8.24(木)、3:40過ぎに目が覚めた。起床時間の5:00まではまだ1時間以上あるから二度寝しようかと思うが眠れそうにない。睡眠時間は3時間というところで私的に標準的な確保時間の4時間半に足りないが折角目覚めてしまったので行動開始する。
ウェアは着たままだしドロップバッグもないし特に身支度をする必要もないのでさっさと起き上がってベッドを後にする。周囲に寝ている人は少ない。
ベッドブッキングの受付で自力起床したことを告げてメインホールに向かう。
メインホールはまだそこそこの人数の参加者が残っている。時間的にはまだ完走圏内のはずなのでそれ程切羽詰まった雰囲気はない。
空腹感は余りないので飲み物だけを買う。
眠気はないが念のためのカフェイン摂取でコーラを飲む。コーヒーにしたかったが胃が荒れるので自重。いつもはリスタート前は余計な時間は使わないが早起きして時間に余裕があるので問題無し。コーラをさっさと飲んでスマートフォンでSNSをチェックして5分程でさっさと席を立つ。
バイクの置き場所を忘れてちょっと探したが直ぐに見つかった。ここまでノートラブルで走って来た我がバイク、あと120kmもよろしく。寒さは感じないので半袖ジャージのまま。
最終日はMortage-au-PercheからRambouilletまでの120km。序盤にアップダウンがあるがそれからは平坦に近い感じになるはずなので今までの様な苦労はないはず。上手く走れれば午前中の内にゴールできるので暑さとの戦いも短くて済む。いずれにしてもここまで来たのだから絶対に完走しなければならないので最後まで気を抜かずに慎重に走る。
第14ステージはMortage-au-PercheからDreuxまでの77.9km。2019年のルートと比較してDreuxの街中の進入ルートが変更されている以外は同じ。往路との比較ではSenonchesまでは同じだ。前半のアップダウンをこなしてしまえばその後は平坦の様な印象だったのでそれ程の苦労はないはず。長い区間距離はこれが最後でリスタートからの最後の夜間走行を無事にクリアできれば完走確率は更に上がる。今まで通り目の前のステージに集中して次のCPを目指して走るのみ。
4:11にリスタート。結果として予定より50分早い。
スタッフの誘導でゲートをくぐりCPの敷地を出ていく。
さあ、最終日の始まり。今日も張り切って走ろう。
まだ寝静まっている街中をうねうねと抜けて行く。もしかしたらこの街に来るのはこれが最後になるかも知れないと思うとちょっと名残惜しい。
1100.5km、D8に乗って下りながらMortage-au-Percheの街を離脱。
1105kmを過ぎて真っすぐな5%位の長い上り。疲労感はないと言えば噓になるが仮眠してかなり回復したのは確か。気温は低いし両足裏の痛みは今のところかなり引いているので問題なく走れている。無理をしなければこのままゴールまでは問題なく行けるだろうという手応えはある。
1106.5km、峠を一つ越えてSaint-Mard-de-Rénoの街を通過。
街を抜けて直ぐに再び上りが始まった。2km程上って取り敢えずピークを通過。
長い下りが終わったと思ったら再び長い上り。真っ暗なD8のアップダウンを淡々と進んでいく。
1117.3km、下って来てLongny les Villagesの街に入って突き当りを左折。
ひっそりとした街中に該当の明かりが異国情緒抜群。こういう風景ももう見納めかと思うといちいち名残惜しい。
街中のラウンドアバウトを右折してD918に乗り街を出ていく。
街を出て再び登り。前方に何となくランタンルージュ。空には星が見えているので今日も天気が良さそう。今回のPBPはとうとう最終日まで雨は降らなかったな。レインウェアを持たなくて正解だった。
1120.7km、左折してD8に乗る。
またしても上り。でも最終日の残り距離が短いのが分かっているので悲壮感は全くない。集団と同じ様なペースで走れているのが嬉しい。
1125.1km、珍しく湖の傍を通過。
真っ暗なD8を進む。上りがなくなって平坦が続いているのでどうやら前半のアップダウン区間は完全に抜けた様だ。順調に距離を消化していく。
1129.9km、Neuilly-sur-Eureの街を通過。街中のカフェには多くの参加者が立ち寄っている。
1132.4km、左折してD20に乗る。曲がって直ぐに上りが始まった。
5%弱の真っすぐな上りが続く。アップダウンが終わったかと思ったがまだあった。
1134.5km、上りが終わって平坦になった。今度こそアップダウン区間は終わったか。
森の中のD20を進む。時刻は6:10、東の空が明るくなってきた。もう直ぐ4回目の朝を迎える。
1137.4km、森から出たところで視界が開けて茜色の空が目の前に広がった。このPBP最後のマジックアワーの始まりが唐突に眼前に現れてちょっと驚きつつも止まってしばし眺める。
