DX7改造

 私的極秘プロジェクトはぼちぼち進行している。やることは多岐に渡って幾つかのアクションアイテムを並行してやっているのだが、その中の一つのキーボードの音色決めでちょっと躓いている。

 現状のキーボードセッティングはDX7とMODX8の上下2段配置になっているのだが、これで曲の展開に合わせて音色を振り分けた時に上段のDX7でも厚めのストリングス系の音を鳴らす必要が出てきてしまい、DX7単体の音だけだとどうしてもちょっと物足りない。

 そんなことを想定して過去にMOTIF RACKを2台導入してDX7コントロールで同時発音させていたのだが、DX7側の仕様の制限があっていまいち使いこなせていなかった。その制限というのはDX7でMIDI信号で音色切り替え信号を64までしか送出できない。DX7の音色メモリバンクは32単位で、INTERNALとCARTRIDGEを切り替えることでようやく64に対応できるという仕様になっている。MIDI規格では128までコントロールでき、MOTIF RACKの音色メモリバンクは128単位なので後半の64音色の切り替えはDX7ではコントロールできない。MOTIF側を操作すればできなくはないのだがキーボードとラックの位置が物理的に離れているということもあってラック側の操作が物凄く不便なのでラックのボタンをちまちまと操作しながら音色を探すのが面倒臭くなって途中で放り出してしまった。極秘プロジェクトを企画して再びDX7でMOTIFを鳴らす必要が出てきて、DX7とMOTIFの組み合わせで最適な音色の組み合わせを選び出す作業をやらなければならなくなった。しかし操作が面倒だと創作意欲が簡単に削がれてしまうのは過去に何度も経験済みなのでこれを何とかしなければと色々と思案していたら、そう言えば昔DX7の機能を拡張する改造用ROMが出回っていたのを思い出し、その中に音色メモリバンクを128にする機能が入っていたかどうか知りたくなった。DX7のアップグレードROMが出回っていたのはもう10数年以上前なので果たして現物が手に入るかどうか分からなかったが、ネット上で取り敢えず当該ROMの仕様データは見つかって記憶の通り音色メモリバンクを128に拡張する機能が搭載されていた。これだ!と答えを見つけて早速アップグレードROMが手に入るかネットオークションやネットフリマを見て回ったが案の定出物は全くない。ならば海外に検索範囲を広げてebayを調べたらまだ売っているところがあったので早速発注。

 程なくしてフランスから物は届いた。

 これがアップグレードROMボード。発注してから知ったのだがこのアップグレードROMを開発したのはフランス人だった。価格は1万円弱と決して安くはないがあの面倒な作業を考えれば支払う価値はある。

 ”SuperMax+”というネーミングは何とも捻りがなく仰々しいがまあ名前はどうでも良い。

 早速取り付け作業開始。

 まずメインパネルを開ける。ネジ5本を外せば簡単に開けられる。何度も開けているので勝手は完全に分かっている。

 ソケットに入っているIC14、IC20、IC21を外してこのソケットの位置にアップグレードROMボードに付いているピンヘッダーを差し込むことになる。YAMAHAのチップはROMで恐らくファームウェアが焼き込んである。三菱の2つのチップはRAMで音色その他のデータが格納されていると思われる。

 鍵盤ユニットを外さないとICが外せないので一手間かかる。

 3つのICを外したところ。

 ROMボードを取り付けたところ。これで交換作業は完了。

 元通りに組み立てて電源を入れてみる。

 取り敢えず起動画面が出たので取り付けは間違っていない様だ。

 早速試してみるが、出音がぐちゃぐちゃでまるで壊れたかの様な振る舞いで原因が分からずしばらく悪戦苦闘、不良品を掴まされたのかと疑心暗鬼になってしまった。冷静になって改めてネット上からダウンロードしてきたマニュアルを読み返してみると拡張機能の一つに音色毎にモジュレーション機能が設定できるようになってこのパラメータがちゃんとセットされていなかったので無茶苦茶な音が出ていたらしい。取り敢えずこの機能を無効にしたらまともな音が出始めて一安心。
 ROMの正常動作を確認してから改めて音色メモリバンク操作を確認したらちゃんと128まで送出できてMOTIF側が切り替わることを確認した。まずは所定の目的が達成できたので満足。このアップグレードROMは他にアルペジエータや疑似ディレイや音色スタックなどのいろいろな拡張機能が搭載されているが、当座は余り必要としていないものばかりなので触らないようにしておく。

 長年の課題がようやく解消されてこれでまた少し演奏に集中できる様になった。プロジェクトを完遂するには練習が全然足りていないのでまだまだ時間はかかるがその間に納得のいく音選びをやっていこう。

 我が家のDX7はまだまだ現役。この先もガンガン使い倒しますよ。