8/18(金)、4時過ぎに起床。外はまだ薄暗いが快晴。季節が進んで夜が明けるのがどんどん遅くなっている。起き上がって即行動開始。持ち物を一つ一つチェックしつつ身支度を整える。忘れ物は絶対に許されない。パスポートを忘れたりするとその瞬間に全てが終わるから二度見して確認する。準備を終えて4時半過ぎに自宅を出発、バイクケースを引き摺りながら徒歩で最寄り駅に向かう。
4:50に最寄り駅に到着。羽田までの交通手段は隣の所沢駅からリムジンバスの予定。バスの予約をしていないのでちょっと心配だが今まで予約なしでも乗れなかったことはないので多分大丈夫だろう。
電車はガラガラなのでバイクケースの持ち込みは全く問題無し。
所沢駅で降りてリムジンバス乗り場へ。複数の乗客がいたが予約なしでも問題なく乗ることができた。
5:15発の羽田空港行きリムジンバスに乗車。旅の始まりは幸先良し。
東所沢駅からバイクケースを持ったサイクリストが1人乗って来た。オダ埼清水班のブルベでもよく見かける人なのだが名前が思い出せない。車内でぽつりぽつりと会話しながら空港に向かって進む。
外環も首都高も渋滞は殆どなくすんなりと羽田までやって来た。順調順調。
7:00に羽田空港第3ターミナルに到着。
出発ロビーでまずはバイクケースの預け入れを行う。既に長蛇の列ができているので時間がかかりそうだ。
恐らくPBP参加者と思われるバイクケースを持った人が多数、専用ラインができていたのでそこに並ぶ。待っている間に一緒にバスに乗って来たスギウラさんに私のバイクケースのキャスターの車輪のみが取り外せることを教えてもらった。今までずっと使っていたのにそのことを全く知らなかった。目から鱗が落ちるとは正にこのことか。
列に並んで30分程待って私の番が回って来た。カウンターでバイクケースを計量したら3kg近くオーバーしていたので荷物をバックパックに一部移して無事に計量をパス。
カウンターで受託手続きを終えた後大型手荷物のX線検査場まで自分で持っていってそこで最終確認を受ける。X戦検査で特に何も指摘されることはなく預け入れ完了。
国際線の出発ロビーはそこそこ人数で混雑している。もう完全にコロナ禍前に戻ったという感じか。
次は€の確保。事前に海外旅行用の財布をチェックしたら前回のPBPの時の€が120も残っていたのでかなり助かった(両替せずに放置していた自分を褒めてやりたい)。新たに€200を追加することにする。
€1=¥163.23は手数料が結構高い感じ。円安のインパクトを改めて噛み締める。
両替を終えたら特にやることもないので搭乗口に行こうと思ったら保安検査場の入口までの行列がとんでもないことになっていた。
行列がなかなか進まない。これはなかなか大変だ。フライトに間に合わないということはないだろうがのんびりできる余裕もなさそう。
30分ほどかかってようやく保安検査と出国審査を通過。やはり何だかんだで海外に出るのは疲れる。保安検査機は新型でPC等をバッグから出さなくて良いタイプ。出国審査は自動機で便利だけれどスタンプが捺されないのが残念。
免税店には全く興味がないのでさっさと搭乗口に向かう。
8時半過ぎに搭乗口に到着。結構混んでいる。着席して搭乗時間を待つ。と思ったら出発便が25分遅延のアナウンスが流れた。
なんだかんだと慌ただしくはあるが取り敢えずパリに向かう流れに乗っている。空港の雑踏や他の参加者の存在が身近にあって少しずつ雰囲気に呑まれてきた。当面の目標はホテルに無事に辿り着くこと。
9:40を過ぎてようやく登場開始。搭乗機まではバスで向かう。
パリ行きの飛行機にボーディングブリッジを使わずに乗り込むとはちょっと予想していなかった。エンジンは傍で見るとかなりデカい。
搭乗率はほぼ100%。
IFEは可もなく不可もなくというレベル。wifiは有料なので使用せず。
座席は最後尾を事前予約。トイレの傍だがどうせ耳栓をして寝るだけなので影響はない。心置きなくリクライニングが倒せるので常にここを狙っていて今回往復とも最後尾を確保することができた。
定刻9:35から1時間遅れて離陸、パリに向けて飛び始めた。パリまでの飛行時間は約14時間。
