って風呂に入ってからようやく遅い夕食。食べ終えたら21時を過ぎていた。当初予定では16:20の新千歳着だったからもっと余裕があるかと思ったけれどかなり慌ただしかった。チェーンオイル没収と飛行機遅延の影響で予定より1時間以上遅れてしまった感じだ。でもまあ取り敢えずスタート地点に立てそうなところまでは漕ぎ着けられた安堵感はそれなりにある。明日のスタート地点はここから20km弱離れた当別なので移動時間を考慮すれば6時スタートしようとすると5時には出発しなければならないので明日の起床時間を4時半としてアラームをセットしてベッドに入る。消灯時間は22時前。