PBP2023/Report 20:ゴール後

 8/24(木)、11:05に無事にRambouilletに戻って来た。4回目のPBPを何とか完走。

 コントロールでもらった食事券を持ってフードコートに行ったらとんでもない長さの列になっていた。ここでmorouさんに再び遭遇、取り敢えず一緒に列に並ぶ。

 列は全然動かない。この調子だといつ食事にありつけるか分からない。Saint Quentin en Yvelines行きのN線は1時間に1本しかないのでホテルに帰るのがかなり遅くなってしまうのが予見される。明日帰国するのでこの後休息やら打ち上げやらのスケジュールを考えるとここで時間を浪費している場合ではないと判断し、ここでの食事を諦めて帰途に就く決断をする。morouさんに食事券を渡してこの場を離れる。

 もう少しこの場の雰囲気に呑まれてゴールの余韻に浸りたい気がしなくもないが、人混みが苦手な身としてはここはカオスでしかないので撤退開始。

 駐輪場からバイクを持って出ていく時はスタッフによるリストバンドと車体のフレームナンバーの照合を受ける。盗難防止の配慮。

 正面玄関からRambouillet城の敷地を出ていく。

 Rambouilletの街中を緩々と抜けて駅に向かう。再びこの街に来ることはあるのだろうか。

 道すがら一緒になった日本からの若者と一緒にRambouillet駅に到着。

 ホームに上がったらこれからゴール地点に向かうオグラさん、ヤマグチさん、つかぽんさんに遭遇。皆思い思いにPBPを走り終えて充実した表情。

 12:22発のMontparnasse行きに乗車。

 車内は殆ど混んでいなくてゆったりと座ることができた。ゴールしてから2時間余りずっと立ちっ放しで人混みの中でバタバタと動いていたのでずっと妙なハイテンションの状態が続いていたのだが、電車に乗ってやっと座って独り静かになってようやく落ち着いた。

 コントロールでもらったメダルを取り出して眺めてみる。完走の実感がようやく湧いてきた。過去3回PBPを完走し2019年から4年経って日頃相応に心身の衰えを実感する中にあって、4年前にできたことが今回果たしてできるのかというプレッシャーが大きくのしかかっていたのは事実。終わってみて完走というより防衛したという意識の方が強い。達成感よりも安堵感、開放感の方が強い。とにかく4回目の挑戦も成功に終わって本当に良かった。

 13:02にホテルに帰着。92時間振りの無事な帰還にホッとする。

 エレベーターで乗り合わせた欧米系の男性に”完走したのか?”と話しかけられてYesと答えたら祝福された。完走時間も聞かれたのでもしかしたら参加者だったのかも。

 部屋に戻って来た。数日しか滞在していないのに住み慣れた我が家の様に嬉しい。荷物を降ろしてウェアを脱ぎ捨て全裸になった開放感が物凄い。先ずは風呂に入る。

 シャワーを浴びて汗と汚れを洗い流しバスタブに湯を溜めてのんびりと浸かる。痺れた両足裏や尻やそこそこ疲れた四肢や腰にじんわりと心地良さが染み渡り極楽極楽。

 風呂から上がってすっきりしてホテルの自動販売機で買った冷たいジュースをがぶ飲み。身も心も完璧に軽くなって今とにかく欲しいものが冷たい飲み物で、それが実際に目の前にあって誰に遠慮することもなく飲み干すことができる幸せ。生きてて良かったと心底思える数少ない瞬間の一つが今。

 そのままベッドに倒れ込んでしばし寝る。

 1時間位気を失って目が覚めた。まだ寝ていたいのだが全く眠れない。明らかに睡眠不足で眠くて気持ちが悪い。走り終わったので既に覚醒コマンドは実行解除されているのに身体が勝手に頑張っている感じ。電源スイッチが壊れたおもちゃの様に電池が切れるまで動き続けるのか?死ぬのか?

