PBP2023/Report 19:Stage 15,Day 4/Dreux -> Rambouillet(42.1km/1219km)

 8/24(木)、8:45にCP13/Dreuxを出発。CP滞在時間は約50分、滞在時間は予定オーバーだが予定より45分早い出発なので更に余裕。

 誘導路をのんびりと走り出す。さあ、あとはゴールを目指すのみ。あと3時間でこの長い旅も終わりだ。

 最終ステージはDreuxからRambouilletまでの42.1km。オフィシャルのキューシートでは42.1kmだが実際には45km以上あるので誤差はある様だ。2019年のルートと一部異なるが大体同じだ。アップダウンは少なく平坦基調と言って良い。距離もPBPの中で最短なので最も楽なステージだ。勝利者の凱旋パレードのために用意されたステージではないだろうか。残り3時間をひたすら慎重に、ゆったりと凱旋を楽しみたい。

 CPの敷地を出て直ぐにラウンドアバウトを右折して上り基調でDreuxの街中を進む。

 1177.9km、Dreuxの駅前。

 駅前で周囲の写真を撮ろうと止まったら大粒の雨が落ちて来た。スタートしてから最終日まで一滴も降らなかったのに最後に降られるのか。レインウェアを持っていないが気温が十分に高いので濡れても全く問題無し。覚悟して走り始める。

 駅を出て直ぐのラウンドアバウトを右折して更に上りは続く。2.5km程上ってピークを通過し急勾配を下りつつDreuxの街を離脱。

 1181.1km、下りを終えて郊外に出た。D929を進む。

 1183.1km、右折してD929からD309.4に乗り換え。

 曲がって直ぐに池の傍を通過していく。雨はぱらぱらと降ってはいるが強くなる気配はない。

 1184.9km、Charpontの街に入った。街中を案内板の矢印に従って通過していく。

 1185.4km、街を出た直後に鋭角に左折したら上りが始まった。

 5%弱の勾配だが結構キツイ。前回こんな坂を上った記憶はないのでここは新しいルート上ということか。

 真っすぐな長い坂をえっちらおっちら上っていく。せっかく小康状態だった両足裏が再び痛くなって来た。

 1.2km程上って坂は終了。ホッとして先に進む。

 D308を進む。いつの間にか雨は止んで日差しが出てきた。雨はほんの一瞬で濡れることはなかった。

 1188.2km、交差点を右折してD152に乗る。

 平坦なD152を淡々と進む。日差しが出てきたが雲で弱められてまだ優しい。この位で留めておいて欲しいところ。

 1190.7km、Merangleの街を通過。

 長閑な田園の中の平坦路が続く。この4日間で乗り越えてきたここまで1190kmの長い長い道のりが断片的に頭の中をよぎっていく。今ここをゆったりと走っている時の安堵感や充実感にここまで乗り越えてきたものの大きさを改めて知る。

 プレッシャーからほぼ解放された心理的充足感の中で、広大な田園の中の道を車も信号もなく落ち着いてずっと走り続けられる最高のサイクリングを楽しむことができるこの体験が、ここまでの辛くシビアな記憶を打ち消してPBPの記憶として刻まれるのだろう。4年後にまた走りたいと思うのは今この瞬間があるからだと思う。

 どんどん踏んでいく人、のんびりと仲間同士で会話しながら行く人、思い思いにこの完走者だけに許された特別な時間を楽しんでいるに違いない。

 1195.4km、Prouaisの街中で2019年の時に見かけた日本国旗と日本語が掲げられた施設エイドが今回もあった。嬉しくなって日本語で挨拶しつつ手を振る。通り過ぎた後でそう言えばお土産用に用意したAJの缶バッジを持っていたことを思い出して、取って返して私設エイドの人に進呈。

 改めて写真を撮らせてもらう。本当にありがとう!

 1198.1km、Les Pinthièresの街中の交差点を右折。

 2019年にこの道を走った時は晴天で青空に飛行機雲が何本も横切っていたのを覚えているが、今回は雲が多く雲の隙間から日光の光跡が見えるというのもこれはこれで印象深い風景。ここまで好天過ぎて散々暑さに苦しめられたから最後に配慮してくれたという感じか。

 1199.7km、Faverollesの街に入って突き当りを右折。

 曲がって直ぐに左折。

 街中のパン屋さんが随分と賑わっている。美味しい店なのかな?

