2023BRM1028埼玉600(スタッフ試走)

 10/14~15にBRM1028埼玉600スーパーアタック北信のスタッフ認定試走に行ってきた。スーパーアタック北信とはオダックス埼玉で2010年に開催され酷暑の中で数々のドラマを生んだあの超級山岳ブルベのBRM724埼玉600アタック北信のリバイバルである。私的には2009年の秋に初めてブルベに参加して翌年に初めての600kmブルベのとして何もわかっていないままエントリーして辛い思いをした思い出深いコースである。獲得標高8000mを軽く超える山岳の厳しさからその後一度たりとも開催されることはなかったが、時は流れてACPにR10000というアワードが誕生し、その獲得条件にBRM600km8000mupという無茶が加わったために今年封印が解かれることとなった。

 私的に2010年に走った時は初600kmということもあって訳も分からずとにかくキューシートの指し示すままにひたすら走ったという感じで暑さに相当苦しめられたものの何とか完走することができた。それから13年経って当然身体的な衰えがあり上りの走力が確実に減退しているのが分かっていたが、R10000を獲りに行くのであれば避けて通れないので止む無く走ることにした。

 コースは入間をスタートして安中、上田、小川、飯山を経由して妙高で折り返し長野、安中を経由して入間に戻って来る600km。

 超級山岳コースなので軽井沢に上がる所から妙高で折り返して再び軽井沢に戻って下りてくる間は峠の連続、獲得標高はRWGPSで約8500m。2010年からの変更点はスタート地点が越生から入間になったことで距離調整のために折り返し地点が上越から手前の妙高に変更されたことと、往復の旧碓氷峠が通行止めのため迂回路となったことだが、メインの山岳地帯のルートには変更はない。

 2010年の時は何だかんだでホテルで仮眠3時間を取りつつ36時間半で完走したが、13年経った今では到底そんな時間では走れるわけがない。走行プランを色々とシミュレートしてみるが完走イメージが全く作れない。今年で4回目となったPBPでは事前にある程度完走のイメージが持てたのでプレッシャーは大きくはならなかったが、このブルベに限っては最後まで完走イメージが持てず大きなプレッシャーがかかることとなった。とにかく走行プランを組み立てないことには話にならないので340km地点の通過チェック1直後の仮眠ホテルに2時に着いて2時間寝て5時に出発するというプランを強引に立ててそこを目指して走ることにした。

 試走当日、軽井沢手前までは順調でPC1は10:49着(クローズとの差+1:39)だったが、軽井沢への上りから徐々にペースが遅くなり思った様にマージンが稼げずPC2が15:22着(+1:58)となり、その後徐々にタイムを失い始めてPC3が20:34着(+1:38)となってしまった。その後のこのコース最難関となる戸隠の山越えで雨が降り始めたこともありタイムロスが決定的となりPC4の到着が日付変わった2:04(+0:44)となってしまった。この時点で30km先の仮眠ホテルに到着していなければならなかったのだが、どう見積もっても仮眠の時間が確保できないことが確定しここでホテルにキャンセルを入れてこのままゴールまで走り続けることを決意した。その後通過チェック1を3:54着(+0:50)、通過チェック2を9:31(+0:29)、通過チェック3を15:29着(+0:39)と相応の疲労感の中の走行でかなり際どいところまで追い込まれたものの、その後若干持ち直し最終的にゴールには20:30(+1:30)着で何とか時間内完走を果たすことができた。しかしその身体的ダメージは大きく、ゴール後家に帰って直ぐに寝て翌日起きたら腰と両脚の痛みが酷く全身の疲労感が半端なくて寝床からまともに起き上がれない状態で、睡眠不足なのによく眠れずに不快感でぼーっとして何もできず、これは会社に行っても仕事にならないと休暇にしてしまった。

 とにもかくにも走り終えたのでブログを書き始めようと思うのだが、今回は時間的にかなり追い込まれて写真を撮っている余裕が全くなかったためにレポートの書き方を変えざるを得なくなった。これまでの走行レポートは走行中のライブ感を出したいがために写真を多用して行程の細かい描写を心掛けてきたが、今回はスタート前ブリーフィング時のコース説明及び注意事項的にまとめてみようと思う。

・まず最初に、このコースはブルベの仲間内で言うところの”酷い”コースだということを基本認識として持っておく必要がある。

・勾配10%超で数kmに及び急坂が幾つも出て来る。どの坂も相応にきついが私的にきつかったのは、①戸隠神社までのアップダウン(246.5~275.3km)、②万坂峠(368.8km)、③新地蔵峠(430.2km)の3か所。特に②と③は後半で疲れが出ている時に上らされるのでかなりきつく感じた。