離陸後しばらくして最初の機内サービス。いつもの通りトマトジュースとビールをお願いしたらCAさんが”レッドアイですね”と満面の笑みでサーブしてくれた。私的にレッドアイを飲むのが国際線に乗った時の秘かな楽しみ。ビールを1本飲んだらナーバスな気持ちが飛んで楽しくなってきた。アルコールの威力は凄い。クスリをやる奴の気持ちがちょっとだけ分かる。
飛行機は東に向かって飛んでいる。事前に航路変更で出発時間が早くなり飛行時間が長くなってこれはロシアのウクライナ侵略の影響でロシア上空を避けて飛ぶのではないかと予測していたが実際にそうしている様に見える。
1回目の食事。ハンバーグ的なものをチョイス。普通においしい。機内食は見た目以上にボリュームがあるので満腹になる。
食べて直ぐに耳栓をして寝に入る。IFEで映画等は観ない。
離陸後8時間近く経過。やはりロシア上空を完全に避けた航路になっている。北極圏を飛ぶのか。IFEに付いているUSBコネクタが壊れている様でスマートフォンが充電できないのが痛い。
軽食が出てきた。座っているだけでもお腹が空くので美味しくいただく。食べ終えて再び寝に入る。眠りは浅く細切れに寝たり起きたりを繰り返す感じ。とにかくスタートするまではひたすら休養でできるだけ寝ておくのみ。
離陸後12時間程で3度目の食事。パンケーキで軽めの内容だが結構食べ応えがある。あと2時間程でパリに到着する。再び寝に入る。
8/18の17:24にCDG空港に着陸。到着直前にスマートフォンのsimをorangeに入れ替えておいたが着陸して直ぐに電源を入れるとすんなりと繋がって時計が現地時間に変わった。日本との時差は7時間で日本は今夜中の0時半。
フランスも4回目ともなると慣れたものでハイテンションになることもない。
まずはバイクケースを受け取りにバゲッジクレームに向かう。
この通路を通り抜けていくとCDG空港に来たことを実感する。
ANA発着はターミナル1。
18:00にバゲッジクレームに到着。ANA便のターンテーブルは3番。
毎回ここからが長い。果たして今回はどれ位待たされるだろうか。この便にはツアーを含めて多数の参加者が乗っていたのでかなりの数のバイクケースが運ばれてくることになる。
ゴンドラに乗せられたバイクケースがぼちぼち出てき始めた。
バイクケースを受け取った人達が散っていき徐々に人が少なくなっていく。でも私のバイクケースは出てこない。
おっ!あれは私のバイクケースではないか!ようやく出てきた。
結局バイクケースが出て来るまでに1時間かかった。19時過ぎにようやく移動開始。
前回までは空港からパリ市街まではMontparnasse直行の空港バスを利用していたのだが廃止になってしまったので今回は新しい試みでRER B線という鉄道を利用してみる。RER B線の駅はターミナル1にはないのでその前にCDGVALというターミナル間の無料シャトル鉄道に乗ってRER B線の駅に行くことになる。
鉄道のアイコンとRER Bの文字を追いつつ進んでいく。
案内通りに進むとそれ程距離を歩くことなくCDGVALの駅に到着。
駅のホームに入るとちょうど電車が出発するところだった。
ターミナル1からRER Bの表示があるターミナル3に行くことになる。
5分程で電車が来たので乗り込む。
時間帯にもよるのかも知れないが乗客は多くないのでバイクケースの持ち込みは問題なし。
運転席がないので無人運航ということか。
ターミナル3駅でCDGVALを降りて2階に上がると目の前がもうRER B線の駅なのでかなり便利。
自動券売機で切符を買う。
まずは言語選択で英語を選択。
行きたい駅はMontparnasseの最寄りのPort Royalという駅だがこの名前は出てこない。最初戸惑ったがパリ市街の駅に一括して含まれているので”Ticket to Paris”を選択。
Full FareのSingleを選択し購入枚数を入力し後は支払い。クレジットカードを使って支払う。料金は€11.45。
バイクケースも通れる改札を通過する。
やはりPort-Royalはパリ市街に一括りになっている。
階下のパリ市街方面のホームに降りて電車を待つ。