 どんどんゴールが近付いてくる。あと1時間余りでこの旅も終わり。昨日の今頃は一刻も早く終わって欲しいと思っていたが、今は名残惜しさが湧いてきている。

 1201.5km、Le Mesnil Condyの街を通過。

 1202.3km、ここから先はIle-de-France、首都圏という感じか。いよいよParis圏内に戻って来た。

 Ile -de-Franceに入った途端に上り。このまま平坦で終わりかと思ったがそんなに甘くなかった。300m程の上りをえっちらおっちら上っていく。

 ゴールまでは20kmを切った。そろそろこの田園風景も見納めか。

 信号も民家も電信柱も何もなく車も殆ど走っていないただ舗装道だけがずっと先まで続く道をひたすら走るのももうすぐ終わり。早くゴールしたいという気持ちと名残惜しさがせめぎ合う。

 1205kmを過ぎて再び真っすぐな上り。足裏や尻が痛くてなかなか辛いがこの辛さももうすぐ終わる。それが妙に嬉しい。

 1209.5km、Béchereauの街中を左折してD107に乗る。

 ちょっとアップダウンが出てきた。2019年の時、確かこの先の上りのピーク辺りでしばらく一緒に走って来た地元のサイクリストに声をかけられたのだっけ。

 森の中のアップダウンが続く。周囲の参加者の数が増えてきた。

 ゴールまであと10km。あと30分で終わってしまうのか。

 1215.5km、Poigny-la-Forêtの街を通過。

 ゴールまであと5km。いよいよ終わりが見えた。完走の手応えを充分に感じ、安堵感と達成感がじわじわと湧いてきた。

 1218.1km、坂を下って来て突き当りを右折してD936に乗る。4日前にスタートして走り出して行った道だ。ここを真っすぐ遡ればゴールだ。

 残り3kmを切って最後の上り坂に入っていく。両足裏も尻も掌も、バイクと繋がっているところが全部痛いがもうどうでもよい。この痛みはここまで1200kmを走り抜いてきた紛れもない証、痛みが嬉しいなんてそうそうあることではない。最後に踏みを入れて上っていく。

 1219.4km、Rambouillet城の敷地の壁が出てきた。2019年の時はこの辺りから酷い渋滞でゴールまで進むのが大変だった記憶がある。今回はそんなことはなくどんどん上っていく。

1221.5km、最後の丘をこなして下りの途中で遂にRambouilletの街に入った。ゴールまではあと1km。

 Rambouillet城の敷地への入口が見えた。入口付近の石畳で落車しない様に気を引き締めて慎重に中に入っていく。

 ゲートが見えた。タグのセンサーが敷設してある。ここを通過すればデータ上は完走が確定する。通過と同時にピッというセンシング音が聞こえてこれで取り敢えず完走確定。

 砂道を走りながら達成感と安堵感がどんどん湧いてきて、そして観客の声援が聴こえてきて高揚感がぶわっと湧いてきた。つい叫びながらゴール。

 無事ゴール。手元の時計では10:57。予定より1時間早くゴールに辿り着いた。ペダルから足を外して地面に足を着いた時、長い旅が終わったことを理解した。そう、走り切ったのだ、俺は。走り切ることができたのだ。4回目のPBPのエントリーを決めてからどんどん増してきたプレッシャーから解放された瞬間だった。

 たくさんの参加者と関係者でごった返すゴール付近でスタッフの祝福の誘導を受けつつ駐輪場に向かう。

 空きスペースがなかなか見つからなくて探し回ってようやく見つけてコントロールに向かう。1200kmをノートラブルで走り切った我がバイク、メカニックとしての我が腕も褒めてやりたい。

 コントロールはあの建物の様だ。歓喜のカオスの中を歩いていく。

 混雑するコントロールで順番を待つ。それ程待たずに私の番が回ってきた。

 日本語の話せるスタッフにブルベカードの最後の欄にサインとスタンプをもらってこれで完走手続きは無事終了。

 と思ったらいきなり今サインをもらったばかりのブルベカードを返された。一瞬何が起こったのか理解できなくて「えっ、これは!?」と狼狽えたらスタッフは「持って帰ってね」とにこやかに言う(衝撃的な出来事に遭遇してカメラがぐるぐる回って衝撃映像になってしまった)。事態が良く呑み込めないまま取り敢えずブルベカードとメダルと食事券を受け取ってその場を後にした。

 返されたブルベカードを改めて確認。ゴールRambouilletのチェックタイムは8/24の11:05。86時間05分で完走したのだが、私のフレームナンバーもこの時間も先程のスタッフが控えた様子はなかったので、そうなるとゼッケンタグのセンサー通過情報が全てということになる。今回のPBPはそれで完走判定されるということになるのだろうか。ここまで全てのCPでブルベカードにサインとスタンプをもらってきたのは一体何だったのか?今一つ腑に落ちないがとにかく完走したので次のアクションに移らなければならない。まずは食事券を持ってフードコートに向かう。