ちょっと雲は多めだがそれでも藍色から茜色へのグラデーションは充分に美しい。この4日間の長い道のりを走り続けてきてもうゴールに手の届くところまで来ているという達成感・安堵感の中で眺めるこの朝焼けは何物にも代え難い至福の時間。ここまでの苦労が全て報われた気がする。この瞬間にこの空間にいたいがためにPBPに出たと言っても過言ではない。
写真を撮りつつしばし眺めて再び走り始める。
このままひたすら東に向かって走り続けるので朝焼けをずっと眺めていられるという設定は非常に有り難い。
1140.5km、Senonchesの街に入った。街中を反時計回りに回りながら通過していく。
朝焼けの中に浮かぶ街のシルエットが幻想的で美しい。この風景もいよいよ見納め。
1141.5km、ラウンドアバウトを直進してSenonchesの街を離脱。
朝焼けを眺めながら淡々と進む。早朝の清々しい空気も相俟って心も体も浄化されている気がする。
どうしても朝焼けの写真が増えてしまうのは致し方なし。
1147.3km、Le Mesnil-Thomasの街に入って突き当りを右折。
朝が来て世界がどんどん色付いていく。街中の花壇の色合いが美しい。
かなり明るくなってきて藍色はほぼ消えた。マジックアワーは終わり。
フラットなD20を進む。この区間を走っていると”PBPには平坦がない”というのは偽りだと思えてくる。厳密には緩い起伏はあるのだがここまでの道程に比べれば平坦と言い切ってしまって全く問題はない。
1153.6km、Mailleboisの長い壁が始まった。
壁が2.5kmに渡って延々と続く。本当に長い。何のためにこんなものを作ったのだろう。
時刻は7:03、朝日が昇って来た。
1156.3km、Blévの街に入って突き当りを左折。
朝日に向かってひた走る。太陽を楽しめるのは今のうちだ。そのうち高いところに上れば容赦なく強い日差しを浴びせかけて我々を苦しめることになる。そうなる前にゴールしてしまいたいところ。
時折後ろからそこそこのスピードで抜いて行く集団が現れる。こっちはぼちぼち両足裏が痛いしそのあおりで尻も掌も痛くなってきているのであくまでマイペース。マイペースと言っても20km/hは確保できているので全く問題なし。
後ろからmorouさんがやって来た。道中何度がご一緒したが常にお変わりなく余裕の表情。ひとしきり会話して背中を見送る。
1165.4km、Crécy-Couvéの街を通過。
平坦真っすぐなD20を進む。過去この道を走った時は結構踏んでいった思い出があるのだが今回は踏めない。痛みに逆らわずぼちぼち進む。それを許す時間は充分にあるから全く問題なし。
朝日に照らされた自分の影を眺めながら走る。私が間違いなく自転車で走っていることの証明写真。
日が少しずつ高くなってきて気温が上がって来た。今日も暑くなりそうだ。
1173.0km、 Les Corvéesの街を通過。ここを通るのは初めてなので新しいルートか。CPまではあと3km。
1175.0km、Dreuxの街に入った。前回までのルートはCP直前にアップダウンがあったが今回はなさそう。CPはもう目前。
CPの入口が見えた。スタッフの誘導で敷地に入っていく。
CPに到着。進入経路が違うだけで前回と同じ場所だった。
空きスペースを見つけてバイクを停める。まずはコントロールに向かう。
まだ十分に完走圏内の時間なのでかなりの人数がいる。
コントロールも前回と同じ場所だ。
サインとスタンプをもらって無事にコントロールを通過。そのままフードコートに向かう。
フードコートはかなりの混雑。日本人の知り合いの姿もちらほら見える。
ここで再びmorouさんに遭遇。morouさんと一緒にフードコートの列に並ぶが列が全く動かない。何事かと思ったらメインディッシュが何もなくて補充待ちの様子だった。折角最後のCPでPBP最後の食事をするのを楽しみにここまで走って来たのにそれはないだろう。取り敢えずちょっと待ってみたら奥の厨房からラザニアが出てきたのでそれを注文する。
morouさんと同席で食事。ラザニアはまだ冷たいままだった。最後のこれはがっかりな展開だがもうどうしようもないので黙って食べる。
1176.9km地点のCP13/Dreuxのチェックタイムは8/24の8:02。予定より1時間早い到着でクローズ時間に対して3時間半のマージンを確保。これでここまで全てのCPは時間内クリアが確定してほっと一息。ゴールのRambouilletのクローズ時間が15:00だから6時間以上ある。トラブルさえなければ時間内完走は間違いないだろう。心理的プレッシャーが更に軽くなった。30分程の食事休憩の後席を立つ。
ゴールまでは残り45km。ここまで来たらもう絶対に完走するしかない。余計なトラブルを起こさない様に浮かれることなく更に気を引き締めて最後のステージに臨む。