パリ市街で降りるのであればどの電車に乗っても問題無し。但し事前情報で空港からパリ市街までの間に治安の悪い区域を通過するらしく車内スリが多いらしいので各駅停車ではなく快速を推奨している旅行案内が多いのでそれに従う。止まる駅はディスプレイに表示されるので止まる駅が少ない電車を選べばそれが快速。10分間隔くらいで便数はそこそこ多いので快速を待ってもそれ程タイムロスにはならない。
ここの駅名はAéroport Charles de Gaulle 1。CDGVALで降りたのはターミナル3だがここはターミナル1だという。ややこしいが丸暗記するのみ。
19:56発の快速に乗車。車内に乗客は殆どいない。
取り敢えず初めてのRER B線にすんなりと乗れて、今回の渡仏の最初の関門をクリアして安堵する。車内スリに遭わない様に周囲に目を配りながら過ごす。
快速だとPort-Royalまでの間の停車駅は4つ。
20時過ぎだがまだ十分に明るい。気温は思った以上に高くて結構蒸し暑い感じ。
パリ近郊はとにかく落書きが多い。日本にもこの手の愚にもつかない落書きをあちこちで見かけるがガキのレベルは似たようなものということか。
20:38にPort-Royal駅に到着。
駅のホームにはエレベーターがあるのでバイクケースでも全く問題無し。
駅の入口はクラシカルな風貌。まずはRER B線でパリ市街まで移動するというミッションは無事に終了。
駅を出たらいきなりパリだった。唐突に場面が変わってちょっと面食らう。
ここからMontparnasse駅までは徒歩移動、距離は約1.3km。
通りをバイクケースを引き摺りながらてくてく歩いていく。猫もいた。
街並みがもうどうしようもなくパリなので歩くだけで観光モード。
4年前にMontparnasse駅近くのホテルに泊まってこの辺りの街中を徘徊したのを懐かしく思い出す。
大通りから枝道に入ると飲食店が結構な賑わい。歩道までテーブルがはみ出しているのでちょっと通り辛い。
20分くらい歩いてMontparnasse駅に到着。4年前に見た風景のままで何となく感慨深い。またここに戻ってくることができて嬉しい。
4年前は左側の横の入口から出入りしていたが、今日は正面から入ってみる。
正面からいきなり駅のロビーに出られるのかと思ったらショッピングモールばかりでちょっと道に迷ってしまった。
ようやく駅のロビーに出た。まずはN線の切符を買う。去年の記憶では10番ホームの入口の傍に自動券売機があるはず。
前回と同じ場所にあった。
ST QUENTIN YVELINESまでの切符を買う。€5。
ここまで来れば後は電車1本でSt. Quentin en Yvelinesまで行ってホテルまで1kmちょっと歩くだけ。1時間半くらいでホテルにつけるはず。今が21:20だからホテル着は23時位か。バイクケースの受け取りに時間がかかった分予定より到着が遅くなるのはやむを得ない所か。
切符を買ってホームに入ると何やら様子がおかしい。たくさんの人がホームに行かずに改札を出て直ぐのところに溜まっている。案内表示を見てもRambouillet行きの電車のホーム番号が表示されておらずどの電車に乗って良いのか分からない。
人がどんどん増えて来てざわついてきて何やら不穏な空気。どうやら何らかのアクシデントで電車が全て止まっている様だ。これは面倒なことになった。そのうち構内アナウンスが流れてVersailles-Chantiersまでの電車が出発するらしく、人々が大挙してその電車に乗り始めた。St Quentin YvelinesはVersailles-Chantiersの2つ先なので方向的にはあっているし、Rambouillet行きの電車がいつ出るか全くわからないので取り敢えず少しでもホテルに近付くために流れに乗って乗車する。
取り敢えず電車に飛び乗った。訳も分からずアクシデントに巻き込まれてしまった様だ。ここまで順調だったのにこれは想定外。
車内表示はランブイエだがアナウンスはベルサイユ。多分アナウンスが正しいのだろうな。電車は22時前に動き出した。
取り敢えずVersailles-Chantiers駅までは辿り着いたがやはりここで電車は止まって乗客は皆降りてしまった。仕方なくここで次の展開を待つことに。
