ベースの調整

 日々こそこそとベースの練習をしている。

 ここまで何本もベースを買ってしまったが、そろそろ60歳が見えて来て断捨離という意も込めつつメインのベースを絞り込んでその1本をひたすら弾いて自分の身体をその楽器に合わせ込んでいきたいと考えている。

 で、その1本をどれにするかと色々と考えていたがやはり見た目でこれにしたいという思いが強く、無理無謀を承知でこの6弦ベースに集中していくことを(取り敢えず)決意した。

 実際何だかんだでこればかり弾いているのだが、特に最近はチョッパーを集中的に練習していて弦を親指で叩いて音を出すということをやっているのだが、どうもうまく弦を鳴らせないのだ。特にLow-Bがうまく鳴らせなくて直ぐにビビりや音詰まりが出てしまう。単に私が下手なだけかも知れないのだが、もしかしたら楽器の状態が良くないのかも知れないという疑いを持ってしまった。このベースを手に入れてからまともに調整したことがなく一体このベースの状態がどうなのか全く分からない。ネックの状態を目視で確認しても素人目にはそこそこ真っすぐに見えるし、弦高も低いという感じではない。自分で調整しようにもギターであればそこそこやれるが6弦ベースとなるとコツが全く分からないし適当にやっても自分自身の技量を信用できなければ調整不足の疑念はずっと付きまとうことになるのでここは難しく考えずに一度プロに調整をやってもらって弾いてみてそれでも駄目なら自分自身の下手さ加減を嘆くしかないという結論に至った。そうと決まれば調整をやってもらう店を早速探し始める。このベースはTUNE製なのでまずは製造元のページをチェックするとリペアの案内ページが直ぐに目に入って来た。そこを開いてみたら”PLEK”なるリペアマシーンのことが色々と書いてあった。

www.cc.rim.or.jp

 詳しくはこのページを参照してもらいたいが、簡単に言えば楽器の状態を精密にチェックしてベストなセッティングを提案する機械ということらしい。この機械の分析を基にリペアマンがネックを調整したりブリッジの調整をしたりしてベストなセッティングにした後で最終的にこの機械がフレットの擦り合わせをやって仕上げるという流れの様だ。こういうのを見ると是非試さずにはいられなくなるのだが、ページには”只今サービス休止中です”としっかり書かれてあって製造元に依頼するのは断念。ならば、近場で同じサービスを提供しているところはないかと探したら割と簡単に見つかった。

www.kurosawagakki.com

 池袋のクロサワ楽器でやっているのだが、池袋ならば家から楽器を持って行ける距離なので問題なし。料金はフルサービスで17,600円、この金額が高いか安いかはよく分からないが絶対金額としては出せない額でもないので物は試しとやってみることにして早速メールで訪問日の予約を入れた。

 10/21(土)、昼過ぎに池袋にベースを持って向かう。

 池袋駅から徒歩5分の距離に目的地はあった。楽器屋のリアル店舗に入るのはかなり久し振りなのでちょっとワクワクする。

 店に入ると位置口近くにいきなりPLEKの装置が鎮座していた。大きさは電話ボックスをちょっと小さくしたようなサイズ。

 フレットを自動で削ったりする機構が付いているのでなかなかにメカメカしい作りになっている。

 早速受付をして一通りの説明を受ける。諸事情により出来上がりの日にちは不明とのことだが、全く急がないので問題なし。

 しばし検査入院することになった我がベース。仕上がりを楽しみにしつつ店を後にする。

 その後5日程で作業完了のメールが来た。案内ページには約1週間と書いてあったが早く完了した様だ。週末の土曜日にはかつしかトリオのライブに行くのでそのついでに引き取りに行くことにした。

 10/28(土)、葛飾シンフォニーヒルズで行われたかつしかトリオのライブをしっかり堪能して余韻に浸りつつ池袋に向かう。

 人混みを掻き分けつつ19時前に現遅着。

 早速PLEK専属のスタッフさんに調整結果の詳しい説明を受ける。たくさんの計測データを見せてもらったが下記はその抜粋。

 これは調整前のLow-Bの弦高やフレット高やネックの状態。

 まず、一番下の地形図の様な塗りつぶしの曲線がこのベースの実際のネックの反りを示す図形で左がローフレットで右がハイフレットになっている。そしてその曲線に重なる様に紫色の曲線で描かれているのが理想のネックの反り。この2つの曲線には乖離があることが見て取れる。

 次に針の様な山が並んでいるのがフレットで、オレンジの曲線が現状のフレットの高さを示していて、それに重なる緑の曲線が理想のフレットの高さ示している。

 そして一番上の2本の直線が弦高を示していて、赤が現状で緑が理想。現状は弦高がかなり高くなっている様だ。

 この測定結果から人力と機械のフレット切削で理想に近づけていく作業が行われた結果がこれ。

 見事に理想曲線に重なっている。ネックの波打ちの修復は難しいがその凸凹をフレットの高さ調整で吸収したということか。弦高も低くセッティングされた様だ。

 説明を受けつつ調整の終わったベースを試奏コーナーのアンプに繋がれて手渡されてしまった。気の利いた試奏フレーズが弾けるわけでもなく下手糞なのがバレバレで恥ずかしいのでベースを受け取ってさっさと支払いをしてこそこそと退場するつもりだったがこうなったら仕方がない、ちょろちょろっと弾いてみる。Low-Bを叩いてみたら、あれ?音詰まりが消えた!?嫌らしいビビり音も出なくなってすんなりなっている感じがする。その他の弦もビビるポイントが幾つもあったのだがそれらが全て消えている様だ。ちょっと弾いただけでも素人目に改善効果が分かった。おー、これはなかなか凄いのではないか。会計をしてベースを受け取りウキウキしながら店を出た。

 帰宅して改めて弾いてみたがどの弦どのフレットを押さえてみても音詰まりやビビり音が全くなくなった。その上以前より弦高が低くなってかなり弾き易くなっている。やはりこれは改善効果は大きいと見るべきだ。この結果が得られたのであれば調整料金17,600円は安いと思う。自転車もそうだがしっかり整備調整された道具でないと正常に動作してくれないし、ちゃんと動いてくれなければ楽しむことはできない。改めてメンテナンスの重要性を認識した次第。

 ばっちり調整されて余計な疑念も消えてこのベースに対する思い入れが更に増して来た。後は人間がこのベースに合わせて馴染んでいくために、どんどん練習して人馬一体を目指していきたい。