・上り以上に辛く感じたのが下り坂。上り坂が急勾配なら下り坂も急勾配でワインディングしていたり路面が荒れていたり落ち葉や小枝、小石などが落ちていたりでスピードが全く出せず上りでのタイムロスを取り返せない下り坂が多かった。試走時にPC3から後で雨が降り出し路面が濡れたため下りの濡れ落ち葉に乗ってスリップするのが恐怖だった。また、グレーチングの金属の蓋に隙間がある所が数か所あったので注意。

・工事片側通行区間が多数あった。特に戸隠神社の2つ前のピークからの下りと戸隠神社のピークの下りの途中の工事片側通行では路面が未舗装ダートでかなり怖い思いをした。工事片側通行では工事用信号が青だったとしてもそのまま突っ込んでいかずに徐行して路面を確認すべき。

・軽井沢から下仁田に下る紅葉ライン(487.9km~)はかなりの急勾配でワインディングで路面が悪く、更に日中は下から車がちょくちょく上がって来るので絶対にオーバーランしないこと。カーブでの見通しが悪く極めて危険。

・軽井沢に上がってからは気温はかなり低い。1000m級の峠越えでは気温一桁は覚悟しておいた方が良く、長い下りではかなり寒い思いをするので防寒対策はそれなりししておいた方が良い。

・このコースはPC及び通過チェックは全てコンビニだが区間距離が長くその間の補給ポイントはかなり限られる。事前に補給のシミュレーションは充分にやっておく必要がある。

・仮眠設定をする場合、ルート上で折り返し辺りに宿を探すとなると通過チェック1直後のルートイン妙高新井の一択。(私もここを予約していたが仮眠時間が無くなりキャンセルした)

・山道では動物に注意。試走中に鹿、狸、狐を見かけた。夜間の真っ暗な山道を走っている間に両脇の森の中でガサガサという音や妙な鳴き声をしょっちゅう聞いていた。

・走行後の獲得標高差の実測値はGarmin計測で8820m(stravaの標高再計算で9070m)。

 私的に今回このコースを走って見てとにかく”下り注意!慎重に!”というのが感想。上りの遅れを取り戻そうと焦って下りで攻め過ぎない様にして欲しいところ。

 まずシビアな面を並べて書いたが、余裕を持って走る様に心掛ければ上り甲斐のある坂が連なる山岳コースを存分に楽しむことができる。今のところ開催当日の天気は好天予報なので晩秋の爽やかな山の風景を楽しむことができるし、13年前に開催した時の様な酷暑に苦しめられることはない。あの地獄の様な浅間サンラインを水を求めて朦朧と上っていくこともない。コンディションは今回の方が断然良いはずである。ルートデータを熟読ししっかりとした走行プランを立てて万全の準備で、今年のブルベシーズンの最後を飾るに相応しく今後二度と開催されないかも知れない超級山岳ブルベを是非楽しんで欲しい。

 私的には今回このコースというより600km8000mupのブルベを走ってみて己の限界をしっかりと認識することができた。走り終えた後に起き上がれない程の疲労を負う程に自分の身体を酷使するだけの気持ちがあったことは我ながら評価したいが、そこまで追い込んでミスらしいミスも殆どないにもかかわらず、仮眠も出来ずに走り続けて38時間30分というゴールタイムは、今が正に完走できるか否かのギリギリだったと思われる。この先更に歳を取れば更に走力が落ちるのは確実なので完走できないのは容易に想像がつく。今回初めて600kmブルベを仮眠なしの通し走行で走り終えることができたが”やればできるじゃないか”という能力の拡大とは到底思えない。こんなきつい思いは二度としたくないので今後は仮眠をちゃんと入れても完走できるコースのみを選択してエントリーすることにする。R10000がもし今後も600km8000mupを必須条件とするならばこれを獲りに行くのも今回が最後となる。歳相応に完走可能なコースを選びながらブルベを止める最後まで楽しく走れればと思う。

 さてこの試走をもって私の2023年のブルベシーズンは終了。詳細な総括は年末に行うとして、今年も出走したブルベは全て完走し怪我無く事故無く走り終えられてよかった。そして目標だったPBPとこの600km8000mupを完走して大きな達成感を感じている。来月からは2024年シーズンが始まる。次のブルベは新シーズンの1本目でなおかつ新団体の開催1本目となるBRM1105さくら200。私的には走り慣れた秩父・長瀞方面のコースなので余裕を持って楽しめるのではないかと思う。次回詳報の予定。