ここで1人の日本人参加者に出会った。その人も同じ様Montparnasse駅で足止めを食らっていて、この先Rambouilletのホテルまで向かうとのこと。ここまでくる間パリ市街でスリに遭ってほぼ全財産を持っていかれてしまったとのこと。これは辛い。
取り敢えず案内表示にはRambouillet行きの電車が来ることにはなっている。更に40分待ち。
しかし待っているうちにRambouillet行きが”消滅した”という表示に変わってしまった。一体どうなっているのか。
外に出て取り敢えずタクシーを探してみるが全く見つからないVersaillesは観光地だが夜は寝静まっている。
Versaillesは2015年のPBPの時にホテルを取った場所であの時も夜に到着したのでこんな雰囲気だったがあの時と比べて随分と駅が奇麗になった気がする。それにしてもこんな形で再びVersaillesに降り立つことになるとは予想だにしなかった。
駅で途方に暮れていると一人のアフリカ系の女性が日本語で話しかけてくれた。話を聞いてみるとどうやらN線は人身事故で止まっているらしくこの先運転再開する見込みは薄いという。路線番号401のバスでSt. Quentin en Yvelinesまでは行けるとのこと。色々と親切に教えてくれた女性に感謝。
日本の参加者さんはここで輪行解除してRambouilletまで自走する決断をしてここでお別れ。
バスを待ってみるが来る気配はない。
時折駅から構内アナウンスが流れてそれを聞いた外待ちの人達が再び駅に向かって大挙して走り出すので慌てて付いていくがRambouillet行きではない電車が到着して空振りに終わり再び外に出て来るというのが何度か繰り返される。
時間がどんどん過ぎて地元の人達はそれぞれの方法で帰宅方法を見つけてどんどん人が少なくなってくる。バスは全く来る気配はない。タクシーも全く来ない。
初日から一体このアクシデントは何だ?俺は一体何をやっているのか?正直この展開についていけてなくて途方に暮れかけている。
時刻は遂に0時を回ってしまった。いよいよどうにもならなくなって、これはもうSt. Quentin en Yvelinesまで歩くしかない。ホテルまでは約9km。覚悟を決めてスマートフォンの経路案内を頼りに歩き始める。
寝静まったVersaillesの街中を通り抜けていく。8年前の記憶が何となく蘇る。
Versailles宮殿の脇の道を通ってVersaillesの街を出ていく。この道は2011年と2015年に当時PBPのスタート地点だったSt. Quentin en Yvelinesに自走で向かったことがあるからよく覚えていく。
Versailles宮殿の裏門を通過。歩いてみると敷地は非常に広いことが改めて分かる。
バイクケースを引き摺りながら歩き続けるのは案外悲壮感はない。この展開に頭に来てアドレナリンが出まくっている感じだし徒歩なら時間はかかっても確実に現地に辿り着けることが分かっているから。
当時自走で向かった時に確かアップダウンがあったなあと記憶を遡っていたらやはりあった。バイクケースを引き摺るにはかなりの登りで難儀する。夜でも蒸し暑い中全身汗だくになって無心で登っていく。
1時間半歩いて8/19の1:40過ぎに何とかホテルに辿り着いた。
フロントは開いていて予約もちゃんと入っていて無事にチェックインできて一安心。
部屋に入って心底ほっとした。当初予定ならば21時位にはホテルに付けるだろうと思っていたが、結局空港から7時間近くもかかってしまった。しかも相当無駄な体力を使ってしまった。本番前のこの体力の消耗が悪影響を及ぼすことにならないか心配になる。
バスルームには浴槽があるのがとてもありがたい。まずは汗だくの服を脱いでシャワーを浴びて浴槽に湯を溜めてのんびりと浸かって両脚を念入りにマッサージして疲労回復に努める。
風呂から上がってさっぱりしてホテルのロビーの自販機で買ってきたジュースをがぶ飲み。死ぬほど旨い。ホテルのwifiにすんなりと接続できて持参のPCも稼働状態に入った。もっと早い時間に着いていれば直ぐにバイクを組み立ててチェックするのだがもう今は何もする気は起きない。とにかく寝て今日のこのアクシデントを忘れてしまいたい。さっさとベッドに入って寝る。消灯時刻は2時半位。