 しばらくベッドの上でぼーっとしていたらかなり覚醒したのでPCを開いて今日の打ち上げの場所を物色してみる。ホテル近隣には何もなさそうで、遠くに出掛けるのも面倒臭くなってきてホテルのレストランでもいいかなと思い始める。取り敢えずSt-Quentin-en-Yvelinesではムール貝は食べられなさそうなことだけは分かった。16時を過ぎて、打ち上げの前に2次会の部屋呑みの酒やつまみを確保しておこうと近くのスーパーに行くことにする。このホテルに泊まっている会社同僚のオオダイラさんを打ち上げに誘ってからスーパーに向かう。

 スーパーまではまずまず普通に歩けた。足裏や尻はかなりダメージを食った感じだが今のところは思った程疲れていない様だ。

 まずは酒。ビールは打ち上げで呑むから2次会はワインにしようと決めていたが膨大な数で何を選んでよいやらさっぱり分からない。選ぶうちに面倒臭くなってきてスクリューキャップの一番安い白という条件で1本選んで買った。後はチーズとサラミとピクルスを見つけて購入。

 ホテルに戻って荷物を置いて、ロビーでオオダイラさんとおち合う。ホテルのレストランが臨時休業だったので止む無く外に行くことに。ホテル近隣には何もないのでSt-Quentin-Yvelines駅の南側の方が店が多そうなので行ってみて現地で良さげな店に飛び込むことにする。18時半頃にホテルを出て歩き始める。

 2015年までのPBPのスタート地点だったヴェロドロームが見えた。懐かしい。

 駅までの道のりを歩いて周囲を見回すだけで十分に観光。

 駅の南側に行った覚えはなかったのだがこの建物には見覚えがあるので多分来たことはあるのだろう。

 野外のテーブルでオシャレに食事をしてみたかったので、それらしい店を見つけて着席する。

 反省会開始。まずはビールで乾杯!冷たいビールが疲れた身体全体に染み渡ってジーンと痺れていく感覚がたまらなく幸せ。達成感が身体中に満ち溢れる。ここまでの苦難が全て報われるこの瞬間は本当にプライスレス。この時間が私の人生に大きな意味を持たせてくれる。

 メインディッシュはステーキ。メニューは読めないので一番グラム数の大きいものをチョイス。ソースも良く分からないので店員さんのお勧めにする。

 オオダイラさんと今回のPBPを大いに語り合う。残念ながらオオダイラさんは途中DNFとなってしまったが撤退行動も含めて様々な体験ができたと満足な様子。それを聞いて安心した。以前会社同僚のオオダイラさんが我がオダ埼清水班のブルベに突然やってきた時はかなり驚いたが、その後どんどんブルベに傾注して遂にPBPに参加するまでになりこの場で一緒にビールを飲んでいるというのは実に感慨深い。PBPも含め様々なブルベについて知らない人に話をしてもその実感はなかなか伝わらない。実際に参加してPBPが何たるかを体感した人が身近にいてその経験を共有して実感を持って語り合えるのは貴重なことだ。

 オオダイラさんは4年後は未定とのことだが是非完走を目指してもらいたいと思う。

 2時間余りの楽しい時間を過ごしてお開き。

 同じ店の店内にはどうやら日本人参加者が立ち寄っている様だ。お疲れ様でした!

 良い感じで夕暮れ。

 ほろ酔い気分で最高に清々しい気分でホテルまでの道のりを楽しむ。この開放感もプライスレス。遠征ブルベはこれがあるから止められない。

 ホテルに戻ってすかさず独り二次会開始。スーパーで各ジャンルで一番安いものを敢えてチョイスしてみた。フランスの底力を見えてもらおうではないか。

 一通り食べてみたが全て普通に旨い。フランスに来て初めて安いと思った瞬間。

 PCを眺めながらワインをちんたらと呑む。あれ程盛り上がっていたPBP参加者達のTLが今は静かなのが今回のPBPの過酷さを物語っている気がする。

 何となく今日のゴール前の風景を思い出す。

 2019年のPBPの終盤で聴こえてきたのはPMGだったけれどやはり今回も同じだった。Dreuxから田園風景はFarmer's Trust。もう私的にはブルベの田園風景の定番中の定番。

 この旅の終わりに見る風景に自分の昔の曲が案外フィットすることに気が付いた。日常生活が音楽に変異するのが私的に常なのにその逆は面白い。

 そしてこの曲、Joe ZawinulのYou Understand。人生最後のサイクリングはこの曲の空気の様に全てを噛み締めて走りたいなと思っているが、その時に走る道はこういう道なのだろうなと改めて思う。

 うだうだとワインを飲みつつ時々ツイッターで酔いに任せて下らないことを呟きつつふわっとした至福の時間を過ごしていたがいよいよ睡魔に抗し切れずにベッドに横になり夢の中へ退場。消灯時刻は1時半頃か。